あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ルイズと無重力巫女さん-51




ルイズ、霊夢、魔理沙の三人がトリステインの森で手痛い体験をしてから暫く後の虚無の曜日――――
その日は朝から用事があると言ってルイズがひとり街へ赴き、魔理沙もキノコ探しにと森へ出かけた。
今ルイズの部屋にいるのはルイズに召喚されて使い魔になってしまった霊夢と、やけにお喋りなデルフだけであった。


―――最近、日差しが強くなったような気がする。
霊夢はそんな事を思いながら、開きっぱなしの窓から外の景色を見る。
魔法学院の一室から見える開放的な蒼い空に覆い被さるかのように、巨大な雲が浮かんでいた。
それは俗に「入道雲」とも呼ばれる存在で、夏の訪れを知らせてくれる入道だ。

「そういえば、もうすぐ夏の季節なのよね…」
霊夢は誰に言うとでも無く呟くと、テーブルに置かれた緑茶入りのコップを手に持った。

開けっ放しにされた窓から入ってくる光に目を細めながら、霊夢はコップに入った冷茶を一口啜る。
緑茶に混ざって入っている幾つもの小さな氷がコップにぶつかるガラス細工のような音が、熱気が微かに漂うルイズの部屋に響く。
キンキンに冷えた冷茶と一緒に氷も二、三個ほど口の中に入れ、バリボリとくぐもった音を立ててかみ砕いてゆく。
そして口からコップを離すとハァと溜め息をつき、ふと天井を見上げる。
つい一週間ほど前までは窓を開けなくても良かったのだが、この頃から窓を閉めてると自然に体から汗が出てくる。
トリステインは比較的寒い土地であるが、いざ夏の訪れると急に暑くなるという厄介な場所であった。
それが原因か、最近になってからハンカチで汗を拭う者達を見かけるようになっていた。

「…やっぱり突然連れてこられただけあって、夏の訪れも突然なのね」
『へへ、それでうまい事言ったつもりか?』
ひとりでに口から出た霊夢の呟きに、ベッドの上に置かれたデルフが勝手に答えた。
まるでダメ出しするかのようなインテリジェンスソードの言葉に霊夢は目を細めつつ、ベッドの方へ目を向ける。
以前はやかましいからとルイズと霊夢に蹴飛ばされたり縄で縛られた事があったこの剣も、今は前ほど煩くはなくなった。
喋りたいときはベラベラと喋ってくるが、そこには以前のようなやかましさは無い。
いつものように魔理沙と話していたり、時には今のように霊夢の言葉に一々突っ込んでくることもある。
ルイズはそんな剣にいつも厳つい視線を送っているが、蹴り飛ばすようなことは滅多にしなくなった。
彼女自身、デルフのアドバイスが今まで忘れていた大切な事を思い出してくれたと自覚しているのだろう。


『いつも思うんだけどよ、お前さんは狂言回しや役者にでもなりたいのかね?』
自分の言葉に霊夢が反応してくれたのが嬉しいのか、デルフは鞘から露出した刀身を震わせながら言葉を続ける。
デルフのからかい言葉に霊夢は自分のアゴに手を添え、自らの将来について真剣に考えるかのようなポーズをとってみせた。
「そうねぇ~、もし巫女としての務めが終わるのなら…………とりあえずアンタの考えてること以外の事をしてみたいわね」
霊夢の口から出た「将来の夢」を聞いて、デルフは『ひでぇ』と呟いた後に言葉を続ける。
『なんでぃそりゃ?このオレっちが真剣に考えてやったっていうのに』
「アンタの場合は体の方が真剣だから、頭の方が真剣じゃなくなったのよ」
おせっかいなデルフにそう言いながら霊夢は手に持っていたコップをテーブルに置き、次いでその隣に置かれた湯飲みを手に取る。

コップを持った時と違い何処か慎重そうに湯飲みを両手で持つと口に近づけ、中に入った熱い緑茶をゆっくりと啜る。
静かにズズズと音を立てながらお茶を飲む彼女の姿は、西洋の雰囲気漂うこの世界とはあまりにもミスマッチし過ぎていた。
「ふぅ…やっぱり冷たいのもいいけど、熱いお茶もまた格別ね」
湯飲みから口を離した霊夢はそう言いながらなんとも嬉しそうな表情をその顔に浮かべた。

