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HUNTER×HUNTER×ZERO-03



翌朝、コルベールはゴンとキルアを連れ、学院長室まで来ていた。
彼らがここへ来たのは、ゴンとキルアが院内を探索する許可を得る為である。
コルベールがドアを叩き、学院長へ会いに来た旨を伝えると、ドアの向こうから女性の声が聞こえた。

「……お入り下さい」

その声と共にドアが開く。
ドアの向こうには眼鏡をかけた緑色っぽい髪の女性が立っていた。
落ち着き払った佇まいからは聡明そうな印象を受ける。

「こちらです」

三人は彼女に室内へ通されると、速やかに中へ入っていった。

「オールド・オスマン。ミスタ・コルベールと例の子供たちです」
「うむ、ご苦労。ミス・ロングビル」

彼女が訪問者について報告すると、部屋の奥から老人の声が飛んできた。
その言葉から、三人を部屋の中へ入れてくれた女性はミス・ロングビルという名前らしい。
ゴンたちが部屋の中へ入ると、奥の方で何やらキセルを吹かしている老人が目についた。
この老人こそが、昨日コルベールの言ったオスマン学院長であることはゴンとキルアにはすぐに分かった。
オスマンはキセルをひと吸いした後にそれを机の上へ置くと、二人を見て呟くように言った。

「……ふぅむ、平民の子供の使い魔、とはのう」

オスマンはじっと二人を見つめる。
まるで、二人を見定めているかのようであった。
と、コルベールが口を開く。

「オールド・オスマン。彼らは使い魔では……」
「皆まで言わんでええ。大体のことは見ておったから知っておるわ」

オスマンはコルベールを一瞥すると、そう言ってのけた。
窘めるような厳しい口調や視線では無かったものの、その何とも言えぬ雰囲気にコルベールは思わず黙り込んでしまう。
と、今度はキルアが口を開いた。

「なあ、爺さん」
「こ、こら!口を慎みなさい!」

キルアの不遜な物言いにコルベールが慌てて口を挟む。
すると、オスマンは特に不機嫌な顔もせずに言った。

「別にいいわい。儂は気にせんよ」
「だってさ」

キルアがオスマンの言葉に乗っかってそう続けると、コルベールは渋々といった感じで引き下がっていった。
キルアは改めてオスマンへ問い掛ける。

「爺さん、見ていたってどういうこと?」
「どういうこと……とは、どういうことかね?」
「あの場に爺さんの気配なんて無かったと思うけど?」

ゴンとキルアが召喚された場所には、オスマンのような人物がいなかったのは確かであった。
故に「見ていたから知っている」という言葉には大きな意味が発生する。
仮にオスマンが絶のようなもので完全に気配を絶ち、二人にさえ感づかれずに側にいた。
となれば、目の前の老人は二人にとって脅威となる可能性を秘めていることになる。

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。気になるかね?」

オスマンはまるでいたずらを楽しむ子供のように笑ってみせた。
対してキルアは何も言わずにオスマンを見つめている。
底の見えない目の前の老人に、少し身構えているようであった。

「うん!知りたい!」

と、そんな雰囲気を壊すくらい大きな声でゴンが二人の間へ割り込んだ。
ゴンの瞳は好奇心で満たされ、全身からワクワクしている空気が隠すことなく溢れ出ている。
そんなゴンの裏表のない言葉に、オスマンは少し面食らったようであったが、すぐに微笑んだ。

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。ええじゃろう。これを見なさい」

そう言うと、オスマンは部屋の中にある大きな鏡を杖で指し示した。
ゴンとキルアが鏡を見ると、オスマンは何やら呪文のようなものを唱える。
すると次の瞬間、鏡の中に昨日二人が召喚されたあの広場が映し出された。
二人は食い入るように鏡を見つめる。

「な、何だよこれ!?」
「すっげー!」

キルアは驚き、ゴンは歓声を上げる。
そんな見た目通りのリアクションをする二人を見て、コルベールは改めて彼らが子供であるということを再確認した。
オスマンは高らかに笑う。

「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。これは遠見の鏡と言ってのう。この場にいながらして、学院内のありとあらゆる場所を覗き見ることが出来るんじゃよ」
「へー、凄いね」

ゴンは素直に感心している。

「遠見の鏡……ね」

一方でキルアの瞳には警戒心が浮かんでいた。

(……つまり、何時でも俺たちを監視出来るってことか)

目の前の老人はこうしてその鏡の力を見せつけることにより、学院内で二人が何か良からぬことをしないように釘を刺したのだ。
でなければ、こんなにあっさりとネタバレする筈がない。
オスマンの言葉をキルアはそう解釈した。

