あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの天使試験-4

「天使って言っても、誰も信じないでしょ?」

 次の日。ギーシュの惨劇の件で、何故遊羽の説得がああもうまくいったかについて、ルイズは問いただしていた。

「そうね。私も……信じなかったし」
「まして、対象者の家族や一緒に住んでる人なんかにそんな事言っても、信じてもらえるわけないじゃない?
 だから、試験中の天使には特別な力が与えられてるの」

 特別な力、何だろう? ルイズは思わず身を乗り出す。

「それは、『認識を少しだけ都合よくする』のよ」
「???」
「簡単に例を挙げると……ルイズっちが家族と住んでるとする」
「それで統一するのね、あだ名」
「ほんとならそこに一ヶ月とはいえあたしが住んでたら不自然よね? けど、その力で『あたしが住んでいるのが自然だ』って認識させるのよ」
「ふぅん……じゃ、ギーシュのは?」
「多分、この世界じゃ貴族の多くは平民の話なんか聞かないんじゃない?」

 それは確かにそうだ、と頷く。大抵の貴族は、平民の言葉に耳なんか貸さないんじゃないかと思う。

「けど、その力が『平民だけど話を聞かなきゃいけない』ってぐらいに障害を下げたのよ。
 あくまで力は少ししか働かないのよ。後は本人次第。抵抗力が強かったり、頑固で疑り深い人は効果が薄いのよね。
 勿論、対象者にも効かないわ」

 つまり、ギーシュはまだ物分りがいい部類と言うことなのだろうか。いつもの様子を見てると少し信じられないが。



「そういえば……最初に聞き忘れてたんだけど」
「何?」
「ルイズっちの『幸せ』って、何?」

 口を開こうとして、止まる。私の幸せって、何だろう?
 魔法が使えるようになる……は、努力目標な気がする。使えるようになっても、幸せとは限らないし。
 じゃあ、何だろう?
 うんうんと唸って考えてはみたものの、ちっとも考え付かない。もしかして、私の人生って、寂しい?

「あ、聞いてみただけよ? 参考になるかな、って思っただけだから」
「ごめん、まだ分からないわ」
「習ったのは、好きな人を作ると幸せになる、ってのが最有力らしいけどね。ただ……」
「?」

―――天使は、愛情ってよくわからないのよ。

「どういう……?」
「天使が元々そうなのか、よく分からないけど……愛がどんなのか、分からないのよね。好き嫌いはあるんだけど。
 だから、他人を『愛する』ってのは、感じた事が無いの」


 そうか……だから、二股や浮気ってのを知らないと、言っていたのか。
 他人を『愛する』事がないから、二股や浮気の概念がない。
 『愛する』って事を知らないのは、上手く言えないけど寂しい事じゃないだろうか? それともそう考えるのは、人間の傲慢だろうか?

「じゃあ、ギーシュの幸せって、女の子に好かれる事だったりして?」
「まさか、それはないと思うけど……。
 じゃあ、今日はこの話は終わりね。食堂の手伝いに行ってくるわ」
「手伝い? 聞いてないわよ?」
「昨日の昼とか大変そうだったから、給仕を手伝う事にしたのよ。
 昼ごはんの代わりにね」

 そう来たか。けど、試験は大丈夫なんだろうか?

「試験なら心配しないで。働くのは昼だけだし、人が集まるから幸せについて聞けるかも、って思ってるから」
「成程……って、人が考えてる事を!?」
「ルイぴょんは顔に出やすいからね」
「もう行きなさい! 後その、水深119mに半日無呼吸無傷でいた人への呼び方やめて!」


「ぶえっくしょん!」
「どうかしましたか、クラナリさん?」
「いや、このパターンは、どこかで美少女がオレの噂を……」
「?」
「おい、タツタサンドはまだか!」
「はい、今行きますよっと!」


**************


 そうして、天使の使い魔が来て一週間近くが経った。
 学院は至って平和を維持していたが、その平和が内部から発生した原因によって突然崩れ去るとは、誰も想像すらしなかったのだ。

 被害者の一人、元オールド・オスマンの秘書にして有名な盗賊、土くれのフーケはこう語る。

「もうサンドイッチなんて食べたりしないわ」

 彼女を何が襲ったというのか。時間を巻き戻してみよう。



 ある日、いつものように食堂は満員御礼で盛況だった。当時ロングビルと名乗っていた彼女は、15分ほど待たされて席に着いた。
 すぐさま、メイドの一人、シエスタが駆けつける。彼女は当時の様子をこう語った。

