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ゼロのルイズと魔物の勇者-06



「ふむ・・・まさかミス・ロングビルが土くれのフーケじゃったとはな・・・。美人だったもので、何の疑いもせずに秘書に採用してしまった」
学院長室で、オスマンは三人の報告を聞く。
ロングビルとは、町の居酒屋で出会ったらしい。
尻を触っても怒らないから採用してしまったのだとか。
何とも人騒がせなじじいである。
「さてと、君達はよくぞフーケを捕まえ、『破壊の杖』を取り返してきた」
ルイズもタバサも活躍した。キュルケは微妙に眉を歪ませる。
「フーケは、城の衛士に引き渡した。そして『破壊の杖』は、無事に宝物庫に収まった。一件落着じゃ」
そして、オスマンは三人に『シュヴァリエ』の爵位申請をしたと言った。
ルイズとキュルケは満面の笑みを浮かべ、喜ぶ。
タバサは既に『シュヴァリエ』の爵位を持っていたらしい。
そして、先ほどまで喜んでいたルイズの顔が神妙になる。
「・・・・オールド・オスマン。スラおには、何もないんですか?」
「残念ながら、彼は人ですらない」
それはそうだ。ダメ元で聞いてみただけ。
ただ、今回の件で、スラおとは使い魔の壁を越えた友情のようなものを感じた。
だからこそ、スラおと一緒に喜びあいたかった。
オスマンは、ぽんぽんと手を打った。
「さてと、今日の夜は『フリッグの舞踏会』じゃ。このとおり、『破壊の杖』も戻ってきたし、予定どおり執り行う」
三人の内、キュルケだけが肩を上げて喜ぶ。
「そうでしたわ!フーケの騒ぎで忘れておりました!」
三人は礼をすると、ドアに向かった。
開けると、スラおが隙間から学院長室に入ってくる。
ルイズは呼び止めようとするが、スラおの目を見てそれをやめた。
「じいさん、ちょっと聞きたいことがあるんだ」
「言ってごらんなさい。君の活躍は聞いておる。せめてものお礼じゃ」
オスマンはスラおの無礼を気にせずに、達観して椅子に座っている。
「あの『破壊の杖』はオイラの世界のものなんだ」
「元いた世界とは?」
「オイラはこの世界の魔物じゃねーんだ」
「本当かね?」
「信じてくれ。オイラはルイズの召喚でこっちの世界に呼ばれたんだ」
オスマンは髭を撫でながら、頭の中で状況を整理しているようだ。
「あれは杖じゃない。『正義のそろばん』っていうんだ」
―――正義のそろばん
それは武器。振れば敵を光の彼方へと消し去ってしまう。
スラおもタイジュの国の図書館に行った時に本で見ただけだが、その効果や威力、形は知っている。
「誰がこの世界に持ち込んだのか知りてぇんだ」
この世界に旅の扉は存在しない。よって、元の世界に戻る方法はない。
でも、自分のいた世界になら方法が存在するかもしれない。
たとえばルーラの杖を使ったらどうなるのか。
キメラの翼を使ったらどうなるのか。
ももんじゃの尻尾は何処を指すのか。
この世界にそれらのアイテムを持ち込んだ者がいて、それを手に入れることができれば・・・。

