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ゼロのペルソナ-26

節制 意味……調和・不安定

夜の帳が下りたグラン・トロワ、その豪奢な宮殿の中でも最も手がかかった部屋の一つにガリア王ジョゼフはいた。
何をするでもなくソファに深く身を沈めている。
その姿は今朝方、ロマリア連合王国の中心都市ロマリアを滅ぼすように命令した男の姿には見えない。
彼の命令によりロマリア国境付近にて大規模な演習を行っていた艦隊は国境を犯し、都市国家ロマリアを滅ぼした。
ロマリア連合皇国全土を制圧したわけではないが、始祖ブリミルの弟子が建てたといわれるロマリアは6000年の幕を下ろした。
というのはロマリア連合皇国が都市国家群の集合体であるからだ。
盟主であるロマリアがかつて始祖ブリミルの弟子が興した国で始祖の没した地であるとして、宗教的権威を振りかざして他の都市国家群を従えていた。
それも拘束力の弱い連合制であるため、すべての都市国家が都市ロマリアの意向に従うわけではない。
要するに都市ロマリアを滅ぼしたロマリア連合皇国はロマリアではなく小さな都市国家たちでしかないのだ。
この行為により歴史に悪名であれ名を残すことが確定したというのにジョゼフの顔には後悔も悲しみも喜びも浮かんでいない。
国一つを滅ぼしても何の感慨も湧き上がらなかった。
やはりか。そうジョゼフは自己の心情を分析する。
弟シャルルを憎み殺した日以来、彼から感情の高ぶりが消えた。
彼は怒りたかった、憎みたかった、後悔したかった。
だが彼はその望みをかなえられずにその日まで王位にいた。
ロマリアを滅ぼすように命じた際にもしかしたら、と思ったがやはりそれは淡い願いに過ぎなかった。
彼は確信している。もはや自分の心を揺さぶるには世界を滅ぼすしかないと。
それでもだめではないのかという思いが彼の中にあったが、たとえそうだとしても彼は唯一の可能性にすがるしかないのだった。

彼が思考にふけっていると、息を切らしイザベラが彼の寝室に入ってきた。露骨に面倒だという表情を貼り付けている父に彼女は迫った。
「父上!いったいどういうおつもりですかロマリアに宣戦布告もなしに侵攻して!」
「だからどうした?」
「我がガリアとロマリアに何の問題もありませんでした。少なくとも突然戦争になるようなことは。
 このたびの戦争で間違いなく他国はガリアを危険な国とみなし敵対するでしょう。
 いいえ、他国だけではありませんわ。ガリア内部でも反乱が起こるでしょう」
イザベラの出した答えは彼女が魔法の才能に比して政治の才能に長けている彼女だから出せたものというわけではない。常識を知るものならわかるようなことだ。
「どうでもいいことだ」
父の発言にイザベラは真っ青になる。
「“どうでもいい”ですって?エルフどもなどと手を組むからこうなったのではありませんか!」
「あの長耳どもは我らブリミル教徒よりまともだと思うがな。まあ、それもどうでもいいことか」
イザベラはジョゼフが理解できないようであった。
王家とは家族よりも社会的な地位を重視するものであり、そのため公的私的関係なくイザベラとジョゼフの関係は娘と父ではなく王女と王との関係であった。
そのため今までほとんど公式の場でしか顔を合わせなかったことがなかった。
それでも王族とはそのようなものだと思って生きてきた。
だがその父であり、王である男は何か不気味な、恐ろしい雰囲気を放っている。
イザベラは呟くように尋ねた。
「わ、わたしはこれからどうすれば……」
「知ったことか。気に入らぬならこの国から出て行け」
ジョゼフの返答にイザベラの顔は髪の毛と同じ青になるかと思えるほどになったが、顔をぎゅっと引き締めた。紡がれた言葉には怯えに彩られながら確かな覚悟があった。
「わかりました、父上。わたしは自分で考えて自分で行動します。今までありがとうございました」
イザベラは頭を下げてから退出した。
ジョゼフは娘の覚悟に触れながら何の感慨も覚えず、ただ不快なものが去ったとだけ思った。
再び扉を開いたのは彼の娘ではなく王宮にはふさわしくない全身を鎧で固めた兵だった。まるで鎧が体の一部とでもいうような存在である。
それは一言も発しなかったがジョゼフはそれの意図を察知して嬉しそうに唇をゆがめた。
「そうか、あのエルフは火石を完成させたか」
その鎧の兜にはルーンが刻まれていた。

