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ゼロの戦闘妖精-17

Misson 17「インディアン・サマー・ヴァケーション(中編)」

トリステイン魔法学院 職員宿舎。とある部屋の前に立つルイズ。
「すいません、ミス・ロングヒルは御在宅ですか?」
「あら、いらっしゃいヴァリエールさん。それで、御願いしてた件だけど…」
「ええ いつでも出発できますよ。」
「本当に。助かるわぁ!
 じゃ 立ち話もナンですから、中へどうぞ。お茶でもお出ししましょう。」
こうして 女生徒が一人、学院長秘書の部屋へ入っていったのだが、

「すまないねぇ、無理言っちまって。」
玄関先では人目をはばかっていたものの、扉を閉めた事で『地』を出す 元・「土くれのフーケ」
「気にする事なんて無いですよ。モット伯の件じゃ 随分と世話になったみたいだし。
 ロングヒルさんの実家 アルビオンでしたっけ? それでも『雪風』なら あっという間ですって!」
どうやら 「里帰りをするのに 雪風で送ってくれないか?」という依頼があったらしい。
「『マチルダ』でいいよ。この部屋は 間違っても音漏れなんぞしないように 仕掛けがしてあるからね。」
「それじゃ 『おマチ』さん。」
「フっ、それ ワルドの御頭から聞いたのかい?
 にしてもねぇ、不思議なモンだね 人の繋がりってモンは。
 あんたらの仲間になって 盗人稼業から足を洗ったとたん、あんたの許婚 それもあの『ワル平』のところで密偵になるなんて。
 どうやら 表も裏も、クサレ縁になりそうだネェ。」
「それって きっと大変ですよ?」「違いない!」 あはははと 重なり合う、笑い声。

テーブルには 涼しげな水出しハーブティー。質素な応接セットで向かい合う二人。
「送ってってもらう『ウェストウッド村』は、いわば『隠れ里』でね。
 アタシもそうだけど、その『血の繋がらない妹分』ってぇのが、どうあっても身を晒すわけにゃあいかない娘なのさ。」
マチルダは、何故ルイズにこんな依頼をしたのか、その触りの部分を説明していた。
「今の所は まぁ なんとかなってる。ただ これからは。
 レコンキスタとかいうバカ共の叛乱 そのまま成功しちまえば、むしろ村にはたいした影響は無かったかもしれない。
 でも トリステイン・ゲルマニア連合軍がアルビオン王家を守るために参戦するとなりゃ、戦いが激化するのは確実。
 場合によっては 村を捨てて逃げ出す事も考えなけりゃならない。
 そん時に アンタと雪風の力が借りたい。だから ティファに、『妹分』に会ってもらいたいのさ。」
軽い口調とは裏腹に 何時に無く真剣な表情のマチルダ。その思いは ルイズにも伝わっていた。
(この人は 現時点で話せるギリギリまで 明かそうとしている。)と。
「それに、『盗賊改』とも関係しちまった以上 あの御頭に何時までも隠し遂せる自信も無いからねぇ。
 予め アンタには知っておいてもらって、上手い事ワルドの御頭に伝えてもらいたいって思惑もあるんだよ。」
ルイズ自身 雪風の召喚以来 人には話せない秘密を いくつも抱え込むようになった。だからこそ 安請け合いは出来なかった。
「判りました。確約は出来ませんが、出来る限りの事は。
 でも 本当にいいんですか、私なんかに 大事な『秘密』を…」
「そうだねぇ。これが、めぐりあわせってヤツなんだろうねぇ
 いつまでもこのままじゃいられない。ずっと そう思ってたし、正直アタシ一人じゃ どうしようもなくなってきてたんだよ。
 それにね、こいつは唯の『勘』なんだけどさ、アンタなら大丈夫、きっとあの娘の事を判ってくれる。
 そんな気がするんだよ。」
(盗人稼業で鍛えまくった アタシの勘はよく当る!当っていれば…
 ルイズは この娘だけは、ティファを本当に理解してくれる。そのハズなんだ!)

