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オレンジ色の使い魔-06


オレンジ色の使い魔 第6話

 学院長室を辞したハミイーは学内掲示板の前で足をいったん止めた。
 あれこれと張り紙されているが、どれも読めない。
 ここハルケギニアではノウンスペースで使われている人類共通語が不自由なく通じる一方で文字体系が全く異なることはすでに知っていたが、この事実から何かを読み取れはしないか。
「話し言葉のみが伝わり、文字体系が伝わらない」
 ノウンスペースとハルケギニアとの文化交流あるいは片道伝達は、そのような性質を持つことになる。

 地球へ赴任していたころに学んだ豆知識を思い出してみる。
 話し言葉の体系が全く異なる複数の国が、共通の祖を持つ文字体系を使っていた事例がいくつかあったはずだ。
 人類の間では話し言葉は文字よりも速く変化するのかもしれないし、あるいは違うのかもしれない。
 これについて判断する知識を持ち合わせていないことに気づき、ハミイーはこのアプローチを保留することにした。

 ルイズの部屋へ向かって歩みつつ、状況を整理する。
 すれ違う人間が奇異の目を向けてきたりもしたが、かつて地球で経験したものと違い敵意は感じなかった。
 我等クジン人とノウンスペースの人類とは互いの絶滅を賭しての大戦争を何度も繰り返した間柄だが、ここハルケギニアの人類にとってはクジン人は父祖の仇ではないということだろう。
 言葉は伝わっているが、歴史は伝わっていないということになる。

 歴史。
 状況を整理するために、ノウンスペースそのもの、銀河系そのものの歴史から考えてみるのが良いかと思い至った。
 およそ15億年前、銀河系全域を支配する大帝国が存在していたことが各種の出土品あるいは遺跡などによって明らかになっている。
 その種族は自らをスリント人と呼んでいたが、今日のノウンスペースの各知的種族が彼らについて語るときには『奴隷使い』(スレイヴァー)と呼ぶのが普通だ。
 スレイヴァー族は人類程度にも賢明でも幸運でもなければ、クジン人のように頑健でもなかった。
 しかし彼らはそのようなハンデを飛び越える能力を備えていた。
 他の知的種族の意識を操り、自らの奴隷として思うがままに操る能力を。
 その能力に頼りきりだったがゆえにスレイヴァー族は知的能力や肉体的能力を発展させなかったのだとも言われる。
 自らよりも賢く頑健な知的種族を奴隷として思うがままに操れる存在が、自らの知性や肉体を鍛える必要など無いというわけだ。
 しかし彼らの栄華も永遠ではなかった。
 奴隷種族の中でもっとも科学技術に優れていたトゥヌクティプ族が、いかなる手段によってか大反乱を起こしたのだ。


