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ゼロのペルソナ 第14章 星


星 意味…希望・失望

アンリエッタ姫誘拐事件から一日経ちそして迎えた朝、ルイズたちはトリスタニアからトリステイン魔法学院への帰路についた。
それはつまり丸一日、王城に居たことを意味する。
アンリエッタの帰還をヒッポグリフ隊と共に護衛したのだが、城についてからが大変だった。
ルイズたち3人の魔法使いと3人の使い魔は事情聴取を長々とされた。
その後、前日の夕方から魔法学院を出たため一睡もしていなかった6人は睡眠をいざ貪らんと幾つかの部屋を借りて寝たのだが、その至福のときは長くつづかなかった。
突然起こされたかと思うと6人一まとめでアンリエッタの恩人、つまるところトリステインの英雄だと自分たちを讃えるお偉方に代わる代わる会わされ、似通った感謝の言葉を聞かされた。
それから高官たちの言うささやかなパーティーを終えた後、彼らはもう何者にも邪魔されないという固い決意のもと床に就いたのだった。
ルイズたちが急ぐように城を去ったのはそういう面倒に巻き込まれないようにだ。ただ気にかかったのはルイズたちをあっさりと帰したことだった。
もちろん、早く返してくれるにこしたことはないが、前日の嬉しくもない厚遇から考えると、おやと思ってしまう。
形式ばったトリステインの貴族にしてはあっさりしすぎている。なにか自分たちに構って入られないような事件が起こったのかもしれない。とはキュルケの弁である。
たしかに昨日の午後から徐々に城内に妙な動揺が走っているような気を感じないものが6人の中にいないでもなかった。
王宮内で流れていた情報、噂がなにであったかは学院に戻って数時間ほど経った時、はっきりとわかった。
無数の貴族たちの子供たちが言うことには微細な違いこそあれ、根本的には同じ内容だった。
それはガリア艦隊がアルビオン主力を撃滅し、アルビオン新政府が倒れたということだ。
学院のほとんどの生徒は事態の急展開に理解が追いついていないように見えた。だが時間が経つにつれ彼らの戸惑いは喜びに変わっていった。
忌まわしい共和主義は倒れた。そしてトリステインは戦争の恐怖から解放されたのだった。
その夜はお祭り騒ぎの宴会となった。キュルケは、これだからトリステインの貴族は。と言っていたが、かといって参加しないわけでもなかった。
騒ぎの中、情報は酒気を帯びた舌の上になり、枝が広がるようにその種類を増やしていった。
ガリアがアルビオンを奇襲できたのは裏で繋がっていたからだ。など外交的な噂もあれば、ガリアには秘密兵器があってそれがアルビオン軍を圧倒したのだという噂もあった。
4メイルもの槍を振るう戦士がいたとか、巨大な竜をつれていたとか、高速で動くゴーレムがいたとか、果ては虚無の魔法使いがいたという。
いったいそれらの噂のうちいったいどれほどが、朱筆で丸をもらえるものであろうか。

食堂でどんちゃん騒ぎが起きているとき、タバサは自室で読書に励んでいた。
いつもよりいくらか多い量の食事を摂ってからすぐに部屋に戻ったのだ。
ご馳走は好きだが、お祭り騒ぎはそれほど好きでもない。
昨日トリステインの王城でパーティーじみたものに参加させられた後だからなおさらだ。
彼女が一つの本を読み終えたころ、窓辺に何かが下りたった。それはふくろうのようだが、一見すると小さく作り物であることがわかる。
タバサは窓辺に近づいて手に取った。そしてそれを半ばから折った。すると中から手紙が出てくる。
それはガリアの通信手段の一つだった。タバサに用件があるとき、たまにこうして指令を送りつける。
タバサの眉が不審げに上がった。それはイザベラからではなく、ガリア王ジョゼフからの手紙だったからだ。
彼女の父を殺し、母を狂わせた張本人である。人目がないだけにタバサは無表情に近いながらも不快感を示す。
そしてその指令を読み進めるにつれ動揺は大きくなった。
しかし手紙を読み終わるころにはタバサの顔から表情は消えていた。いつもの無表情ではない。
    シュヴァリエ・ド・ノールパルテル
それは“北 花壇 騎士”7号、雪風のタバサの顔であった。