現在のアルビオンの地図に 『ウェストウッド村』という場所の記載は無い。
かつては小規模な集落があったが、付近に棲み付いたオークの群に度々襲撃され やがて住む者はいなくなった。
無人となる事で 獲物である農作物や家畜も無くなって、オーク達も去っていった。そんな ありふれた廃村の一つ。
だが 今、誰に知られる事も無く 一つの世帯がそこに暮らしていた。

「ね~ね~ティファ姉ー、アニーがさぁ『見た事無い おっきな鳥が飛んでる』って!」
深い森の中に建つ 一軒の館。そこに暮す子供達。彼等は皆 平民の『孤児』だった。
疫病 事故 犯罪 そして戦争、さまざまな理由から親を亡くした子供がいた。だが 大人の姿は無かった。
ティファニアとマチルダ、人目を忍ぶ 二人だけの住いだったはずが、不幸な幼子に出会う度 見捨てる事も出来ず、『村』の人口は少しづつ増えていったのだ。
子供達は 幼いが故に、ティファの『真の姿』を知っても 彼女を慕ってくれていた。彼等がいてくれたから ティファはマチルダの『出稼ぎ』の間も 寂しくはなかった。
アニーも そんな子供の一人。
子供というのは時折 特定の分野について驚くほどの知識を持つ事があるが、アニーはこの辺りの鳥については、大人以上の知識を持つ少女だった。
そのアニーが「見たことが無い」と言う『大きな鳥』
(ひょっとして 何かの幻獣?!)
ティファは屋敷の外へ駆け出していった。野生種だとしたら、子供達が襲われるかもしれない。もっと悪い事、誰かの騎獣 どこかの騎士が乗っていたりしたら!
(もしそうなら、また『あの力』を使わなきゃならない。恐ろしい あの力を。)

森の外れの開けた場所に 鉄の鳥?は降り立った。そしてその中から現れたのは…
「ただいま、ティファ。みんな 元気だったかい?」
「マチルダ姉さん!?!」
(もう、姉さんたら。いつもいつも 私達を驚かせて…)
だが 今回のドッキリは、この程度では済まなかった!

ルイズは その少女と向かい合った瞬間、『ライトニング・クラウド』を食らったような衝撃を感じていた。
ロングストレートの金髪に大きな麦わら帽子をかぶった 白いワンピースの少女。マチルダの妹分 ティファニア。
年の頃は 自分と同じくらいだろうか。にも拘らず、『巨乳』! 何より眼を引く たわわな『乳』。あのキュルケよりも巨大な『胸』。
その圧倒的な存在感の前では、「貧乳はステータスだ、希少価値だ!」という強がりすらも 何の意味も持たなかった。
コンプレックスを直撃する『敗北感』。乗り越えられない『壁』。生まれながらに持たされるモノの違い。
………なんて事は ど~でも良かった。
(何 この感覚! 解る、私の中の『血』が教えてくれる。 この娘は、私と同じ…)

それは ティファニアの側も同様だった。
マチルダが連れてきた少女。魔法学院の生徒。トリステインの公爵家令嬢。ピンクブロンドの髪が可愛い娘。
紹介された内容も 見た目の印象も、頭に入らなかった。ティファの意識のほとんどを占めていたのは、自らの内から湧き出してきた『情報』
彼女は知らず知らずに ルイズへと歩み寄っていた。その生い立ちゆえ 見ず知らずの者に対する警戒心の人一倍強い ティファが。
「貴女も 同じ… いえ、まだ『目覚め』ては いない?」
思わず発してしまった言葉に 自ら驚いていた。
「ええ 『プロテクト』の解除は済んでないけど、大体のところは判ってるつもりよ。
 出来れば 違ってて欲しかったんだけどね。」
苦笑。状況証拠から 推測は出来ていた。だが これで『ダメ押し』をされたようなものだ。
「そうすると 『アレ』については、貴女の方が先輩ってことになるのかな。
 私は、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。宜しく、『先輩』!」
力強く 真っ直ぐに差し伸べられた手は、
「…はい。私は ティファニアです。」
おずおずと けれどしっかりと握られた。