 この戦争そのものはごく短期間の間にスレイヴァー族の勝利に終わった。
 スレイヴァー族は反乱に加担した全ての奴隷種族に対して自殺命令を発したとされている。
 それは今日のノウンスペースに住まう各知的種族が出土品からの分析を積み重ねた推論だが、確度は高いと見て良い。
 勝利を収めたスレイヴァー族は自動的に滅亡することになった。
 ほぼ全ての奴隷種族を死滅させた彼らは、自力で文明を維持してゆく能力を持っていなかったためだ。ハミイーから見ればなんとも間の抜けた話ではある。
 我等クジン人も人類と接触する前はいくつもの知的種族を奴隷化していたが、人類との戦争に敗れて奴隷たちの独立を認めた今でも滅亡などしてはいない。
 ともあれスレイヴァー帝国の滅亡後、銀河系の各地には帝国を支えていた各種の食料生産惑星が無数に残された。
 かつてのクジン星も、地球もそれら食料生産惑星のひとつだった。
 食糧生産の原料とするために養殖されていた微生物は管理者を失い、突然変異を繰り返す。
 そして数億年前、突然変異を繰り返した生物たちはついに多細胞生物への進化あるいは変異を遂げ、人類やクジン人へとつながる生命の歴史を歩みだした。
 同じ変化は相前後していくつもの惑星上で生じ、多種多様な生物圏がそれぞれの惑星に形成された。
 今では同じ先祖を持つとは思えないほどに変異を重ねている。
 それにも関わらず、生命を支える基礎的な化学が同じであるのはこの歴史的経緯に拠っている。
 だからこそ、我等クジン人は地球産の動物の血肉を食して栄養に換えることが出来るのだ。
 その逆も成立する。クジン星の動植物を原料として人類向けの食事を作ることも出来る。
 ここハルケギニアでも同じ歴史を辿った……とは考えられない。
 同じ先祖からの進化を重ねた偶然と考えるには、あまりにも地球原産の動植物と似すぎているのだ。
 そして保留したものの、言葉と言う証拠もある。
 また先ほどオスマンが語ったことの一部でも事実であるのなら、他の惑星から高度技術製品や書籍がもたらされることもあると言う。
 それにも関わらずハルケギニアの文明は低い水準に留まっている。
 その一方、『魔法』と称する高度技術が存在している。
 個人用の重力制御、さらにロボットの生成とリモートコントロール、あるいはダミー人間の生成。
 ただひとつの事例を除き、それらはノウンスペースの技術でも再現できるものばかりだが、再現するにはあの杖や人体よりも大きなハードウェアを要するだろう。
 オスマンの言葉を信じるならば魔法とは杖ではなくハルケギニア人の体内に組み込まれたなんらかの器官によって発動し制御される技術ということになるが、ハミイーにとっては「杖か人体か」は重要ではない。
 重要な事実は、未だに人力や畜力に頼るような低水準の文明しか持たない(ように見える)ハルケギニア人がノウンスペースの高度技術文明と類似した、小型化と言う面では上回る技術を用いているということだ。
 人力や畜力に頼っている人々が重力制御の概念を持つことは不可解であり、不自然でもある。
 しかし類似例が無いではない。
 かつて我等クジン人は、人類に稀に現れるテレパス能力(他の人間やクジン人の心を読む能力)者の個体を捕獲し生体実験を重ねてその正体を突き止めた。
 人類の頭脳の、普通は使われていない機能野がテレパス能力に対応している。
 それと同じように、人類には未発現の特殊能力を持っている可能性がある。いや、少なくともひとつの特殊能力は明らかになっている。他ならぬハミイー自身、その能力を発現させた個体に遭遇したことがある。
 その結果として片道200光年の遥かな旅の末に、クジン星や地球の300万倍の可住面積を持つ壮大な人工天体へと到達しその天体上で冒険を行う羽目に陥った。
 ハミイーが領地を得て個人名を名乗るようになったのは、あの冒険の末に故郷へと持ち帰ったあるものが評価されてのことだ。
 ルイズによってこの惑星へと呼び寄せられたことが、人類の持つ潜在能力に翻弄されると言う経験の二度目なのかもしれない。
 今回、その結果によっては個人名を名乗るばかりか家名を与えられるかもしれない。