トリステインからオルレアン公夫人とタバサの亡命を受け入れることを記された手紙が送られてきた朝、ルイズたち一行はすぐにトリステインへと発った。
手紙の中で催促があったからだけでなく、彼らも早く事情を知りたかったからだ。
この世界の住人ではない完二たちはともかくとして、ロマリアが滅亡したという情報はあまりにも衝撃的なニュースであったのだ。
ルイズなどは忠臣として一刻も早く姫に謁見しないといけないと息巻いている。
そういった強行軍であるために体調がまだ本調子ではないオルレアン公夫人は遅れて別の馬車でやってくることになっている。
間断なく馬車に揺られ彼らはトリステイン首都トリスタニアに出発した日の深夜についた。
日付でいうなら次の日となっているが、トリステインとゲルマニアの国境線上にあるツェルプストー家とはいえ一日で着いたのはずいぶん早いといっていいだろう。
王城に着いてから夜の番に立たされ不機嫌な兵士に取り次ぐように頼むのに骨が折れたが、
城内に伝令が言ってからは早くアンリエッタ王女や枢機卿マザリーニが出迎えた。
6人はすぐに客室へと通された。
キュルケや陽介などはタバサならともかく自分たちが重要な話を聞いていいのかと思ったが話は全員の居る中で話が始まった。
それはアンリエッタは窮地を助けてくれたから席を外すような非礼はできないという好意、それと隠すようなことでもないということが理由だ。
キュルケに対しては、ゲルマニアの名家ツェルプストーの者ならぜひ知ってもらっていたいとも姫は言った。
ちなみにルイズは自分が話から外されるなどということは思慮の外にあったようだ。
客室のイスを一つの小さな机を取り囲むように並べて円卓のように9人は座った。
アンリエッタ姫の隣に座っているルイズが最初の質問を投げかけた。
「姫殿下、僭越ながらもお伺いします。ロマリアを滅ぼしたというのは事実でしょうか?」
質問しながらもルイズは本当のことであると確信に近いものがあった。
それはいまやハルケギアニアの話題を全てさらい、
身分の違いなく上から下までその話題で持ちきりで馬車でいくつかの街や村を通っただけでも耳に入って来るほどであった。
ツェルプストーの城で情報が入ってこなかったのはトリステインの情報網が機能し、
早くに情報を得ていたこととキュルケがオルレアン公夫人を匿っていることもあって、両親との接触を避けていたからだ。
ゲルマニアの有力な貴族であるキュルケの父ならすでに情報は得ていたであろう。
そしてその考えはアンリエッタの言葉で確実なものとなる。
「ええ、残念ながら本当です。……ガリアは、いえ現ガリア王ジョゼフは同じ始祖を起源とする国を滅ぼしてしまったのです……」
悲しげにアンリエッタは目を伏せた。彼女の言葉を継いだのはルイズと同じくアンリエッタの隣に座った枢機卿マザリーニだ。
彼はトリステインの政治を担っている存在であり実質的な宰相である。
先王が逝去してから一身に引き受けてきたためその外見は40代とは思えないほど老け込んで見えた。
そして彼はロマリア出身の政治家でもある。
「これは確定情報と思っていいでしょうが大聖堂は破壊されそして現教皇も逝去されたようです」

