あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのルイズと魔物の勇者-04



厨房は目の前。
ただシエスタにありがとうと言ってもらえるようなことをしたかっただけ。
それがこんなにも面倒なことになるとは、夢にも思わなかった。
まず第一のアクシデント―――タバサとの遭遇。
ここ数日、ルイズと共に行動して、何人かの生徒の名前は覚えた。
その一人、タバサが厨房に向かうスラおの目の前に立ちはだかった。
「誰?」
意外にも、無口で本にしか興味を示さないタバサが先に声を発した。
「・・・ゆ・・・勇者・・・かな・・・」
何故、食堂で食事をとっているはずのタバサがこんなところにいるのか。
当然、生徒でも教師でも使用人でもなく、普段の使い魔の姿でもないスラおが不審人物としてとらえられるのは当然である。
それはスラお自身も理解していた。
だが、別に見つかった時の言い訳を考えていたわけでもない。
そのため、つい苦しすぎる言い訳が口をついた。
「嘘」
それは驚きのあまり言ってしまったものではなく、明らかに見透かしたものだった。
「う、嘘じゃないって!オイ・・・オレは勇者だ!間違いないって!」
タバサは何も言わずに杖を構える。
相手が自分のことを兵士か何かだと言うのなら、冷静に事情を聴いて対処もしただろう。
しかし、勇者などと意味不明な供述をする不審者を放っておくわけにはいかない。
上半身裸で、威厳のない話し方。
自分の中の勇者像を汚されることが我慢ならなかったという理由もある。
「ま、待てって!何もしねーって!」
ただでさえ困った状況にも関わらず、問題は畳み掛ける。第二のアクシデントだ。
「あら?何やってるの?タバサ」
テレテレテレテレテー キュルケが現れた!
「その殿方はどなた?」
「不審者」
タバサは何の躊躇いもなく、自称勇者を追い詰める。
「あら素敵」
「何が素敵だっつの!目が笑ってない!」
タバサがそう言うからだろうか、キュルケもスラおに敵意を向ける。
逃げるしかない。こんなところをシエスタに見られるわけにもいかない。
しかし、世の中そんなにうまくいかない。第三のアクシデントは早速やってくる。
「あの、どうかなされましたか?」
厨房の目の前で騒いだせいか、シエスタが中から現れ声をかけてくる。
「不審者」「不審者よ」
二人が同時に答える。
「ま、まぁ、大変!」
この姿を見られた。シエスタにとってはもはやただの不審者でしかない。
シエスタをオロオロさせてしまったことにスラおはオロオロする。
次の瞬間、走っていた。それもとんでもない速さで。並の人間では目でとらえることもできないほどに。
「追いかけるわよ!」
キュルケがそう言うと、タバサは頷いた。
こうしてスラおのほんの数時間の逃亡生活が始まるのだった。

日は沈み、生徒は皆自室に帰ったころ、ルイズは一人で庭にいた。
「スラおーー!」
昼から姿の見えない使い魔を探す。
「もう!あのバカ使い魔、勝手にどっか行っちゃって」
「こんな時間に草むしり?」
そこにキュルケとタバサがやってくる。
「違うわよ。スラおを探してるの」
「逃げ出したんじゃないの?あんた頼りないから」
「な、そんなわけないじゃない!そんなわけ・・・」
「ま、いいわ。私達も人を探してるの。金髪で剣と盾を背負った上半身裸の変態を見なかった?」
「見てないわ」
「そう」
キュルケはそれを教師達に伝えることもなく、完全に不審者退治を楽しんでいた。
そのため、ちょこまかと素早く逃げるスラおを捕まえられずに見失ってしまった。
午後の授業にはきちんと出席していたので、まだあの不審者が学院内にいると本気で思ってはいない。
ちょっとした暇つぶし程度だ。
その時キュルケは背後に気配を感じた。
もしかしたら例の不審者かもしれないと、杖を構えて勢いよく振りかえる。
しかし、そこにいたのは人間ですらなかった。
巨大なゴーレムだ。
「きゃあああああああ!」
キュルケが叫んで逃げ出す。タバサもそれに続く。
ルイズは放心状態。ただゴーレムを見上げて突っ立っている。
