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ゼロの戦闘妖精-16


Misson 16「インディアン・サマー・ヴァケーション(前編)」

修羅場は続いていた。
FAF謹製『リファイン・ゼロ』の設計製造図を書き上げ、担当者に配布し、解説及び各種注意事項を説明する。
ロールアウトしたばかりの『ゼロ号機』をフル回転させて、新人パイロットの訓練に当る。
機体の製作と平行して進めていた 各種新兵器関係の製作も進めねばならない。
新規派遣された研究者達への 物理科学講座も継続中。
肉体的にも 精神的にも、限界だった。

ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールは、トリステイン魔法学院に在籍する学生である。
あまりの多忙さから ここ暫く授業にも出席できず 期末試験も免除されていたが、あくまで本分は学生である。
本人も やっとその事を思い出した或る日 その日は前期授業の最終日だった。
「最後ぐらい 顔を出しといた方がイイかな…」
少しは 気分も変わるかもしれないし、そう思って 久しぶりに教室へと足を運ぶのだった。

トリステイン魔法学院のギトー講師。風のスクエアクラスの実力者ながら、従軍経験は無く 教育一筋に生きてきた真面目な独身教師である。
決して悪い先生ではないのだが、能力の高さはプライドの高さに 真面目さは堅苦しさとなって現れてしまい、生徒から慕われるタイプの先生ではない。
このギトー先生、夏休み前最後の授業に 毎年ちょっとしたイベントを仕掛ける。
長期休暇で生徒が羽目を外し過ぎない様 釘を刺しておこうという思惑もあるのだが、内心 自分の強さをアピールしたがっているのも否定しきれない。
今年 そのイベントの対象となったのは、(不運な事に)ルイズのクラスだった。

「それでは 解答用紙を返却する。各自 受け取りたまえ。」
ギトーが杖を振るうと、教卓の上に積まれていた紙束が風に舞い それぞれの生徒の元へと飛んでいく。
風メイジの教師が、皆こんな事をする訳では無いし、出来る訳でも無い。正直 三十路過ぎにしては、ちょっと派手好きというか エエカッコシイと言うか…
「諸君等の努力の成果は、この試験の結果として見せてもらった。
 幸いな事に、私の授業に関する限り 追試を必要とするような成績劣悪者は居なかった。皆 よくやったと褒めておこう。
 だからと言って、慢心してはいかん。」
褒めるだけで済まさないのが この先生だった。
「もう間も無く、明後日には『夏休み』だ。諸君等の頭の中は 既にその事で一杯だろう。
 久々に親元へ帰り たっぷりと甘えてくるも良し、旅に出て 見聞を広めてくるも良し。好きにしたまえ。
 ただし 分をわきまえた上でのことだ!」
語気を強め 拳で教卓を『ドンッ』と叩く。僅かにざわめいていた教室が 静まり返る。
「嘆かわしい事に、毎年 夏休み明けの最初の授業には、怪我をして包帯姿で現れたり ましてや出席する事すら儘ならない生徒が 何人か居る。
 理由は決まって、『冒険』とやらで 馬鹿な事をやらかした為だ。
 そして私は後悔する。『ああ またか!』と。」
芝居がかってはいるが 本心である。負傷した生徒達を見る度に 彼は心を痛めていた。(ただし、周りからは とてもそうは見えなかったが)
「一年生が学ぶ魔法は 基礎の基礎、二年生からが実用性の高い 応用編だ。
 進級から今日まで 短い期間ではあったが、諸君等は真摯に魔法を学び 多くの新しい術を身に付けた。
 覚えた魔法は 使ってみたくなるもの。それは仕方あるまい。私も そうだったからな。
 それが 日々の暮らしの中でなら、まあ いい。だが 戦闘用の魔法はどうだ。」
ここで 生徒一同を ジロリと睨む。数名の生徒が、ビクッと背筋を伸ばしたり 逆に俯いて視線を外したりする。
「『生兵法は怪我の元』、東方の言葉らしいが、正にその通り!
 諸君等が、『自主練習』と称して 決闘まがいのジャレ合いをやっている事など、我々教師は把握済みだ。
 大怪我をするようなモノでない限りは 黙認しているだけで、もしもに備えて救護体制も整えているがな。」
ちなみに、ルイズとギーシュの『決闘』については、学院長・コルベール・ロングヒルの三名が知るのみで 他の教員には周知されていない。

