あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

香霖堂日誌 ハルケギニアにて

今、僕は背もたれもない粗末な椅子に腰かけ本を読んでいる。
僕の今いる部屋、というよりは建物は小さな掘っ立て小屋だ。
地上高い塔の屋上に建てられているため時折強い風が吹いてこの粗末な作りの建物に風が入りこむ。
バタン!バタバタ!
扉が開けられ、風ではなく人が侵入してくる。その風よりも無粋な来訪者はピンク色の髪をした少女だ。
「何してんのよ、アンタはーーーー!!!!!!」
彼女は地面を踏み抜くんじゃないかと思うほど荒い歩き方で僕のもとまで来る。
そして小屋が震えるんじゃないかというほどの大音声を耳元で張り上げた。
そこまでしなくても聞こえる。うるさくてしょうがない。
「何を騒いでいるんだ、君は」
「何を?っじゃないわよ!品評会よ、品評会!!」
本当にうるさい少女だ。
しかしはて?品評会とはいったいなんだったか?
「アンタがいないせいで不参加になっちゃってとんだ恥さらしよ!ああ、もうせっかく姫さまがせっかくいらしたのに……」
彼女が勝手に喋っていく情報から僕は品評会が何かを思い出した。
そう、確か魔法使いたちが自分たちの呼び出した使い魔をお披露目する舞台であるということだ。
さて、なぜそのようなもので僕が少女に責められているかというと、
目の前の少女ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールが魔法使いで、
僕こと森近霖之助は彼女の使い魔であるということになっているからだ。
しかし使い魔と言っても僕は無縁塚で見つけた鏡に触れただけだ。
そうしたらいつの間にか、幻想郷とは違う――しかし外の世界とも違う――世界に連れてこられ、無理矢理接吻をされて使い魔の契約をさせられた。
そのような強引な使い魔との契約があるであろうか。どう考えても無効だ。
だがそのような方向に議論を進めるのはやめておく。
このルイズという少女は何やら頭が固く、その契約の無効を訴えてもまるで話が通じないのだ。
しかし商売でもっとも相手にしたくないタイプかと言うとそうでもない。
頑なな部分もある分、妙に律儀で言質をとることが出来れば良い顧客となるだろう。
世間一般的に言うなら詐欺に引っかかりそうなタイプというやつかもしれない。
だいたい……
「八卦炉を君に与えたことで僕は使い魔としての義務を果たさなくていいという契約だったんじゃなかったのか?」
うぐ。と、短気なわりには律儀な少女は言葉を詰まらせる。
「で、でも……」
「でもも、何もないだろう。そもそも僕が品評会に出たところで何をすればいいんだい?突っ立っているだけでいいのかい?」
そこでルイズは今気付いたという顔をする。
「え、それは使い魔だから何か特技を見せればいんだけど……」
言葉を続いてくうちに声は重くなっていく。彼女もようやく気付いたようだ。
そう、僕の能力は「道具の名と用途がわかる程度の能力」だ。
道具屋の自分にとっては最高の能力であるが、誰かに見せるのに向いている能力ではないだろう。
多くの人間に見られながら持ってこられた道具の名前と用途を言い当てるような隠し芸じみたことをする自分の姿を想像するとぞっとしない。
というか面白くもないだろう。きっと同じ想像をルイズもしたはずだ。
桃色少女は、はあと溜め息をついた。
「役立たず…」
失礼なことを言う。僕の能力は見世物ではないということだ。
「もういいわ。お茶でも飲むから」
彼女は気を取り直したようであった。以前までお茶を置いていた場所を探している。
「ああ、お茶はそこの棚に置いてあるから」
僕は新しくお茶置き場になった少し高いところにある棚を指さした。
「ありがと」
「でも緑茶には手をつけないでくれよ」
この世界では紅茶が主流らしく緑茶はなかなか手に入らないのだ。
