普通の人なら丸一日かかる量の薪割りを、わずか一時間程度で終えた厚志は、そろそろルイズを起こした方がいいだろうと思い、シエスタに洗濯物をルイズの部屋まで届けてくれる様に頼むと主人が眠っている部屋へ戻った。
部屋に戻ってみるとルイズは、朝部屋を出る時と、全く変わらぬ寝顔で寝ているのであった。フッと軽く笑いながら厚志はルイズに声をかける。
「ルイズ君。もう起きる時間だぞ!」
「うーん?……キャア!あんた誰よ!」
目覚めたら、いきなりマッチョが自分の部屋にいる事にルイズは驚愕した。
「ヒドいなあ。昨日、君が召喚した使い魔だよ。」
ああそういえば…と、ルイズは昨日の使い魔召喚の儀式で彼を召喚した事を思い出した。
「もういきなり驚かさないでよ!変質者か泥棒だと思ったじゃない!」
「スマンね。できるだけ優しく声をかけて起こしたつもりだったんだけどね。まあこれからは慣れてもらうしかないよ。」
ルイズは明日から自分で目覚めようと誓うのであった。慣れる前に朝一で驚いて心臓が止まってしまうんじゃないかと感じていたからである。
「じゃあ、着替えと下着を取って。そこのタンスに入ってるわ。」
「これかい?」
「そうよ。丁寧に扱ってよね。あんたじゃちょっと力入れただけで破りそうだし。」
「はいはい。」
厚志は洋服タンスからルイズの下着と着替えを取り出す。
「ほら着替えさせなさい」
「ルイズ君。貴族は自分で着替えもできないのかい?」
ルイズのあまりに無茶な命令に厚志はあきれ気味に質問するのだった
「そんなわけ無いじゃない!ちゃんと出来るわよ。あんたは私の使い魔なんだからそれくらいしても当然なのよ。それと他人の前では「君」は止めなさいよ。様付けで呼びなさい!。それからあんたは私の使い魔なんだから、私の言う事は絶対服従しなさい!」
どうやらルイズは厚志を使い魔として教育・調教していくつもりらしい。
一方厚志は彼女を「守る」事には賛成だが、自分の生き方まで変える気は全く無いので、彼女にそこだけは譲れないと話すのである。
「「様」付けまでは了承しよう。ただし自分の事は自分で出来てもらわなければ、私も使い魔としてのやりがいを見いだくなる。私は君を命をかけて守る!君も私の主人に相応しい存在になってもらわなければ、使い魔の契約は破棄させてもらおう!」
少し強めの言い方で、ルイズに警告をする。
冷酷な様であるが高田厚志という人は優しい心を持っているが、いざ戦いとなれば徹底的に時には非情にもなれるくらい厳しい人である。
ルイズにも成長して欲しいと思うからこそ、時には冷酷に優しく見つめていこうと誓う厚志であった。
冷酷な様であるが高田厚志という人は優しい心を持っているが、いざ戦いとなれば徹底的に時には非情にもなれるくらい厳しい人である。
ルイズにも成長して欲しいと思うからこそ、時には冷酷に優しく見つめていこうと誓う厚志であった。
「ひっ!わっ、分かったわよ!……何よ。使い魔のクセして…」
ルイズはちょっと脅えながら、ブツブツと自分で着替えを行うのであった。
ルイズはちょっと脅えながら、ブツブツと自分で着替えを行うのであった。
「えーとルイズ様?今日の予定は?」
ルイズの着替えを見ない様に厚志は声をかける。
「この後はまず朝食よ。その後は午前中は自分の召喚した使い魔を連れて共に授業をうけるわ。午後からは普通の授業があるくらいね。」
ルイズの着替えを終え、朝食をとるべく食堂へ向かう際にルイズの部屋と、真向かいの部屋の住人と対面する
「あら、おはようルイズ。」
「おはよう、ミス・ツェルプストー。」
ルイズの態度からこの赤毛の女性との仲は、あまり良くないようだなと感じた厚志であった。もっともルイズだけが毛嫌いをしているように感じた。女性はむしろ好意をもってルイズに接しているようだ。
「はじめまして。ミスター?