「それが 子供のケンカであれ何であれ、勝てば自信となる。次は より強い相手と戦いたくなる。
 学院内に目新しい相手が居なくなれば 学院の外で探そうとする。そこに『夏休み』だ。
 猟犬を 野に放つようなものだと思わんか? なぁ、『仔犬(パピー)』諸君。」
先程 『決闘』と言う言葉に反応した生徒達が、今度はムッっとした様にギトーを睨み返す。
「ほほぅ。未熟とはいえ 一応の『気概』は持ち合わせているようだな。だが それだけでは何の役にも立たんぞ。
 この学院の中では 諸君等は幾重にも亘って守られているが、一歩外へと踏み出せば 野盗が居る 野生幻獣が居る 亜人や魔物も居る。
 それらとの戦いは 決して『ごっこ遊び』等ではない。敗北は 時に死へと直結する。 諸君等に『覚悟』は有りや!否や!」
現実を突きつけられ、それを理解してくれれば 良し。だが 少年達の冒険心が、その程度では止まらない事も 教師は熟知していた。

「やれやれ、これだけ言っても判ってもらえんとは!
 『女子と小人 養い難し』 これも、東方の言葉だったかな?
 女子と言えば、己の分もわきまえず 学院長の戯言を真に受けて、『盗賊探索』なんぞを引き受けた者が居たような。」
さて そろそろ仕上げに掛かるか。ギトーは ある生徒に向けて釣り針を垂らした。
『土くれ』のフーケ探索の任を任された三人が 実質的にこのクラス最強のメンバーといえる。うち 一人は長期欠席中、もう一人は挑発には乗ってこないタイプ。
残る一人に 見せしめにこの場でお灸を据えてやれば 他の悪ガキ共も少しは懲りるだろう。そんな算段だった。
「よろしい。では 特別試験といこう。諸君等の『腕前』を見せてくれたまえ。
 何 簡単な事さ。最強の系統たる『風』 そのスクエアメイジである私に勝てたなら 認めてあげよう。『冒険』にふさわしい実力があると。
 この私からの『御墨付き』だ。尤も 何の効力も無いわけだが。
 さぁ どうするね。
 逃げてもかまわんよ。そんな臆病者は、学外に出たとしても何も出来ないだろうからな!ハハハッ…」
怒りに顔を真っ赤にし 拳を震わせながらも、少年達は挑戦の名乗りを上げられなかった。実力が違いすぎるのだ。
高等部二年生の平均的なメイジレベルは、ラインならば まぁ優秀といったところ。スクエア相手に敵うハズもない。
ただし このクラスには例外的に トライアングルの生徒が二人居る。
(…彼女なら!) クラスの期待は、そのうちの一人に集まった。

「ギトー先生、ちょっと宜しいですか?」
期待された人物は 立ち上がり発言の許可を求めた。
「ん 何だね、ツェルプストー君。」
「先程からの仰り様、色々と物申したい事はあるのですけど まずは一点だけ。
 『風』が最強だなんて、誰が決めたんですの?」
(ミエミエのお誘いですわね。でも 恋も戦も、自分の意図を相手に悟られたら 駆け引きは『負け』。
 そんな事も判らないから 今だに彼女の一人も出来ないんですよ ギトー先生。)
そう言って ニッコリと微笑むキュルケだった。
(ほぅ そっちに喰いついたか。まぁ良い。) 
「何だ、そんな事か。誰が決めたものでもない、これは一般常識に過ぎないのだよ。
 それとも 君がこの場で、『常識』を覆してくれるとでも?
 クラス代表として この私を打ち破って。」
(此処までは 概ね筋書き通り)と、キュルケの意図には気付かぬギトーだった。
「さて どうでしょうか?
 『常識』で言えば 火力とは、すなわち破壊力であって それに優れるのは『火』の系統。これも常識ですわ。
 及ばずながら この私が、『常識』を証明しても宜しいのですが、今回の争点は『最強』。
 残念ですが このクラス最強は、私ではありません。」
キュルケは一旦話を止める。
最強の系統?そんなものは無意味だ。最強とは 『集団』ではなく『個』に与えられる称号だから。そして彼女は知っていた。最強の名に値する存在を。
「ですから、後は彼女に任せますわ。」
スッと横に移動する。キュルケの陰になっていた生徒 そこには。
「ヴァリエール君、い 居たのか!」
「ええ 居ますよ、このクラスの生徒ですから。それが何か?」
悪役っぽく口元を歪ませた笑いを浮かべ ピンクの髪の魔物がいた。