飲まないわよ。
ルイズは返答しながら体を伸ばして棚の上に手を伸ばそうとする。しかし背が足りないために届かない。
僕のいた幻想郷では空を飛ぶ能力は何かしらの力を持つ者はみなが持っている能力であった。
それと同様にこの世界の魔法使いたちも空を飛ぶ魔法というのは基本的な魔法の一つであるらしい。
しかし目の前の少女は、うんしょうんしょと言っているだけで地から足を浮かす気配はない。これはこの少女が魔法を使えないためだ。
正確には魔法を使おうとすると爆発ばかり起こってしまうというものらしいが。
とはいえ彼女が魔法を使えないおかげで自分は八卦路を最大の価値で売りつけることが出来たわけだが……
「ちょっと見てないでとってよ」
自分の体格では取れないと悟ったルイズが頬を膨らませて文句を言ってくる。
「やれやれ、人づかいが荒いね」
「荒くないわよ。だいたいあんたはいつも……」
「はい」
また文句を言いそうなルイズにお茶っ葉を手渡す。もちろん、虎の子の緑茶ではなくこの世界で一般的な紅茶の葉だ。
「む……ありがと」
ルイズは小屋の奥のほうに入っていった。奥といってもこの小さな掘っ立て小屋にそこまでの広さはないので単にお茶を沸かしに行っただけだ。
ところでこの小屋の主は僕ではない。コルベールという魔法教師だ。
少し頭の寂しい魔法使いでどこか頼り気なく見えるものの、科学への熱意は素晴らしい。
彼は魔法のために、科学が発展していないこの世界で科学の重要性に一人着目し、そして原始的なものではあるがエンジンを作成していた。
僕は彼に感銘を受け、そして彼も僕の知識に感心を持ち協力関係になったというわけだ。
そういうわけでたびたび僕は彼の研究室であるこの小屋に訪れている。
ルイズは来る理由などないはずだが、僕の主だと言い、たびたび訪れお茶をちょうだいすることを当たり前としつつある。
ずいぶんとたくましいことだ。そういえば彼女には新しいお茶の置き場は高すぎたようだ。また別の低い場所に移し直すか。
それとも空でも飛べるように何かアイテムを作って渡すのもいいかもしれない。彼女はきっと喜ぶだろう。
この世界に来てすぐに八卦路を渡したときのことを思い出す。
会ってすぐに彼女が魔法を使えないことに悩んでいるのはわかったから、魔法を使えるようにするマジックアイテムを作って渡した。
手持ちとこの世界の材料で作った、ちょうど魔理沙に渡した八卦路のレプリカのようなものだ。
客の欲しがっているものを渡すのは商売では当然のことであり、そうやって彼女から生活条件の改善を勝ち取ろうとしたわけだ。
そしてそれは結論からいえば大成功であった。
「な、なによ!ちょ、ちょっと火が出ただけじゃない!!」
などと口では言っていたが彼女の魔力によって八卦路からちょっと火が出たときの彼女の嬉しそうな顔といったらなかった。
打算目的で作ったのに、商売人として誇らしい気持ちになるほどであった。
きっと今もお湯を沸かすために八卦路を使ってちょっと火を出して嬉しそうにしているに違いない。
「この小屋やっぱり暗いわね」
そうこう考えごとをしているうちにルイズが戻ってきた。
「やあ、嬉しそうだね」
「はあ?何がよ」
ルイズはぶすっとしていた。
彼女は机の上にティーカップとティーポットを置き、椅子に腰かける。
「いや、僕の作った八卦炉を気に入ってくれてるかっていう話だよ」
「どうしてそういう話になるのよ……」
どうやらイマイチ僕の言いたいことは伝わっていなかったようだ。
「まあ…もしかしたら…気に入ってるかもしれないわね……」
ルイズはポケットから八卦路を取り出して手元で転がすように撫でる。
「かもしれないってどういうことだい」
「もう、うるさいわね。いいじゃないなんでも……。でも役に立ったのは認めていいかもね」
ルイズは不満げに顔を背けてから喋り始めた。その横顔から察するにやはり八卦路を気に入っているのであろう。