「とっても恐ろしかったです。言葉が出てこなくて……」

 さて、シエスタはロングビルに注文をとる。

「何かお勧めはある?」
「牛肉のシチューがありますが、この混雑ですので、お待たせしますが……
 軽食なら、すぐに用意できます」
「じゃあ、サンドイッチでいいわ」


 彼女は、宝物庫の宝を狙ってずっと動き回り、そのせいで昼食が遅くなって、空腹に襲われていた。
 その為、少しでも早く胃に食べ物を入れたかった。
 周囲にも結構な数の人間がそんな考えのようで、サンドイッチを食べている人間がちらほら見受けられた。

 それでも数分かかったが、ロングビルの前にサンドイッチが届けられる。
 このとき、後数分口に入れるのが遅ければ、彼女は危機を脱していただろう。


 食べ始めていると、にわかに食堂が騒がしくなってきた。それも悲鳴や、何かが倒れる音が多い。
 いったい何かしらとロングビルが周囲に振り向こうとしたとき、


―――視界が崩壊した。


 目の前の全てが歪む。コアセルベートのようにねっとりと動き、色があかく、あおく、くろく、しろく明滅する。
 全身が震える。まるで立っていられない。肉体という肉体の全てが張り裂けそうだ。胃が裏返り、神経がずたずたに切り裂かれたように痛い。
 苦しい、と叫べないぐらいくるしい。
 まさか毒を盛られた―――? との思考を最後に、ロングビルは地に伏した。


 実は、今日の食堂には遊羽がいた。それはいい。だが、決してしてはいけない失敗をしたのだ。

 それは、遊羽に料理を作らせること。彼女が料理を作ると、友人の大天使Hさん曰く、「とても残念な結果になります」という料理を作り出す。
 他のスタッフが一度も料理を作らせなかったのも災いした。その場にいた人間は、誰も彼女の腕前を知らなかったのだ。
 加えて、今日の食堂はいつにもまして忙しく、遊羽が親切心を出して「給仕だけじゃなくて、簡単なサンドイッチの中身ぐらい作っておこう」という行動に誰も気づかなかった。ご丁寧に中身を作ってからパンで閉じた。
 パンを開くか隙間から覗かないと残念な結果は見えない。まさに罠だと言わざるを得なかった。

 そして、何も知らない被害者はそれを食べ、余りのまずさにバタバタと気絶したという。

 結局、早期の原因解明と迅速な治療、そして突然窓から

「遊羽! あれだけ料理は作ってはいけないといったでしょう!」

との声とともに飛び込んできた美少女による、犯人の謝罪と連行&追放(厨房立ち入り禁止&料理禁止)によって、死者ゼロ、被害者十数名に抑える事ができた。




「……で、遊羽。この人は?」

 新たに現れた『天使』―――遊羽とは対照的に、全身白ゴスロリで、一回り大きな羽と、胸を持つ天使―――を指差し、それから遊羽を睨む。
 が、遊羽は苦笑を返すのみで、そしてもう一人は諦め顔で挨拶に応じた。

「初めまして、遊羽の対象者、ルイズ。私は、遊羽の試験監督をしている、雛水と申します」
「え、ええ、初めまして。私のことは知っているのね」

 見た目といい雰囲気といい、遊羽よりよっぽどマジメっぽい。
 この人なら、天使と呼ばれても信じられそうだ。


「はい、対象者の事は調べる事になっていますので。
 今回は、遊羽がとんでもない事をしでかしたので、近くで見張る事にしました。これから、よろしくお願いします」
「……とんでもない事?」

 嫌な予感がしたルイズに、雛水が耳打ちする。さほどかからずに、ルイズの顔が怒り一色になった。

「ユンー!!」
「わざとじゃないのにー!」
「わざとであってたまるもんですか!
 雛水って言ったわね? 後させちゃいけないことは?」
「はい、歌わせないで下さい。とても迂闊で残念な結果になります」
「ヒナ、ちょっとひどくない!?」
「これからよろしくね、ヒナミナ」
「こちらこそ、全力を尽くします」
「二人でスルー!?」