「……無論、儂とて毎日これを使っているわけではないぞ。誰にも秘密というものはあるからのう。使うのは基本的には有事の時だけじゃ」
「へー、つまり今この時ってこと?」
「ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ。それはどうかのう?」

キルアの思惑を知ってか知らずか、オスマンはそう惚けてみせた。
そんなオスマンの態度に、キルアは何も言葉を発しなかった。
ただじっとオスマンを見つめている。
見る人が見れば、二人の間には何か暗いものが渦巻いているように見えたかも知れない。
一触即発とは違うものの、二人の間には何か危ういものを感じさせる何かがあった。

「……オホン。あー、オールド・オスマン。本日私たちが来たのは、彼らの学院内の行動についてなのですが」

コルベールが無理矢理その空気に割って入り、本題へと戻した。
元々、ゴンとキルアの学院内探索の許可を得に来たのである。
ここでオスマンの機嫌を損ね、許可が貰えなくなってしまっては意味がない。
オスマンの真意はともかく、キルアの行動は特に読めないので、話がこじれる前に本題へ戻したのはコルベールのファインプレーであった。

「……ああ、そんなことかね。別に問題はないよ」

オスマンはそう言って、チラッと遠見の鏡を見た。

「学院内は何処でも自由に見て回るといい」
「ありがとう!オスマンさん!」

ゴンがそうお礼を言うと、オスマンはニコッと笑った。
方やキルアは釈然としない表情ではあったが、それ以上オスマンへ食い下がるようなことはしなかった。
そんなキルアの様子を見て、コルベールは何事も起きなくて良かったと胸をなで下ろす。
ここで争いごとが起きるのは双方にとって良くはない。
コルベールがチラッとオスマンの方を見ると、彼はゴンとキルアを見ながらただニコニコと笑っていた。

(……流石はオールド・オスマン、といったところか。伊達に学院を預かっているわけではない)

子供とはいえ得体の知れぬ存在であるゴンとキルアにも余裕をもって対応する。
普段は飄々とした好々爺であるが、こういう時に動じないのは流石だとコルベールは心の中でオスマンに賛辞を送っていた。
こうして、ゴンとキルアの学院長室訪問は何事もなく終わり、二人は学院内の探索の許可を無事得ることに成功したのであった。




「では、失礼いたしました」

コルベールはそう言うと、二人を連れて学院長室を後にした。
彼らがいなくなったことを確認すると、オスマンは大きく息を吐き、額の汗を拭う。

「どうされましたか?」

先程まで余裕をもっていた筈のオスマンの急変。
思わず、ロングビルはオスマンへ尋ねる。
オスマンは軽く深呼吸してから答えた。

「……あの銀髪の少年。儂を殺す気満々じゃったぞ」
「!!」
「正確には、その気になれば何時でも殺せた……かのう。仮に儂らが何か彼らを阻むような真似をしていたら、
 儂もコルベール君も……もしかしたら君も問答無用で殺されとったじゃろうな」
「そんな!?……彼はまだ幼い子供ですよ!?」
「じゃから、恐ろしい。あの子の力もそうじゃが、それよりも恐ろしいのは殺すことを躊躇していないこと。
 ……一体、どんな境遇に生まれれば、あんな氷のように冷たい目が出来るんじゃろうな」

オスマンは遠い目をしながら、しみじみとそう言った。
ロングビルも何か思うところがあったのか、複雑な顔をしている。
暗殺一家に生まれ、幼い頃から人を殺すことを叩き込まれて育ってきたキルアの素性など知る由もない二人であったが、コルベール同様、彼らなりに感じたものはあったのだろう。

「……まあ、少しだけじゃが彼と話してみて、かなり利口な子じゃということは分かった。
 遠見の鏡の存在を知った以上、理由なく暴れるような真似はせんじゃろうて」
「……だと、よろしいのですが」
「なあに、いざとなれば眠りの鐘があるわい」
「秘宝を……あんな子供に……?」
「子供ではないよ、ミス・ロングビル」

そう言ったオスマンの目は、一切笑っていなかった。
普段は飄々としているだけに、そのオスマンの真剣な態度がことの大きさ、真実味を証明しているようであった。

「……心得ました」
「うむ、何時でも使える準備をしておいてくれ。……そんなことよりも」
「はあ」
「……また白かね」
「……………………」




学院長室から出た後のゴンとキルアは、コルベールに連れられて学院内の図書室へと向かっていた。
やはり調べものをするのであれば、資料や文献がたくさん貯蔵してある図書室というのが定石である。