「これのおかげでギーシュとの決闘にも勝てたし。土くれのフーケにも勝てて、勲章もらっちゃうし」
「うん、道具屋としてアイテムを気に入ってくれたようで何よりだ」
ギーシュと決闘したときは停学喰らっちゃうし、実家に呼び出されたりで散々だったけどね。と不満を笑みのまま更にこぼす。
「まさかどっちにしてもアンタが何にも助けてくれないとは思わなかったけど」
笑みが薄くなりジトっと僕を見てくる。
「何を言っているんだい。どっちにしても僕が八卦炉を渡したおかげでどうにかなったんだろう?」
はあ、とルイズは溜め息を吐いた。
「アンタってそういうヤツよね……。使い魔とかおいといて大人として少女が決闘したり、冒険に出たりするのをなんとも思わないの?」
「別にいいんじゃないか。僕の周りはそういう子ばっかりだったよ」
「どんなところに住んでたのよ……」
ルイズは呆れたようだった。確かに霊夢にしても魔理沙にしても普通じゃないかもしれないな。
普通を売りにしている魔理沙が知ったら憤慨するかもしれないが。
どっちにしてもわたしの決めたことなんだからアンタに色々言うのはおかど違いなんだろうけどね。
と、ルイズは自己完結した。そこまでわかってるなら愚痴を言うのをやめて欲しいのだが……。
それから彼女は紅茶を入れてゆっくりと飲み干した。
「ね、ねえ。ところで八卦路の改造予定って今のところあるかしら?な、ないなら別にいいのよ!?期待してるわけじゃないんだから!」
なぜか焦った風だ。どうやらルイズという少女嬉しいことや期待を表すことはよくないことだと思っているらしい。
だが感情を表現することは、心から出来ている妖怪はもちろん人間にとっても重要なことであり隠すようなことではない。
もっとも今のルイズだと全く隠せていないので問題にはならないが。
「ねえ、どうなのよ」
焦れて更に彼女は質問を重ねてくる。
「そうだね、この世界の魔法についても少しわかってきたしグレードアップしてもいいかもしれないね」
「ほんと!」
少女は嬉しそうに椅子から立ち上がる。
その後、自然と立ち上がったことに気付き、すごすごと椅子に腰かけてから、コホンと咳払いをしてから平静を装ったつもりで尋ねてくる。
「この世界の魔法についてわかったってどういうことかしら?」
「ああ、この世界の魔法は土・水・火・風の4つに分かれているだろう」
「当然」
「万物を分類分けする上でこれはかなり基本的な枠組みであるんだ。
地・水・火・風の4属性というのはね。だけど僕はこの世界の魔法は単純に土や水の力を使った魔法ではないと考えている」
「はあ?何言ってるの?」
ルイズは理解できないという顔だ。この世界で育った人間にはなかなか想像しづらい考えだったのかもしれない。
「土や火などのものから力が具現化されていると考えるにはあまりに能力が限定されているということさ。
つまり土・水・火・風からそれぞれの属性が生まれたのではなく、それぞれの属性に土・水・火・風の名前が当てはめられたのさ」
「何言ってるのよ……。ちゃんとそれぞれの魔法はそれぞれの物質を操れるじゃない……」
「魔法という精神面の強いものに物質をどうこうできるかはあまり意味のない話さ。重要なのはその意味合いだ」
意味合い?と、ルイズは額にしわを寄せながら首をひねる。
「そう、このハルケギニアの魔法はあまりに意味が限定されている。
たとえばハルケギニアでは火は戦闘向きで、水はそうじゃないとされているようだね」
「そんなの当然じゃない。火なんか攻撃以外になんの役に立つのよ」
やれやれ、これはどうやら1から説明しないといけないようだ。
「たしかに火には破壊という側面はある。
    イ ザ ナ ミ       カ グ ツ チ
それは伊邪那美が火の神軻遇突智を生み出す際に焼死してしまったことから、火は存在したとき、あるいはその前から破壊的側面を持つと言える」