例えればそれは、しばらく働かなくても不自由なく好きに暮らせる財産を手に入れた人間が浮かべるすのような幸せな表情。
そんな例えとはまるで無縁な過疎神社の巫女である彼女が、それよりももっと幸せそうな表情を浮かべている。
もしもその顔をルイズが見たら驚くであろうが、きっと彼女のことをある程度知ってる魔理沙や幻想郷の住人達ならこう思うだろう。

「よくもまぁ、お茶を飲むだけでそんな幸せになれるなんて。相変わらず暢気だなぁ…」と。

湯飲みをテーブルに置いたとき、デルフが話し掛けてきた。
『なぁ霊夢、少し聞いて良いか?』
「ん?何よ」
デルフの質問に首を少しだけ傾げつつ、霊夢は暇つぶしにと耳を傾ける事にした。
しかしその質問の内容は、デルフでなくとも先程彼女がとった行動を見たら誰だって投げかけるだろう。
何せ今霊夢がコップと湯飲みを置いたテーブルの上には、熱い緑茶が入った急須と冷茶の入ったポットが置かれているのだから。
ハルケギニアはもうすぐ夏の季節を迎えるが、この部屋だけは未だに春と初夏の間を行き来していた。

『どうして熱いお茶と冷たいお茶を、交互に呑む必要があるんだよ』
恐らく十人中八人が彼女に聞きそうなその質問に、霊夢は当たり前と言わんばかりにこういった。
「交互に飲むからこそ、美味しくかつ二つの味を楽しめるのよ?」
得意気な顔で冷静かつ明確にそう答えた時…部屋に二つある出入り口の内の一つであるドアが開く音が耳に入ってきた。

ドアを開けて入ってきた人間は霊夢がそちらへ顔を向ける前に、自分が何者なのかを知らせた。
「よう霊夢とデルフ。今帰ったぜ!」
部屋の主であるルイズとは違う快活な声を上げて、声の主である魔理沙が部屋に入ってくる。
その顔や首筋には汗が滲み出ており、外が結構な気温になっている事を物語っていた。
『おぉ魔理沙か…って何だ、随分と汗だくじゃねぇか?』
「あぁこれか。いやぁ珍しいキノコや薬草とか捜してて森の中を飛び回ってたらこうなってな…」
デルフの言葉に答えながら、魔理沙は左腕で額の汗を拭った。


相変わらず白と黒を基調にした服であったが、霊夢の巫女服とは違い所々デザインが変わっていた。
夏の季節に向けて生地の薄い半袖ブラウスの上に、黒色のサマーベストを身に着けている。
短くなったスカートに合わせて白いエプロンも小さな物になっており、以前より少しだけ可愛らしくなっている。
唯一変わらないのは頭に被っている帽子であるが、それ以外の箇所は正に『夏服』となっていた。


「おかえり…と言った方が良いのかしらね?」
一足早い夏の熱気で汗をかいて帰ってきた魔理沙に、霊夢は自分の言葉に疑問を覚えながらも言った。
「だろうな。ここは神社じゃないし」
魔理沙はそう言いながらドアを閉め、右手に持っていた箒をクローゼットの傍に立てかけた。
彼女の相棒ともいえる箒は幾つか傷ができているものの、常に手入れをしているお陰か古びた印象を見せていない。
箒を手から放した彼女はふう、と一息ついてからポケットからハンカチを取り出して首筋を流れる汗をササッと拭き取った。
その様子を見ていた霊夢は、思った以上に気温が上がっているのだと感じた。
「それにしても急に暑くなったよなホント…幻想郷の夏も暑いがこっちと比べりゃまだ良い方だ」
「そうかしら?私はあんまり動いてないから良く分からないわ」
「そう言うと思ったぜ。お前は一年の半分くらいは、神社の縁側でお茶を飲みながら過ごしてるもんな」
霊夢と話しながらも左手に持っていた小さな革袋をベッドの傍に置くと、霊夢の向かい側に置かれたもう一つの椅子に腰掛けた。
そして頭に被っていた帽子を脱いで膝に置くと、テーブルに置かれた急須とティーポットに気が付く。