「あれを私にくれたのは、私の命の恩人じゃ」
オスマンは深く息を吸い込んで語り始める。
「三十年も昔の話じゃ。森を散歩していた私は、ワイバーンに襲われた。それを彼が救ってくれたのじゃ」
「そいつは今どこにいるんだ?」
「死んでしまった。酷い怪我をしていたんじゃ。彼はその『正義のそろばん』とやらでワイバーンを跡形もなく消し飛ばした」
正義のそろばんの効果・・・ニフラムによって消された魔物が何処に行っているのかは誰にもわからない。
目の前の物体が消え去る現象を彼らは、粉々に"破壊"したと思ったらしい。
「彼は『ここはどこだ。元の世界に帰りたい』と言っておった。彼が命を諦めた時、持っていた『正義のそろばん』を私に託したのだ」
そしてオスマンはそれを『破壊の杖』と名付けて、宝物庫に大切に仕舞ったいたのだ。
「そいつはどうやってこの世界に来たんだ?」
「彼がどのようにしてこの世界に来たのか・・・それは最後まで分からんかった」
「そっか・・・」
結局、元の世界に戻る手掛かりは手に入らなかった。
だが他にも確かにこの世界に来ていた人間がいる。おそらくは商人だろう。
希望の光が僅かに見えた。
「あともう一個聞きたいことがあんだけど・・・」
「時間はある。なんでも聞きなさい」
「オイラの胸・・・じゃ、なくて背中に変な文字が浮かび上がったんだけど、あれ何なんだ?」
エボルシャスによって、人間の姿になった時は、胸に浮かび上がるそれは、スライムの姿では背中に浮かび上がった。
「ふむ、それはおそらくリーヴスラシルの印じゃ。伝説の使い魔の印じゃよ」
スラおは異世界からやってきた特異的な存在。
最初は信じていなかったオスマンも、もしかしたらという考えが強くなっていた。
確かな情報ではないが、一応スラおに伝えておいても問題はないだろう。
「なんで伝説の使い魔なんかにオイラがなるってんだ?」
「わからん」
オスマンはそれ以上の情報を持っていなかった。
しかし、伝説の使い魔、リーヴスラシルの印が自分に浮かび上がった。
と、なれば自分の魔力を消費せずとも特技を使える理由に納得がいく。

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スラおはバルコニーの石造りの手すりの上で月を眺めている。
食堂の上の階。そこは大きなホールになっており、舞踏会はそこで行われている。
当然スラおは踊れないので、用意された食事と酒を胃袋の中へ詰め込めるだけ詰め込んで、夜風に当たっていた。
「楽しんでるみたいね」
真っ白なドレスに身を包み、普段とは比べ物にならないほどの輝きを放つルイズがバルコニーの枠に手をつき、話しかける。
「まぁ、飯は旨かったぜ。肉もあったしな」
スラおは素っ気なく答える。
普段はルイズのことを馬鹿にしている男達も、ドレスを纏ったルイズの美貌には自分を誤魔化すことができなかったのか、多くの者が声をかける。
しかし、ルイズは全ての誘いを断ってスラおの元にやってきた。
そんな様子を見ていたスラおには、ルイズの行動が理解できなかった。
「あのね、聞きたいことがあるんだけど・・・」
ルイズの喋り方には何故か人間の色気のようなものが含まれていた。
「破壊の杖が商人しか使えないって・・・ホント?」
なるほど。ルイズは気にしているのだ。商人しか装備できない武器を何故自分が使うことができたのか。
スラおはそれを察し、言葉を濁す。
「えぇ~と、それはだなぁ・・・あの魔法は実は賢者にも使えんだよ」
確かに敵を光の彼方へ飛ばす魔法、ニフラムは商人でなくとも使える。
しかし、それではフーケが破壊の杖を使えなった理由が説明できない。
そうは思ったが、ルイズはあえて何も言わなかった。
「ねぇ、帰りたい?」
ルイズはスラおの目を見る。
「それはオイラが別の世界から来たって信じてくれるってことか?」
「信じて・・・あげるわ」
「帰りたいというよりは、帰らなくちゃならねぇんだ。オイラのこと、クリオ達はきっと待ってると思うからよ」
心なしか、ルイズが残念そうにしているように見える。
しばらくの沈黙ののち、ルイズが口を開く。
「ありがとう」
突然そんな風に言われて、スラおは軽く頬を染める。
「な、なんだよ急に。気持ち悪ぃな!」
「うるさいわね。せっかく私が感謝してあげようっていうのに」
「いいやい、別に。オイラはお前の使い魔だからな。ルイズを助けるのは当然だっつの」
ルイズはゴーレムの攻撃からスラおが身を守ったことに対して礼を言ったのだろう。そう思っていた。
「そうじゃなくて、私のこと励ましてくれて・・・ありがとうってこと」
「そ、そんなこと別に礼を言われるほどのことじゃねぇって・・・」
神妙な面持ちで話しかけてくるので、なんだか恥ずかしくて目を見れない。
「私、あんたが元の世界に帰れるように全力を尽くすわ」
ルイズは約束してくれた。それはいずれ果される固い約束。
「だからあんたが帰っちゃうまでは・・・私の友達でいてね」
使い魔ではなく友達という関係。
片方が片方を一方的に使役するのではなく、互いに協力し合う関係。
ルイズはそれを強く望んでいるようだ。それはスラおも同じだった。
二つの月が、初初しすぎる二人を照らした。



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