」
」
「私は高田厚志と申します。ルイズ様の使い魔をやらさせていただいております」
とりあえずルイズとの約束を守るため、使い魔として挨拶を行う。
「あらどこかの誰かとは違って礼儀正しいはね。私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストーていうの、長いからキュルケって呼んでくださる」
「ちょっと!ツェルプストー!人の使い魔を誘惑してるんじゃないわよ!」
どうやらこの二人のケンカは日常茶飯事らしく、他の生徒は慣れたように2人をかわして食堂にむかうのであった。
「あー。2人とも早くしないと朝食がとれないよ?」
厚志は2人をなだめて、食堂へ向かう。
「あなた朝食はどれくらい食べるの?結構大食でしょ、その体格だし。」
ルイズは厚志の食事について心配していた。事前に少し多めの用意を頼んであったが、足りないかもしれないので、彼の食事について聞いてみた。
「栄養バランスがよければなんでも大丈夫だよ。わがままをいえばプロテインが、あればなおいいんだけど。」
「プロテイン?なによそれ?うーん、そうだ!厨房へ行って料理長に聞いてみましょう。多分あなたと同類だから。」
「同類?」
「行けば分かるわよ。」
食堂の厨房に入ってみると、やたら威勢のいい声が厨房内を飛びかっている。
「おら、なにやってんだ!鍋が吹いちまってるだろうが。」
「バカやろー!もっと腰を入れろ!そんなへっぴり腰で旨いもんが作れるか?」
明らかに他のコック達よりでかく厨房をしきっている人物に声をかける。
「ちょっとマルトー親方?私の使い魔に朝食をあげたいんだけど?」
「食事なら全部用意してあったはずだが、何か足りないんですかい?」
男はトリステイン魔法学園の厨房の主マルトー、厚志並ではないが腕の太さは丸太程あり、厚志と共通の何かが感じられる人物である。マルトーは厚志を見て
「兄ちゃんいいガタイしてやがんな!ああそういえば平民の使い魔を召喚した貴族さまがいるって聞いたがまさかヴァリエール嬢のことだったんですか。」
マルトーは夜の勉強の為に、たびたび夜食を頼んでくるルイズと顔見知りである。貴族ながらも努力しているルイズに対しマルトーは認めているのだった。
「そうよ。じゃ私は食堂で食べてくるし、後は親方に聞きなさい」
マルトーは夜の勉強の為に、たびたび夜食を頼んでくるルイズと顔見知りである。貴族ながらも努力しているルイズに対しマルトーは認めているのだった。
「そうよ。じゃ私は食堂で食べてくるし、後は親方に聞きなさい」
ルイズは食堂の方に向かい、厚志はマルトーに食事について注文をした。
「そのプロテインてのは分からねえが、要は栄養材の一種だろ?ツテを頼って仕入れといてやるよ。他ならぬヴァリエール嬢ちゃんの使い魔さんの頼みだ。何とかしてやるよ。」
「ありがとうございます。じゃあ、もう時間もあまり無いですし、卵を複数個と大ジョッキ貸してくれますか?」
厨房内は一瞬で静まり返る。他のコック達は冷や汗が止まろなくなり、メイド達は気分がわるくなったと厨房から逃げるように出ていった。
そんな中なぜか満面の笑みを浮かべジョッキを2つと大量の卵を用意する。
そんな中なぜか満面の笑みを浮かべジョッキを2つと大量の卵を用意する。
「お!分かってるね~。俺も朝一はこれが無いと始まらねえんだよな。周りから気分が悪くなるから止めてくれって言われてるんだが、ついに分かり会える同士と出会えたか!」
2人は慣れた手つきでジョッキに生卵を次から次と入れ、ジョッキ満タンになった所で、「体に乾杯!」と生卵を一気飲みしていくのであった。
周りのコック達はそんな彼らを怪物でも見るのように気分悪げに溜め息をつくのであった