タバサと同様にバカ騒ぎに参加せずにさっさと部屋に戻った者は学院内に何人かいた。ルイズ・フランソワーズもその一人であった。
彼女は机に肘をついて、机に置いた始祖の祈祷書をボンヤリと見ている。
ウェールズを忌まわしき魔法から、そして敬愛する姫君を悪夢から解放するために彼女は魔法を使った。
あの時、自分の行動に疑問など生じなかった。
ただ自分にはそれをすべきだという確信があり、それが出来るかどうか、なぜ出来るのかなどまるで疑問に感じなかった。
目をつぶり、ディスペル・マジックを使ったときの感触を思い出す。古代のルーンを呟くたびに体の中を何かしらの波長が巡る。
体の中で、何かが生まれ、行き先を求めて回転していくよう。それが自分の系統を唱えるものが体感するものだという。
自分の系統は虚無なのだろうか。ゼロと蔑まれてきた自分の本当の力なのであろうか。
嬉しくないわけではない。あえて言う必要もなく、とても嬉しい。だがそれをどう表現したらいいのかで彼女は戸惑っていた。
虚無という伝説の属性、ほとんどおとぎ話同然の伝説の力を自分は手にしてしまった。
それを簡単に人に教えてもいいものであろうか。秘密にすべき力ではないのか?
現在、彼女の有する唯一の魔法ディスペル・マジックだけならそんな心配は杞憂かもしれない。
類を見ない魔法ではあるが能動的でないのでそこまで強力ではない。しかしルイズは確信していた。あれは虚無の力のほんの一部でしかないことを。
誰にこの秘密を語ればいいのであろう。優しい姉、尊敬する王女などが思い浮かんだが、ルイズが一番強く想起したのは彼女の使い魔であった。
彼を召還した時とは違う。彼女は知ったのだ。怖いのは顔だけで、彼自身は優しい人柄であるということを。
裁縫などという外見に似合わない趣味があることを。
そういえば裁縫を教えてもらっていたのだが姫の婚約の詔を考えるために中止していたのだった。
元々軍事同盟のための婚約であったためアルビオンの反乱軍が瓦解した今だともう婚約は破棄されるかもしれない。
そうなれば姫は望んでいない結婚をする必要もなくなり、そして自分も完二に再び裁縫を教えてもらえるかもしれない。
彼のことを考えると安心する。ガラは悪いし、ご主人様に反抗的な使い魔だが自分を守るといってくれた使い魔だ。
ルイズは完二が帰ってきたら自分の秘密を一番最初に話そうと決めた。
ただ心配なのは彼は話の重大さを理解できるだろうかということだ。
別の世界から来たので知識量が圧倒的に不足しているのは当然だが、それを差し引いても彼は頭の巡りが悪いようにルイズには思えた。それも彼女が知った一面だった。
そうして彼の少し情けない一面を考えるとなんだかおかしくなってくる。戦いとなれば誰よりも頼もしいというのに。そうして微笑んでいると扉が突然ノックされた。
彼女はその時意識を現実に引き戻されて、ゆるんでいた頬を戻す。
「は、入っていいわよ」
なんとかいつもの威厳を保ちながら言えたとルイズは思えた。
だが、扉は開けられずにノックは続けられている。
「もう、なんなのよ」
もしかして鍵かけたかしら。そう思いながらドアノブに手をかける。鍵はかけられておらずあっさりと開いた。
廊下にはタバサが立っていた。
「タバサ?どうしたの?」
ルイズは小柄な自分より小さな青い髪の少女を見た。彼女も今や信用に値する仲間だ。
アルビオンへの任務、アンリエッタ姫の奪還と彼女も命を懸けて自分を助けてくれ、そして信用してくれた。
完二たちが来るまではキュルケの付属品くらいにしか思ってなかったが、今ではそんなふうには思えない。
ルイズの問いかけにも関わらずタバサは黙っている。
もう一度、何か言おうとしたが、ルイズはその前に意識をなくしてしまった。
ルイズに使われた魔法はスリープ・クラウド。眠りの雲にルイズはかけられたのだった。