ギトーは動揺していた。完全に計算違いだった。
魔法実技において ルイズは優秀な生徒ではない。むしろ 爆発させる事しか出来ない劣等生だ。しかし 戦闘に関しては、その爆発が厄介だった。
風のスクエアであるギトーなら、自分に向かって飛来してくるものは大概 風で払い飛ばす事が出来る。岩礫でも 火球でも 氷槍でも。
だが ルイズの爆発は 何かが飛んで来るのではない。対象が いきなり爆発するのだ。これでは防ぎようが無い!
加えて 命中精度の向上も著しく、10メイル先の硬貨程度の的であれば ほぼ百発百中。詠唱も早く 高速連続攻撃も可能とか。
さらにマズいのは… 

気分転換の為に久しぶりに参加した授業で ルイズのストレスはレッドゾーンを越えてしまった。
ギトーの「夏休みだからって 無茶をするな!」という主張は 正論である。少し前のルイズなら 概ね同意したかもしれない。
だが、見習いとはいえ国内最強の魔法衛士隊に所属し 実戦も経験している今のルイズからすると ギトーの言い分は『ヌルい!』のだ。
もう間も無く、『戦争』が始まる。大きな戦争が。多くのメイジが動員されるだろう。この学院の男子生徒の半数以上は 卒業後 軍務に付く事が予定されている。
戦争の早期終結は難しい。よってこのクラスからも 戦地に赴く者が出る可能性は高い。
だとしたら 無理でも無茶でも、少しでも多くの経験を積ませるべきだ。
自分より遥かに強い者と相対し どうにもならない時の逃げ方を学ぶべきだ。一目で相手の実力を見抜けるような 『勘』を養うべきだ。
それだけの事が 全治2~3ヶ月程度の怪我と引き換えに学べるなら、安いものではないか。
雪風の影響か それともグリフォン隊のせいなのか、かなり戦闘思考に染まっているルイズは そう思う。
加えて、フーケ探索の事を揶揄されたのがいけなかった。あれは 触れられたくない一件だった。 
ルイズにしてみれば 既に解決済みの件、ただ 事情が事情なのでおおっぴらにする事は出来ないだけ。とやかく言われる筋合いは無い!
と 言えない分だけストレス値も高い。これがトドメとなって、精神的耐久力のダムは 遂に決壊した!!
(雪風。ギトー先生のIFFコードを、FriendからEnemy に変更。)
《R.D.Y.》

なんとかルイズとの戦闘は避けたいギトー。
「ヴァリエール君。残念ながら 君には資格が無い。
 ツェルプストー君も言っていたが、この対決は『最強の系統』を決めるものでもある。
 未だ系統の判明しない君が相手では、それを決められない。」
「心配は無用です。
 なぜなら 先生に相手をしていただくのは、私の使い魔『雪風』ですから。
 たかだか生徒の使い魔に勝てない者が、どうして『最強』を名乗る事が出来ましょう。
 そうですよね、スクエアのギトー先生?」 
「!?!」