屋敷に戻った一行。(子供達は 雪風に興味シンシンで 外に残っていた。)
そこで マチルダから語られる ティファの身の上話。彼女は アルビオン貴族 故・モード大公の忘れ形見だという。
「ちょ ちょっと、モード大公って… あの エルフと情を通じた罪で、処刑された?!
 でも 子供が居たなんて話はっ?  つっ!」
言ってしまってから ルイズは気付く。残された者の前で 『処刑』等と言う言葉を使ってしまったことに。
「大丈夫…です。
『言葉』を変えたところで 『事実』は変わらない。そう 思えるように なりました。」
とても 『大丈夫』そうに聞こえない か細い答が返ってきた。
(強くなったね ティファ。)マチルダは思った。
(だけど アンタはもっと強くならなくちゃいけない。いつか アタシが何処かで死んじまっても、一人で生きていけるぐらいに。)
「大公の子供の事なら、とてもじゃないが おおっぴらに出来るモンじゃなかったんだよ。
 何せ、たった一人 生まれたのが、そのエルフとの間の娘だったんだからねぇ。」
マチルダに即されて、テファニアが 室内でも被り続けていた麦藁帽子を脱ぐ。すると、長い髪の中から エルフの特徴である『尖り耳』が露になった。

雪風の召喚で ハルケギニアの常識に縛られる事のなくなったルイズにとって、エルフは教会が言うような『怪物』ではなかった。
(エルフなんて、雪風本来の敵『JAM』に比べりゃ 只の近縁種じゃない。いえ、交配も出来るんだから 人種の違い程度よね。)
というのが正直なトコロ。とはいえ、普通の人々が エルフにどのような対応をするかは判る。
忌み嫌われ 恐れられる存在。それがエルフ。たとえハーフであっても それは同じ。
平民からは拒絶され、エルフからも『混ざり者』として迎え入れてはもらえない。国家関係者に発見されれば 無条件で抹殺。その上に 望みもしない『力』の 無理矢理な継承。
ルイズは あきれ返っていた。この世界で一番エラい筈の人物に。
(そりゃあね、私だって色々と妙なモノ押し付けられて、自分を『悲劇のヒロイン』とか 思ったこともあったわよ。
 甘かった。甘すぎたわ。
 ねぇ始祖ブリミル、いくらなんでも コレはやりすぎでしょ!
 アンタ、か弱い女の子に どんだけ背負わせれば気が済むのよ!)
初めて出会った 抱え込んだモノを話せる相手、同じ厄介事に巻き込まれた『同士』、これまで 同年代の『トモダチ』など居なかったであろう少女。
(ティファニアのことは 私が守る! 守ってみせる!!)ルイズの中で それは既に決定事項だった。
そんなルイズの様子を見つめながら マチルダは、自分の『勘』が正しかった事を確信していた。彼女は、『賭』に勝ったのだ。

「へぇ じゃティファもやっぱり!」
「はい。お父様の系統魔法も、お母様の精霊魔法も使えなくて…」
「だからさ、学院で知らぬ者の無かった『ゼロのルイズ』お嬢様が、ひょっとしたらティファと同じなんじゃないかって アタシが思い始めたのは。」
木漏れ日の差し込むダイニング。ティファニアお手製のクッキーが並ぶテーブル。
秘密を抱え込んでいた女性達の ささやかなお茶会は、隠すべき必要がなくなった喜びから 話が弾んでいた。
「私が『目覚め』たのは すごく小さい頃だったけど…」
大公家は アルビオン王家の秘宝の管理役に任じられていた。その家族であっても、秘宝に触れる事など そうそう出来るハズはないのだが。
まぁ 何処の家でも、『父親は娘に甘い』 そういうことだ。
「それ、判るわぁ~。私のところも、母様はメチャクチャ厳しいけど、父様は 私だけじゃなく姉様達にもベタベタだし!」
「アッハッハッ、コワモテで知られたヴァリエール公爵様も、娘達にゃ 只の『親バカ』かい。」
「それで、父様に『風のルビー』を嵌めて貰い 『始祖のオルゴール』を手にした時、聞こえたんです。…始祖ブリミルの『声』が。」