その日の夜はトリステイン魔法学院ではメイジたちだけではなく平民たちも貴族たちと比べればささやかなものだが、宴会が開かれていた。
ささやかであるのは貴族の子供たちが大騒ぎをするために料理や給仕も動かざるを得ないためである。
なのでそれは魔法使いたちが酩酊したとき、給仕は手を抜き、料理をいくらか頂いて行われた。マルトーが言うには、自分たちで作ったものを自分で食べて何が悪いということだ。
だが出される料理がささやかでも、喧騒は決してささやかなものとはいえなかった。
平民である彼らも、いやむしろ平民である彼らだからこそ戦争がなくなったことが嬉しいのかもしれない。
男の使用人が兵として集められることも、彼らの故郷が戦火で焼かれることも心配する必要がなくなったのだから。
「戦争がなくなってよかったです」
完二の隣りに腰かけたシエスタがしんみりとした様子で言う。
「ほうだな」
完二は食べ物を詰め込んだままの口で答えた。
普段は賄い食ばかりで貴族に出される料理を口にする機会はなかったのだが、今回それを思う存分口にすることが出来るので張り切って食べているのである。
「わたし心配だったんです。戦争が始まったらカンジさんも行っちゃうって……」
「ほが?ほれは……オレはこの世界……じゃなくてここの人間じゃねーから別に戦争に行く必要はねーだろ?」
完二は口に含んだものを嚥下して、言葉を続けた。
彼はこの国どころかこの世界の住民ではないので徴兵される義務も道理もない。
シエスタは首を横に振った。
「カンジさんはそうでもミスヴァリエールは戦争に行くと思います。見栄っ張りだから。そうしたらあなたはきっと付いて行くはずです」
その言葉には確信に近いものが込められている。
「んなこたあねーけどよ……」
完二は否定の言葉を口にするが。しかし思い当たることがあるためその口調は弱い。
バツが悪く、完二は新たに食べ物を口の中に放り込んだ。
そして行儀悪く言った。
「ふぁしかに、ひままでふぉーゆうこともはったな……」
「あったんですか!やっぱり!」
シエスタは見事なリスニングと解読能力を示した。
そしてぐいと完二に寄る。
「カンジさん」
真剣なものを完二はごくりと飲み込んだ。つばではなく食べ物だが。
「な、なんだ?」
「わたしすっごくカンジさんのことをすっごく心配してるんですよ。どうしてかわかりますか?」
完二は今度はごくりとつばを飲んだ。
「……え、ええといったいどういう……」
完二の顔はいくらか赤くなっていた。酒を何杯か飲んだが、それが主たる要因ではないことは明白だった。
シエスタの口が言葉を吐き出そうとしたとき、マルトーの声が飛んだ。
「おい、シエスタ!こいつを貴族の小僧どもに持って行ってやってやれ!」
「あ、はい」
シエスタは、また。と言って手を振った。
完二は安心したような残念なような気分で取り残された。後ろから肩が組まれる。マルトーだ。
「もしかして悪いことしたか?」
内容とは裏腹に悪いことをしたという響きのある声だった。しかし反省しているという様子はなく、面白がっていることだけが感じとれる声だ。
「うっせ」
不機嫌に答えて、仕事をしていない料理長の前で彼の作品を口に運んだ。
ルイズは何をしているんだろう。と完二は脈絡なく考えた。

タバサはガリア王直々の命令であるルイズの誘拐を遂行している途中であった。ルイズを眠らせたのちは彼女をレビテーションで飛ばし、学校を出た。
そして現在、指定された森の中で佇んでいる。そこでルイズを受け取りにあるものが遣わされるという。それが何かは知らないが、そうすれば彼女の任務は終了である。
生死を共にした人物を売るような行為にタバサは心がきしむ思いであったが、彼女にはそうする他なかった。
指令が書かれた手紙は最後には、背けば彼女の母に害を及ぼすとまで書かれていたのだ。
彼女にとって母の命以上に守るべきものはない。彼女は彼女の正義に基づいて行動しているのだった。
タバサが考え込んでいるうちに受け取り人が到着した。彼女は自分に降り注ぐ月光が遮られたことでそれに気付いた。
その姿にタバサも驚愕した。
実はトリスタニアの王城で騒がれていたのはガリアのアルビオン侵攻ではなく、それのことであった。
それとは夜空を飛んだ竜騎士たちの目撃から始まり、そして数十人が目撃したものだ。
彼ら曰く、
「信じられないが、通常の2倍以上の大きさはあろうという火竜が飛んでいたんだ!雲の上を、都の上を!」

「お待たせしました」
給仕が終わり、シエスタが完二の隣りに再び腰かける。そして完二が片目を抑えていることに気付いた。
「どうしたんですか?」
心配そうにシエスタが覗き込んでくる。その姿を完二は見て取れるが、彼の視界にはそれだけではない何かが入りこもうとしていた。
「わり、なんか、酒の飲み過ぎかもしんねえ……」
言い終わる前に鮮明な映像が彼の視界となる。それは木々がたくさんあり、つまり森だ。
暗がりの森を上空から見上げている。そしてその視界の中にはぽつりとタバサが立っていた。
まるで意味のわからない映像だが、完二の危機感は強くなる。
その視界は回転すると―ちょうど首を動かしたようだ―暗がりの中でもはっきりと分かる赤が映し出された。その赤は一枚一枚の鱗からなっている。
「あ、カンジさん!?」
完二は焦燥感に駆られて走り出した。シエスタの言葉にも振り向くことなく走る。