「許可貰えて良かったね、キルア」
「ああ」

道中、ゴンが話しかけてもキルアはそうやって気のない返事をするだけであった。
思わずゴンは首を傾げる。

「どうしたの、キルア?さっきから不機嫌そうだけど」
「……ゴン、お前分かってる?」
「何を?」

ゴンがそう聞き返すと、キルアは少しだけ声を潜めた。

「……俺たちは今もあの鏡で監視されてるかも知れねーんだぞ?これが不機嫌でいらずにいれるかよ」
「でも、オスマンさんも滅多には使わないって言ってたし……」
「どうだか。……それにあれ以外にも何か奥の手があると思うぜ?」
「え?何で分かるの?」
「勘に決まってんじゃん」
「……………………」
「……何にせよ、ありとあらゆる可能性を考えておいた方がいいってのは確実だね。
 あんな鏡が有りなら、もっとえげつないもんがあっても不思議じゃないからさ。
 いざって時、不測の事態に陥らないためにもさ」
「でも、オスマンさんはそこまで悪そうな人には見えなかったけどなあ」
「いいや、ああいうのが実は腹の底じゃ何考えてるか分かんねーもんだぜ?」
「そういうものなのかな?」
「そういうもんなの!」

今の二人の様子だけを見れば、仲の良い子供たちが話しているだけにしか見えない。
だが、その会話の内容は子供が話すそれではなかった。
こっそり聞き耳を立てていたコルベールは改めて二人を恐ろしいと感じていた。
子供の兵士、のような存在はこの世界においても珍しい存在ではない。
この学院にいる生徒たちも戦争になれば戦場へ駆り出されることだってあるだろう。
彼らはメイジであり、戦力なのだから。
だが、そういった者たちと目の前の二人は明らかに別物だとコルベールは分かった。
共にいたのは僅かな時間だが、彼らの死生観やあらゆるものに対しての意識といったものは、自分たちのそれとは根本的に異なっている。

(一体、彼らは何者なのだ……?)

コルベールは知らなかった。
ゴンとキルアがハンターであるということ。
そして、ハンターというものが何であるかを。




「……ここが図書室だよ」

ゴンとキルアがコルベールに案内された部屋は、最早図書室という規模ではなかった。
図書館と言って差し支えのない程に広く、本や資料がたくさん貯蔵してあり、一目でその全てを把握するのが困難に思えるくらいである。

「うわー、広いよキルアっ!」
「兄貴のコレクションと同じかそれ以上ってところか」

ゴンとキルアは口々にそう言うと、図書室内を一望した。
と、その時コルベールが突如二人へ声を掛ける。

「ああ、すまないが、私はこれからちょっと用事があってね。暫く君たちから離れないといけないんだが……」

皆まで言う前にゴンがコルベールの方へと振り向く。

「行って来ても大丈夫だよ、コルベールさん」
「本当に大丈夫かい?中は広いし、それに……」
「大丈夫だって。オッサン意外と心配性なんだな。探し物くらい自分たちで出来るぜ?」

キルアもそう促すと、コルベールはこくりと頷いた。

「そうか。ではすまないが少し行ってくるよ。何か分からないことがあればまた私の部屋へ来てくれ」

そう言って、コルベールは二人の元から去って行った。
コルベールがいなくなると早速、ゴンとキルアは図書室内の本をそれぞれ適当に手に取ってパラパラとめくり始める。
そして、すぐに落胆して本を棚に戻した。

「読めない……ね」
「……まあ、予想はしていたけどさ」

本の中に書かれていた文字は二人の全く知らないものであった。

「言葉が通じるなら、文字も読めるんじゃないかなって期待してたんだけどな」
「コルベールさんにいてもらった方が良かったね」
「でも、あのオッサンがいたら色々と面倒臭いからなあ。ただでさえ、あの爺さんに監視されてるかも知れないってのに、
 これ以上監視の目が増えるのは流石に得策じゃないだろ」
「じゃあ、こっちはどうするの?文字、全然読めないよ?」
「るっせーなあ。今、考えてるっつーの!」
「キルアはいつもそうやって後先考えないんだから!」
「ハァ?てめーにだけは言われたくねーよ!」