 ハミイーは廊下の窓際に立ち止まった。
 夕暮れの空を見上げ、ハルケギニアの太陽を見上げる。
 何か違和感を感じたが、とりあえず気にしないことにする。
 この惑星が巡っているその恒星はクジンの太陽よりも温度が高く、黄色っぽい。見た目にはほとんど地球の太陽(訳注:太陽系の太陽、LCC0000のこと)と見分けが付かない。
 このような黄色あるいはオレンジ色の恒星は銀河系にはありふれていて、平均すると20から30光年くらいの間隔を隔てて分布している。
 地球の太陽や、人類が猟犬座ベータと呼ぶ恒星、同様におおぐま座61番星と呼ぶ我等クジン星系の主恒星などがそれだ。
 しかし、それらを巡る惑星から見上げると色調の違いが見て取れるのが普通だ。
 肉眼で見分けが困難なほど地球の太陽と似ている恒星となると、既知なる知的種族の領地の総称である半径30光年のエリアすなわちノウンスペースの中にはひとつも存在していない。
 人類はそのような、見分けが付かないほど地球の太陽と似ている恒星を「ソーラーツイン」太陽の双子と呼ぶ。
 確か、ノウンスペースから最も近くにあるソーラーツインであっても200光年以上も離れているはずだ。その次に近いものは300光年以上離れており、そこまでの航続距離を持つ宇宙船はノウンスペースに1隻しか存在していない。
 いつの日か我等クジン人がそのような恒星系に人類よりも先んじて到達し、領地とすることがあるやもしれない。
 それほどまでに、現代の技術の限度を超えて遠いのだ。
 にも関わらず、ルイズは一瞬のうちに少なくとも200光年以上の距離を飛び越えてハミイーを呼び寄せた。
 ノウンスペースの技術で再現可能な他の魔法と、ルイズの魔法との根本的な違いがここにある。
 ハミイーがこれまでに目にした他の魔法はすでにノウンスペースの技術者が実現しているものばかりで、違いと言えば小型化あるいは生体組み込みの可否くらいのものだ。
もし人類の潜在能力に魔法と言うものがあるのなら確かに重大な発見ではあるが、ルイズの示した可能性の前には小さなものだ。
 今のところ、ただ1隻の例外を除き超光速宇宙船の速力は100C(光速の100倍)に留まっている。
 もし200光年の距離を渡ろうとするなら乗員は2年の船内時間を耐えねばならない。
 しかも、ある理由によってコンピュータによる自動制御では超光速航法は成立しない。必ず、適性を持つ知的生命の個体がモニターし適時制御しなくてはならない。
 それがために、人類やクジン人が超光速航法を実用化してから400年以上が過ぎた現代、人類の暦で言うところの29世紀半ばにおけるノウンスペースは未だに半径30光年に留まっているのだ。
 この制約を越えた船がただ1隻だけ存在してはいる。
 その船はおよそ42万Cでの航行が可能だが、最高度に熟練した船乗りによってしか扱えない。しかも同じ性能を持つ船を追加建造する試みはことごとく失敗に終わっている。
 この船は200年ほど前にある種族が別の目的で建造した実験船であった。
 なぜか42万Cを発揮し、その原因が未だに判明していないと言う代物である。
 ルイズの魔法はそれさえも超えている。
 もしルイズの魔法がいかに発現するのかを解明し、数百光年を一瞬で飛び越える船をクジン族長の下に並べることが出来るならばどれほどの功績となろうか。
 ただしルイズは異種族とは言え未成年であるから、決闘を申し込み服従させてクジン星へ連れ帰るというわけには行かない。ハミイーの決闘相手にふさわしくなるまで何年か待つか、同じ能力を持つハルケギニア人の成体を見つけ出す必要があろう。
 もちろん各種実験のためには複数の個体があったほうが良いし、魔法が人体ではなく杖によるものだとしてもやはり複数サンプルが欲しい。