「…なぁ霊夢」
「何よ」
「これってどっちがアタリなんだ?…それとも、両方がハズレなのか?」
『イヤ、そんなのはねぇから』
魔理沙の言葉に、霊夢よりも先にデルフが突っ込みを入れた。



「んっ、んぐっ…ん……ッハァ!」
ルイズの部屋に、気持ちの良さそうな魔理沙の声が上がる。
コップに注いだ冷茶を飲み干した彼女の顔は、喜びで若干にやけている。
まぁ汗だくになりながら森の中を飛び回ったのだから無理もないであろう。
「やっぱり思いっきり汗をかいた後の冷たい飲み物ってのは美味しいぜ~…」
僅か数秒で空っぽになったコップをテーブルに置いた魔理沙は、体の重心を前に傾けてグテッとテーブルに突っ伏す。
その様子を見ながら湯飲みに入った緑茶を啜っていた霊夢は、ふと窓の外の景色へと視線を移した。
幻想郷のそれと負けないくらいに澄み切った青い空を背景にして、巨大な入道雲が浮かんでいる。
その空の下には自分たちの塒である魔法学院の外壁と、そこを囲むようにして何処までも続くかのような森が見える。

(そういえば、以前あの森で変な怪物に襲われたけど…もうあれから結構経つのよね)
学院の外にある森が目に入った霊夢はふとあの時の事を思い出し、左肩を一瞥する。
あの怪物に襲われ不覚にも一撃を喰らってから、既に数日もの時間が経過していた。

つけられた傷はあの毒を含めて、ルイズが持っていた水の秘薬のおかげで綺麗サッパリに消えていた。
まるで最初から無かったかのように…という言葉がピッタリと似合うほどに傷は無くなっていた。
以前も背中を青銅のゴーレムに強く殴られたときも、あのクスリのおかげで後遺症もない。

(なんというか…流石魔法の世界ね。あんな切り傷と毒まで治してくれるんだから)
霊夢はそんな事を思いながら、頭の中で数日前の事を思い出し始めた。




魔理沙がキメラを倒した直後の姿を見て目を瞑った後、私が再び目を覚ましたのは翌日の未明であった。
その時はまだ毒が僅かに残っていたのか体は少し気怠かったが、それ程苦しくもなかったのは覚えている。
無機質で一定のリズムを奏でる時計の音に耳を傾けながら、私はゆっくりと目を開けた。
もう見慣れてしまった天井が目に入ってきたと同時にふと視界の左端に明るい何かが映る。
何かと思いいつもより重たく感じる目を動かすと、まず目に入ったのが魔理沙の背中であった。
私に背を向けて椅子に座っている彼女は、鬼火や幽霊のようにゆらゆらと動くカンテラの灯りを頼りに本を読んでいるようだった。
時折ページを捲る音も聞こえているので起きているのは起きているのだろう。

私は魔理沙の背中に向けて声を掛けようと口を開いたが、うまく言葉が出ない。
「…っう…く」
ちょっと頑張って喉から出した声は、まるで墓場から蘇った亡者の如き呻き声であった。
それでも気づいてくれたのか、魔理沙は私の方へと顔を向けてくれた。
最初はキョトンとしていた彼女も、私の顔を見てすぐに笑みを浮かべた。
「おぉ、何だ霊夢か。てっきり学院を根城にする悪霊が出たのかと思ったぜ」
「そんなヤツがいるなら、とっくに私が退治してるわ」
先程上げた声をネタにして冗談を言った彼女に対し、私は苦笑いの表情と言葉で返してやった。
その言葉を聞いた魔理沙は満足そうにうんうんと頷いた。
「は!そんな表情とセリフが出るんならルイズの言ったとおり、もう大丈夫だな」
魔理沙の口から出たこの部屋の主の名前を聞き、ふと私は足の方に何かが乗っかっているのに気が付く。
ふとそちらの方へ視線を向けると驚くことに、ルイズが私の足に頭を乗せてグッスリと眠っていた。
いつもの服を着ている魔理沙と違いネグリジェを纏い、その上にタオルケットを羽織っている。
更に私の体に掛かっているのが分厚い毛布という事もあり、その寝顔は安らかであった。