ギトーにとっては最悪だった。ヴァリエールも強くなったが、あの使い魔『雪風』は更にその上を行く。
近頃 トリステイン魔法学院で何が起きているのか。学院長からの公式な説明は無いが 講師等の関係者は概ね理解している。
ゲルマニアと共同で 『空を飛ぶ機械』の開発が進められているのだ。そして その中心に、彼女と雪風がいる。
同僚のコルベール程ではないが、ギトーも風メイジとして『空飛ぶ機械』とやらに興味を持った。
アカデミーから学院に派遣されてきた研究者の中に 学生時代の友人を見かけ、話を聞いてみた。
国家レベルの開発計画であり、守秘義務に抵触する事柄もある為 多くは聞けなかったが 気になる事があった。友人は、雪風のことを『フェニックス』と呼ぶのだ。
雪風が かの盗賊の巨大ゴーレムを粉砕したのは記憶に新しい。そして レコンキスタの艦隊が壊滅した『フェニックスの神罰』事件。
これらから導かれる結論、「戦列艦十数隻を沈めたのは 雪風」!
冗談じゃない!!
最強たる『風』のスクエアメイジと言えども、唯一人で戦列艦と戦い これを沈める等という事は不可能だ。出来るのは、既に伝説と化した『烈風』カリンぐらいだろう。
それを 艦隊ごと葬り去るバケモノと、どう戦えと言うんだ!!!

窓のガラスが 揺れた。
コトコトと。ガタガタと。そして 割れんばかりに鳴り響いた。
グォオオォオオオ! と迫る爆音、校舎を揺さぶり 一瞬で駆け抜けていった。
雪風が 低空飛行で建物スレスレをフライパスしたのだった。
「さて 先生、それでは校庭へでも 出て頂けますか?
 別に、教室に二十ミリをブチ込んでもイイんですけど、巻き添えを食らったクラスメイトが、血塗れの肉塊になるのは忍びないので…
 フフッ フフフフ。」
ルイズの言葉に 周囲は静まり返る。そして、
「イ、イヤァー!」
「に、逃げろぉぉぉ!」
「血迷うなヴァリエール!」
「よせ。やめろ、やめて、助けてくれ~!」
一転して パニックと化すのだった。

結局 騒ぎを聞きつけ、「何事ですか!」と教室に飛び込んできたコルベールによって惨劇は回避され、ルイズとギトーはオスマン学院長から説教を食らうハメに。
久しぶりに授業に出ることで 気分転換を図ろうとしたルイズの目論見は完全に裏目に出て、更なるストレスを溜め込むことになった。
同級生達は 明日の終業式を終えれば、『夏休み』だ。
「決めたっ! 私も休む!! 誰が何と言っても休むの!!!」
かくして ルイズの短い夏休みはスタートした。
とはいえ、自分の抱えたモノを いきなり放り出してしまう程に、ルイズは無責任では無い。
丸一日かけて、各研究者への一週間分の課題と職人への作業指示書を作成 緊急連絡用に雪風への無線回線も確保した。
さあ 何をしよう、何処へ行こう。
とりあえず いつものメンバーに声を掛けてみることにしたが…

タバサとキュルケは、終業式にも出席せず 早々に学院を離れていた。
ガリアの国元から呼び出しがあり、実家に帰ったそうだ。(キュルケは それに付いて行っただけ。)
「う~ん、コレは追いかける訳にも行かないわね。」
同盟国であるゲルマニアのキュルケの屋敷ならともかく、タバサの所に雪風で押しかけるのは 流石にマズい。
諦めて ギーシュを探したが、こちらも居なかった。なんでも、モンモランシーに引き摺られる様にして ラグドリアン湖へ向かったとか。
ただのデートや恋人旅行にしては 変だ。
「面白そうね!」
行き先は決まった。

すぐにでも出発したかったが、残務処理にもう一日掛かってしまい、結局翌日の夕方過ぎになって やっと雪風は飛び立った。
一時間と掛からずに ラグドリアン湖上空に到達する。
(今夜は湖畔のどこかで一泊して 明日、ギーシュ達を探しましょ。)
雪風の探索能力を以ってしても 所在不明な特定人物を発見するのは容易い事では無い。半日ぐらいは掛かるだろうと踏んでいる。
それよりも キャンプの食事用に積んできた 『FAF標準型サバイバルキット』の非常食セットの味が楽しみなルイズだったが、
《マスター:報告
 地上 湖岸部に高熱源発生。パターン解析、攻撃魔法・火球の可能性92パーセント。何らかの戦闘状態と判断。》
「何かしら? 雪風、対空攻撃を警戒しつつ 接近して詳細情報を収集。」
《R.D.Y.》
そうもいかない様だった。

