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NEVER~新たなる戦いinハルケギニア-02


その時であった。

空気を切り裂くような音がピシャッと響くと、長くしなやかな何かが少女の首に巻かれる。
すると、すぐに少女の体はぐいっと強い力に引っ張られ、克己から大きく引き離された。

「ぐっ!?な、何よ!?」

少女は突然自分の身に降りかかった事態に当惑し、声を上げた。
首を絞めつけられているせいか、とても苦しそうである。
周囲の連中も何が起きたのか即座に理解出来た者はいないようでざわめきが収まらない。
あのコルベールという男でさえ、この事態には面食らっているようであった。
克己に妙な真似を仕掛けた気障な少年もキョロキョロと辺りを見回している。
次の瞬間、克己の体は自由を取り戻していた。

(動く!!)

どうやら、周囲の戸惑いに合わせて、少年の集中力が落ちたらしく術のかかりが甘くなったらしい。
その隙を見逃さずに克己はナイフを取り出し、少年へ向けて投げつけた。

「痛い!!!!」

投げたナイフは少年の右手へと深く突き刺さっていた。
あまりの痛みに少年は手にしていた薔薇をポトリと地面へ落とすと、右手を押さえながら蹲る。

「大丈夫か!?」

少年の負傷に即座に反応したのは、やはりコルベールであった。
コルベールは少年の側へ駆け寄ると、応急処置を施し始める。
それと同時に克己の体がストンと地面へ落下した。
どうやら、少年のかけた術が完全に解けたようである。
克己は器用に着地すると、先程少女を襲った何かが飛んで来た方へと視線を向けた。
すると、そこには一人の男が立っていた。

黒い短髪に顎鬚を蓄えた少々強面の顔。
均整の取れた筋肉質の体。
そして、その男の手に握られていたものは鞭であった。
男は克己の方へ視線を向けると、強面の顔から一転、ニコリと笑う。

「克己ちゃん!!」

見た目とは裏腹に甲高い声がその場に響く。

「まさか、こんなところで逢えるなんて!!やっぱりアタシたちは運命で繋がれているのね!」

まるで乙女のような台詞を言って、男は体をくねらせた。
克己はやれやれといった表情で男に声を掛けた。

「運命かどうかは知らんが、お前と逢えたのは俺にとっては幸運だった……京水」
「ま、嬉しい!!克己ちゃんの口からそんな言葉が聞けるだなんて!!」

克己の言葉に歓喜するこの男の名は、泉京水。
克己率いる傭兵部隊『NEVER』のメンバーにして、彼の片腕的存在である。

「は、離しなさいよ……!!」

二人が二、三言葉を交わしていると、少女が首に巻きついた鞭を掴みながら京水を睨み付けた。

それを見るなり、京水の表情はさっと変わり、目に見えて怒りが露になる。

「ま!克己ちゃんの唇を奪おうとした雌餓鬼が生意気な!!……ぶっ飛び~!!」

そう言って、京水は少女ごと鞭を振るって見せた。
少女の体は宙を舞い、そのまま受身も取れずに地面へと叩きつけられる。

「ぐえっ!」

少女はまるで潰れたヒキガエルのような声を上げると、そのまま気を失ってしまった。

「全く!いくら克己ちゃんが魅力的だからって、油断も隙もあったもんじゃないわ!」

京水はそう吐き捨てると克己を手招きする。

「そんなことよりも克己ちゃん!こっちこっち!!」
「ああ」

克己と京水はその場からの脱出を図り、示し合わせたかのように共に駆け出す。
すると、少年の応急処置を終えたコルベールが二人の背中へ杖を向けた。

「くっ!よくもミス・ヴァリエールとミスタ・グラモンを!」

コルベールはそう言うと、空中に炎の塊を浮かび上がらせていた。

「ファイヤーボール!」

そう唱えると、炎の塊が克己たちへと向かって飛んで行く。
まともに受ければ無事では済まなさそうだ。
だが、克己と京水は瞬時の判断で二手に分かれると、それをあっさりと交わして見せた。
目標を見失った炎の塊はそのまま地面へ着弾し、高く火柱を上げる。
それを傍目で見ながら克己は軽く口笛を吹く。

(全く、おかしな技を使って来やがる)

過去に戦った超能力兵士も似たようなことをして来たが、コルベールが放ったそれは明らかに威力が異なっていた。
恐らく、これでもまだ本気を出してはいないのであろう。
やはり、今の状態のまま戦わなくて正解だったと克己は思った。

(だが、奴とは再び相見えるような気がする。そういう『運命』を感じた。……その時は地獄へと送ってやるよ)