「えっ?ちょっとイザナミ…と、カグツチって…?」。
「しかし火は同時に恵みの象徴であり、開明の象徴でもある。
巨大な火、つまり太陽によってあらゆるもの育まれ、人は火とともに成長をした。
これは水にもいえることだ。水は確かに癒しの象徴だが、人が扱いきれないほどの巨大な力でもある。
大水の氾濫の恐ろしさは今さら言うことでもないだろう」
「無視するってどういうことよ……。つまりリンノスケはそれぞれの属性にしては効果の範囲が狭いって言いたいの」
「ずいぶんとざっくりとまとめてくれたが、そういう認識くらいのほうが君には分かりやすいからね。
戦闘に向いているかどうかで、火、風、土、水という順にはっきりするのはおかしいだろうね」
ふーん、とルイズは言葉を咀嚼しているようだ。
「なんかアンタに八卦炉改造頼んで大丈夫なのか心配になってきたわ」
ルイズは疑わしげな目でじとりとこちらを見てくる。
なぜそうなるんだ。
ルイズを納得させようと決意したとき、小屋の扉が開いた。
「やっぱりいましたね、ミスタ・モリチカ。おや、ミス・ヴァリエールもいるのですか?」
この小屋の主であるコルベールが帰ってきたようだ。
「おかえり、コルベール」
「失礼しています、コルベール先生」
ルイズも丁寧に頭を下げる。
「いやいや別にいんだよ。それよりも今日はいい月ですよ、どうですか一杯?」
そう言われて僕とルイズは窓の外を見た。話をしている内に、空は闇色に染め上げられていたようだ。
黒の空に小さな点の如き星たちと、大きな二つの月が浮かんでいる。
「わたしもご一緒させてもらってもいいですか?」
「あなたもですか?」
コルベールはルイズの申し出に迷ったようだ。たしかにあまり今までルイズと酒盛りした記憶はない。
「いいんじゃないですか。多いほうが楽しいこともあるそうですよ」
そう言うとルイズが驚いたように僕を見て来た。
「助け舟出すなんて珍しいわね」
「二つの月の魔力にあてられたんだろう。それと知り合いたちが騒がしく酒を飲むのが好きだったのを思い出してね」
「私は騒がしくなんてないわよ」
ルイズはむくれ、コルベールは笑いながらワインとチーズを机の上においた。
この世界に来てからワインばかり飲んでいるため、日本酒が恋しい。
とはいえ、緑茶と異なりこれはなかなか見つからないため、今自分で作っているものができるのを期待するしかない。
だが、そもそもこの世界で日本酒が出来るのかという不安もある。
ワイン、それに発酵食品であるチーズがあるということはこの世界にも発酵を促進させる神がいるということに他ならない。
しかし、日本酒は日本で作るから日本酒なのだ。
たとえ幻想郷では日本酒ができる作り方でも、この世界ではワインのようになるか、ひょっとするとチーズのようになるかもしれない。
そして窓の外の二つの月を見る。月とは妖怪にとっても、世界にとっても重要な存在だ。二
つあるというのはそれだけ異常ということに他ならない。二倍だから二倍のご利益などと気のいいことは言って入られないだろう。
「ちょっと、リンノスケ!何ボーッとしてるの」
はっと我に返る。ルイズとコルベールがじっと見てきている。どうやら考えごとにふけりすぎていたようだ。
「まったく…今から乾杯よ。あんまり考えこんで話聞いてないとかやめなさいよ」
「わかったよ」
思わず苦笑してしまう。そうだ、今日はこうやって酒を飲むのだった。
こういう日ならば二つの月も、月になぞらえた団子の数が二倍になると、まるで自分の知り合いの少女たちのように能天気に考えるのが礼儀なのかもしれない。
二人と真っ赤な液体が注がれた硝子細工を合わせたあと、僕は空に浮かぶ二つの団子を眺めながらハルケギニア産の酒を傾けた。



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