目標に近付くにつれて 観測される情報量も加速度的に増大する。
《対象地点に四名の人員を確認。アンノウン1からアンノウン4と登録》
広域レーダー上の輝点に仮称名が付随。どうやら 二対二での戦闘のようだ。火・風VS土・水のコンビバトル。
一歩間違えば 死人が出かねないガチの闘いだが、火風系が優勢で 土水系は防戦一方の状態だった。
高解像度カメラがアンノウン達の姿を捕らえた。即座に分析、結果は? 
《該当データあり》
そして ディスプレイに表示される『名前』。
「?!? あんたたち、何やってるのよぉ!」

「手強いわねっ!」
キュルケは攻めあぐねていた。攻撃の方はヘボかったが 守備に回ると手強い相手だ。
こちらのファイアーボールを防いでいるアースウォール、アレは唯の土壁ではない。内部に金属板を仕込んだ『複層装甲』だった。
表面の土が衝撃を吸収し 分厚い金属板で残りの熱と勢いを遮断する。土が吹き飛んだ部分は すかさず地面からの補給で修復される。
加えて 相棒の水メイジがオーバーヒート気味の装甲板を冷却し、溶融や強度低下を防いでいる。
(フレイムがいれば、『連続火球弾』で何とかなったかもしれないのに!)
悔やんでも 彼女の使い魔はここには居ない。
ガリアまで 無理を言って連れてきて貰ったのだ。流石に フレイムまでシルフィードに乗せて欲しいとは言えなかった。
その風竜に乗って 上空から攻撃していたタバサが、長めの呪文詠唱に入った。
(『ジャベリン』でブチ抜く気ね。じゃあ それまでに出来るだけ削っておかなきゃ!)

(な、何でコンナ事に… なったんだぁぁぁ!) ギーシュは 必死に壁の欠損部分を修復しながら考えていた。
モンモランシーに拉致?されて、やって来たのはラグドリアン湖。『精霊の涙』を分けてもらう為の条件として 湖の精霊が出した『妨害者の排除』。
初日の晩に 早速怪しげな相手と出会ったのはイイが、これがメチャクチャ強かった。ワルキューレを展開させる暇も無く 一方的に攻められている。 
(だいたい モンモランシーがあんなモノを作らなきゃ、いやいや 違うぞギーシュ・ド・グラモン。お前は あの時の一件で何を学んだ?
 何であれ 女性に事の責任を押し付けるなど、紳士たる者のすることではない! 違うかぁ!!)
あの一件 香水壜事件とそれによる決闘は、ギーシュに幾つかの変化をもたらした。
女性に対する八方美人的対応は相変わらずだが 恋人と呼ぶのはモンモランシー唯一人。真剣に恋愛に向き合うようになった。
また 雪風にワルキューレが瞬殺されたのが悔しくて 『機関砲に耐えられる装甲』の開発に日々努力していた。
目標は未だ達成されていないが その中間成果である『複層装甲』で 謎の敵からの攻撃を防ぐ事が出来ている。
(この『壁』は貫かせない!
 僕の後ろには モンモランシーが、愛するヒトがいる。そして彼女も 魔法で僕を支えてくれている。
 そう 今僕は、愛の為 愛する人の為、この身に愛を受けながら 愛の力で戦っている!! だから …負けられないんだぁぁぁ!!!)

必殺の一撃を放とうとする寸前 タバサは気付いた。遥か天空より響く 聞き覚えのある轟音、そして 風を切り裂く落下音。
「待て待て待て待て待てぇ~い、ちょっと待ったぁぁぁ!」
ズドーンという盛大な音を立てて 一本の大剣が湖畔の地面に突き刺さる。戦いを繰り広げる二組の ちょうど中央辺りだった。
皆が呆気に取られて 戦闘が中断される。
「ふぅ 何とか間に合ったぜ。
 よう 嬢ちゃん達、それと薔薇のニ~チャンよぉ。何があったか知らねぇが、俺っちに免じて 一旦杖を収めちゃくれねえか?」
「……」
「デッ デルフゥ? なんでこんな所に??」
「デルフだってぇ?!」
「もう いったいなんだっていうのよぉ~」
暗がりの中 出会い頭に戦闘を始めた四人は、ここで初めて相手が誰だったのかを認識した。
「「「ええぇぇぇ~!!!」」」(タバサ:「……」) 

