あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのペルソナ-32


ルイズは目をかっと見開き、始祖の祈祷書を片手に杖を高々と突き上げた。
杖先から球が生まれる。杖先を中心にその球は大きくなっていく。
広がりとともにその拡大速度も遅くなっていき、戦場を全て、敵の使い魔たちを全て包み込んだところで完全に停止する。
トリステインを襲った爆発を彷彿とさせる光球、ジョゼフの作り出した小型の太陽と異なるのは殺さないという選択ができることだ。
破壊するものは自分の敵である三種の使い魔。
そして光球は力を放つ。
目が焼けてしまうのではないかというほどの光量と見た目以上のエネルギーを内包した光球はけれど人を焼くことはなく
ヴァリヤーグ、ヨルムンガンド、火竜の命を奪い取る。
まぶしさに目をつぶった人々が目を開けると視界に入ったのは信じがたい光景だった。
そこには先ほどまで殺戮を行っていた異形の怪物たちが命を失い地面に横たわっていた。
重厚な鎧に身を包みながら素早く槍を振り回していた姿も、
どんな攻撃もまったく寄せ付けず拳を下ろし足を振るい人間を木っ端のように扱っていた姿ももはやそこにはない。
空には青い空が広がるばかりで炎の脅威を具現化した竜は全て消え去っていた。
彼らは何が起きたか理解できずに棒のよう立つばかりであった。
だが徐々に彼らが死地を脱したということに気付き出すものが増え、誰からともなく歓声が上がる。
戦いの剣戟、怒号、悲鳴にも負けないほどの大きな大きな生を得たことへの大きな喜びの声。
平民も貴族もない。誰も彼もが抱き合って勝利を、生の喜びを噛み締めた。
「っ」
エクスプロージョン
“爆 発”を放ち放心したように立っていたルイズは膝をついた。
「大丈夫、ルイズ!?」
ルイズの近くにいた完二とキュルケ、クマはルイズに駆け寄った。
「大丈夫……ただ、精神力使い過ぎただけで。もう魔法は何も使えないわ」
ルイズは疲労が明らかな顔に笑みを浮かべた。
「ヘトヘトなのはみんな同じよ」
安心したキュルケは笑い返す。
「オレももうこれ以上はムリだぜ」
「クマももう魔法使えないクマよー」
ぐでーという擬音が似合いそうなほど疲れた様子をしておどける。
人々が喜びに沸き立つ大音声の中、さほど大きくない声が聞こえてきた。
「おーい、みんな大丈夫かー?」
しかしルイズたちの中でそれを聞き逃したものはいなかった。
「花村センパイ!」
「ヨースケ!」
陽介は片手を上げて「よう」と応えた。
カステルモールに肩を貸してもらって歩いており、目に見えて疲労している。
「大丈夫ッスか!?」
「大丈夫じゃねーかも……」
陽介はそういいながらも心配させないようにか笑っている。
「ヨースケ殿は我々が攻撃できるように魔力尽きるまでヨルムンガントに魔法を使い続けました。
そして魔力が尽きたあとも単身で戦い続けたのです」
「ブレイブザッパーで何体か倒したんだけどな」
陽介は疲労を隠せないながらも笑みを浮かべた。
ペルソナの物理スキルは精神力ではなく体力を消費して使うものだ。
物理最強クラスのブレイブザッパー、ヨルムンガントを倒すほどの威力を持つということはつまりその消費も並ではないということだ。
陽介は今、精神力も体力も使い切りまさに疲労困憊という状態だ。
「つーか悪かったな。ヨルムンガントを防ぎきれなくて……」
「花村センパイ……アンタ男だぜ!」
「へっ?」
申し訳ないというように翳った顔はキョトンとしたものに変わる。
「そんなになるまで戦うなんてすごいじゃない。見直したわ」
キュルケにもそう言われ陽介は面はゆくなってしまう。
「あ、いやでも……」
「ヨースケはホメられ慣れてないクマねー。いつもザツな扱いだから。プププ」
「うっせーよ!」
笑いが起こる中、二体のペガサスが飛来する。手綱を握っているのはガリアとトリステインの女王だ。
ペガサスの背から飛ぶように下りてアンリエッタはルイズへと駆け寄った。
そして服が汚れることなど気にせず自身も砂地に座り込むようにしてルイズに抱きついた。
「ルイズ!ルイズ!」
「ひ、姫さま!」
「ルイズ、ああ、ルイズ……わたしはどうあなたの働きに報いればいいかを知らないわ」
「そんな……もったいないお言葉」
もう一人の女王は彼女の友人と使い魔のもとへととことこと歩いていった。
「大丈夫?」
キュルケもルイズほどではないが疲労していたが友人の気遣いが嬉しくその顔に大輪の笑顔を咲かせる。
「ええ、もちろんよ」
そう。とタバサは安心したように言うとついっと顔の向きを変えた。
「ヨースケは?」
「もっ、クッタクタ。これ以上は無理だからな」
「そう」
スッとタバサは手を上げてカステルモールに寄りかかっている陽介の額に手の平を置いた。
「お疲れ様」
「ちょっ、撫でるって子供じゃねーんだから」
言葉では否定しながらも陽介は頭をなぜる手を払おうとせず、苦笑するだけだった。
ルイズがアンリエッタと抱擁し、陽介たちがタバサに労われる光景ををクマはじっと見ている。