言い争っている内に二人の声は段々と大きくなっていき、やがて図書室内に響き渡っていた。
そのまま二、三言葉を交わしていると、二人の間に別の誰かの声が割って入る。

「……静かに」

第三者の闖入に二人は思わず言い争いを中断する。
声のボリュームは小さかったが、二人の耳にはその声が確かに届いていた。
声のした方へ視線を向けると、そこには眼鏡をかけた少女が一人、黙々と本を読んでいるのが目に入った。
少女は離れていても分かるほど小柄で、外見も幼く見える。
しかし、纏っている雰囲気は何処か大人びていて、二人よりも年は上なのだろうと感じさせていた。
少女は二人を見ずにもう一言、ボソッと呟いた。

「……ここは図書室」

窘めるような声。
割と早朝だったこともあり、誰もいないと思っていた二人は少し驚いたのと同時に先程までの自分たちを省みる。

「あ、ごめんなさい。図書室では静かに、だね」

ゴンが素直に謝ると、少女は二人を見ずにこくりと頷き、読んでいた本のページを一枚めくった。
ゴンはキルアの方へ視線を戻す。

「ほら、キルアのせいで怒られた」
「あぁ!?俺だけのせいかよ?」
「キルアが怒鳴るからでしょ?」
「てめーは……!」
「………………!!」

再び少女の抗議。
今度は言葉を発さなかったが、怒っているというニュアンスは二人にも伝わっていた。
どう見ても自分たちに非があるので、二人はそのまま口を紡ぐ。
それを確認すると、少女はまた本のページを無言で一枚めくった。

「……とりあえずどうするの?キルア?」
「……今考え中」
「……あ、そうだ!」

と、ゴンは突如歩き出し、先程二人を注意した少女の元へ向かっていった。

「おい、ゴン!」

キルアが呼び止めるよりも早く、ゴンは少女へ声を掛けていた。

「ねえ、ちょっといい?」
「……読書中」
「うん、分かってる。でも、ちょっとだけ話を聞いて貰いたいんだけど、ダメ?」
「……………………」

少女は本から目を離すと、その視界の中に初めてゴンの姿を入れた。
そして、少し間を置いてから口を開いた。

「……聞くだけなら」
「本当!?有難う!!え~っと……」
「タバサ」

少女はそう自分の名を告げた。
先程までの呟くような感じではなく、ハッキリと。

「うん!有難う、タバサ!」

ゴンは屈託のない顔でそうお礼を告げると、すぐにタバサへ尋ねた。

「俺たち、ここの本が読みたいんだけど文字が読めなくて困ってるんだ」
「……………………」

ゴンからそう言われた少女は徐に立ち上がると、近くの本棚から一冊の本を取ってきて渡した。
その本にゴンが目を通すと、それは絵本であった。
絵と文字が対になっていて、どうやら幼児にものを覚えさせるもののようである。

「……それを読めば、少しは文字を理解出来るようになる」
「本当だ!有難うタバサ!」

ゴンはぺこりと頭を下げると、その本を持ってキルアの元へと戻っていった。
そのゴンの背中を少し見つめた後、タバサは再び読んでいた本へと視線を戻す。
静かな図書室内に、またもページをめくる音が響き渡った。

戻ってきたゴンをキルアは窘めるように睨む。

「おい、ゴン。不用意な接触は避けろよ」
「ごめん、キルア。でもこれで文字の件は解決出来そうだよ!」

ゴンが絵本をキルアに見せて悪びれずに言った。
キルアは「ハァ……」とため息を吐く。

「ったく、あの女もあのジジイの差し金かも知れねーだろ。それに……」

と、すぐにキルアはゴンへ耳打ちした。

「……あの女、多分裏で色々やってるぜ。殺しとかさ。そういう匂いがする」
「え?そうなの?」
「……ああ、そういうのは分かるんだよね、俺。でもまあ、アマっぽいし、
 俺とかに比べたら大したことなさそうだけどね。こっちは曲がりなりにもプロだしさ」
「ふうん」

タバサが実際にキルアの言う通りなのかを知る術は無かったが、ゴンはそうなんだろうと納得していた。
実家が暗殺稼業を営むキルアだからこそ、きっと感じ取れたことなのだろう。
ゴンもタバサとは少し会話しただけであったが、彼女からは何処か普通とは違うものを感じていた。
日は浅いものの、ハンターとしての勘のようなものがゴンにも芽生えつつあるのであろう。

「キルアが言うならそうなんだろうね」
「……しかし、あんなのが普通にいるとか、ここ本当にただの学校か?」
「魔法学校だよ、キルア」
「ああ、そうだったな」

キルアは少し真剣な顔になる。

「ゴン。取り敢えず気を引き締めておけよ。何が起こるか分かんねーかんな」
「うん、わかった」

先程まで言い争っていたのが嘘のように二人はお互い頷き合うと、タバサから渡された本を開いて二人で読み始めた。



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