鳴らない筈のオルゴール。それは『大いなる遺産』か、『災厄の箱』か?
望むと望まざるとに係らず 覚醒する力。伝説の魔法、始祖の系統、『虚無』。
最初に使えるようになったのは、精神操作系 その初歩の初歩たる『忘却』の術だった。
幼子は その後も涌き上がり続ける『呪文』の数々に恐怖した。そして 覚えたばかりの未熟な術を 自分自身に対して使ったのだった。

「それで 私は忘れる事が出来ました。でも それが良い事だったのか…」

やがて 破局は訪れる。
宮廷と世論の圧力に耐え切れなくなった国王は、大公を王宮に呼びだし、エルフ追放を迫ったが 大公はこれを拒否。
暴走した一部重臣等によって モード公は惨殺されるも、公式には「王による処刑」と発表された。
これにより 逆賊の一族は抹殺せねばならなくなり、大公屋敷へ派遣される兵士。モード家家臣団との激しい戦闘。
目の前で母を殺され、ティファニア自身にも凶刃が迫った時、死の恐怖と生への渇望が 不完全だった『忘却』を凌駕した!

「生き残ったのは 私と、お父様の重臣の子供だったマチルダ姉様だけ。
 襲撃者の『記憶』から 私達が逃げ延びた事を消して、『目的』の中にあった『殺害完了』の想像と直結させました。
 元々 あの人達が持っていたものですから 全く新しいもので書き換えるよりは 簡単だったから…」
必要に迫られ ティファニアは、未だ一部しか使えない『虚無』の技を使いこなしていた。
だが 力を把握すればするほど、その力が恐ろしくなっていった。

ルイズの力である『雪風』は、兵器であり 人殺しの道具である。そして 既に多くの命を奪っている。
ティファニアの力は、直接 人を殺すものではない。だが ヒトから記憶を奪い 思考を操作する事は、その人間の人格を抹殺する事と どれ程の違いがあるだろうか。
神経線維により構成された生体脳回路に走る 人格というプログラム。それは唯物論的視点から見た『魂』に他ならない。
精神操作の魔法は 誰に気付かれる事無く『魂』を刈り取る、『死神』の技。その使い手たるティファが それを理解しないはずも無かった。
出来る事なら 使いたくない。それでも使う、生きる為に。矛盾する思い。そして、

「でも、最初に力を手にした時 ただ怖がって消したりしなければ、ちゃんと覚えていれば。
 ひょっとしたら お母様を、屋敷の皆さんを守れたんじゃないかって思うと… 」
自責の念。取り返しの付かない事。IF もしもあの時。
理屈だろうと 冷静になろうと、この思いは止められない。止める術は無い。
止められないから 留め置くだけ。心の底の 奥深き淵に。

悲しいかな この手の問題はあくまで本人の心の在り様。他人の言葉で どうなるものでもない。それでもルイズは何か言わずにいられなかった。 
「あのね、これは 私が世の中で二番目に頼りにしてる人が言ってた事なんだけど、
 『生きてりゃぁ誰だって、失敗はあるだろうし後悔もする。
  やっちまった事に取り返しなんぞつけようも無いが、やり場の無い思いは溜まっていく。それも仕方ねぇ事。
  だから そういうモンは、次に君の前に現れる『不幸な悪党』に まとめてぶつけてスッキリすればいいのさ!
  …それを世間じゃ 『八つ当たり』って言うんだけどね。』って。」

ティファニアは ルイズの『頼りにするヒト』の あまりな発言に、つい呆けてしまったが、徐々に可笑しみが湧き出しクスクスと笑っていた。
マチルダは、ルイズが誰の口調を真似ているか それが判っていたので、げらげらと大笑いしていた。
「あ~笑った笑った。
 でも その人が『二番目』てぇなら、『一番』は 一体誰なんだい?」そう問うと、
「『雪風』に決まってるでしょ! 人間じゃ無いけど。」躊躇無く返答があった。
(ワルドの御頭、『許婚』からの信頼度で 貴方 『使い魔』に負けてらっしゃいますよ。)
この事を報告する時の 盗賊改方長官の顔を想像して、マチルダはまた 笑いが止まらなくなった。