「みんなお姫さまにねぎらってもらってるのにクマとカンジだけお姫さまが来ないクマ……」
「いや、しゃーねーだろ」
「クマもお姫さまに褒めて欲しいクマ!褒めて、撫でて、感謝のチッスー!」
「何言ってんだオマエ……」

誰もが戦いに勝ち、自分達は生き残ったのだと安心しきっていた。
へとへとの笑顔をしていたルイズもそうだった。
しかし彼女の体に緊張が巡る。慌てたように抱きしめているアンリエッタを突き放した。
突然の乱暴な行為にアンリエッタは驚く。
「ど、どうしたのですか、ルイズ?」
ルイズの顔は砂漠の向こうへ向けられている。
その表情は緊張からいつの間にか絶望になっている。
「うそでしょ……」
ただならぬ様子のルイズにみなは消え失せようとしていた心配という心象をあおられる。
「オイ!ルイズ、ナンだっつーんだいったい?」
ルイズはかすれたような声で言った。
「使い魔たちがまた現れてる……」
ジョゼフとビダーシャルの前には巨大な銀色の鏡のようなものが浮いていた。
それは使い魔がくぐるという召喚のゲートと酷似していた。
違うのはあまりにも大きすぎるということ、使い魔の前でなく使用者の前に姿を現していること、
そして一番の差異は一体の使い魔が通過しても消えないことだ。
使用者が消えろと命じるまでは使い魔を呼び出し続ける。
「なるほど、お前がすべての化け物どもは呼び出さなかったのは先の魔法を警戒してか」
「そうだ。エクスプロージョンの前にはどんな防御も、数すらも意味はない」
ジョゼフは新たに呼び出した火竜の一体の背に乗っている。当然、ビダーシャルはそれに乗ることをよしとせず空に浮いている。
「おれもこれほどの大規模な魔法を使ったことはないがな。
 いったいどれほどの年月を待てばこれほどの力を出せるものやら。1年か?それとも10年か?」
だが、いずれにしろ。
「もう魔法は出せない」
火竜は空を飛び、ヨルムンガンドとヴァリヤーグは地面を踏みしめアーハンブラ城へと列をなして向かう。
彼らを無尽蔵のごとく呼び出す巨大な銀色のゲートは全てを遠く東方の地から呼び出し尽くすまで消えない。
ルイズの言ったことを理解するまでに完二たちは時間と努力を必要とした。
知りたくないことを理解することを拒み、そして理解すること自体が彼らの精神に負荷をかけた。
「それは本当?」
最初に衝撃から立ち直ったのはタバサだ。だがその声には冷静な彼女らしくなく焦燥の色が含まれている。
「本当よ」
ルイズは地面に座り込んで地面を見つめている。
「ど、どんくらいだよ!?」
「数を増やし続けてるように感じる……。たぶん、さっきと同じくらいか、それより……」
ルイズの言葉により、重い沈黙が流れる。絶望が形をなして見えない重りとして彼らに押しかかったかのようだ。
誰か何かを言おうとし、口を閉じということをしているとき、兵たちが急にざわめき始めた。完二たちはバッとサハラの向こうを見る。
地平線に現れたのは赤い一つの点、点は空に浮かんでいいきながら徐々に数を増やし、空を染め上げていく。
さらに空へと上がらず地を動く赤とは違う大きな金属光沢、そしてそれより小さな影が現れてきた。
それは砂漠の太陽に焼かれた砂の色を隠していく。
数を増やしていく敵を見ながら完二は覚悟を決めた。
「姫さん、ルイズを連れてってやってくんねえか?」
「カンジさん……」
アンリエッタは彼の顔を見つめた。そして彼の固い覚悟を見た。
「わかりました」
「あんがとよ」
「さあ、ルイズ。行きましょう」
アンリエッタは、地面にぺったりと座り込んでうつむいているルイズへと優しく手を伸ばした。
陽介とクマもショックから立ち直り、腹をくくる。
「危ねえから戻っててくれタバサ」
「キュルケちゃんもタバサちゃんと一緒に戻ってて」
タバサとキュルケは思いつめた顔で口をぎゅっと噛むように固く結んでいた。
「いやよ」
そう言ったのはルイズだった。
彼女は顔を上げて毅然とした顔でアンリエッタを見た。
「すいません、アンリエッタさま。その手をとることは出来ません。わたしはカンジの主ですから」
「な、おま、ナニ言って……」
ルイズはゆっくりと立ち上がる。途中、フラついてアンリエッタに支えてもらう。
「オマエ、フラフラじゃねーか!んなのでどーするつもりだ!」
弱りきった体を制しルイズはしっかりと完二の目を見据える。
「あんたこそどーするつもりよ?」
「オレぁ、戦うぜ」
「勝てるわけないじゃない。あんた死ぬ気?」
「んなわけねーだろ」
完二は当然というふうに答えた。
「そう、ならわたしも死ぬ気はないわ」
「おまえなあ……」
ルイズが使い魔を窮させているとき、タバサとキュルケは顔を上げた。
「わたしも戻らない。ここにいる」
「おい、タバサ!?」
「そうよね。ここで逃げるわけにはいかないわね」
「キュルケちゃん!?」
使い魔たちの主は顔を見合わせて笑った。
使い魔たちが困った顔をしているのに対照的だった。完二はルイズの決意への翻意を促す。
「つまんねえ意地張ってねえで……」
「意地なんかじゃないわ。兵たちが立っていられるのはどうしてだと思ってるの?
