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ゼロと電流-22



 皮肉なものだ。と、カステルモールは心から思う。
 もっと早くこの機会が訪れていれば、自分は迷うことなく剣を振り下ろしていただろう。
 だが今は、今の自分には、ガリア王に向ける剣はない。
 少なくとも今剣を向ける相手は、三ッ首である。簒奪者ジョゼフではない。

「ガリア全ての騎士団に命ずる。現時刻をもって我らは三ッ首と袂を分かち、打倒する! これは勅令である!」

 まさに青天の霹靂だった。
 たしかに、この数日ガリア王の様子がおかしいという話は耳にしていた。
 カステルモール、いや、密かにシャルロットを担ぎ上げようとしている反ジョゼフにとっても、その行動は謎だった。
 ところが勅令の発布直前、カステルモールは直々に王に喚ばれていたのだ。

「カステルモール」
「はっ」
「お前の真意はわかっている」
「真意、と申しますと」
「もう隠す必要はない。お前がシャルロットを担ごうとしていることにはとうに気付いている。それを咎める気はない」
「何を……」
「咎める気はないと言っているのだ」

 もっとも、とジョゼフは自嘲気味に笑う。

「それを信じよと言う方が無理だというのは、本人が一番よくわかっているのだがな」

 そしてジョゼフは告げたのだ。
 もしシャルロットが望むのなら、王位を譲り渡しても良い、と。
 さらに、カステルモールにとっては驚天動地の告白が続く。
 故王妃は異世界でその魂を操られ、命を落としたということ。
 今現在ガリアと通じているロマリアの人間とは、本人ではなくその召喚した使い魔であるということ。
 その使い魔こそが王妃の命を奪った張本人であり、それを隠していたこと。
 正直に言ってしまえば、信じられる話ではない。カステルモールにとっては、ジョゼフが発狂したと言われた方が信じられるだろう。

 ジョゼフの問いには答えられぬまま、しかし反抗する事も考えられず、作戦決行日が来た。
 カステルモールには不本意ながら、今は三ッ首についたとされるシャルロットを諫める事は出来ない。
三ッ首の手中にある珠をあえて見送り、ラグドリアンへ向かったイザベラに託す。
 そのイザベラすら、ジョゼフの真意は聞かされていない。彼女が知っているのは、父が三ッ首に反旗を翻すというただ一点のみ。
 そして当日、東薔薇騎士団長であるカステルモールすら知らぬ顔の様々の騎士、魔術師が次々と姿を見せる。
 まさに、ガリアの懐は伊達ではない。それでも、三ッ首抜きの恐竜軍団となんとかやり合える程度だろう。
 偶然かそれとも必然か、カステルモールは常にジョゼフに従うように動く羽目となっていた。
 魔法が使えずとも、ジョゼフの剣技と虚無の力は十二分にメカアーミーを相手にする事が出来る。
騎士団長たるカステルモールの力も無論、小さいモノではない。
 幸か不幸か、戦闘集団としての二人の息はぴったりあってるようだった。
 結果的に二人は、先陣を切り三ッ首基地の奥へと侵入していく。
 この作戦の目的は二つ。
 一つは、恐竜軍団に壊滅的打撃を与える事。これは表向きに語られている作戦理由でもある。
 そしてもう一つ、これは限られた者にしか伝えられていない。
 もう一つは、おそらくはこの基地内に囚われているロマリアの虚無を探し出す事。
 リーヴスラシルたる三ッ首の力を削ぎ落とすためには、その喚び手である虚無を探し出す事が必要なのだ。
 直接対決をザボーガーに任せた場合の、最大限のパックアップでもある。

「ところで、答えを聞いておきたいのだがな」

 奥深く、一つ一つの部屋をしらみつぶしに探す段階まで侵入している二人。
 ジョゼフの言葉に、カステルモールは頷いた。
 悩んだ末の答えを返す。ジョゼフをそこまで信用することなどできない、と。
 返ってきたのは笑い声だった。