「なんていうか…どうしてこうなったのかしら」
私は見ていて妙にムカついてくる程安らかな寝顔を浮かべるルイズを見ながら、ひとりでに呟く。
その言葉に答えるかのように、イスに座った魔理沙が得意気にこれまでの経緯を話してくれた。

魔理沙の話が正しければ、どうやらつきっきりで看病したかったとのことらしい。
部屋に置いてあった水の秘薬を使い傷の手当てをした後、そのまま私の事を見守っていたのだという。
食事は魔理沙に持ってきて貰い、風呂に入るときは魔理沙に看病を頼んだりと…

「…で、私が風呂から帰ってくると今の恰好で寝てたから毛布を掛けたんだよ」
魔理沙は最後にそう言って、説明を終えた。
話を聞くだけではどうにも信じられないが、まぁこうしているのだから事実だと思って良いのだろう。
私はすーすーと寝息を立てているルイズを見て、そう思った。


「…というか、毛布をかけるならベッドに運ぶぐらいしてあげなさいよ?」
「いや~、もしかしたら途中で起きるかなーって思ってはいるんだがなぁ」
さりげない私の突っ込みに、黒白の魔法使いは悪気のない笑顔を浮かべてそう言った。




(あれからもう暫く経つのね)
霊夢は傷が出来ていた所を優しく撫でつつ、回想を終える。
(本当、時間って暇なときほど早くなるような気がするわ)
彼女は心の中で呟きつつ、窓から見える外の景色をジーッと見つめていた。

あれから数日が経ってはいるが、魔理沙はいつもの如く平常運転であった。
偶に箒と革袋を持って外に出かけては得体のしれない薬草やキノコを取ってきたり本を読んだり、霊夢やルイズ達とお茶を飲んでいる。
学院内の人間関係も相変わらず良好で、最近はコルベールやシエスタたちの方へちょくちょく顔を出したりしていた。
一方のルイズはというと、ほんの僅かだけ優しくなったように思えた。ほんの僅かだけ。
全体から漂う雰囲気自体はまだツンツンとしているが、それでも他人と接するときには優しさが垣間見えるようになった。
デルフの方もあれから縛られる事もなくなり、以前にもまして機嫌が良くなっている。
取っていたお菓子を霊夢たちに食べられてしまい、怒り心頭だったルイズにアドバイスしたおかげもあってかその扱いは大分良くなっていた。
偶に口を滑らせて霊夢やルイズに投げられたり叩かれたりはしているが、そこは以前と変わりない。


魔理沙が森でキメラを倒した日から随分と時間が経っているものの、あれ以来身の回りで怪しい事は何も起こっていない。
ただ、霊夢が倒した虫キメラの事に関しては学院内でちょっとした゛怪事件゛ということで話題になっていた。


霊夢が学院内に現れたキメラを倒した日から翌日…
衛士たちが全員気を失っているところを給士が見つけた事と、その衛士たちの宿舎で学院の教師が一人気絶していた事。
そして、女子寮塔の事務室が何者かによって滅茶苦茶に荒らされ、その部屋の前で当直を務めていたミセス・シュヴルーズが気絶していた事。
計三つの゛怪事件゛が知らぬ間に起こっていた事が発覚したのである。

教師達はすぐさま衛士や事務室にいた同僚から事情聴取をしたのだが、誰一人気絶する直前の出来事を覚えていないのだという。
また何かを盗まれたという形跡も無く、被害があったのは女子寮塔の事務室だけという不自然性。
この不可思議極まりない事件を学院側は王宮に報告するかどうか今も議論の最中なのだという。
そして、この魔法学院という一種の生活空間内で起こった怪事件に心躍らされた生徒達の間で、数十種類の的はずれなうわさ話が飛び交った。
ある者が学院に貴族くずれの賊が侵入したという話しをすると、ある者は夢魔がやってきて学院を飛び回ったという話で対抗する。
そんな感じで、突拍子もない話が伝言ゲームのように生徒たちの間で移動していた。

しかし…彼らの説はあまりにも的はずれで、誰も真実に辿りつくことはない。
学院で゛ゼロ゛と揶揄される少女の使い魔が、人を襲う怪物を退治したという真実に。
そして、少女の恩人として学院で暮らす事となった黒白の少女が使い魔と同じ世界から来た異邦人だという事にも。


