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ゼロのルイズと魔物の勇者-03



「諸君!決闘だ!」
ギーシュが薔薇を天に掲げて叫ぶ。
広場はすっかり見物客でいっぱいだ。
そのおかげで場所を知らないスラおも難なくたどり着くことができた。
「とりあえず、逃げずに来たことは、誉めてやろうじゃないか」
ギーシュはすでに勝利を確信しているようだった。
ルイズの使い魔が召喚されたとき、妙な魔法を使って生徒達を攻撃したことは知っている。
しかし、ミスタ・コルベールにあっさり相殺されたそうだ。
ギーシュは薔薇をスラおに突きつける。
「覚悟はいいかね?」
「あったりめぇだ!さっさとお前の使い魔を出しやがれ!」
「何を勘違いしているんだい?君の相手はこの僕さ!」
「へ?」
ギーシュが薔薇を振ると、一枚の花弁が中を舞う。
すると花弁は一瞬で甲冑を着た女戦士の形へと変わった。
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。よもや文句はあるまいね?」
「お?おう・・・?」
てっきりモンスターバトルだと思っていたが、ギーシュはそれをきっぱりと否定した。
しかし、目の前に現れた甲冑の戦士はとても人間には見えない。
主人とその使い魔が二人で戦うということだろうか?
以前にも戦闘に参加するマスターと戦ったことがある。
その場合、二対一の戦い。ルイズは決闘をやめさせようとした。一緒には戦ってくれないだろう。
それにルイズは魔法をまともに使えない。
「僕の二つ名は『青銅』。青銅のギーシュだ。従って、青銅のゴーレム『ワルキューレ』がお相手するよ」
ギーシュがそう言うと、女戦士の形をしたゴーレムはスラお目掛けて突進してきた。
「ゴーレム・・・やっぱりモンスターじゃねーか!」
スラおはゴーレムの攻撃を軽くかわす。
「む・・・なかなかやるようだね。でも次はないぞ!」
ゴーレムは凡人ではとらえられないほど素早く拳を振る。
しかし、スラおにとっては大したスピードではない。
「しばらく様子見しようと思ったけど、マスター攻撃してくるわけじゃねぇし・・・こっちも攻めるぜ!」
マスターのギーシュがモンスターのゴーレムに一切の指示を出さないことに疑問を抱きつつも、攻撃態勢に入る。
ゴーレムも魔法を使うわけでもなく、ただ通常攻撃で攻めてくるだけ。
「これなら楽勝だぜ!ベギラマァ!」
ゴーレムはその一撃でボロボロと崩れ落ちる。
「な、なん・・・だと・・・?」
ギーシュはその魔法にこれほどの威力があるとは思っていなかったため、驚きを隠せない。
それを見ていたルイズは呆然とする。
すぐにでも止めに入ろうとしたが、あっさりとギーシュのゴーレムを倒したことで、どうすればいいか分からなくなったからだ。
「も、もしかしてあいつって・・・強い?」
ルイズは息を吐くように呟いた。

「やっぱりあれ、『火』系統の魔法で間違いないわね」
決闘を観戦する野次馬の中に紛れていたキュルケが、スラおの魔法を分析する。
「でも、性質が僅かに異なる」
隣にいたタバサは周りの歓声にかき消されてしまいそうな声で言う。

「調子に乗っていられるのも今のうちだ!」
ギーシュが力一杯薔薇を振ると、今度は先ほどと同じようなゴーレムが六体現れた。
「げ!?」
スラおは現れたゴーレム達から距離をとる。
基本的にはモンスターバトルは三対三のデスマッチ。
六体の魔物を同時に一人で相手にしたことは今までにはなかった。
遅れをとったスラおはあっという間にゴーレム達に囲まれ、一斉攻撃を受ける。

「スラお!」
ルイズは無意識のうちに叫び、駆けていた。
「落ち着きたまえ、ルイズ。もう決着はついた」
ギーシュはすっかり平静を取り戻し、余裕の表情で諭した。
ルイズはその場に崩れ落ちる。
「ベギラマァ!!」
その時、スラおを取り囲んでいたゴーレムが強い光に包まれた。
三体のゴーレムが粉々に砕ける。
「なんでぇ。大したことねぇじゃねーか」
一見、スラおは傷つきボロボロになっているようだが、その表情は余裕そのものだった。
「な、なぜ倒れない!?」
ギーシュが再び慌てふためく。
「何をするかと思ったらただの通常攻撃じゃねーか。攻撃力も防御力も、オイラの方が何倍も上だぜ!」
一度に三体のゴーレムを同時に倒されたギーシュはとっさに残りのゴーレムをばらけさせる。
「この程度なら体当たりでも倒せそうだぜ!」
スラおは凄い勢いで自分の右側に回り込んだゴーレムに体当たりする。
ゴーレムはばらばらになって動かなくなった。
「ベギラマァ!!」
スラおに隙はなく、体当たりの直後、すぐに魔法で残り二体のゴーレムを攻撃する。
「どうだ、まだいるか?」
ギーシュのゴーレムは全部で七体。これ以上ゴーレムは出せない。
「ま、参った」
ギーシュは震えた声で負けを認めた。
決闘を見ていたのは生徒達だけではなかった。
騒ぎを聞きつけ、『遠見の鏡』で一部始終を見ていた者たち。
それはコルベールとトリステイン魔法学院の院長、オールド・オスマンである。
「オールド・オスマン。あの使い魔、勝ってしまいましたね・・・」
「うむ」
コルベールはスラおの背中に浮かびあがったルーンが、『リーヴスラシル』のものではないかと、オールド・オスマンに報告に行っていたのだ。
「やはりあの使い魔が、始祖ブリミルの用いた伝説の使い魔『リーヴスラシル』・・・」
「そうとは限らん。そのルーンを見たのは一瞬だったのじゃろ?」
オスマンは白い髭を撫でながらコルベールの考えを否定する。
「それにそのルーンは今、消えてしまっている」
「た、確かにそうですが・・・」
ルイズの使い魔が魔法を使える以上、リーヴスラシルの力で勝利したわけではなく、自らの実力で戦ったのかもしれない。
コルベールはそう考えなおし、オスマンに一礼して去って行った。
一人きりになった部屋でオスマンは窓越しに空を見上げる。
「しかし、嫌な予感はするのう・・・」