「さもあろう、仕方ないことだ。好きにするがいい。どちらにしろ、無事に帰れるかどうかも定かではないのだからな」

 それは想定の範囲内だった。シャルロットに王位を譲り渡すならば、ジョゼフが生きていては不都合だ。
 本人がどうであろうと、周囲が黙っていない事はこれまでのガリアが証明している。

「三ッ首本体はトリステインの秘密騎士とイザベラに任せよう。イザベラが間に合えば、ストロングザボーガーが間に合うのだからな」

 だからこそ、自分たちはロマリアの虚無を探しているのだ。

「これ以上は無理につきあえとはいわん。お前の思うままにするが良い」
「三ッ首打倒は勅令。ならば、従うしかないでしょう」
「別任務を与えても良いのだぞ。お前の好きなだけの人員を使え」
「別任務、ですか?」
「イザベラを護れ」

 ジョゼフの言葉は続く。

「そして、シャルロットを護ってやって欲しい」

 何を今更。その言葉をカステルモールは飲み込んだ。
 三ッ首の力は大きい。この総攻撃でも滅することかできるかどうか。
 仮に滅することが出来たとしても、こちらの被害も甚大なものとなるだろう。下手をすればガリア騎士団の存続も危うい。
 二人の王女を護る必要は、確かにあるのだ。
 だが。
 だが、しかしだ。

「王よ」

 カステルモールは言う。ジョゼフは間違っていると。

「ならば貴方が生きて戻り、護るべきです。それが貴方の責であり、贖罪だ」

 間違いを認めるのならば、認めるだけで終わってはならない。
 是正し、導き、己が責任において結果を見守るべきではないか。それが、贖罪ではないか。
 他人に任せるなど逃げではないのか。いやしくも一国を動かした男の末路がそれでよいのか。
 少なくとも自分は、いや、シャルル派であった自分だからこそ、反ジョゼフ派であった自分だからこそ、絶対に許さない。

「余に、生きろと言うのか」
「生き恥を晒せ。そう言い直した方が、受け入れやすいとの仰せであれば」

 一瞬虚を衝かれたような顔を見せ、笑い出すジョゼフ。

「そのような物言いをする男だったとは気付かなかったな。なるほど、無能王の名も伊達ではなかったと言うことか」
「その名を付けた我らが不明、今は平にご容赦を」
「特に赦そう」

 続けて何か言いかけたジョゼフが片目を抑える。

「これは……」

 怪訝な顔のカステルモールに、ジョゼフはその身に起こった変化を伝える。
 ジョゼフとイザベラの視界が重なっている。今、ミョズニトルンの紋章の浮き出たメットを被ったイザベラの視界が、ミョズの喚び手で

あるジョゼフのそれと重なっているのだ。
 聞こえる物音。
 ジョゼフはすぐに状況を把握した。
 イサベラがシャルロットに呼び掛ける。ガリアの行動を明かす。
 そして、ストロングザボーガーが、三ッ首に敗れている姿。
 三ッ首とザボーガーが互角ならば、リーヴスラシルの上乗せ分で三ッ首が有利になる。
 ガンダールヴとミョズニトルン、ヴィンダールヴの上乗せは、それぞれルイズ、イザベラ、シエスタのものだ。
 操られる存在であるザボーガー、バッハ、ホークと、自律している三ッ首との違いだった。

「急ぐぞ」

 ジョゼフの言葉は奇しくも同時だった。アルビオンの宮殿で、ワルドがガリアに別れを告げた言葉と。
 その直後の地震は、まさに天の怒りとも感じられるほどの凄まじいものだった。
 地下に存在していた基地はまさに阿鼻叫喚の地獄絵図と変わっていったのだ。
 揺れが収まったとき、ジョゼフとカステルモールは互いの無事を確認する。
 三ッ首の罠か、とも考えるが、それにしては基地自体も崩壊しているとしか思えない。