「ルイズさんの使い魔、あれは『ガンダールヴ』ですよね。」
「判るの!? 翼のルーン 見えたとは思えないんだけど?」
驚いたルイズは やや身を乗り出してティファニアに聞き返す。
「ええ、なんとなくですけど。
 『虚無』に目覚めると、他の継承者の方々の事が 薄っすらと判るようになるみたいなんです。
 どこの誰が なんて 具体的な事は判りませんが、後二人 目覚めた方がいらっしゃるみたいです。
 たぶん ガリアのほうとロマリアの辺りに。」
「あ~ やっぱりそうなんだ~!」 テーブルに突っ伏すルイズ。
「コッチでも色々と 情報収集は進めてるのよ。で、『候補者』として目をつけてんのが二人居るんだけど、その居所がガリアとロマリアなの。
 これも 当たって欲しくない予想だったんだけどね~。」実に イヤそうな顔。
ティファニアは、「それ 誰なんですか?」とは 言い出せなかった。

気を取り直して ルイズが言う。
「で、『覚醒』すると 他にどんな『特典』が付くの?」
「ちょっ、『特典』って!『虚無』を そんな『タカタ屋の訪問販売』みたいに…」
マチルダは、激安商品に更に幾つもの『オマケ』を付ける 甲高い声の人気商人を連想した。
「フフ でもそんな感じですよね。
 あとは 他の『継承者』が使い魔を召喚した時 これも何となく判ります。『四』の使い魔のうちの どれを召喚したかも。」
「それって、始祖ブリミルが使役したとされる 四体の事?」
「ええ。」 そしてティファニアは 静かに歌い始める。古き言い伝えの歌を。

  『神の左手ガンダールヴ。勇猛果敢な神の盾。左に握った大剣と、右に掴んだ長槍で、導きし我を守りきる。


   神の右手がヴィンダールヴ。心優しき神の笛。あらゆる獣を操りて、導きし我を運ぶは地海空。


   神の頭脳はミョズニトニルン。知恵のかたまり神の本。あらゆる知識を溜め込みて、導きし我に助言を呈す。


   そして最後にもう一人。記すことさえはばかれる……。


   四人の僕を従えて、我はこの地にやってきた……。』

「そっか、それで『雪風』が『ガンダールヴ』だって判った訳ね。」ルイズの疑問が 一つ解けた。
「でも ルイズさんはまだ覚醒していないし、雪風…さんも 何かちょっと違うみたいだから、こうして会ってみるまでは 何とも。
 今は判ります。そして もう一つの『呼び名』が浮かんできたんです。 ……『終わりを告げる者』
 これ 一体どういう意味なんでしょう?」
それは ルイズも感じていた『違和感』の正体。ガンダールヴであってガンダールヴでない 雪風。
学院の機密書籍にも見当たらなかった 新たな呼び名と その『役割』とは? 解き明かされた『謎』が 次の『謎』を生んでいく。
(『覚醒』すれば その辺の事も判るのかしら? 私も『プロテクト解除』、本気で考えてみようかな。)

「そう言えば ティファニアの『使い魔』は?」
「…私は 召喚してないんです。」
「え~、どうして?!」
使い魔同士も会わせてみようと思ったルイズだったが 返ってきたのは意外な答だった。
「以前に何回か 召喚してみようと思った事はあるんですけど、いざとなるとヤッパリ怖くて。
 マチルダ姉さんは 『仕事』で村を出ている事の方が多かったし、一人きりで召喚して 危険な使い魔を呼んじゃったら…」
「悪かったね、ゴメン ティファ。」
ティファニアは 一応、マチルダの『仕事』については知っている。本当のところも。
「いえ いいんです。私達がこうしていられるのは みんな姉さんのお陰なんですから。
 それに 召喚は しなくて良かったと思ってますし。これからも 召喚をする気はありません!」
「そりゃまた 何故?」
「だって…
 ルイズさんの召喚されたのが 『ガンダールヴ』
 ロマリアの方が召喚されたのが 『ヴィンダールヴ』
 ガリアの方が召喚されたのが 『ミョズニトニルン』
 すると 残っているのは。」
「了解。アレ どう考えても貧乏クジ以外の何者でもなさそうよね~
 自爆装置か さもなきゃリセットボタンって感じだもの。」
(始祖ブリミル、あんた もうチョット表現方法ってモンを考慮しなさいよ!あれじゃ 不安を煽るだけじゃないの。)
ハルケギニアの歴史上 最高位の偉人に対し、本日何回目かのツッコミを入れるルイズだった。