克己はチラッとコルベールを見ると、ほくそ笑んだ。
それはまるで、新しい玩具を見つけた子供のような無邪気な笑みであった。

二人はそのまま走る速度を緩めずに建物を囲む壁へと向かった。
目の前まで壁が迫ると、克己は振り返って追っ手が来ていないかを確認する。
コルベールを含めて何人かが二人を追い掛けて来てはいたものの、二人の速さについて来れないのか大分引き離している。
二人とも『NEVER』であり、身体能力が常人を遥かに超えていたことが幸いしていた。
あのコルベールも身体能力自体はそれ程高いわけでもないらしい。
二人は素早く壁を乗り越えると、すぐに建物の外へと脱出した。
これも『NEVER』だからこそ出来る芸当である。

「しまった!!」

遥か後方からコルベールが声を上げる。
失態であった。
二人の身体能力がこれ程までに高いとは思ってもいなかったのだ。
すぐにコルベールは杖を取り出すと、何かを唱えてふわっと宙に浮いた。
そのまま壁を飛び越え、二人の姿を確認しようとする。

しかし、既に何処かへ身を隠したのか、二人の姿はもうそこには無かった。

「くっ!」

無念そうに呟くと、コルベールはゆっくりと地面へ降りていった。





「……どうやら撒いたみたいね」

追っ手がいないことを確認して、京水は言った。
あの建物から脱出した後、二人は物陰に身を隠しながら移動し続けていた。
やがて鬱蒼と茂る森を見つけると、一切躊躇わずにその中へと入ったのだった。
薄暗い森の中でようやく二人は一息つく。
克己は京水の肩を軽く叩いた。

「まさか、お前があそこにいたとはな……京水」
「アタシも……まさか、克己ちゃんがいるなんて思ってもみなかったわ!」

京水はとても嬉しそうな顔で克己に抱きついた。

「ああ、克己ちゃん!アタシの腕の中に克己ちゃんがいるのね!……もう二度と会えないと思っていたわ!!
「……そう言えば、お前を見たのはあの時が最後だったな。……あの後どうしたんだ?」
「……浮気はやっぱりダメね。克己ちゃん以外の男に目移りしたから、きっと罰が当たっちゃったんだわ」

そう言うと京水はばつが悪そうに舌を出した。
可愛らしい少女が行えばとてもチャーミングな行為だが、京水のような男が行うと気色悪い。
克己はそんな彼を見て、少しだけ気を緩ました。
何だかんだで克己はこの京水という男を信頼していて、嫌いでは無かったのである。
少し緊張が解れたところで、京水は仮面ライダーOOOと戦い、そして散ったことを克己へ話した。

「そうか……風都の仮面ライダーはまだいたということか」
「ええ、イケメンで強かったわ。ところで克己ちゃんはあの後どうしたの?」
「……………………」
「あ、いや、ここにいるってことは……そうよね。ごめんなさい、アタシ無神経だったわ」

途端に不機嫌になった克己に、京水は慌てふためき、そして謝罪した。

「……アタシのこと、嫌いになっちゃった?」
「フン、過ぎたことだ。元々過去なんか消えちまう俺たちだ。気になんかしていないさ」
「……有難う、克己ちゃん」
「……しかし、ここは何処だ?」

克己は再び目を覚ましてから、最初に感じた疑問を改めて口にした。

「俺たちは何故ここにいる?それよりも何故、俺たちは『生きて』いるんだ?」
「そうね。アタシは確かにあの時、死んじゃったわ。でも、今確かにここにいる……本当に不思議ね克己ちゃん」
「……まあ、いい。分からないものは仕方が無い。それならば、重要なのはこれからどうするかだ」

何故、今自分たちが『生きて』いるのか。
それは後からでも考えることが出来る。
今すべきことは、この先どうするかである。
京水も克己の意見に同調する。

「そうね、その通りだわ。……でも、ここ一体何処なのかしら?どう見ても風都じゃないのは確かだし……。あの連中の顔や建物を見る限りヨーロッパ方面みたいだけれども……」
「取り敢えず、近くの街へ行く。情報を得るにはそれが一番手っ取り早い。ある程度情報が出揃えれば、俺たちが何処にいるか大体は見当が付く筈だ」

「流石克己ちゃん!こういう時でも冷静なのね!」

抱きつこうとする泉京水を交わし、克己はどんどんと先へ進み出した。

「つれないのね……でも、そこが素敵!」

泉京水はまるで少女のように頬を膨らました後、ルンルン気分で克己の後をついて行った。



再び場面はトリステイン魔法学院へと戻る。
やっとのことで召喚した使い魔に襲われた挙句、逃げられてしまった少女……ルイズはようやく気絶から目を覚ましていた。

「お願いです!もう一度召喚のやり直しをさせて下さい!!」

ルイズは恥も外聞も捨ててコルベールへ懇願していた。
それが常識外れな願いだということはルイズも分かっていた。
それでも、ルイズはそう言わずにはいられなかったのだ。
しかし、コルベールの返答は非情であった。

