あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ソビエトの悪魔

春のサモン・サーヴァントの儀式でルイズが呼び出したのは、一風変わった巨大なウサギだった。

「随分大きいわね…てかなんで服着てるのかしら」

赤と白の横縞の変わった服を着て、左耳にはピンを止めているそのウサギは顔に負った傷のせいなのか、まったくといって表情を変えることはなかった。
その顔に不安を覚えたルイズだったが、一応手先は人間並みに扱える上(ニンジンをナイフとフォークで切り分けた)、指示したことは案外きっちりやりとげる。
そのうちにマイペースさにも慣れ、靴を集めるという癖も犬のようでカワイイと愛嬌すら感じるようになった。

ある日のこと。
ウサギならやはりこれだろうと、手ずからニンジンを与えていたルイズのもとに、耳障りな声が怒鳴り声が聞こえてきた。
ついとそちらに目をやると、ルイズが嫌う種の貴族の最たる生徒が、哀れな平民のメイドを怒鳴りつけているところだった。
二股がばれた責任を取れと理不尽なことをのたまっているらしい。
貴族としての矜持が高い彼女は、そんな情けない学友に呆れ同時に見過ごせないと席を立ち、注意をしに行った。
しかし引っ込みがつかなくなったのか、彼は止めに入ったルイズに矛先を変えた。
さすがに顔色を変え、応戦するルイズ。口達者な彼女に旗色の悪さを感じたのか。
グラモン家の子息は彼女の使い魔をなじる方向へ切り替えた。
二足歩行するくらいしか目立ったところがない、愛想もなくて可愛げがないなどと。
だがニンジンを食べ終え、お気に入りの靴を磨き始めたウサギは何を言われようがまったく意に介しているようすはない。ややうっとうしげにしているのみだ。
その余裕の態度に、ギャラリーも二股をかけた彼を謗る。
いよいよ焦った彼は――言ってはならないことを口走った――。

「は!そんなこ汚い靴を後生大事に抱えている、犬コロくずれのツギハギウサギなんて――」

もし彼が――ギーシュ・ド・グラモンが、このウサギの本性を知っていたら――それが自殺行為に等しいことだとわかっただろう。
ウサギがもといたところの連中は、すぐさまあわれな子ヒツジの為に神に祈っただろう。
しかし彼だけでない。主人であるルイズを含めた生徒の全てが、この時までウサギを
「喋らないけれど賢く、まあまあ使えるウサギ」としか認識していなかったのだ。

ギーシュのこの罵りを受け、初めてピクリと耳が動く。
ゆっくりと顔をあげ……彼の感情の無い視線が馬鹿な子供の眼を射ぬく。
思わず気押されるギーシュ。しかしそれを悟られたくなかったのか。彼はさらに愚にもつかないことをしてしまった。
言わずと知れた決闘の申込である。生意気なウサギを躾けてくれる、と捨て台詞を吐き捨てると、一足先に広場に向かう。
思いもしなかった使い魔の毒気に一瞬怯んだルイズだったが、さすがに自身の使い魔に危害が及ぶかもしれない可能性にすぐさま我に返った。
しかし止めようにももう無理だろう。ギーシュは完全にその気だし、ギャラリーが盛り上がって離してくれそうもない。
彼女としてもここでおめおめ食い下がるのは、たとえ規則に反していたとしても嫌だった。



数分後。ヴェストリ広場にて。
ルイズは小さな体に闘志をたたえてその場に立っていた。傍らにはウサギが佇んでいる。
気障な口上とポーズを決め、ギーシュが杖をふるう。産み出されるは1体の戦乙女。
魔法が使えないながらも、ライトなど短い呪文を叫び爆発をおこすルイズ。
彼女は決意していた。確実に向こうが悪くとも、こんなことになってしまったのは引かない自分の性格もある。
ならばけじめをつけようと。
そして決して使い魔には手を出させないと。
そう自分に誓っていた。

実際のところ、彼女の爆発呪文は相当の威力があった。
しかし限界もあった。それ以外に魔法は使えない上、応用が利かないのだから仕方がないのだが。
それに気力にも限界があった。ギーシュはさすが軍門の出というべきか、相手の体力をそぐやり方を実に心得ていた。
3体の戦乙女を弾き飛ばしたところで、ルイズは膝をついてしまう。もはや魔法を扱えるだけの元気は残っておらず、今にも気絶してしまいかねなかった。
薄れゆく意識の中彼女が見たのは、戦乙女に向かってスタスタ歩いていく使い魔であった。

ギーシュはせせら笑っていた。先ほどまでの爆発は驚異だったが、メイジが倒れた今使い魔のウサギをつぶすだけでいいのだから楽だ……というわけだ。
精々怖がらせてやろうと、戦乙女に拳を振るわせた時だった。