「…やっぱり、平和にお茶を飲めることが一番大切なことね」
霊夢はひとりそう呟き、再び湯飲みを口もとに近づけようとしたが、ある事を思い出した彼女はその手を止める。
それは今の今まで記憶の底に沈んでいたたった一つの疑問であった。
彼女は口もとに近づけていた湯飲みをテーブルに置き、向かい側に座る魔理沙へ向けて話しかけた。

「ねぇ、魔理沙。少し聞きたいことがあるんだけど?」
突然自分の名前を呼ばれた魔理沙は目を丸くしつつも、霊夢の方へ顔を向ける。
そして目の前にいる巫女が、さっきとは打って変わってちょっと真剣そうな表情を浮かべているのに気が付いた。
「なんだよ霊夢?そんな顔して私に聞きたいことがあるだなんて…」
「まぁ聞きたいことが一つだけあるわ」
最初に一言だけそう言うと霊夢は一呼吸置いてから、脳内の疑問をそのまま質問に変えてこう言った。


「この前の森で怪物を退治した後、誰が私たちを学院まで連れてきたのよ?」


霊夢の口から出たその質問に、魔理沙は数秒ほど黙った後キョトンとした表情を浮かべた。
「あれ?お前に話してなかったっけ?」
「話って何よ?それ自体初耳だわ」
まるで自分一人だけ置いてけぼりされたような感じがした霊夢は、魔理沙の言葉に突っ込んだ
何処か冷たさが見える彼女の言葉に、魔理沙は苦笑いで返しつつポン、と手を叩いた。
「…あぁそうだ、お前が目を覚ました後に話そうとかな~って思ってたんだよ」
「だったら何で話してくれなかったのよ」
まるで噛みついてくる野良犬のように突っかかってくる巫女に、魔理沙はいやいやと手を振りつつ話を続ける。
「いや~だってあの時のお前はなんかボーッとしてたし、また後にしようか…って思ってそのまま眠って…」

「忘れたってワケ?」
魔理沙が言おうとした最後の一言を霊夢が代弁する。
彼女の顔には、怒りよりも若干の呆れたと言いたげな雰囲気が漂っている。

「まぁそうなるな」
霊夢の冷たい視線に、魔理沙はポリポリと頭を掻きつつそう言った。
その顔には霊夢とは違い薄い笑みを浮かべている。どうやら反省の意思は無いらしい。
まぁいつもの事だと思いつつ、溜め息をついてから霊夢は再度口を開く。
「まぁ、アンタの事だからそんなので怒りはしないけど――……ん?」

彼女が言い終える前に、ふとドアの方からノックの音が聞こえてきた。
一瞬ルイズが帰ってきたのかと思ったが、それはないと否定する。
この部屋の主である彼女が、普通自分の部屋のドアをノックするという事はないだろう。
じゃあ一体誰なのかと首を傾げていると、腰を上げた魔理沙がそのままドアの方へと歩いていく。
「はいはーい!どちらさま…って…」
そしてドアノブを捻り、躊躇いもなく開けるとその向こうにいた相手と顔を合わせた。

「あぁお前か!丁度良い所で来てくれたぜ」
丁度いいところで来てくれた?黒白の口から出た言葉に霊夢は更に首を傾げそうになった。
魔理沙とドアの向こうにいる誰かが一言二言ほど言葉を交えた後、彼女が霊夢の方へとその顔を向ける。

「まぁお前も顔くらい知ってると思うが、コイツが森の中にいたあたし達を助けてくれたんだよ」
そう言って魔理沙は右手でドアを開き、その先にいた少女の姿をさらけ出した。
印象的な雰囲気漂う眼鏡にボーッとしたような表情は何処か冷たさを感じる。
左の手で分厚い本を抱え、右の手で自身の身長より高い杖を持っている。
身長はかなり低い方で、魔理沙と比べてもかなりの差があった。
そして何より目にはいるのが、青空のように爽やかな水色のショートヘアーだ。
まるで雲一つ無い空の色をそのまま髪の毛に移植したかのような輝きは、もう芸術といっても良い。



霊夢は知っていた、この特徴が全て当て嵌まる少女の名前を。
「あんたは確か…タバサ、だったかしら?」
確認するかのような霊夢の言葉に、タバサはコクリと頷き――部屋の中へと足を踏み入れた。





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