スラおはルイズの部屋で治療を受けていた。
「いて、いてててて」
ルイズはスラおの体に傷薬を染み込ませた綿を押しつける。
「我慢しなさい」
「この程度のダメージなら薬草一個で一発だって」
自分の世界に存在していた回復アイテム――薬草。
「薬草?この傷薬にもいくつか使われてるんじゃない?」
「えぇ!?こっちの世界の薬草はあんまり役に立たないんだな・・・」
この世界で薬草以上の回復を可能にするものは、基本的にはホイミなどと同じく魔法によるもの。
もちろん世界樹の葉もなければ、神父に頼んで生き返るなんてこともできない。
それを知ったスラおは少し焦る。
「ってことは、あんま無茶出来ないってことか・・・」
全滅すればタイジュの国に戻ることができる。
しかし、それはタイジュの国のモンスターマスターがいる場合だ。
今のスラおは一匹だけでこの世界に来て、かつ一時的とはいえ、新しいマスターの元についている。
死ねば魂はこの世界に留まり、生き返ることも出来ない。
「あぁ、早く帰りてぇ・・・」
スラおは痛みを噛み締めた。

――――――――――――――――――――――――――――――――


スラおがこの世界にやってきて数日が過ぎた。
スライムであるが故、平民に慕われることもない。
スライムであるが故、女の子に言い寄られることもない。
スライムであるが故、当然剣を買う必要もない。
ただひたすら、ルイズの服を洗濯し、たまに厨房にシチューを食べに行くぐらい。
ギーシュとの決闘以来、戦う機会もなく、体は鈍りきってしまっている。
「あー暇だ」
ルイズが食事をしている間はただただ暇だ。
この日は朝食も昼食も、お預けされることなく、厨房に行く必要もない。
しかし、スラおにはある考えがあった。
それはシエスタへの恩返しである。
暇でなければそんなこと忘れてしまうスラおだが、何度も世話になっている分、ただ施しを受けるだけの自分に後ろめたさを感じていた。
でもこの体ではおそらくは何の役にも立てないだろう。
シエスタは基本的に平和に暮らしているので、その身を守る仕事は当分まわってきそうにない。
――――ならば人間になればいいのだ

ギーシュと戦いを終えて分かったこと・・・それは自分の魔力がほとんど消費されていないことだ。
何度かベギラマを使ったが、MPが減ったような気はしなかった。
何故かは分からないが、別の何かが代わりに魔力を提供してくれているかのようだった。
と、なれば試すほかない。
スラおはキョロキョロと周りを見回し、誰もいないことを確認する。
そして念には念を入れて物陰に隠れた後、呪文を唱える。

『エボルシャス』

己の思い描く"最強"のイメージ―――
こうありたいと強く願う憧れと意思―――
その思いの力が集約した時、自らの姿形すら変わる技・・・
マダンテをも超越する技・・・
特に見せ場でも何でもないのに使うことになろうとは思いもしなかった技・・・
強い光がスラおを包むと、人の形へと変わっていく。
それは勇者。
金色の髪に褐色の肌。
手には盾と剣が握られている。
その剣はとても名刀には見えず、その盾は突き出された槍を防ぎきれるとは思えない。
しかし、彼に斬れない物などなく、彼を傷つけられる者は魔王か、それに匹敵する力を持つ者以外にない。

そんな最強の呪文にも弱点が存在する。
自らのHP,MPを全て消費する。
決して死んでしまうわけではなく、箪笥に小指をぶつける行為が致命傷になりかねないほどの瀕死状態に陥る。
そんな技を戦闘以外に使うべきではない・・・それはスラおも重々承知である。
だが、スラおには考えがあった。
理由は分からないが、おそらく今の自分の魔力は無限・・・
そうでなくても魔力を消費しているのは自分自身ではなく、別の何かである。
別の何かが魔力を提供してくれているとして、その分のMPと自分のMPを合わせればHPまで消費する必要はないはず。
つまり元の姿に戻った時、瀕死になることはない・・・という考え。
たとえこのような可能性があったとしても、100%の確信がない限り普通は試す者などいないだろう。
しかし、基本的に楽天的なスラおには、『思い立ったが吉日』という言葉がよく似合う。
「よっし、これなら・・・」
スラおは握っていた剣を背中の鞘に納め、その上に盾を被せるように背負う。
勇者の力を誇示すれば、僅かな時間で元のスライムに戻ってしまうが、ただ人の姿を保ち続けるだけならば数時間は持つ。

無駄に長い説明で忘れてしまいそうになったが、目的は人の姿になってシエスタに恩返しをすることである。
今ならデザートを運ぶことも容易い。気持ち悪がられることもない。
最弱のモンスターであるスライムだというコンプレックスから、完全に解放され、スラおはシエスタのいる厨房へと向かう。




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