 虚無の魔法使いのわたしがさっき敵を倒したからよ。もしわたしが逃げたらきっとみんな逃げ出しちゃうわ」
完二は閉口した。たしかにルイズの言うことはもっともらしく聞こえた。
事実、ヨルムンガント・ヴァリヤーグが戦列に侵入したときはわれ先にと逃げようとしていた人々が今は再び武器を取り、杖をとっている。
ルイズが敵を一掃すると信じているから取れる行動であり、もしルイズが逃げ出せば先ほど以上の混乱が起こるのは目に見えている。
「……というのは今考えた逃げないもっともらしい理由よ」
しかし悪びれずルイズは種明かしをした。
完二も気抜けしてしまう。
「んだソリャ……」
ルイズはアンリエッタの支えを離れて完二に歩み寄って、顔を上げて使い魔の顔を見る。
「魔法使いが使い魔を置いて行くなんて許さないわ。誰が許してもわたしが許さない」
「んなこと言ったってオマエもう魔法だって使えねーんじゃねえか」
「覚えておきなさい。魔法が使えるから貴族というんじゃないわ。敵に背中を見せないものを貴族というのよ。
 背負っているものを放り出して逃げ出すものを貴族とは言わないわ」
紡ぐ言葉から、力強い瞳から確固たる決意を感じ取った。
「おまえ……」
「っ……」
ルイズは貧血のように足元をよろめかせた。
完二はそれを優しく受け止める。
「んじゃあ、離れんじゃねーぞ」
「当たり前よ。守ってくれるんでしょ?」
「ったく……」
かつて交わした約束を完二が忘れていないように、ルイズも忘れてはいなかった。
「たりめーだろ。任せとけ」
ルイズと完二の会話を見たタバサとキュルケも決心を固めたようだ。
「わたしもあなたのご主人さまとして残るわ。どうせタバサも同じでしょ?」
キュルケが笑いかけると、タバサもこくりと頷く。
「いや、タバサは王さまだろ。だったらこんなところで……」
タバサは首を振った。
「大切な仲間は見捨てない」
「タバサ……」
「そーいうこと。今さら固いこと言いっこなしよ」
「きゅ、キュルケちゃん……。クマ……クマ、よよよよよよよ」
「ほらほら、クマ泣かないで」
キュルケはクマの涙を拭う。
「シャルロットさまが残るならば私もここで戦わせていただきます」
「なんつーか悪いな、つき合わせちまって」
「ごめんなさい」
「いえ、このカステルモール、シャルロットさまに従うと決めておりましたから」
アンリエッタはじっとその様子を見ていたが、話がまとまったことを理解した。
「あなたたちという人は……」
「すいません、アンリエッタさま。アンリエッタさまはすぐにお戻りしてください」
トリステイン女王は少し考えごとをするような素振りをした。
「ユニコーンがあればいざという時、あなたを逃がすのに便利ですよね……」
「アンリエッタさま!」
アンリエッタは苦笑する。
「ごめんなさい、ルイズ。わたしはあなたを置いていけないわ。きっとわたしは王失格なのでしょうね……」
「わたしも同じ」
「あら、きっとわたしたち気があうのでしょうね」
タバサの言葉にアンリエッタは笑みで答える。
「アンリエッタさま……」
「あの時はわからなかった……ウェールズさまの気持ちも、今は少し分かる気がします」
彼女は誇りのために国と共に死んだ恋人を思い出している。
王族として、貴族として、国の誇りを持ちながら死んだ王子。
完二もその姿を思い出したが、彼はその人物と同じ運命を辿る気はない。
「死ぬ気はねーぜ」
「あら、もちろんですわ」
アンリエッタ女王は上品に答えた。
トリステインの新女王の気丈な態度に皆思わず笑みを浮かべた。
ルイズは今、窮地にありながら満たされた気持ちだった。
使い魔がいて、敬愛する女王がいて、仲間がいる。
彼女には絆があった。彼女を支え、強くする絆が――
手の中にあった始祖の祈祷書が強く光る。全員がその光に目を引かれた。
ルイズはページをめくる。
ルーンによる詠唱はいらない。ただ金色に光る文字を口にする。
       ワールド・ドア
「世界……世界の扉」

ゼロの旅人は世界にたどり着く。



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