アンリエッタはおおっ、と悲しそうに声を出し、彼女だけでなくこの世界で生まれ育った者全員が鎮痛なものを顔に浮かべている。
それは発言したマザリーニにしても同様であったらしい。
もともと彼は前ロマリア教皇時代には次の教皇であると目された人であり、前教皇が亡くなった後も帰国せずに王がなくなったトリステインを支えてきたのだった。
もし彼がロマリアで教皇になろうとしていたならばガリアの凶行に倒れたのは彼だったのかもしれないのだ。胸中には複雑な思いもあるだろう。
「このような蛮行はとても見過ごせることではありません。明日のトリステインが今のロマリアにならないという保障はどこにもありませぬ」
こくりとアンリエッタは頷いた。
「そう。だから我々は結束しなければいけません。そして狂王を追い払い正当なる王をすえなければなりません」
正当なる王というところでタバサを見る。見つめられた少女は彼女にしては珍しく困惑している。困惑する彼女を助けたのは使い魔陽介だ。
「ちょっとお姫さま?王になるとか、ちょっとタバサは決めかねてるんで……」
「王族には王族の果たさなければならない義務があります。わたしもあなたも王族であるなら義務を果たさなければいけません」
アンリエッタは強い口調で言った。とはいえタバサも困惑するばかりである。
見かねたマザリーニがさらに何か言おうとするアンリエッタを制止した。
彼女はまだ何か言いたげであったが、頼りにする枢機卿が止めるのでしぶしぶながらも口をつぐんだ。
「これからですが、我々はガリアへの大包囲網を形成します。
 我がトリステイン、ゲルマニア、そして盟主ロマリアを欠いた都市国家群。
 すでにそれらからの同盟の打診が来ています」
大規模な構想にみなが息を飲んだ。その中でルイズははっとしてアンリエッタに尋ねた。
「ゲルマニアと同盟ということはもしや姫さまは嫁ぐのですか?」
以前、アンリエッタはアルビオンの反乱軍への対抗のための同盟を築くためにゲルマニアに嫁ぐことになっていた。
それはガリアが反乱軍の首魁クロムウェル含め指導者を軍主力と共に葬ったために立ち消えになったのだ。
しかしもしガリアのロマリア侵攻で再び嫁ぐことになってしまえば、
ガリアによってなくなったアンリエッタの輿入れがガリアによって再び行わなければならないという皮肉な事態になってしまう。
アンリエッタは忠臣の心配を振り払うように笑みを浮かべながら首を振った。
「わたしはこの国にいますわ」
「姫さま」
ルイズはほっとした。
「シャルロットさまにも言ったでしょう。王族には王族の義務があると。
 わたしはこの佳境にある国を守るために王となります」
突然の告白にあらかじめ知っていたマザリーニ以外全員、驚いた表情を浮かべる。
今度はこの世界の世情も知らない完二たちも驚いていた。
なにせアンリエッタはまだ17歳のうら若き乙女である。王という言葉には不似合いであるように彼らには思えた。