「三ッ首自体が生き残っているのなら軍団の再建はそれほど難しくはあるまい」

 どちらにしろ、三ッ首自体を倒すのは必須条件である。
 二人は戻ろうともせず、探索を続けようとした。が、すぐそこに、地震前までは確実になかったはずの通路があるではないか。
 皮肉な事にワルドの引き起こした大隆起、その地震による破壊が二人に隠し部屋の存在を教える事となった。
 二人は厳重に隠されていた部屋に到達する。
 ロマリアの虚無、ヴィットーリオの元へ。
 だが、その姿にカステルモールは吐き気を覚え、ジョゼフすら絶句した。

 ガラス容器に漂う、上半身と頭だけの姿。
 それはただ、「リーヴスラシルの喚び手」である事以外の価値を一切削ぎ落とされた肉塊。
 三ッ首の力を落とさぬために、リーヴスラシルの紋章を消さぬためだけに生かされている姿。

「……ガリア王……か……」

 二人は知らず、容器に繋がれたスピーカーからその声は聞こえる。

「殺してくれ……私を……」

 ヴィットーリオは全てを聞かされていた。
 三ッ首の為した事、己の召喚によって起こされた事。
 そしてジョゼフに対する懺悔を、二人は聞いた。

「私を殺せ……三ッ首の力を奪え……」
「我が妻の敵でもあるか……」

 ジョゼフが静かに言う。感情を一切入れぬ声で、ただ事実だけを伝えるように。

「そうだ……気をつけろ」

 仕掛けがある。とヴィットーリオは淡々と告げる。
 自分が死ねば、一帯が爆発する仕掛けがある、と。

「なに、元よりそのつもりだ。聖職者を手にかけるのだ、王族といえど無事ではスマンだろう」

 そして、向き直る。

「カステルモール、お前は行け。シャルロットとイザベラを頼む」

 もしかすると、先ほどの地震で全滅しているかも知れない。
 自分たちが助かったのは、特別に護られているヴィットーリオのすぐ近くにいたからではないか。
 だとすれば、シャルロットとイザベラを護れるのは、カステルモールしかいない。

「いや、ガリア騎士の生き残りとして、ガリアの民を護ってくれ」

 行け、と再度告げる。

「ガリアの王として、いや、イザベラの父として、シャルロットの伯父として頼む。二人を助けてやってくれ」
「お預かりします」

 カステルモールは、尋ね返したジョゼフに二度言う。

「二人をお助けします。貴方が、もう一度戻ってくるまで」



 ザボーガーに握りしめられた状態で、デルフリンガーは鏡の門を潜った。
 虚無魔法〈世界扉〉である。
 一度目にザボーガーが潜ったのは、ルイズが無意識に発動させたもの。それによってザボーガーはハルケギニアへと現れた。
 これは二度目、明確に意識的に発動したものである。そして、デルフはやってきた。地球へと。
 今のザボーガーはデルフの意識で辛うじて動く事が出来る。だが、動力源はルイズによって与えられた虚無の残存分のみ。
 すぐにでも目的地へ向かわなければならない。

(にしても、ここはどこなんだ?)

 広場、にしては少し狭い。
 左手には、造りかけの小屋のようなものが。
 ザボーガーとリンクしている今のデルフには日本語がわかるので、文字があれば読む事も出来る。
 しかし、目に見える範囲にはそれらしきものはない。

「あれ? ザボーガー?」

 突然、名前を呼ばれる。
 デルフはザボーガーを振り向かせた。

「ザボーガー、だよな。博士のとこの模型よりも随分ボロっちいけど」

 その模型というのが、ザボーガーの完成予定模型であるとデルフが知るのはもう少し後の事になる。

「なんでこんなところに……」

 首を傾げているのは、何処にでもいるように平凡な少年だ。

「おい、坊主。おめえ、俺を知ってるのか」
「げっ、喋った!?」
「おいおい、俺の事知ってるおめえは誰だっての」
「え、俺?」

 少年は、驚きつつも逃げようとしない。
 ずいぶんと好奇心の強い性格のようだった。そう、この好奇心の強さが、別の世界では彼を英雄に仕立て上げるのだから。

「名前、なんてんだ?」
「ああ、俺、才人。平賀才人」















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