「ところで、どうだい 最近の『迷い込み者』の数は?」
真顔に戻ってマチルダが言う。
「…増えてます。
 先月だけで、レコンキスタの兵隊が二十九人 そのほとんどは逃げてきた人達でしたけど。
 『見えず』の魔法も 『忌避の結界』も、三日に一度は掛け直さないと。」
ティファニアの表情が また暗くなる。
ウェストウッド村の外縁部分、路傍の大岩や森の木々には ティファニアによっていくつかの掛け捨て型の魔法がかけられている。
目の前に道があっても 無いものと思い込ませる認識阻害の魔法や、「そちらに行きたくない」と思わせる忌避の魔法だ。
(『幻影』による広域カモフラージュは、その度ごとに術者による発動が必要なので このような場合には不向き。)
それでも防ぎきれない場合は、ティファニアによって記憶操作が行われる。
「やっぱりねぇ。
 いいかい ティファ、これから毎日少しづつでいい 身の回りの物を整理するんだ。持って行くもの 処分するもの、何時でも此処を出て行けるように。」
「ねっ 姉さん、だって 此処を出ても、行く先なんて…!」
「それはアタシが何とかするさ。だからアンタは、準備だけでもしといておくれ。」
悲壮な覚悟と決意を秘めた言葉に ルイズは思わず言ってしまった。
「移転先なら 私に心当たりがあるんだけど…」 
「なんだってぇ! 何処だい、それは?」
「えっとね、 私の『ちい姉さま』のところ。」

ルイズには二人の姉がいる。
長女のエレオノール・アルベルティーヌ・ル・ブラン・ド・ラ・ブロワ・ド・ラ・ヴァリエールと、
次女の『ちい姉』ことカトレア・イヴェット・ラ・ボーム・ル・ブラン・ド・ラ・フォンティーヌだ。
二人とも ルイズとは大きく年齢が離れていて、何故か長女は(胸のサイズ以外)ルイズと余り似ておらず 次女は(胸のサイズ以外)ルイズとよく似ている。
カトレアはヴァリエール姓ではないが 他家に嫁いで行った訳では無い。健康状態に問題のある娘の為 領内で最も気候風土の良い土地を 公爵夫妻が生前分与したのだ。
通常はそこで病気療養に努め いざとなれば治療費の為 領地全てを売り払ってもよいと。
領地経営は有能な家臣に任せ 家臣団は主の館とは別の公役所でその職に励んでいる。領民が納税等でやって来るのは 公役所の方。
カトレアの屋敷は 訪れる者も少ない 『隠れ家』にはもってこいの場所であった。だが、
「フォンティーヌ領主の館だって! そりゃ あの『猛獣屋敷』の事かいっ!?」マチルダが 驚きの声を上げた。

「暫く前の話だけど、盗賊業界ん中で こんな噂が流れてたのさ。
 『フォンティーヌ領主の館にゃ めぼしい警備兵が居やがらねぇ。襲うにゃ もってこいだ』ってね。」
「うわぁ、なんて無謀な!」今度はルイズが驚く。
確かに カトレアの屋敷に警備兵はほとんど居ない。だが それ以上のものが存在していた。彼女のの『ペット達』である。
女性が寂しさを紛らわせる為に ペットを飼うのは珍しい事ではない。カトレアも最初は、普通の愛玩動物や家畜を飼うことから始めた。
彼女と動物達の相性は 非常に良かった。いや 良過ぎた。
動物の数は 見る見る増えてゆき、その種類も 通常はペットに適さない 気性の荒い大型獣にまで広がっていった。
『月の輪オオカミ』や『サーベルパンサー』等の 決して人には懐かないとされる猛獣も、カトレアの前では仔犬や子猫同然になる。
近年では、ヒトに害をなすとして退治される凶悪な獣すら、「私が言って聞かせますから!」と救い出す事もしているという。
(実際 彼女がOHANASIすると、皆 邪気が抜けたように大人しくなるから、誰も「ダメだ」とは言えないのだ。)
そんなペット達が『番犬』を務める屋敷、それがフォンティーヌ領主館。