ルイズが合流するのを待って、お互いの事情を説明しあう事になった。

タバサはガリアの『シュバリエ(騎士)』である。
『名誉職としての騎士』や『金で買える階位』ではなく、実力を認められた者にのみ与えられる国家資格だ。
これによって 国から年俸が出るが、当然のように兵役その他の義務も負う事になる。
今回の命令は 「ラグドリアン湖 異常増水の原因調査とその解決」だった。
ルイズの感想は(う~ん ちょっと意外ね。かの有能なる『無能王』の差配とは思えないわね。)というもの。

現・ガリア王は 「ただ長男だというだけで、王位を継いだ無能者」「日がな一日遊び惚けて、配下ともロクに話もしない うつけ者」
と 一般には『無能王』と呼ばれているが、少しでも『世界』を見る目のある人物からは 間逆の評価をされている。
彼の即位以来 ガリアの鉱工業の発展・貿易黒字額・軍事力の増大は、ハルケギニア随一である。
単一分野が突出するならともかく 多くのジャンルでバランスをとって発展するのは、優れた司令塔の存在無しにはありえない。
ガリア国内の何処を見ても 国王意外にその役目を果たしている者は見受けられなかった。
部下に僅かな指示を与えるだけで 見事な国家運営を成し遂げている人物を、どうして『無能』と言えようか。
(奇人・変人である事は 間違いないようだが…)

今回の案件については、たった一人の歳若き騎士に任せられるようなものではない。
本来なら まず、アカデミーから研究者のチームを派遣して原因を究明し、しかる後 武力が必要ならば騎士団を派遣する、そういったものだ。
にも拘らず 原因については、湖到着の時点でシルフィードが
「きゅい これは『湖の精霊』の仕業なのね!」
と 韻竜の特殊な感覚で看破してしまった。流石 幼生体とはいえ破格の使い魔。しかし、解決方法についてはお手上げ状態。
モノは試しと 攻撃魔法を色々と撃ち込んでみたが、効果があろうハズも無し。
そして翌日 精霊の気配を纏わせた不審な人物が現れたので、仕掛けてみた。ということだった。

ギーシュ達の方は ど~しようも無い程 下らない話だった。
発端は、『モンモランシーの副業』。
あまり 裕福な家柄ではないモンモランシーは、自分の得意とする『香水』の製造・販売で 学費や生活費を稼いでいる。
その香水が ゲルマニアから派遣された研究者や職人達に、「手頃なトリステインみやげ」として評判となり 売り上げを大きく伸ばしていた。
製品のデキも良いが 作っているのが『美少女学生』ともなれば、オジサマ方から可愛がられようと言うもの。
普段 自分の周りにいる『少年(ガキ)』とは違う 『大人の男性』からチヤホヤされれば、彼女としても悪い気はしない。だが その様子を見て、ギーシュは落ち込んだ。
そして、寂しげなギーシュに 一人の女生徒が急接近してきた。あの時の下級生 ケティ・ラ・ロッタ。(モンモランシ先輩と別れたのなら 今度こそ私が!) 
ギーシュは ケティの心遣いに感謝した。ただ ケティとヨリを戻したりはしなかった。(それでも僕は モンモランシーを愛している!)
内面的には成長したギーシュだったが、残念な事に それはモンモランシーには伝わらなかった。

(そりゃあね、かまってあげなかった私も悪かったわよ。でも でもね、だからってスグに他の女と それもあの時の娘とくっつかなくてもイイじゃないのぉ!)
これだけなら、『恋する乙女にありがちな 軽い嫉妬心』と言えない事も無いのだが。
ギーシュの浮気心を封じ込める為、モンモランシーが選んだ方法は、『ホレ薬』だった。
それを飲んだ後 最初に目にした相手にベタ惚れしてしまうという、よくある秘薬ではあるが、実際のところは『強烈な向精神薬』というより『洗脳薬』だ。
当然 製造方法など公開されているハズもない。だが彼女は、薬物製造に関する限り 学院講師も驚くようなモノも作ってしまう位の異才の持ち主だった。
高価な原材料についても、香水の販売が好調で懐具合に余裕があったため 問題とはならず、アブナイ薬はあっけなく完成してしまった!