 なお、空腹すぎたロングビルが一番重い被害者で、一週間入院。
 宝物庫襲撃が不定期延期になったのは、ここでは関係無い事である。
 そして更に、入院先でそのままレコン=キスタに誘われる事も、ここでは関係のない事である。


**********************


 そんな事は露知らず、ルイズは土くれのフーケという盗賊が貴族の館を次々に襲い、ご丁寧に金品レア物のみを盗んでいるという噂を聞き、少しばかりの危機感を持っていた。
 普通の学院なら金品は無いので―――生憎普通の学院では無かったのだが―――心配する必要は無いのだが、ルイズ曰く自分の実力だけでは不安があり、使い魔がこれなので不安は倍増するのだ。

「という訳で、武器を買いに行くわよ!」
「それは、困ります、とは言っておきます」

 と返事をするのは雛水。

「見習い天使は試験中、戦闘行為をしてはいけないのです」
「あ、そういえば前に聞いたわね」
「加えて、遊羽は戦いが出来ません。しかし……この世界の状況は理解しています。
 そこで……」
「そこで?」
「非常事態として、私が遊羽に剣を教えます。そして、遊羽が成長するまでは」

 どこからか―――ルイズには羽の中からに見えた―――綺麗な装飾のエストックを取り出し、

「私が、遊羽の代わりに、使い魔として護衛を行います」
「いいの? ヒナは」
「許可は貰っています。それに、ルイズに危機が及べば、試験自体が不可能になってしまいます」

 これは嘘である。実は、許可どころか天界と連絡すら取れない。況や、試験なんてすぐに中止すべき事態。
 それでも試験を行うのは、監視員と受験者と対象者が無事なら試験の最低限は行える事、そして今更やめても帰れないなら意味が無いからだった。
 帰れない事は、そろそろルイズには言おうと思っている。残念ながら、調べれば調べるほど帰れる可能性は狭まっていた。


「それじゃ、お願いするわ、ヒナミナ」
「こちらこそ、ルイズ」
「あの……あたしって、のけ者?」
「あんたは試験頑張りなさい」
「遊羽は試験をする目的があります」
「……はぁい」



 廊下に出たとき、出会いがしらにキュルケが「ちょっと聞いた?」と噂話を持ちかけてきた。

「どしたの、キュルキュル?」
「それはやめてって。……トリステインとアルビオンの間の海で、謎の艦隊の残骸がかなり発見されたって話」
「それが、どうかしたの? ツェルプストー」
「だから何だっていわれても困るんだけど、その残骸はアルビオン製なんだけど、乗組員の生き残りは『我々はレコン=キスタの兵士だ』とか『我々は未来から来たのか』って言ってるらしいの。聞いたことある?」
「無いわね」
「そうよねえ。レコンなんたらって国、聞いたことも無いし、仮にあったとしても、どうやって残骸になるまでトリステインが艦隊の接近を発見できなかったんだ、って話になるのよね」
「ふぅん……」

 そのときは何も興味を持てなかったルイズだが、後に係わり合いになる組織だとは思いもよらなかった。

「ところで、あんた達はどこ行くの?」
「武器屋よ。最近は土くれのフーケなんていう物騒なのもいるみたいだし、せめて『使い魔』の身の守りになりそうな物を探しに、ね」
「なるほどね。じゃ、あたしは用事があるから」

 案外あっけなく去っていくキュルケ。いつもの事から、逆に何か企んでいるんじゃないかと思ってしまうルイズだった。


***************


 馬で数時間揺られ、ルイズ達は城下街にたどり着いた。

「うう……お尻が痛い」
「慣れてないから仕方ないわね。諦めなさい」
「ヒナはいいなあ、飛べて」
「いいなあ、と言われても困るのだけど」
「それよりキョロキョロするんじゃないわよ。田舎者だと思われるでしょ」

 やがて狭い裏路地に警戒しながら入り、更に歩くと、目的の武器屋を発見した。
 暫く店内を見回すが、店主がカモだと思って安物を勧める→ルイズが遊羽に持たせる→雛水がこの剣はダメですorこれは華奢な遊羽には向きませんね→最初に戻るのコンボが何度も発生し、全然決まらなかった。

「やっぱり遊羽に剣を持たせようってのが間違ってるのかしら」
「それがいけないとは思いませんが……力がありませんから」
「もともと天……あたしたちって戦うタイプじゃ無いしね」