「で、噂を信じて押し入った連中は、『夜叉ザル』やら『盾髪(シールド)ライガー』『カンフー白黒熊』なんて猛獣に襲われ、命からがら逃げ帰ったってこった。
 以来、フォンティーヌの『猛獣屋敷』にゃ手を出すな!って 盗人にとっちゃ不可侵の場所になっちまってるんだよ。」
「へぇ、その辺りしか出てこなかったんなら 運がイイわよ、ドロボーさん達。」
ルイズは、フォンティーヌ屋敷の警備体制について語り始めた。
屋外を担当するのが 大型獣のチーム。そのリーダー格は 巨大な『血塗れ羆』の「赤カブト」。
ドス紅い体毛は どれ程の血飛沫で染められたものか?豪腕前爪の一撃は 竜鱗すらも打ち砕く。
廊下や各部屋を担当するのが 中型種。多彩な戦力を指揮するのが『赤目 大白鼬』「ノロイ」。
攻撃力では大型種に劣るも 獣とは思えぬ程の知将。部隊運用で相手を追い詰める『白い悪魔』。
そして 床下や天井裏に潜み 索敵や撹乱等の情報戦を担当する小型種。統括するは『知恵ネズミ』「アルジャーノン」。
必要とあれば、BC兵器まがいの攻撃も実施する 侮れないチームでもある。
「まぁ 実際の所、庭木の『トリフィド』や『ビオランテ』を突破するだけでも大変でしょうけど。」
正に 難攻不落の『猛獣屋敷』いや『猛獣要塞』だった。

「ちょ、そんな物騒なトコに、ティファや子供達を住まわせようってのかい!」
「大丈夫。そりゃ かなり見た目が怖いコもいるけど、ちい姉様に敵意を向けたり害をなしたりする奴以外 誰も襲われた事無いから。
 姉様の客人って判れば、当然のように『警護対象』と認識されるだろうし。」
喉元を撫でて貰ってる時の「赤カブト」ちゃんなんて、顔の傷までヘニャッとするほど嬉しそうでカワイイんだから、と言うルイズ。
「カトレアさんって、まるで『ヴィンダールヴ』ですね。お会いしてみたいけど ハーフエルフの私でも受け入れてもらえるでしょうか?」
ティファニアは 割とその気になっているようだ。
「うん。似てるけど違うと思う。
 伝承では 『ヴィンダールヴ』は獣を操るっていうけど、ちい姉様の所のコ達は、自主的に守ってくれているんだもの。姉様の事が好きだから。
 それと ちい姉様は間違いなくティファの事を受け入れてくれる、そう思う。
 以前にも 意見の対立で群れを追われた獣人さんが逃げ込んできたことがあったんだけど、姉様は 獣人にも普通の人間と同じように対応してたわ。
 だから 大丈夫よ、きっと!」
 (あの モグラ獣人さんとクジラ獣人さん、今も元気でやってるかしら?)

結局 この件は、「カトレアの意向を確認してから」ということになった。
カトレアを知らないマチルダからは
「いいかい、話は慎重に進めておくれよ。くれぐれも、他に漏れる事が無いように!」と念押しされて。(まぁ 無理も無いか)
そしてルイズは ウェストウッド村を後にした。
マチルダからもティファニアからも「一晩泊まっていっては?」と引き止められたが、
「もう一人 送ってあげる約束をした娘が居るの。はら マチルダさんに助け出してもらった、」
「ああ、シエスタかい。そういうことなら仕方ないねぇ。」
と 子供達と共に見送ってくれた。

学院への帰路、コクピットでルイズは思った。
(なんか ゆっくり休むつもりで夏休みを取ったのに、出掛けるたびに『やっかい事』を拾ってきてるような気がするわ。)
次は大丈夫だろう。シエスタは貴族でもなんでもない只の平民だし、行くのは彼女の実家があるタルブ村 ワインの産地として有名な静かな農村だ。
(「御先祖様のお宝を鑑定して欲しい」ってのが、ちょっと気になるけど。)
さて どうなりますやら。
              《続く》 

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