結果として モンモランシーの企みは失敗に終わった。
ギーシュの為に用意した(薬入り)ワインを、とある人物が誤って飲んでしまい、別の某人物に熱烈ラブアタックを開始してしまったのだ。
あんな気味の悪いものを放置したら、休み明けで学院に戻った皆に トンデモなトラウマを与えてしまう!何より、自分が御禁制の秘薬を作ったことがバレてしまう!!
慌てて『解除薬』の作成を始めたが、材料の内『精霊の涙』だけが どうしても手に入らない。(原因は、タバサが派遣された理由と同じ。)
こうなれば、直接 ラグドリアン湖の精霊と交渉するしかない!と ギーシュを引き連れて来て見たが、そこで精霊から出された条件が
「『襲撃者』を排除してみせよ」と言う事だった。

双方の事情が判り、ルイズは言った。
「じゃ、湖の精霊が 水位を上昇させてるのをヤメれば、タバサ達は攻撃しないし、そうすればもう『襲撃者』も現れない訳だから そっちも条件をクリアした事になるわね。
 で、なんでそこいらじゅうを水浸しにするなんて バカな事始めたのよ、精霊は?」
「それなんだけど… よく判らないのよ。」言葉を濁す モンモランシー。
元々 精霊との交渉役を勤められる者は、ごく限られている。
モンモランシーにそれが出来たのは、彼女の実家が かつて ラグドリアン湖の精霊との交渉を執り行う役職であったからだ。
ただし 大規模灌漑用水路の建設計画において 交渉に不手際があったものとしてその任を解かれ、役職も剥奪されてしまっている。
よって 親から娘へ伝えられるべき『交渉役』の技能も、不完全な形でしか教えられておらず、精霊を呼び出すことは出来ても 交渉のスキルが低い為、意思の疎通が不十分なのだった。

翌日 再び精霊を呼び出したモンモランシーは、増水を止めれば襲撃も無くなる旨を説明した。他のメンバーも加わり 代わる代わる説くも、一向に通じる様子は無かった。
言葉が通じない訳では無い。ただ、精霊と人間とでは メンタリティが全く違うのだ。
(電子工学のタームで、芸術論を語るようなモンね。)
埒が明かないと思い、ルイズはある決断をする。
(雪風、『トーカ君』の六号機を湖面上空へ。下部のセンサーを水面に接触させた状態で静止させて。) 
《R.D.Y.》

「ちょっとルイズ、何をする気?!」驚くモンモランシー。
「まぁ見てなさい。上手くいったら御慰みってね。」
ホバリングする小型ユニットが センサーロッドを湖へ伸ばす。着水、波紋が広がる。
が、単純な同心円の筈のそれが 踊る。さざめき 歪み 捩れ 様々な幾何学模様を描き出す。
人間との『対話』の為に湖の精霊が作り出した 湖面より聳え立つ『水の人影』が 興味を示したようだ
「何ぞ、吾に触れたるは? …未知 何ぞ 之より漏れ出ずる音?声? 何者? 送る?繋がる? フム ならば開かん『回線』とやらを!」
突然 センサーポッドの周囲の水が盛り上がり ポッドを水中に引きずり込んだ。
《マスター:報告
 『湖の精霊』とのコンタクト成功。臨時データ回線 及びプロトコル構築完了。通信可能。》
(了解。ご苦労様。) 
ねぎらいの言葉には 回答は無かった。それが雪風。ルイズも理解している。それでも思いは伝えたかった。
「OK モンモランシー。こっちで聞いてみるわ、増水の理由とか!」
(よもやとは思ったけど ヤレば出来るモノなのね~、精霊と交信って!)

