あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのルイズと魔物の勇者-09



この世界に来てから何度も見上げた空は、いつもとは違った雰囲気を漂わせていた。
山の空だからだろうか、星がいつもより多く、強く輝いているような気がする。
そして、二つの月は見事に重なり合い、一つの青白く輝く月へと変わっている。
いつも通りのスライムの形状を保ち続けられない。
ため息が出るたびに、体が溶けるように平べったくなっていく。
何故ルイズは自分のことを庇ったのだろう。
答えは簡単だ。あれ以上やってもスラおに勝ち目がないと思ったからだ。
婚約者の実力を把握していないはずはない。
丁度、二桁になるであろう数のため息をついたとき、窓にルイズが映っているのに気がついた。
「どうしたんだよ?」
なるべく沈んだ気持ちを見せないように、普段通りのおどけた声で言う。
「ごめん・・・決闘の邪魔しちゃって・・・」
ルイズは決してスラおの実力を過小評価していたわけではない。
ただ、仲間内で争うことを嫌がっただけだ。
だからこそ、結果的にスラおを負けに追い込んだことに罪悪感を感じていた。
スラおのプライドを傷つけてしまったのではないかと・・・。
「気にすんなって。あいつ結構強かったしな!」
その罪悪感を振り払うために、スラおは素直に負けを認めた。
「それに、今回は負けちまったけど・・・ルイズがいたら勝ってたぜ」
「え?」
「オイラはルイズと一緒なら絶対負けねぇ」
それは本心。
この世界の人間で、この世界の魔法に精通している人間が指示を出してくれれば・・・。
ルイズが後ろで一緒に"戦って"くれるだけで、余計なことを考えずに、全力で敵にぶつかることができる。
モンスターマスターとは、魔物と心を通わせ、魔物の力を100%引き出すことのできる職業。
「うん・・・分かったわ。次は私も一緒に戦う!でももう仲間と喧嘩するのはなしよ」
ルイズの魔法は成功しない。そのことを馬鹿にしたあだ名は、取り返しのつかないほど浸透し、二つ名として扱われるようになってしまった。
そんな自分を信用して、一緒に戦おうと言ってくれる。自分の力が必要だと言ってくれる。
そう考えると、気分が清々しくなる。
なんだかしばらくスラおと月を見たくなった。
スラおが佇む窓に近づく。
が、何故か月が見えない。まるで大きな壁が目の前に現れたかのように・・・。
それは何処かで見たことのあるゴーレム。
「ま、まさかフーケ!?」
「感激だわ。覚えててくれたのね」
ルイズの予想は的中した。
窓の外には、巨大なゴーレムに乗ったフーケが顔をのぞかせている。
「てめぇ!牢屋に入ったんじゃねーのか!」
スラおは、いつ攻撃されてもいいように態勢を整える。
「親切な人がいてね。私みたいな美人はもっと世の中のために役に立たなくてはいけないと言って、出してくれたのよ」
そう言うフーケの隣に、白い顔が浮かんでいる。
それは、黒いマントで身を包み、さらには黒いフードを深くかぶった仮面の男。
闇に紛れたその男がフーケを出した張本人とでもいうのだろうか。
「それで、何しに来やがったんだ」
「ちょっとしたお礼よ。あなた達にとびきりのプレゼントを上げようと思ってね!」
ゴーレムの拳が迫る。
それは以前のように土ではなかった。
「あっぶねぇな!」
体を広げて、ルイズに覆いかぶさり、フーケの粋なプレゼントを間一髪のところで避ける。
土でないそれは、岩だった。より強力な強度と威力で、部屋はほぼ全壊。
「ここには岩しかないからね!」
「関係あるか!またぶっ飛ばしてやる!」
スラおはゴーレムと向き合う。
「ダメよ!逃げるの!場所が悪いわ!」
ここは三階。丁度ゴーレムの胸のあたりの高さだ。
ゴーレムにとっては実に攻撃しやすい場所。
巨大な敵を倒すなら、前回と同じく下半身を攻めるのが有効だ。
ルイズはスラおを抱えて、階段を駆け下り、一階へ向かう。
一階には鉄の塊が幾人も。
それは鎧を着た傭兵達だった。
キュルケ達はテーブルを盾にして身を守っている。
敵は、魔法の射程外から無数の矢を放ってくる。
それ故、身動きが取れず、じりじりと近づいてくる斧や剣を持った傭兵すらも倒せないでいる。
「やっぱり、あいつらただの物取りじゃないわね」
「フーケがいるということは、アルビオン貴族が後ろにいるということだな」
キュルケとワルドがひそひそと言葉を交わす。
「オイラに任せろぉぉ!!ベギラマァ!!」
一階にやってきたルイズの手から飛び降りて、問答無用で炎を浴びせかける。
ベギラマは全体攻撃。複数の敵に同様のダメージを与えることができる。
接近する傭兵はその攻撃でほとんどが戦闘不能になった。