ゴーレムは宝物庫を殴る。どうやら狙いはルイズ達ではないようだ。
それを理解したルイズは、逃げるどころか攻撃する。
使いたかった魔法が何かは分からないが、とにかく爆発は起こる。
ゴーレムの右腕が僅かに削れた。そんなかすり傷程度のダメージしか与えられない。
しかもその傷は一瞬で回復してしまう。
「そ、そんな・・・」
恐ろしく巨大なゴーレムはおそらくトライアングルクラスのメイジによって作られたものだろう。
そんな物に喧嘩を売るとは正気とは思えない。
それでもルイズは引かない。再び魔法を使う。そして爆発。
ゴーレムの標的は当然ルイズに変更される。目的を邪魔するものを早々に排除してしまおうというわけだ。
すると、ウィンドドラゴンに乗ったタバサとキュルケがやってくる。
なんとかルイズを連れて逃げようとするが、それよりも早くゴーレムの拳がルイズに振りおろされる。
それでもルイズは諦めずに、必死で杖を振る。
次の瞬間、ズドンッという音とともに地面がへこみ、土煙が立ち込める。
「ルイズ!」
キュルケが叫ぶが、ウィンドドラゴンは仕方なく上空へと昇りゴーレムと距離をとる。
「う・・・んっ・・・」
潰された。そう思った。しかし手が動く。瞼も開く。息もしている。
金色の髪が揺れる。
褐色の肌をした男がルイズを抱きかかえている。
筋肉はゴツゴツしているが、妙に心地良い。
「だ、誰!?」
状況が飲み込めないルイズはつい暴れてしまう。
「もう大丈夫だ。怪我してないか?」
男はまっすぐルイズの目を見て言う。
ルイズの頬がほんの少し赤く染まる。
ギーシュとは正反対の顔つき。
それは悪い意味ではない。
美しいという表現よりも凛々しいという表現がぴったり・・・そんな顔つき。
「倒せばいいんだろ?アレを」
男はゴーレムの方に視線を向ける。
「そ、それはそうだけどっ・・・だからあんた誰なのよ!?」
ルイズはそっと、その両腕から降ろされる。
ルイズが男の正体がスラおであることに気づくことはない。
それも当然、まさかあのちんちくりんなスライムが人間の姿になろうとは想像できるはずもない。
「あ!あの変態・・・ルイズを助けてくれたみたい」
キュルケはほっと胸をなでおろす。
ゴーレムの右肩には黒色のローブを羽織ったメイジが立っている。
キュルケがそれを自称勇者に叫んで伝える。
「肩の上の男を狙って!」
「いや、女だ」
その一言に、キュルケもタバサもルイズも目を丸くする。
深くかぶったフード・・・その見た目から性別を言い当てるのは難しい。
そしてスラおは剣を抜いた。
このゴーレムはギーシュが作り出したものとは違う。
当然自分の世界のゴーレムでもない。
相手の実力が分からないのなら手加減をしなければいい。
スラおは剣を全力で振りきる。
ゴーレムまでは距離がある。傍から見ればただ素振りをしているだけだ。
しかし、不可視の斬撃は踊り、ゴーレムの両足は切断され、粉々に砕け散る。
「なっ!?」
黒ローブの女は慌てて杖を振りゴーレムにバランスをとらせる。
「す、すごい・・・」
ルイズは開いた口が塞がらない。
「何あれ!?風の魔法?」
「分からない」
キュルケも驚き、タバサに状況の解明を求めるが、タバサもまた何が起こっているのか分からなかった。
その斬撃に魔力と思しき気配は、全くと言ってなかったからだ。
スラおは再び剣を振る。
その一振りは黒ローブの女を狙ったものだ。
女はゴーレムから飛び降り、難を逃れた。
しかし、ゴーレムは右肩から胴体を縦に真っ二つにされた。
力加減を間違えたのか、宝物庫までも破壊してしまう。
「次元が違う」
地上に降りてきたウィンドドラゴンに跨るタバサが呟いた。
「終わったぞ」
そう言ってルイズの元に歩み寄るスラおとキュルケ達の目が合った。
キュルケはスラおを追いかけまわしていたとは思えないほど目を輝かせて、ニッコリと笑顔を浮かべている。
誤解が解けたということだろうか。それとももう追いかけるつもりがないだけだろうか。
スラおは申し訳程度に笑顔を作るが、それは引きつっていた。
「ゴ、ゴーレムが・・・・」