「吾 行うは『失せ物探し』。求むるは 吾の元より盗まれし秘宝。六千周期の昔 託されし魔道具の一つ、『アンドバリの指輪』。」
精霊の対人インターフェイスであるヒトガタの水像が ルイズ達に語っている。同時に 人間には感知できない領域で 精霊と電子知性体の情報交換が行われていた。
一応ルイズは傍受しているが、高密度情報通信の為「ピーピー ガリガリ」としか聞こえなかった。
時折 精霊が「おおっ」「そうか」等と声を上げているので 関係は良好のようだ。
「つまりは たった一個の指輪を探す為に、世界を水没させようって言うの?
 何か いろんな意味でスケールが大きすぎる話ねぇ。」 あきれ返るキュルケ。
「…そこまでして取り戻さねばならない『指輪』とは、一体 何?」タバサが言うのも 尤もだ。
「吾にとっては意味無き物。されど、うたかたを生きる汝等には脅威となろう。
 そは、死せる者には偽りの命を与え、生ある者の心を操る也。そを持つ者は 偽りの王国の主とならん。
 因りて そは吾に託されん。」
『心を操る』の下りで、タバサの肩がピクリと動いた事に 気付いた者は居たのだろうか?
「盗まれたって言うけど、下手人は判ってるの?」と ルイズ。
「然り。既に『雪風』へ伝送済み。」 《マスター:当該データ 再生》 
ルイズの脳内に、立体スキャンデータの様な 細密な人物像が描き出される。
後に雪風に確認したところ、湖の精霊に 人間と同様の『視覚』は無いそうだ。大気中の水分を触覚素子として 物質を『見て』いるらしい。
その為 犯人の姿もモノクロ3DCGの如きモノとなる。
ちなみに この方法で見えるのは、自身の周辺だけで、水辺から離れた場所は見ることが出来ない。そのせいで 指輪の現在位置は掴めない、とのこと。  
盗人相手なら、ルイズには勝算があった。
「じゃあ この『指輪泥棒』、こっちで捕まえてあげるから、湖の水位 元に戻してくれない?
 人間が盗んだものなら、人間同士の方が良く判るってこともあるし。どう?」
精霊は暫く沈黙し 答えた。
「承知。『雪風』とその主よ、汝等に任さん。」
「それで、期限は? いつまでに取り戻せばいいの?」
「時を限るは無用。吾は悠久。汝の生は刹那。命 尽きる迄に戻れば可。」
(気が長いと言うかなんというか。まぁ コッチとしても助かるけど)
「じゃ 契約成立ね。水位の件 頼むわよ。」
「では 吾は去る。『雪風』よ、コレは返すが 吾再訪を待てり。何時也とも歓迎す。」どうやら雪風は 湖の精霊に気に入られたらしい。
水象が沈み行くと同時に 湖に飲み込まれていた『トーカ君六号』が浮上した。水没していたにも関わらず 各部に異常は見られなかった。

「ちょっとルイズ、大丈夫なの?あんな事 安請合いして!?」
無事に『精霊の涙』は入手できたものの、高位の精霊に対し余りに気安く話しかけ かつとんでもない約束をしてしまうルイズが、モンモランシーには信じられなかった。
「心配御無用。こっちには、トリステインで一番 いいえ、ハルケギニア一番の捕り物名人がついてるんだから!」
「あ~、アンタこの件 『盗賊改』のワルド隊長に丸投げする気でしょ!」ジト眼のキュルケ。
「もちろん! だって、素人が手出し出来る様な事じゃないでしょ?」だが、そんな視線は気にしない。
「おいおい、そんな事、胸を張って言うモンじゃなかろうに。」こちらもアキレ顔。
「…でも確かに その方が確実。」意外と 賛同されてたり。
とりあえず 一件落着。しかし この時はまだ誰も、この『指輪盗難事件』が対レコンキスタ戦に与える影響について、予想だにしていなかった。

事が終われば 皆其々の方向へ。
タバサとキュルケは、タバサの実家へ。(学院からガリア離宮のプチ・トロアへ直行したので これから行くそうだ)
ギーシュとモンモランシーは、モンモランシ家へ。(「ウチの方が 学院より薬物調合設備は整っているから とのこと)
そしてルイズは 学院に戻る。「さて、次は…」 なにやら予定はあるらしい。一体 どこへ行くのやら?
                   《続く》

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