ボギッ。

と非常に嫌な音がして、数秒後戦乙女の腕が地面に落ちたのだ。
咄嗟に反応できず呆けるギーシュに、よく状況が理解できていないギャラリー。
……理解できないほうが幸せだったろう。
目の前のウサギが、こともなげに青銅を襤褸雑巾のように引きちぎったのだなんて……。
バゴ。まだ呆けているギーシュを尻目に、第二段を放つウサギ。戦乙女は腰から吹っ飛び、上下が分かたれた。この時間は僅か4秒だった。
ベキッ。ギーシュがようやく食堂でウサギに感じた、あの恐ろしさを再び感じたときには、初撃から既に10秒が経っていた。
既に、である。ウサギにはそれで十分に過ぎた。
片腕の残る上半身だけの戦乙女をハンマーに、馬鹿へと突っ込んだ。
奇声をあげて無茶苦茶に杖をふるい、戦乙女をやみくもに突撃させる。
それらすべてを小気味よく跳ね飛ばすウサギ。
やむなくウサギの持っている戦乙女の錬金をとこうとすると、それを思い切り振りかぶって投げられた。
跳ね飛ばされ、全身に打撲を負い、幾本か骨を折りながら壁に激突するギーシュ。杖は既に彼方で粉みじんになっている。
体中に走る激痛に悲鳴を上げながらも、近づいてくる足音に絶句する。
気づけばあの悪魔は目の前にまで来ていた。

そして彼は見てしまった。
あまりにも恐ろしくおぞましいその顔を。
普段の無表情を思い切りゆがめた顔面、血走った眼、うき出る血管。
死を覚悟した瞬間であった。

ギャラリーはというと、飛んできた戦乙女の破片やら瓦礫やらに悲鳴をあげ、半数近くが逃げたり医務室を送りになってしまっている。ウサギの私刑を止められる者はいなかった。
火傷を負った赤子のような泣き声をあげ、必死に助命を願うギーシュ。
最早かつての威張り散らす彼はいない。哀れながらも失笑を禁じ得ない姿だった。
その願いを聞き届けたわけではないだろうが、ウサギの表情が変わった。
ちらりと後ろを見ると、ふらつきながらも立ち上がろうとしている主人が見える。どうやらあまりの騒がしさに目覚めたようだ。
再びウサギは足元に蹲るこ汚い子供に目をやった。
そして背後の主人が「うさちゃん…どこ…?」と呟いた瞬間。
ギーシュの頭を踏みつけ――首から下を地面に埋めた。

踵を返し、出して出してえと叫ぶ彼を無視すると、ウサギは額を押さえて立ち上がったルイズのもとへ帰った。
「なにこれ?何が起きたの?」といつのまにか惨劇が起きている周囲に驚くルイズ。
離れたところで首だけ地面から出したギーシュが泣きながら謝って負けを認めている。
混乱するも、休みたくてしょうがなくなり、彼女は使い魔を引き連れて自室へと戻った。
数時間後、誰にも助けてもらえなかったギーシュは、泣きながら自らの使い魔に掘り起こしを頼むしかなかった。
余談だが、魔法で様子を見ていた院長も教師も、ウサギのあまりの恐ろしさに凍りついてしまっていたという。



それからは色々なことが起きた。
メイドをさらった奴は屋敷に馬車を投げて壊し、くみとりトイレへ流したり。
ミス・ロングビルがフ-ケの正体を現した際、「破壊の杖」ことドラグノフ狙撃銃で一発で仕留めたり。
ワルドが裏切れば、彼も、助けに来た敵も全員まとめて逆さに生き埋めにしたり。
七万の軍勢と戦うのに、「竜の羽衣」もといスホーイ9に乗り込み完全壊滅させたり。
危機を感じたエルフが、亡国の王妃の心を壊した毒を盛っても酔っ払うだけだったり。
悪の王が住まう城に乗りこみ、一階ずつ建物の一部を殴り飛ばし粗末な平屋に変えたり。
コルベールがレンチ一本で怪しげなものを作れるようになったり。
モンモランシーのカエルが、なぜか狙ったようにマリコルヌの梟ばかりを捕食したり。

大体、単純な物理攻撃はおろか魔法による攻撃すらまったく傷をつけられないというのが不気味だ。
銃弾の嵐など平鍋で跳ね返す上に、スクウェアクラスの魔法までものともしていないなど。
ときに体の一部が切断されるような大怪我も負ってはいるが、それすら水の魔法なし、包帯一つで直ってしまうので性質が悪い。

またこのウサギには不思議なこともあって、なぜかルイズの前で凶行に至ることはなかった。
大抵彼女が気をやっていたり、席を外していたり、自分に注目していないときにその恐ろしい力を発揮するのだ。
ゆえにルイズからしてみれば、いつの間にか事件が解決しているので拍子抜けしてしまう。
もっとも、使い魔の「それがどうした?」という完全な無表情を見ているとうぬぼれる気もおこらず、彼女の長所が失われることはなかったけれど。



数年後。
大勢の黒幕に多大な肉体的苦痛・心的外傷を与えた一人と一匹は、シューズミュージアムを開いたという。
またウサギの後ろ脚を信じたわけでもあるまいが、ルイズはウサギを幸運のシンボルとしてとらえたらしく、沢山飼っているようだ。
その中には、彼女の使い魔と同じような体格の、気の抜けた顔の緑白ストライプ服のウサギがいるらしい。
今日も彼女たちは、珍しい靴を売っている。



(ウサビッチよりキレネンコ、プーチン召喚)


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