今だに緊張状態を緩めないルイズがスラおの背後を指さす。
振り返ると、絶命させたはずのゴーレムが立ち上がり、破壊した部位も元通りになって歩き始めている。
「へー、中々やるじゃねーか」
黒ローブの女はまだゴーレムに乗っている・・・ないしは近くにいるはずだ。
スラおは両手で剣を強く握り、振り翳す。
最大の一撃を放てば、ゴーレムとその一帯を消し炭にすることなど容易い。
だが、剣が振り下ろされることはなかった。
急に胸が痛み出す。鳩尾の部分に浮かび上がる不可思議な文字。
「いててててててっ!」
スラおは瞬時に痛みの意味を理解した。
力を無理やり塞き止められる感覚・・・。
元の姿に戻る・・・そう感じて走り出す。
「ちょ、ちょっと!」
ルイズが呼び止めようとするがそんなことは聞いていられない。
ゴーレムは逃げている。ルイズ達に危険が及ぶことはもうないだろう。
逃亡する敵を倒すことよりも、まず自分の正体を隠すことこそ最重要事項だ。
正体を知られることは、弱みを握られることだ。
と、それらしい理由を挙げてはみるが、実はただ恥ずかしいだけだったりする。
しばらくたって、ゴーレムは自然に崩れ去り、そこに黒ローブの女はいなかった。
翌朝・・・。
学院の教師達は慌ただしく動き回る。
土くれのフーケが宝物庫に仕舞われていた『破壊の杖』を持ち去ったからだ。
昨晩、巨大なゴーレムを使い、宝物庫を破壊した黒ローブの女がそうだ。
破壊の杖を盗んだ上に、宝物庫の壁にちゃっかり犯行声明まで残していった。
『破壊の杖、確かに領収いたしました。土くれのフーケ』
それを知ってスラおは悔しがる。
そんな余裕を与えたつもりはなかったのだが・・・フーケがそれだけの実力者だったということだろうか。

あの後、案の定スラおは元のスライムの姿に戻ってしまった。
しかし、これもまた案の定、瀕死状態に陥ることもなかった。
胸に浮かび上がったルーンはスライムの姿ではどこにも浮かび上がらない。
ルイズ曰く、背中にルーンがあったらしいが、それはもう消えてしまっている。
だが、あのルーンが自分に魔力を提供していることは確かだろう。
体に刻みこまれていないだけで、ルーンの力は確かに存在しているのだ。
ルーンの魔力をもってしても維持しきれないのだろうか、自分のHPもMPも消費しない代わりに、エボルシャスの力が制限されてしまうらしい。
普段なら力を誇示しても、もう少し長い間人間の姿を保てるはずだ。
などと考えながら、スラおは学院長室の外で聞き耳を立てる。
フーケの件で、目撃者であるルイズ達が呼び出されたのだ。
当然、使い魔は部屋の外で待機させられる。
微かに聞こえてくる会話・・・数人の教師が怒鳴りあっている。
それが途端に静かになって、こんどはルイズ達が何か喋っているようだ。
後ろから足音。緑色の長い髪、メガネを掛けた頭の良さそうな女が勢いよく扉を開ける。
急ぎの用だったのか、扉を閉め忘れてくれたおかげで、耳を澄ませなくとも会話を聞くことができるようになった。
「ミス・ロングビル!どこに行っていたんですか!」
息を荒らげて、コルベールが怒鳴る。
ロングビルと呼ばれた女は冷静に答える。
「申し訳ありません。朝から、急いで調査をしておりましたの」
「調査?」
「そうですわ。フーケの居所が分かりました」
「ほう、流石はミス・ロングビル。仕事が早いうえに的確じゃ」
オスマンは大きく首を縦に振り、感心した。
その流れで捜索隊を教師の中から募るが、誰も名乗り出るものはいない。
結局、目撃者のルイズ、キュルケ、タバサの三人と案内役のロングビルが捜索隊としてフーケを追うことになった。
「オ、オイラも一緒に行っていいよな!?」
学院長室から出てきたルイズに問う。
「当然でしょ。あんたは私の使い魔なんだから!そんなことより昨日はどこに行ってたのよ」
その問いには答えられなかったが、勇者のことを聞かれることもなく、一先ずは安心してルイズの後についていったのだった。



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