「先程も言ったが、召喚の儀式は神聖な物だ。やり直しは私の一存では許可出来ない」
「そ、そんなあ……」

ルイズは愕然とする。

「……君が召喚したあの男の捜索は行う。見つかり次第、確保し君の元へ連れて行くことを約束する。だから、そんな無理を言わないでくれミス・ヴァリエール」
「で、でも!!」

あの使い魔が大人しく捕まるとは到底思えない。
仮に捕らえられたとしても、ルイズにはあの使い魔相手に無事契約を終える自信が無かった。

「これでこの話は終わりだ。君も酷い目に遭ったんだ。医務室へ行った後、ゆっくりと部屋で休みなさい」

コルベールはそう言って、ルイズの元から去って行った。
一人取り残されたルイズは絶望のあまりその場に膝をついた。
それから暫くした後、ルイズは医務室へは寄らずに自分の部屋へと戻って行った。

その夜、ルイズは部屋の中で布団に包まりながら、ボロボロと涙を流していた。

「どうして……どうしてこんなことに……私はただ、普通に魔法が使えればそれで良かったのに……」

王家とも関わりの深いヴァリエール公爵家の三女として生まれた彼女。
誰もが羨むような出生ではあるが、そんな彼女には唯一にして最大の悩みがある。
それは系統魔法が全く使えないということであった。

ここハルケギニアにおいて、魔法が使えるということは何よりも重要なステータスであった。
一部の例外を除き、貴族はメイジであり、メイジは貴族である。
魔法こそが貴族の証なのである。

しかし、ルイズにはそれが無かった。
ヴァリエール公爵家の三女という肩書き。
それさえもこの現実の前には風前の灯と化してしまう。
事実、彼女はこのトリステイン魔法学院において、他の生徒たちから明らかに見下されていた。

そんな苦渋を舐め続けた彼女が今日、『サモン・サーヴァント』を成功させたのだ。
それがどれ程の喜びだったかは想像するに容易い。

しかし、その喜びは束の間であった。

彼女に呼び出されたのは人間。
それも明らかに平民であった。

ルイズは一瞬何が起きたのか理解出来ず、頭の中が真っ白になっていた。
そして状況を飲み込むと同時に、彼女へ嘲笑と野次が飛んで来た。

ルイズはすぐに『サモン・サーヴァント』のやり直しをこの場の監督であるコルベールへと直訴した。
しかし、それは許されることは無く、仕方無しにその平民と使い魔の契約……『コントラクト・サーヴァント』を行うことを渋々了承した。
そしていざ実行しようとした矢先に、いきなりナイフを突きつけられ、挙句の果てには謎の男(?)まで現れて逃走。
契約どころか、使い魔までいなくなってしまった。

これはルイズが今まで生きて来た人生の中で最悪の出来事であった。

「どうしよう。このままじゃきっと留年。下手すると退学まで有り得るわ。そんなことになったら……」

ルイズは厳しい母親の顔を思い浮かべると、恐怖のあまり失神してしまいそうになった。

「もう嫌……私が何をしたって言うの?何でこんなことになっちゃったの?もう嫌……もう嫌よ……」

ルイズは一頻り泣くと、杖を取り出してふらふらとベッドから抜け出た。
そして、呪文を唱え始める。

「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール……」

(……どうせ留年するんだもん。もう一度『サモン・サーヴァント』やったっていいんだもん!)

「……五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし強く美しく気高い我が使い魔を召喚せよ!!」

ルイズはやけくそ気味に杖を力いっぱい振った。
すると、目の前に大きな爆発が起きた。
あまりの轟音に何事かと隣の部屋から褐色の少女……キュルケが飛び起きてルイズの部屋へ入って来る。

「ちょ、一体何の音よ!?」
「うるさいツェルプストー!どうせ私は爆発しか起こせないわよ!!今だって『サモン・サーヴァント』をやったけど、また爆発よ!笑いなさいよ!!笑え!!アハハハハ!!!!」
「……ちょっとルイズ?」
「何よ!?」
「それ……」

ルイズがキュルケの指差した方を見ると、そこには人が倒れていた。
昼間に彼女が呼び出した男とは違い、黒い髪に見たことの無い服を着た少年。
ルイズは驚きのあまり声を出せなかった。

暫くすると、少年は「んん……」と声を上げ、ゆっくりと体を起こし始める。
そして、そのぼんやりと焦点の合わない目で周りを見渡した。
やがて、その視線がルイズの視線とぶつかる。

「……ここは?」
「あ、あんた!あんた誰!?」

突然話し掛けられ、頭の中がパニックになっていたルイズがようやく出せた言葉はそれであった。


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