使い魔の儀式を行うための広場。
そこで一人の少女が今まさに使い魔を呼ぶための儀式。
サモン・サーヴァントを行っていた。
そこで一人の少女が今まさに使い魔を呼ぶための儀式。
サモン・サーヴァントを行っていた。
爆発が起きる毎に同級生が嘲り笑い、少女に対する中傷を浴びせる。
その声が聞こえる度に、杖を持つ手が震える。
その声が聞こえる度に、杖を持つ手が震える。
「また爆発かよ、流石『ゼロ』だな」
煩い──
「何度やっても『ゼロ』、時間の無駄」
黙れ──
「家柄だけが取柄の『ゼロ』の癖に」
見返してやる──!
「成功するわけないよ、『ゼロ』なんだから」
そんな事認めたくない──!
煩い──
「何度やっても『ゼロ』、時間の無駄」
黙れ──
「家柄だけが取柄の『ゼロ』の癖に」
見返してやる──!
「成功するわけないよ、『ゼロ』なんだから」
そんな事認めたくない──!
少女の名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
彼女の人生は血が滲むほど努力で築かれてきた。
座学なら学院でも常にトップだし、魔法の練習も誰よりもした。
しかし、練習は一切身を結ばなかった。
起きるのは爆発のみ。
系統どころか子供でもできるコモンマジックすら成功しない。
座学なら学院でも常にトップだし、魔法の練習も誰よりもした。
しかし、練習は一切身を結ばなかった。
起きるのは爆発のみ。
系統どころか子供でもできるコモンマジックすら成功しない。
生まれて16年間、一度も魔法が成功したことはない。
だからこそ、このサモン・サーヴァントの儀式で誰よりも強く願っていた。
だからこそ、このサモン・サーヴァントの儀式で誰よりも強く願っていた。
誰にも負けないような素晴らしい使い魔を呼ぶことを。
しかし、願いは叶わない。
いつものように爆発が巻き起こるだけで、そこには何も現れない。
頭髪が薄くなった教師──コルベールが、彼女の方に手をかける。
いつものように爆発が巻き起こるだけで、そこには何も現れない。
頭髪が薄くなった教師──コルベールが、彼女の方に手をかける。
「残念だが、これ以上は……」
ルイズにとってそれは死刑宣告にも等しい一言。
ルイズにとってそれは死刑宣告にも等しい一言。
「お願いします!もう一度だけ!もう一度だけやらせてください!!」
必死の懇願。
コルベールは彼女の努力は知っている。
だからこそもう一度だけの言葉を無碍に否定することはできなかった。
しかし他の生徒の手前、彼女一人に付きっきりになるわけにもいかない。
必死の懇願。
コルベールは彼女の努力は知っている。
だからこそもう一度だけの言葉を無碍に否定することはできなかった。
しかし他の生徒の手前、彼女一人に付きっきりになるわけにもいかない。
「わかった、ただしもう一度だけだ」
文字通り最後のチャンス。
ルイズは今までより強く祈り、願い、そして精神を集中した。
文字通り最後のチャンス。
ルイズは今までより強く祈り、願い、そして精神を集中した。
「宇宙の果てのどこかに居る私の僕よ!神聖で美しくそして強力な使い魔よ!!