後は残った数人と、外から矢を放つ傭兵が十人ほど。
「よし、もう十分だ。後は彼らに任せよう。行こう、ルイズ」
ワルドがそう言ってルイズを誘導する。
「ど、何処に行くってんだよ」
「裏口から抜け出すのさ。桟橋に向かうためにね」
つまり、キュルケ達を囮にするというわけだ。
「大丈夫なのかよ」
「舐めないでちょうだい。これぐらいなら、なんてことないわ」
キュルケがクスッと笑ってそう言った。
「こういう時こそ僕の出番さ!」
ギーシュはぐわっと立ち上がって叫ぶ。
そのため、テーブルの盾から上半身がはみ出る。
途端、複数の矢が放たれる。
「ひいいぃぃ!!」
情けない声を上げて両手を頭に乗せてしゃがみこんだ。
「何やってんのよ・・・あんた」
「まぁ、待ちたまえ。僕のワルキューレなら矢は無意味だ」
気合いが入りすぎて、間抜けなミスをしたギーシュは、まるでそんなこと無かったかのように冷静に答える。
ギーシュは薔薇の杖を振って七体のゴーレムを同時に出現させる。
幾つもの矢が突き刺さるが、ワルキューレは意に介す様子もない。
その中の一体の影に隠れ、キュルケが前進する。
「さっきの炎も熱かったでしょうけど、私の炎はもっと熱いわよ!!」
ワルキューレの肩から杖を出すと、その先端から凄い勢いで炎が放出される。
スラおの攻撃で少なくなった残りの傭兵達はのたうちまわり、一目散に逃げて行った。
「張り合いがないわね。あら、まだいたの?さっさと行っちゃいなさい。足止めの意味がなくなっちゃうでしょ」
キュルケに言われて、ルイズも決心がついたのか、ワルドと共に裏口へと向かう。
「後は・・・頼んだぜ!」
ここでキュルケ達の力にもなりたいが、ルイズを守るのが使い魔の役目だ。
スラおも当然ルイズについていく。
「外にいる奴はどうするんだい?流石の僕もあそこまでゴーレムを駆使することはできないよ」
「大丈夫。私に考えがあるわ。そのためにはギーシュ、あなたの力が必要よ」
「僕の力?任せたまえ!なんでもするさ!」
キュルケはギーシュの手を無理やり引っ張って、酒場のど真ん中で棒立ちになる。
「な、ななな・・・君は一体何を考えてっ・・・!」
二人もの獲物が無謀にも防御なしで目の前に現れたのだ。
傭兵達もチャンスとばかりに一斉に大量の矢を放つ。
「タバサ!」
キュルケが叫ぶと、今まで空気だったタバサが、範囲の広い竜巻をキュルケ達の目の前に盾のように出現させる。
すると、こんどはキュルケがその竜巻に向かって炎を放出させる。
「火と風って凄く相性がいいのよ」
止めどなく杖の先から炎が放出されるため、風で掻き消されることはなく、炎の竜巻が完成した。
大量の矢は炎の竜巻に吸い込まれる。そのまま竜巻の回転に揉まれ、火の矢となって傭兵達の方へ飛んでいく。
予期せぬカウンター攻撃を受けて、数人の傭兵が倒れる。
外れた矢は、火の明かりによって暗闇の先に潜んでいる敵の姿を露にする。
自分達の居場所がばれ、奇襲を掛けられなくなれば、メイジに敵うはずはない。
傭兵達は背を向けて走り出す。
「やったわね。作戦成功よ」
「僕の力が必要って・・・ただの囮だったのか・・・」
「何言ってるの。私達全員既に囮じゃない」
死ぬ思いをして、汗をだらだらと流しているギーシュに冷たい視線を向けて言い放った。
「ふぅ。しかしこれで終わった・・・」
「まだ」
額の汗を、ポケットから取り出したハンカチで拭ったギーシュは、タバサにその考えをピシッと否定される。
「大ボスね。土くれのフーケ・・・」
「フ、フーケ!?何故こんなところに!」
「あんた今まで気がつかなかったの?ずっとゴーレムの足が見えてたじゃない」
キュルケの視線は相変わらず冷たい。
フーケももちろんキュルケ達の存在に気付いている。
「金で雇った傭兵がどれほどのものなのか見学していたけど・・・やっぱり私がやらないといけないみたいだねぇ」
フーケがそう言うと、ゴーレムが一歩踏み出す。
それだけでゴゴゴゴゴという音を立てて、建物が半壊する。
三人は再びテーブルの盾に隠れる。
「ここは僕に任せてくれ!作戦がある。だが、それにはキュルケ・・・君の協力が必要不可欠だ」
「なによ、私に囮になれとでも言うんじゃないでしょうね」
「まさにその通りだ。だが、僕もタバサもその囮の一人だ」
ギーシュは頼りないが、ゴーレムを倒す手段も思い浮かばない。ここは試しに任せてみようと、キュルケもタバサも頷く。
足をジタバタさせるゴーレム。それがかなり凶悪な攻撃となる。
踏みつぶされたら一巻の終わりだ。
「で、まだなの!?」
息を荒げながら逃げ惑うキュルケが、我慢の限界とばかりにギーシュに怒鳴る。
「もう少しだ!!」
どうやってあの岩の体を砕くのか楽しみなのに、ギーシュ本人もただ逃げ惑っているようにしか見えない。
