あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

NEVER~新たなる戦いinハルケギニア-04


一夜明けて。

戦場での生活が身に染みている為か、太陽が昇り始めると同時に二人は目を覚ましていた。
生きている人間とは違って睡眠欲が少ないのもあり、こんな朝早くに起きても眠気は無く、すぐに行動を始めることが出来た。
森を抜け、昨日の内に見つけた街道へ出ると、道なりに進んで行く。
早朝も早朝だったということで、人の往来は全く無く、二人は幸か不幸か誰ともすれ違うことは無かった。
そのまま街道を歩くこと数時間。
ようやく、街の影らしきものが前方へ見えた。

「克己ちゃん、街よ!」
「ああ……」

二人はそのまま歩を進める。
そうしながらも、二人の脳裏には昨晩の化け物がちらついていた。

首から上は豚、それ以外は肥満体の大柄な人間。

あのような化け物は、二人の知識の中には存在しない。
財団Xが新たに見つけた何か、という可能性も無くは無かったが、昨晩見たあの化け物はそういうのとは何処か違っていた。
ナチュラルな存在というか、人工的な臭いがしなかったのである。
まるで生まれた時からあの姿のような。
そんな感じがあの化け物からは見受けられたのだ。

そうした化け物が存在する世界。

もしかすると、この世界は自分たちが知る世界とは根本的な意味で違う世界なのかもしれない。
その疑問は街の中に入った途端、更に色濃くなった。

「何よ、ここ……まるでゲームみたいじゃない!」

街の外観、建物、そして人々を見て、京水は思わず口にする。

まるで中世のヨーロッパの様な街並み。
武器……それも剣や斧など前時代的なものしか販売していないような店など、現代社会ではどんな発展途上国でも存在し得ない店の数々。
見たこともなく、読むことさえ適わぬ文字。
そして、人々の格好。

文化や風習の違いといった次元を遥かに超えて、それは異質であった。

「本当に何処なの、ここ?」
「さあな。だが、昨日の化け物といい、この街といい、少なくとも俺たちが知っている世界では無いらしい」
「嘘でしょう……夢なら覚めて頂戴!!……あ!でも克己ちゃんと一緒にいるのはそのままでお願い!」

京水はそう言うと、祈るようなポーズで空を拝んだ。

二人は暫く街の中を詮索するが、やはり何処か現実感の無い街並みが目に付く。
まるでゲームか小説の中に自分たちが入ってしまったような気分であった。
そうして歩いて行く内に再び空は暗くなっていく。
と、克己が一軒の大衆酒場の前で立ち止まった。
不思議に思った京水が尋ねる。

「どうしたの、克己ちゃん?」
「闇雲に歩き回っていても何も得られまい……。ならば人から情報を聞いた方が建設的だと思わないか?」
「なるほど。確かに酒場なら色んな人が集まるわね……流石は克己ちゃん!」
「行くぞ」

二人は酒場の中へと入って行った。

「いらっしゃいませー!」
二人が店に入るなり、セクシーな格好をした少女が出迎える。

「あら?なかなかいい男じゃない」

少女はそう言うと、克己の腕を取った。
普通の男性であれば、目のやり場にも困り、鼻の下でも伸びようものだが、克己は少女に全く関心を抱いていなかった。
その態度が彼女のプライドを傷つけたのか、少しムッとした表情になったが、少女はすぐに営業スマイルへ切り替える。

「お二人様、ご案な……」
「ちょっとそこの雌豚!!」

と、突然京水が少女に食って掛かった。
雌豚呼ばわりされた少女は京水が客であることも忘れて反論する。

「だ、誰が雌豚よ!!」
「五月蝿い、お黙り!!そして克己ちゃんから離れなさい!!今すぐに!!」
「な!?」

少女が京水に向けて更に何か言おうとした。
その時であった。

「ふざけるんじゃないわよ!!」

突如、食器が割れる音と共に女性の怒声が店内へ響く。
目を向けると、二人の側にいる少女と同じ格好をした店員らしき女性と男が何やら言い争いをしているようであった。
机が真っ二つに割られ、その上に女性の足が乗っけられている。
どうやらその女性が机を足で叩き割ったらしい。