 ここで、ハミイーはひとつの可能性に思い至った。
 果たして本当に一瞬での転移だったであろうか。
 たとえば、時間停滞フィールドに包まれて数千年を費やしてこの惑星へと転移させられたのであればハミイー本人には一瞬としか感じられない。
 たっぷりした毛に隠している携帯通信機そのものにとってさえもそれは同じことだ。
 が、検証方法はある。
 超光速航法の実用化と並行して超光速通信技術が実用化され、かつては惑星の反対側と会話するのにさえ付きまとっていた光速によるタイムラグが解消されて久しい。
 ハイパーウェーブ通信は距離の制約とタイムラグを事実上持たず、少なくとも200光年を隔てたこの惑星とクジン星との間で会話することさえ可能だ。
 もしそれが出来ないとするなら故障しているか、ハイパーウェーブ通信の限界を超えたとてつもない距離を隔てたところまで転移させられているか、主観的には一瞬だった転移の間にノウンスペースの文明が消え去ったことになる。
 ハミイーの巨大な頭の上で耳がうごめいた。
 通信機を試すにしても、今現在のところこの惑星がどこなのかさえ突き止めていない。
「方法は不明だが誘拐された。現在地も不明」そのような報告を、クジンの戦士にして貴族たるハミイーが行ってよい理由は無い。
 狩猟公園に置き去りにしてきた長男は無事に決まっているが、なにせまだ幼いのだ。
 ハミイーの不在を不安に思っているかもしれぬ。
 城館に住まう女たちの世話も誰かが行わねばならないし、領地の運営にともなうさまざまな事柄も処理せねばならない。
 幼い長男に任せてしまってよいのだろうか。
 窓際でハミイーはしばらく悩んだ。
 そして日が傾き、満ちかけた月が二つ昇ってきたことに気づいた。
 ハミイーが目にしたものを理解するまで少し時間が掛かった。
 戦慄に全身の毛穴が収縮し、毛が逆立つ。傍目には太った猫が全身の毛を逆立てて毛玉のように膨れ上がったように見えただろう。
 ややあってハミイーは落ち着きを取り戻し、逆立っていた毛が元に戻った。
 ここハルケギニアが人類の秘密領地と言う可能性は非常に低い。その根拠は距離だけではない。
 その一方で、より強大な種族の実験領地である可能性がある。
 もしそうならば、かつてあの人工天体で得た知見のひとつをクジン星の族長執政府に報告せず心に秘めたのと同じように、報告や増援要請の内容には選択を要しよう。
 通信機を試すのは先延ばしすることにして、ハミイーは再び歩き出した。



 ぼふ、ぼふ。
 独特なノックの音に、眠りかけていたルイズは起き上がった。
 ドアを開けるとオレンジ色の毛皮の壁があった。
「……おかえり。聞きたいことがいくつかあるんだけど」
「俺の質問に答えてからだ。この惑星ハルケギニアには2つの大きな月がある、これは間違いないな?」
「見れば判るでしょ?」
 ルイズは窓の外を指差した。
「あれらの月は夜毎にその位置を変えてゆく、これも間違いないな」
「もちろん。昨日とはちょっと角度が違うし、満ち方も違うでしょ?」
「月の位置によって海の水位が変わるか」
「潮の満ち干きだけでなく、風の流れも変わるわ。船乗りは毎月の暦を参照して運行スケジュールを決めるとか聞くけど」
「月が交差してから次の交差までの期間はどの程度変化する?」
「ほとんど一定だけど?あなたの言う『期間』を私たちは『1ヶ月』って呼んでる。クジンでは違うの?」
「……なるほど」
 ハミイーは何か感銘を受けた様子に見える。
 ルイズはそれを見て考え込む。なぜ、この大猫の仕草や表情はこうも人間的なのだろう?
「ハミイー、あなたは毛皮を被った人間なんかじゃあないわよね」
「当たり前だ。なぜそんな事を聞くのだ」
 ルイズが疑問を説明すると、ハミイーは頷いた。
「俺はかつて、お主らの概念で言うところの外交官として地球に赴任しておったのだ。人間と会話するために人間の表情や仕草を学び、それを用いる習慣を身につけた。
 その習慣がお主と会話するにあたって出てきたのだな」
 その答えにルイズはひとつばかりかもうひとつの疑問を解消したように思った。
 この大きな猫は貴族だと言う。
 ハルケギニアの各国と同じように、代々外交官に任ぜられる貴族の家系があってハミイーもその一員なのだろう。クジン人の社会もハルケギニアのそれと似た部分があるということかもしれない。
 念のために確認してみると、ハミイーの答えは違っていた。
「俺個人は外交官を務めておったが、一族は代々が宇宙船のパイロットだ。俺も外交官とパイロット兼務と言うべきある任務をこなして領地を拝領した」
「空間船の航路先案内人?」
 ルイズは想像してみた。この大きな猫が港で小船を操って大船を先導して入港させる。あるいは横付けして乗り込み大船の船長から舵輪を預かる。
もちろん船長も航海士もふわふわもこもこした大猫ばかり。
「そうだ。それゆえに、一族の教養として天体の軌道力学を叩き込まれておる」
「じゃあやっぱり、クジンでも船乗りにとって暦は大事なものなのね」
 相槌を打ちながら、ルイズはこの大きな猫の言葉に疑問点を見つけた。
 この大地のどこかに猫の国クジンがあるとして、月の動きを知らないなどと言うことがあるものだろうか?
 もしかしたら、本当に他所の星からやってきたと言うのだろうか?
「俺がここへやってきた当日、おぬしは俺を質問攻めにしたな。その時に地動説について話したことを覚えているか」
「地動説は仮説ではなく事実だって言うんでしょ。でもやっぱり無理があるわ、もし事実なら1年で何億リーグもこの大地が動くことになるじゃない。
 大地の上の何もかも吹き飛ばされてしまうことになるわよ、何千年も前に賢者アリスタルコスやピロラウスが地動説を唱えたけど受け入れるものがほとんど居なかったのはそのせいだし」
「しかしその一方、作業仮説としての地動説は定着しておるのだな?」
「千年ほど前からね。えーと、確か聖職者にして天文学者たるニコラウス・コペルニクスが地動説を整理しなおし、その何十年か後に賢者ティコ・ブラーエとヨハネス・ケプラーが正確な暦を作れる地動説理論を作り上げた。
現在使われているグレゴリオ暦は賢明にも地動説論争への言及を避けた上で、当時の教皇さまが制定されたものよ」
「ふむ、おぬしらは千年前から正確な暦を作れる文明水準にあるのだな。そしてお主らの暦の上で、月の満ち欠けと交差は安定したものであると。うむ、重大な事実がひとつわかったぞ。
 賢者ルイズよ、ひとまず感謝しておこう」
「私は見習いだけど、メイジよ!それと、私たちを未開の蛮族みたいに見下さないで!」
 窓際に脚を進めたハミイーをルイズは何度か叩いてみたが、まるで堪えた様子がない。