「アルビオンはどうするおつもりですか?あれはガリアが鎮圧したからガリアの支配下にありますわ」
質問したのはキュルケだった。
「アルビオンも決して一枚板ではないということですよ。ガリアの支配をよく思わないものも多くいます」
「つまりはあなたがたトリステインと我がゲルマニアで色々な嫌がらせをするということですね?」
キュルケはにやりと枢機卿に微笑んで見せた。
マザリーニは答えはしなかったが、否定もしない。
彼の頭の中にはアルビオンの中に潜む親トリステイン派、いや反ガリア派を煽り有形無形の妨害をする算段をすでに立てているとキュルケは思った。
「それともう一つ気になる情報が、ガリアは大量の軍艦の一挙投入でロマリアを制圧……いや滅ぼしましたが、その中に未知の戦力があったと情報が入っています。
 信じがたいことですが巨大な火竜、それに今まで見たことのないようなゴーレムがいたと」
「なんだかそれどこかで聞いたことがあるような気がしますわ……」
「わたしもそういえば」
キュルケとルイズは記憶を探るように考えこむようなそぶりを見せた。
枢機卿はさもあらんというように頷いた。
「ガリアがアルビオンを陥落させたときですな。その時も似たような噂が出回りました。
 おそらく事実であったのでしょう。それに全身を鎧で固め風のように動く騎士がいたとの情報もあります」
どうやらガリアはハルケギニア一の陸軍を有する以外になにかしら謎の戦力も保持しているようだった。その得体のしれなさに全員は不安を覚えた。
だがアンリエッタとマザリーニはさらに不安材料を抱えていたのであった。
それは確信のないものであったが、もし彼らが心配しているとおりのことであるとならとんでもないことになる。
「巨大な火竜というものが風の噂に乗っていますが、そのことで気になることがあるのです。
 一つはガリアのアルビオンへの電撃攻撃を前にしてこのトリスタニア、そして城内にも巨大な火竜を見たという噂が立ち上ったということ。
 もう一つはその後に、あなたがたの通うトリステイン学院近くで全長40メイル近い火竜の亡骸が見つかったということです……」
マザリーニたちが想像している最悪はこの火竜がガリア軍の所有していた竜と同一種であることだ。
どういうわけか発見された火竜は絶命していたが、もし生きていたら仕留めるためにどれほどの犠牲を払ったのか想像がつかない。
その疑いはルイズとその使い魔によって肯定されるとともに更に王女と枢機卿を混乱させる。
「その火竜はわたしをさらおうとガリアが差し向けてきたものです」
「あー、オレがぶっ倒したヤツだな」
今まで小難しい話についてこれなかった完二はここで初めて発言した。
その主従の発言にアンリエッタは混乱する。

「やはりあのドラゴンはガリアのものなのですか!?
 いえ、それよりルイズ!あなたさらわれたのですか!?
 それに倒したですって!?」
マザリーニは混乱するアンリエッタをなだめるが、彼自身にも混乱がないわけではない。
「いや……いささか信じがたい話ですが……」
「んだよ、オレらが信用できねーってのか?」
「やめなさい、カンジ」
不満顔の完二をルイズがたしなめる。
「全て本当のこと。ジョゼフから命令されて実行したのはわたしだから」
これからガリア王としてあおごうとしている者からそういわれては二人も否定することはできない。
もともと二人も発言者が信頼できないというわけではない。発言の内容が信じられないように思えたのだ。
「いや、シャルロット様が仰られるなら……しかしなぜジョゼフはミス・ヴァリエールをさらおうとしたのでしょう」
「わからない」
タバサにはなぜルイズをさらわなければならなかったのかは知らされていなかった。
あの時は母の命もかかっていたために詮索できるような状況でもなかった。
「人質にでも使うつもりだったんじゃないかしら。こんなのでも王家の血も引く、トリステイン指折りの名家の娘ですし」
こんなのとは何よとルイズが言ったものの、彼女含め、キュルケの意見に反論する者はいない。他にそれらしい理由も見当たらないからだ。
しかし実はルイズやキュルケなどには気にかかることはあった。それはルイズが虚無の使い手だということだ。だがこの事実を知っているものは限られている。
ルイズ自身がそうだという疑惑を持ったのはラグドリアン湖から戻ってきて始祖の祈祷書を読んだとき、
確信したのはアンドバリの指輪で操られたウェールズからアンリエッタを奪還すべく始めて虚無魔法を使ったとき。
キュルケ、陽介、完二、クマはさらわれたタバサの奪還すべくガリアへと入っていったときに知った。
タバサには話すタイミングもなかったので未だに話していない。
初めて虚無魔法を使ったときには陽介、完二に加えタバサとアンリエッタもいたが、聡明なタバサでも虚無魔法だと気付けたかはわからない。
なによりそれをジョゼフに知らせたとは考えづらい。
アンリエッタは混乱していてそれどころではなかったであろう。
だからルイズがさらわれそうになった理由としては虚無の使い手であることは除外していいはずだ。
しかしルイズは何か違和感を感じた。何か問題を抱えたまま行動しようとするような気持ち悪さが彼女の胸に残っている。


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