「ハハハハハッ!無様だねぇ。まぁ、あんた達の実力じゃぁこんなものね」
余裕の表情で高笑いをするフーケの背後に、人影が現れる。
「え?な!?」
それはギーシュのゴーレム、ワルキューレ。
急に現れたそれに抱きつかれて、フーケはそのまま落下する。
とっさに、手首だけ動かして杖を振り、レビテーションを唱えるが、時すでに遅し。
僅かに衝撃は抑えられたものの、肩から地面に落下した。
「くっ・・・このっ・・・覚えときな!」
フーケが悪態をつくと、岩のゴーレムがボロボロと崩れ落ちる。
おそらく、わざとゴーレムを維持する魔力を切断して岩雪崩を起こし、その隙に逃げ出すつもりだろう。
その作戦は見事成功し、フーケは姿を消した。
「あんた、なかなかやるじゃない。ワルキューレを一体、よじ登らせるなんて」
キュルケの冷たい視線は温かいものに変わり、ギーシュを見直す視線を送る。
「でも、あんなに暴れてたゴーレムの足に・・・振りほどかれずにどうやって?」
「ふふふ・・・二階なら丁度ゴーレムの腰のあたりの高さのはず・・・動きの少ないその場所からワルキューレをしがみつかせたのさ!」
「二階って・・・あんたいつから視界の外でゴーレムを操れるようになったの?」
「あれ?そういえばいつからだっけか・・・」
普段の実力を無意識のうちに上回っていた事実に、キュルケとギーシュは首をかしげる。タバサは無視して本を読む。
まるで見えない力がギーシュに味方したようだった。
この時、逃れようのない最悪の"運命"に巻き込まれていることに、ギーシュは全く気付かない・・・。


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「『桟橋』なのになんで山に登るんだよ」
てっきり、山と山の間に海に繋がる川でもあるのだろうと思っていたスラおは、耐えられずに疑問をぶつける。
しかし、二人とも必死に走っているため、息が荒れ、質問に答えられない。
とんでもなく長い階段を登りきると、そこには巨大な木が姿を現す。
大木にはたくさんの松明がつけられ、まるで町の明かりのようだ。
スラおはそれを見て、タイジュの国を思い出す。
タイジュの国も夜になると、室内の明かりが漏れて、それはそれは美しかった。
もちろんこの木は、タイジュの国ほどの大きさはない。
「あの枝にぶら下がってんのって・・・船か?」
枝の先には幾つもの船がランタンのようにぶら下がっている。
「そうよ。あんたの世界じゃ違うの?」
「まぁ、違うっちゃ違うかな」
スラおの世界にも飛べない人間が空を移動するための手段が幾つか存在する。
この世界ではこういうもんなのか、と思った程度で、それ以上の疑問も不安もスラおには無かった。
木の中は空洞になっており、螺旋階段のようなものが天辺まで続いている。
ワルドの後を追って、階段を駆け上る。
しかし、目の前には白い仮面の男。
「て、てめぇ!」
スラおが叫ぶが、その時すでに仮面の男はルイズを羽交い締めにしている。
そのままルイズごと、階段から飛び降りる。
「ルイズ!」
距離的に届く技はベギラマのみ。しかしそれではルイズも一緒に攻撃してしまう。
すると、ワルドが風を巻き起こしてルイズと仮面の男を引きはがす。
そのままワルドは落下して、ルイズを抱きかかえると、フライの魔法で空を飛ぶ。
仮面の男は空中でくるりと旋回し、階段に着地してスラおと対峙する。
「よくもやってくれたな!覚悟しやがれ!」
スラおはベギラマを唱えるが、ワルドの時と同じように的が外れる。
「こいつも『風』系統のメイジかよ!」
次の瞬間、スラおの体に電撃が走る。
「『ライトニング・クラウド』!」
「あがががががっ・・・・・!!」
直撃を受けたスラおはプスプスと音を立てて黒こげになる。
なんだか今日はやられてばっかりだ。
そんな風に考えていると、戻ってきたワルドがエア・ハンマーで仮面の男を吹き飛ばす。
「スラお!大丈夫!?」
こうしてルイズに駆け寄られ、抱き上げられたのは何回目だろう。
「ままままあだだだだ大丈夫ぶぶぶぶ」
まだ痺れていてうまく喋れない。
あの雷の魔法はギガデイン並の威力はあった・・・。
だが、一発でやられるようなスラおではない。すぐに動けるようになった。
それでも心配なのか、ルイズはスラおを抱きかかえて移動する。

ようやく船着き場まで辿り着いたが、船は出港する時間を迎えていない。
そこは図々しさに定評のある貴族、ワルド様がなんとかしてくれる。
半ば強引に船に乗り込み、出港させる。
目指すはアルビオン。
スラおの冒険も終盤を迎える。



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