 ハミイーは再度、二つの月を見上げた。
 彼の経験から判断するに、ルイズは手の込んだ嘘をつける類の人間ではない。これは知性の優劣ではなくその性格によるものだ。
 さてここハルケギニアでは惑星上の海や大気に影響を与えるほどの質量を持った衛星が二つ存在し、安定した周期で互いに逆行公転している。
 塵とガスの雲から惑星系が形成されるとき、このような軌道に個々の天体が乗る可能性はほとんどゼロと言ってよい。
 そして、もしそのような偶然があったとしても個々の大衛星が安定軌道を保てる期間は極めて短い。
 逆行する大衛星は軌道交差の度ごとに互いの引力によってお互いの軌道を歪める。今見上げているような大衛星ともなれば、ほんの数十回の交差で軌道が不安定になる。
 にもかかわらず、少なくとも千年に渡りあの二つの衛星は安定した軌道を保っているという。
 二つの衛星が見た目より遥かに小さな質量しか持たないと言う可能性は、惑星に潮汐力を及ぼしハルケギニア人の生活に影響しているという証言から否定された。
 仮にルイズの思い込みだとしてもすぐに検証できよう。
 可能な解はひとつしかない。
 あの二つの衛星には、その軌道を修正する推力が常時働いている。
 その力の大きさはそれぞれの重力場に匹敵する値を持ち、一定方向に一定の強さで働く類のものではなく軌道上の位置関係に応じて能動的なベクトル制御がなされている。
 そうでなくては二つの衛星は安定軌道を保てない。
 そしてこの強大な推力は惑星上からは噴射を観測できない類のものでもある。
 無反動スラスター推進あるいはより高度な何らかの機関、それもノウンスペースのどこにも無いようなスケールの機関と航法制御システムが二つの月には備わっている。
 そのようなシステムを誰が何のためにあの月へ組み込んだのか、あるいは月に見える巨大宇宙船をどこかから何のために持ってきたのか、それはまだ判らない。
 それが何者であれ、クジン人や人類よりもある面では強大な種族であることはほぼ確実だ。
 今後の行動に際して考慮せねばなるまい。


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