「あら?もしかしてあの子……レイカじゃない?」

京水が女性の方を見てそう言った。
格好こそこの店の制服のようなものを着ているが、その黒く長い髪、しなやか且つ鍛え抜かれた足。
そして、その凛とした顔立ち。

彼女は克己たちの仲間の一人である羽原レイカであった。

客の男が顔を真っ赤にしながらレイカへと詰め寄って来る。

「な、何をするんだ!?わ、私は客だ!そして貴族であるぞ!?」
「客だろうが貴族だろうが知ったことじゃないわ!人を娼婦扱いしておいてただで済むと思わないことね!」
「ちょ、ちょっと!!」

店の奥から体躯のいい中年の男が出て来た。
こういう揉め事の時に出て来るということは、恐らくこの店の店主なのだろう。

「も、申し訳ございませんお客様!!ほら、アンタも早く謝って!!」

店主の男は女性らしい仕草と口調で謝罪を促した。
フェミニンな格好といい、どうやら彼はそういう趣味らしい。

「あら?何処かいけすかないわね、あの男。趣味を否定するつもりはないけど、みっともないものはやはりみっともないわね」

京水は店主の男をそう評した。
二人の側にいる少女はお前が言うなという顔で京水を見る。

「ん?何よ?何か文句でもあるの?雌豚のくせに!!」
「だから誰が雌豚よ!!」

京水と少女は睨み合う。
克己は付き合いきれないとばかりに二人を無視してレイカの方を見ていた。

相変わらず騒動が収まる気配は無い。
店主の男から謝罪を促されても、レイカは断固それを拒否しているようであった。

「何で謝らなきゃならないの?こんな屑みたいな男に」
「な!?だ、誰が屑だ!!」
「も、ももも、申し訳ございません!!!」

店主の男は客の男へ土下座している。
しかし、客の男は真っ赤にした顔をそのままに吐き捨てるように言った。

「……もう決めた。こんな場末の酒場、潰すだけで済むと思うなよ!!」
「そ、それだけは!!それだけはご勘弁を、貴族様!!」

店主の男は縋る様に客の男へ言う。
その様子を阿呆らしいとレイカは髪をかき上げる。

「店長、私を拾ってくれた恩はあるけれど、下げる必要の無い頭は下げたく無いの。それに人から強制されるのは大嫌い」
「れ、レイカ!!」
「それにさ……」

レイカは客の男へ視線を向けた。

「悪いのはこいつでしょ?だから、こいつがいなくなれば……」
「な、何ぃ!?」

客の男は胸元から杖を取り出してレイカへと向けた。
それを見て、店主らしき男は必死にレイカを止めようとする。

「馬鹿なこと言うのは止めなさいレイカ!!平民が貴族に……メイジに敵うわけがないのよ!!」
「もう遅い!!平民の癖に貴族へ逆らった報いは受けてもらうぞ、小娘……」

客の男が言い終わるか終わらないかの内に。
レイカの蹴りが客の男の側頭部へと繰り出されていた。
それはまさに電光石火、一瞬の出来事であった。
思わず店内に静寂が訪れる。
誰も彼女の蹴りを視認することが出来なかった。

克己と京水を除いて。

「あら、なかなかやるじゃない、あの子」
「フン、あれくらいはやって貰わないと『NEVER』としての名折れだ」

二人はそう一言ずつ感想を漏らす。

レイカの蹴りを食らった客の男の首が可動範囲を大きく超えて曲がっていた。
レイカが足を元に戻すと同時に客の男はその場に崩れ落ち、そのまま倒れる。
店主の男が恐る恐る地面へ倒れ込んだ客の男を確かめると、すぐに悲鳴を上げた。

