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雪風とボクとの∞-12

「タバサ! これを知ってるかい?」
 三成は片手に持っている液体入りの霧吹きを指差してタバサに問いかけた。
「……最近発売されたこれの事……」
 タバサも同じ霧吹きを指差しつつ三成に答える。
「……めがねにシュッシュ……泡の力で汚れすっきり……その名も『メガネのシャンプー』……だから……ミツナリ……ミツナリのめがね……私がシュッシュしてあげる……」
「くはーっ♪」
 撃ち抜かれたかのごとく三成は自身の胸をつかみ、満面の笑みを浮かべた。
(ああ、めがねっ娘の魔女っ娘に自分のめがねをシュッシュしてもらえるなんて、ボクは何て幸せなんだ。この幸せ、しかと眼に焼き付けよう……)
 しかしその時、三成は戦慄すべき事態に気付いた。
「って、見えなーい!!」
 そう、近視でありながら裸眼でタバサの姿を見ようとする三成にとって、今のタバサとの距離は絶望的なまでに遠かったのだ。
「神よ! なぜボクは近眼なのですかー!?」
「……ならミツナリ……私のめがねかけて……」
 天を仰いで絶叫する三成にタバサは自分の眼鏡を外して差し出すが、
「するとタバサが裸眼になるー!!」
「……はう……」
 そう、眼鏡を外した三成がタバサの眼鏡で彼女の姿を見ようとすれば、必然的に裸眼のタバサを見る事になるのだった。
「ボクはタバサの裸眼を見るために生まれてきたんじゃない~!!」
「……ミツナリ~……」
 猛烈な勢いで床の上を転げ回り天を仰いで再度絶叫する三成の姿に、タバサは激しい既視感を覚えていた。
(……あれ……これと同じ事が前にもあったような……エンドレス……私達は永遠にエンドレスな2人なの……)

 しかしそこは三成、めがねっ娘に関しては同じ間違いを繰り返す男ではなかった。
「が、しかーし!! こんな事もあろうかと、スペアの眼鏡を用意しといたのだ!!」
 そう言うと三成は懐からもう1つの眼鏡を取り出してかけた。
「……ミツナリ……素敵……」
 予想外の三成の思いつきに、思わずタバサは賞賛の声を上げる。
「ボクとした事がスペアの存在を忘れていたよ」
「……ふう……安心した……」
 タバサは安堵の溜め息を吐いて、手洗い場の縁に寄りかかったその時。
 ――パキ
 とタバサの掌の下で何かが軽い音を立てた。
「……パキ……」
 その音に非常に不吉な何かを感じ、タバサは恐る恐る上げた手が置かれていた場所に視線を向ける。
 タバサの掌の下には三成が最初にかけていた眼鏡があり、彼女の体重によって両方のレンズに亀裂が入っていた。
「タバサ~♪ 早くボクのめがねをシュッシュしておくれ~♪」
「……ひっ……」
 眼鏡が割れた事など露知らず、三成は喜色満面の表情でタバサにシュッシュをせがんできた。
「じらすなよ、タバサ~。早く♪ シュッシュ♪ 早く♪ シュッシュ♪」
「……あは……あは……あはははは……」
 乾いた笑い声を上げる以外不可能なタバサだったが、三成にどう対応すべきか頭を高速回転させていた。
(……ど……どうしよう……)
 三成はタバサが自分の眼鏡をシュッシュする瞬間を、今か今かと待ち構えている。
 そんな三成に眼鏡が壊れただなどと、タバサは言える訳がなかった。
(……ああ……ミツナリがあんなに喜んでいる……それなのにめがねが割れてシュッシュできないと知れたら……その怒りたるやもう……ミツナリの体中からあらゆる『魔』が飛び出てくるかも……ああああ……胃が痛い……誰か助けて……)

 するとそこに、タバサにとって救いの女神とでも言うべき人物が登場した。
「タバサー、何やってんのー?」
「……ルイズ……」
 涙目になりつつ、タバサはルイズに助けを求めようと声をかける。
「はっ!」
 その時親友ルイズ・ヴァリエールは全てを一瞬で理解した!
 首を傾げる三成をよそに、タバサ・ルイズは目と目で会話を始める。
『わかったわ、タバサ。その眼鏡、私が割った事にしてあげるわ!』
『……そんな……ルイズがあえて悪者になるなんて……』
『……それじゃまるで……「泣いた赤オーガ」に出てくる青オーガ……ルイズ……』
『あんたのためなら青オーガにだってなってあげるわよ』
『……でも……親友青オーガを失って……村人達と仲よくなれて……それで赤オーガは本当に幸せになれたの……』
『もう「泣いた赤オーガ」の話はいいのよ、タバサ! とにかく私に任せて!』
 ルイズは一気に手洗い場の方に駆け寄り、
「おっと、転んで手が滑ったー!!」
 とわざとらしく前につんのめって眼鏡に手を伸ばす。
「関節を外し、腕を伸ばして、キャッチ!!」
 次の瞬間、三成の腕がゴキゴキと音を立てて伸びるとルイズの襟首をわしづかみにした。
「ひっ!?」
 抱き合うように身を寄せ合って震えるタバサ・ルイズの目の前で、三成の腕が元通りに縮んでいく。
「ひいっ!」
「おいおい危ないじゃないか。万が一めがねが割れたらどうする? その時君はどう責任を取るつもりだい?」
 ルイズにそう問いかける三成の笑顔は、控えめに言っても人間のそれではなかった。
「ひいっ、もう駄目! 逃げてタバサ! ロバ・アル・カリイエまで!」
「どうしたんだい、タバサ? さあ、シュッシュしておくれ。早くシュッシュを。シュッシュを」
 幽鬼の如くタバサ達の方に接近してくる三成。
 タバサの精神は限界寸前まで張り詰め……、
「……げふうっ……」
 ついに限界を突破したタバサは、口から盛大に血を吐き出した。
『タバサー!?』

「急性胃潰瘍じゃな」
 タバサが担ぎ込まれた保健室で、オールド・オスマンはそう診断を下した。
「うおおおお! 死ぬな、タバサーっ!」
「死にませんよー」
「オールド・オスマン! 僕の五臓六腑をタバサに移植してくれー!!」
「薬で治るわい」
 完全に平静を失っている三成に、オールド・オスマンとロングビルは呆れつつも落ち着かせようとする。
 その一方で、状況把握に三成が役に立たないと考えたオールド・オスマンはルイズに話を聞く事にしたが、
「――で、何があったんじゃ?」
「えっと、シュッシュを……」
「は?」
「シュッシュを……」
 ルイズの答えも同様に要領を得ないものだった。


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