私は心より求め、訴えるわ!!!我が導きに、答えなさいっ!!!!」
叫びにも似た呪文が唱え終わると同時に、今までよりも大きな爆発が起きた。
私は心より求め、訴えるわ!!!我が導きに、答えなさいっ!!!!」
叫びにも似た呪文が唱え終わると同時に、今までよりも大きな爆発が起きた。
「最後まで失敗かよ!」
生徒の一人が笑いながら叫ぶと同時に、嘲笑がひときわ大きく起こる。
生徒の一人が笑いながら叫ぶと同時に、嘲笑がひときわ大きく起こる。
だが、ルイズは悲嘆することも憤慨することもなかった。
爆発の中心地に影が見えたからだ。
爆発の中心地に影が見えたからだ。
何かいるとルイズが確信するのと同時に、背筋に悪寒が走る。
粉塵が晴れると、そこには一人の女性が立っていた。
彼女はルイズが見てきた中でも、母や姉達とは異なる美しさを持つ女性だった。
粉塵が晴れると、そこには一人の女性が立っていた。
彼女はルイズが見てきた中でも、母や姉達とは異なる美しさを持つ女性だった。
濡れた身体から滴る水も、女性の艶を一層引き立たせる。
女性にしては短めの緑の髪の毛。
男性にも女性にも見える中性的な顔立ち。
衣装もドレスというよりはどこかの皇太子が着るような男性向けの服装に見える。
血のようにどこまでも深い赤は髪の緑を映えさせ、また服自身の色も引き立つ。
腰には女性が持つには不釣合いな剣を携えているが、彼女には良く似合っていた。
男性にも女性にも見える中性的な顔立ち。
衣装もドレスというよりはどこかの皇太子が着るような男性向けの服装に見える。
血のようにどこまでも深い赤は髪の緑を映えさせ、また服自身の色も引き立つ。
腰には女性が持つには不釣合いな剣を携えているが、彼女には良く似合っていた。
ルイズはその姿を見て、女性が主役だった騎士物語の本を思い出した。
「離れるんだ……ミス・ヴァリエール」
目の前の状況に頭がついていかなかったルイズにコルベールは離れるよう促す。
その忠告にルイズがコルベールのほうを見ると、額に大粒の冷や汗を浮かべている。
手の持つ杖は彼女へと向けたまま、視線を離そうとはしない。
目の前の状況に頭がついていかなかったルイズにコルベールは離れるよう促す。
その忠告にルイズがコルベールのほうを見ると、額に大粒の冷や汗を浮かべている。
手の持つ杖は彼女へと向けたまま、視線を離そうとはしない。
「あの格好、貴族か……?」
「『ゼロ』のルイズが貴族なんて呼べるものか、第一杖もマントも持ってないじゃないか。」
「平民だ!『ゼロ』のルイズが平民を召喚したぞ!」
コルベールの緊張感など気にした様子もなく、生徒達が再び侮辱の言葉を投げかける。
「『ゼロ』のルイズが貴族なんて呼べるものか、第一杖もマントも持ってないじゃないか。」
「平民だ!『ゼロ』のルイズが平民を召喚したぞ!」
コルベールの緊張感など気にした様子もなく、生徒達が再び侮辱の言葉を投げかける。
「黙れ」
彼女が一言だけ告げて腕を振ると、罵声を浴びせていた生徒達が倒れていく。
彼女が一言だけ告げて腕を振ると、罵声を浴びせていた生徒達が倒れていく。
「せ、先住魔法!?」
その光景を見ていたルイズが思わず叫ぶ。
先ほどまでルイズを見下し、嘲り、中傷していたクラスメイト達も凍り付いたように動かない。
否、動けないのだ。
その光景を見ていたルイズが思わず叫ぶ。
先ほどまでルイズを見下し、嘲り、中傷していたクラスメイト達も凍り付いたように動かない。
否、動けないのだ。
「貴女は何者なの……?」
先住魔法が使えるということは人間ではない。
ルイズからの疑問に彼女が答える。
先住魔法が使えるということは人間ではない。
ルイズからの疑問に彼女が答える。
「私は妖魔よ」
妖魔。
この単語がハルケギニアで意味するものはただ一つ。
人間に害をなすもの、人間の敵。
体を震わせるルイズに対して妖魔を名乗る彼女は優しく微笑む。
この単語がハルケギニアで意味するものはただ一つ。
人間に害をなすもの、人間の敵。
体を震わせるルイズに対して妖魔を名乗る彼女は優しく微笑む。
「そんなに怯えなくてもいい、君が私を呼んだのかい?」
「え、ええ……そうよ」
何度も呪文を唱えたことと妖魔を呼んでしまったという緊張から喉は渇ききっている。
それでもなんとか声を絞り出す。
「え、ええ……そうよ」
何度も呪文を唱えたことと妖魔を呼んでしまったという緊張から喉は渇ききっている。
それでもなんとか声を絞り出す。
「何のため?」
言葉に詰まるルイズにコルベールが助け船を出す。
言葉に詰まるルイズにコルベールが助け船を出す。
「現在、サモン・サーヴァントの儀式中でして……」