 やっぱり帰ろうかしら、と店をあとにしようとする三人の背中に、突然イラついた声が飛んできた。


「ああもう! うるせーな!」
「うわっ!?」
「誰よ!?」
「……え? まさか……」

 驚く二人とは対照的に、雛水は声のするほうへゆっくり歩いていき、やがてゴミの中から一本の薄い長剣を掴み取った。さびてボロボロだが、剣の形は未だしっかりしている。

「まったくぴーちくぱーちく姦しいったらありゃしねえ! 武器も持ったような事のねえ娘っ子どもはとっととかえりやがれ!」
「驚きました……剣に命があるのですね。天界でもめったに報告がないタイプです」
「ヒナ、どういうこと? その剣、しゃべれるの?」
「インテリジェンス……ソードね?」
「そうでさ、若奥さま。意思を持つ魔剣、インテリジェンスソードでさ。
 いったい、どこの魔術師が始めたんでしょうかねえ、剣をしゃべらせるなんて……とにかく、こいつはやたらとロは悪いわ、客にケンカは売るわで閉口してまして。
 やいデル公! これ以上失礼があったら、貴族に頼んでてめえを溶かしちまうからな!」
「おもしれ! やってみろ! どうせこの世にゃもう、飽き飽きしてたところさ! 溶かしてくれるんなら上等だ!」
「へえ、おもしろいじゃない。ヒナ、ちょっと貸して?」

 雛水が止める前に横から遊羽が掻っ攫い、両手に持ってぶんぶんと振ってみる。

「結構軽いじゃない。これなら……あら?」

 三人は不思議な事に気づく。遊羽がこの剣を持っているとき、今まで気にも留めなかったルーンが一際強く光っていたのだった。
 さっきまで武器を持っていても僅かに光っていたし、正直ルーンがどう作用するのかは天使である二人はもとより、勉強家であるルイズさえ知らない事だったので、せいぜい使い魔の証としか思っていなかったのだが。

「おでれーた、見損なってた。てめ、『使い手』か!」
「『使い手』?」
「ふん、自分の実力も知らんのか。まあいい。てめ、俺を買え」
「いいわよ。にぎやかだしね」

 とのやり取りで、全員光るルーンのことは一旦すみに置いた。

「お金出すのは私なんだけどね……これ、おいくら?」
「あれなら、百で結構でさ。こっちにしてみりゃ、厄介払いみたいなもんでさ」

「あなたの名前、何?」
「俺かい? デルフリンガーさまよ!」
「オーケイ、刻んだわ。あたしは遊羽」
「私は雛水です。遊羽、ちょっと貸してくれる?」

 ん、いいわよ、と剣を受け取り、色々触ったり撫でたり見つめたりする雛水。

「ところであんたら、なにもんだ? よく見りゃ、ただの人間とはちょっと違うな」
「ちょっとね、ワケあり」
「やはり、大した剣です。遊羽の練習用や、私の戦闘用にはいいかもしれません」
「何がいいの?」
「どうやら、魔力を吸収する能力、それによく分からない力があるようです。そして」

と、雛水は遊羽の左手を取る。


「この剣、私でも少し重いですが、遊羽は軽いと言いました。
 詳しく調べないと分かりませんが、恐らく剣がこのルーンと強く通じ合い、遊羽の身体能力を上げたのではないでしょうか」
「ま、使い手だからな」
「使い手……それに謎があるということですか」
「何か、あたし置いてけぼり?」
「いえ、遊羽にこそ、この剣が最適と言う事です」
「よろしくな、相棒」

「ってあれ? 白い娘っ子。さっき、『私の戦闘用』って言ってなかったか?」
「はい。遊羽は元々『この世界』で戦闘行為をしてはいけないのです。こうして戦う準備をしているのも、非常措置ですから。
 だから、遊羽が剣をまともに持てるまでは、私が代わりに戦います」
「『この世界』とかってのも……さっきのワケあり、ってことか?」
「はい」
「しゃあねえ……使い手以外の手で戦いたくはねえが、我慢してやるか」

「ほら、お金払ったんだから、さっさと帰るわよ!」


(恐らく、我慢しているのは無駄になるでしょうが……)



『土くれのフーケ編 終了』

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