「し、し、死んでる……?」

彼の言葉に、店の中はざわつく。
一方の当人はまるで何処吹く風であった。
さも当然と言った表情で再び髪をかき上げる。

「当たり前じゃない。殺す気で蹴ったんだから」
「こ、こ、こ、殺すって、レイカ……」

平民が貴族を殺すなど、有り得ないと思っていただけに店主の男はうろたえる。
だが、彼がうろたえた理由はそれだけではなかった。
万が一このことが他の貴族に知られれば、面倒なことになるのは確実である。
最早、店を畳むだけではすまないだろう。
そう考えると、思わずその場へ倒れ込みそうになっていた。

パチパチ

すると、その場に乾いた拍手の音が響いた。
大衆酒場とは思えぬほど静まり返った店内にその音はやけに響く。
レイカと店主の男は音の方へ視線を向ける。
音の主は克己であった。

「流石だな、レイカ」
「……!?か、克己!?」
「アタシもいるわよ」
「京水まで……!!」

二人の登場に流石のレイカも目を丸くする。

「どうして二人が……?」
「……レイカの知り合い、なの?」

店主の男は二人を交互に見る。

「確かにその格好、レイカが着ていた服に似ているわ。それに……」

店主の男は、更に克己の顔をじろじろと見つめた。

「いい男じゃない」
「当然よ。克己ちゃんがいい男じゃなくて、誰がいい男だって言うの?」

京水が一歩前へ出て、店主の男と張り合う。

「ま、アンタみたいなみっともないオカマと不釣合いなのは確かね」
「まあ!何よこのヒゲゴリラ!!」
「ムッキー!!この女装親父!!乙女に言ってはならないことを言ったわね!!」
「何よ!!」

二人は取っ組み合おうとする。

「ちょ、ちょっとパパ!今はそんな場合じゃないでしょ!?」

と、先程まで克己の側にいた少女が二人の間へ割って入った。
言動から察するに、どうやら彼女は店主の男の娘らしい。
彼女の言葉に店主の男はハッとなり、京水から離れる。

「フン、勝負は預けておくわ」

京水が吐き捨てるように言った。
どうやらゆずれないものがあるらしい。

対して、店主の男はレイカへ向き直ると、厳しい顔をして言った。

「レイカ……自首して頂戴」

彼としては、店員を出来得る限り庇ってやりたかったが、今回のケースの場合は非は明らかにレイカにある。
客商売である以上、客がどんなに理不尽なことを言ってきても、こちらはそれを受け入れるしかないのだ。
それなのに、客へ暴力を振るう。
しかも、それで殺す、などということが起きては流石の彼も庇いきれない。

「あなたが自首すればこの店も、私たちも助かるの。それに、流石の私も殺人までは庇いきれないわ……」

彼としても、この貴族の客には迷惑を被っていたし、憎悪が全く無いわけではない。
それでも、殺人までは起こすつもりはなし、そんな発想を持つような人間でいたくはなかった。
店員の子たちさえも我が子の様に思う彼からすれば、苦渋の決断ではあったが、最後は自分の信じるものに従う形となった。


だが……。


「自首?私が?……ゴメンなさい店長。拾ってもらった恩を……仇で返すことになっちゃってさ!」

そう言うと、レイカは近くにあったテーブルを店主へ向かって蹴り飛ばした。
テーブルはまるでサッカーボールの様に勢い良く宙を舞う。

「キャア!!」

店主はすぐに娘を庇う。
テーブルはそのすぐ横を通り過ぎると、物凄い音を立てて全壊した。
暫くその場を動けなかった店主がようやく視線をレイカへ向けようとすると、既にそこに彼女の姿は無かった。
どうやらテーブルが宙を舞っている間に店から出て行った様である。

「……レイカ!」

後には、貴族の客の死体と茫然とした店主の親子、そしてざわめく他の客たちが残されていた。
その後、この大衆酒場『魅惑の妖精亭』がどうなったかは定かではない。


新着情報

取得中です。