「私は彼女の口から聞きたいんだ」
コルベールが説明に入ろうとするが、彼女は拒絶した。
「私は彼女の口から聞きたいんだ」
コルベールが説明に入ろうとするが、彼女は拒絶した。
「サ、サモン・サーヴァントで貴女を呼んだのよ」
「何の為に?」
「使い魔にするため……」
気圧されながら、かろうじて紡いだ言葉。
誤魔化しも、この場を切り抜ける言葉も出てこなかった。
故に要点のみの説明の足りない言葉になってしまう。
「何の為に?」
「使い魔にするため……」
気圧されながら、かろうじて紡いだ言葉。
誤魔化しも、この場を切り抜ける言葉も出てこなかった。
故に要点のみの説明の足りない言葉になってしまう。
「いつまで?」
「生涯よ、どちらかが死ぬまで……」
彼女達の問答を見ていたコルベールは卒倒しそうだった。
「生涯よ、どちらかが死ぬまで……」
彼女達の問答を見ていたコルベールは卒倒しそうだった。
「い、いやサモン・サーヴァントは本来使い魔になる動物や幻獣を呼ぶ儀式でして、
貴女の様な方が妖魔が呼ばれると言うのは前例がなく……」
コルベールが慌ててフォローするべく、説明を挟む。
だが、彼女は気にした様子もない。
貴女の様な方が妖魔が呼ばれると言うのは前例がなく……」
コルベールが慌ててフォローするべく、説明を挟む。
だが、彼女は気にした様子もない。
「気を使う必要はないよ、私はなぜ私を呼んだのか知りたかっただけだからね」
ルイズの目の前、妖魔が近づく。
思わず警戒するルイズの頬を撫でる。
ルイズは撫でられると恐怖と同時に安らぎを感じていた。
まるで危険だとわかっていても惹かれてしまう食虫植物を前にした昆虫のように。
ルイズの目の前、妖魔が近づく。
思わず警戒するルイズの頬を撫でる。
ルイズは撫でられると恐怖と同時に安らぎを感じていた。
まるで危険だとわかっていても惹かれてしまう食虫植物を前にした昆虫のように。
「それで君は私と契約するのかい?」
その言葉にルイズとコルベールは驚愕する。
なぜ人の言葉も理解でき、力を持った妖魔が自ら人間との契約を結ぶのか。
コルベールの一瞬の思索がルイズの契約を静止する機会を失わせた。
その言葉にルイズとコルベールは驚愕する。
なぜ人の言葉も理解でき、力を持った妖魔が自ら人間との契約を結ぶのか。
コルベールの一瞬の思索がルイズの契約を静止する機会を失わせた。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我の使い魔となせ!」
ルイズはこのサモン・サーヴァントに賭けていた。
魔法が使えないというコンプレックスの中、強力な使い魔を呼び出し見返してやりたい。
その願いに答えるように現れたのが、妖魔とはいえ膨大な力を持つ者。
魔法が使えないというコンプレックスの中、強力な使い魔を呼び出し見返してやりたい。
その願いに答えるように現れたのが、妖魔とはいえ膨大な力を持つ者。
功名心に逸るルイズは呪文を唱えると同時に、契約の口付けを交わす。
突然の口付けに、わずかながら彼女が驚いた表情を浮かべる。
突然の口付けに、わずかながら彼女が驚いた表情を浮かべる。
重ねた唇が離れそうになった瞬間、ルイズの体を抱き寄せて舌をねじ込む。
今度はルイズが慌てふためき、体を離そうとするが拘束は緩まない。
時間にしてみれば一瞬だが本人にとっては長い刻、ようやく開放されたルイズはその場にへたり込む。
今度はルイズが慌てふためき、体を離そうとするが拘束は緩まない。
時間にしてみれば一瞬だが本人にとっては長い刻、ようやく開放されたルイズはその場にへたり込む。
ルイズが生きてきて、初めて感じた快楽と愉悦。
瞳は焦点があっておらず、恍惚の表情で虚空を見つめる。
瞳は焦点があっておらず、恍惚の表情で虚空を見つめる。
「私の名はアセルス、君は?」
「ルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
惚けた表情のまま、ルイズが答える。
いい名前だとアセルスに告げられると、ルイズは気恥ずかしくて顔を伏せてしまう。
「ルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール」
惚けた表情のまま、ルイズが答える。
いい名前だとアセルスに告げられると、ルイズは気恥ずかしくて顔を伏せてしまう。
ルイズとアセルス。
二人に希望をもたらす出会いなのか、それとも絶望か。
そのことを知るものは誰もいない……
二人に希望をもたらす出会いなのか、それとも絶望か。
そのことを知るものは誰もいない……