厨房を飛び出て廊下を走りトリステイン学院の外壁を出る。
さきほど見えたものから予想して森のほうに向かってみると、それはすぐに見つかった。
さきほど自分とは違う視界の中でものだ。とてつもなく巨大なドラゴンだった。
まるで高層ビルのような大きさであり、テレビの中でさえこれほど巨大なシャドウはいなかった。
またそれほど大きいのに暗闇に支配された森を見下ろすように飛んでいる。
しかし規格外の怪物だとわかっても完二は恐れることなく走り出した。あそこにルイズがいると理由もなく確信していた。
走っていくとルイズを見つけた。赤い竜の腕、というか前足に握られている。さっきの視界はルイズのものだったと理解する。
              ホバリング
そして竜はさきほどは空中停止していたはずだったのが、徐々に移動し、加速している。完二が走っても追いつけないほど速くなってしまうのも時間の問題だ。
ならばそうなる前に叩き落としてしまえばいい。だが電撃魔法はだめだ。ルイズを巻き込んでしまう。物理攻撃なら問題ないだろう。
いや、今の高さから落ちてしまうとどうしようもない。ルイズは飛べないのだ。
だが、受け止めるにしても竜へ近寄ろうとするうちに却って遠くへ飛んで行ってしまうかも知れない。どうすればいい。
焦燥に駆られながらも必死に足を動かして距離を近づけようとしていた完二。
そこで完二は先ほどの視界つまりルイズの視界の中にいた彼女を思い出した。
タバサに任せるのは危険だろうか。いや、あのドラゴンがいつまで自分の攻撃射程に収まっていてくれるかわからない。
そしてあのドラゴンがいつまでルイズの命を奪わないでいるのかも。完二はタバサを信頼することに決めた。
今まで彼女は何度となく旅の危機を機敏に救ってくれた。
「タバサ!!任せたぜ!!」
森の中にいるであろうタバサに伝わるように可能な限り大音声で叫んだ。
見ればいやでも分かってしまうほど強力な魔物。出し惜しみはしない。
「ペルソナ!」
ロクテンマオウが竜よりも赤いその姿を現した。その手を空飛ぶ竜へと突き出した。
胸の辺りから莫大な力が放出され、突き出した腕のほうへと飛んでいく。イノセントタック、最強の物理攻撃である。
ロクテンマオウから放たれた力は並大抵の魔法なら傷を付けられない竜の鱗も皮膚も貫通し、風穴を開けた。
竜は事切れてその手を放す。
竜の手の中で目を覚ましたルイズは空中で自由になりながらも叫び声を上げる以外なにも出来なかった。

ルイズは絶叫しながら落ちていた。タバサがやって来たと思ったらいつの間にか火竜の手の中にいた。
そして自分の使い魔はその40メイルはあろうという火竜を一撃で倒してしまった。その結果自分はフライの呪文も使えないのに存分に空を飛んでいるのだった。
あのバカ、わたしのこと考えてんの!
完二がメイジたちの恐れる火竜より一回り二回り大きい火竜を屠ったことを讃えるより、完二が考えなしに攻撃を放った自分への配慮のなさをルイズは糾弾したかった。
ルイズの高さが木の高さを下回ったとき体に浮力を感じた。
呼吸をはーはーと荒くしながら自分の身が地面に叩きつけられることを回避したことを悟った。
視界の中に身の丈より大きな杖を持った少女が見える。どうやらタバサが助けてくれたようだ。
「おいルイズ!大丈夫か!」
自分を地面と激突する危機から救ってくれた少女への礼よりも、ルイズは自分を高みから突き放した使い魔への文句が口から突いて出た。
「大丈夫なわけないでしょ!!死ぬかと思ったわよ!!」
「わ、わりい……。つってもタバサが助けてくれだろ?」
ルイズはタバサの魔法で浮いたまま、完二を見下ろしている。
「当たり前よ!そうじゃなきゃ今頃死んでるわよ!あんたみたいなバカな使い魔よりタバサのほうがああああああああ!!」
ルイズの体が完二へと飛ぶ。彼女は叫び声を再び上げ、完二は慌てながら彼女を受け止めた。
「何すんだタバサ!?」
「何するのよタバサ!!」
先ほどとは打って変わって主従の意志が一致した発言である。
しかし、その矛先である青髪の少女の姿は消えていた。
二人とも不思議そうにしていたが、完二に抱かれていることに気付いたルイズは急いで下ろすように命じた。
結果としてルイズは重要な事実に気付くことがなかった。
火竜の右手に刻まれたルーンに。
それが彼女の使い魔と似通っていることに。

その夜、陽介とタバサは貴族たちのお祭り騒ぎに参加していたが、途中で二人は密かに会った。
「なにクマか?クマったら女の子の人気の的になってたのに」
「悪りいな、お前にしか頼めない話なんだ」
普段なら適当なツッコミの一つを入れるクマの発言を陽介は流した。そのことからクマは真剣な雰囲気を感じ取る。
「実はお前の力が必要なんだ。タバサのお母さんのために」
「お母さん?お母さんビョーキクマか?」
「病気……ってわけじゃないけど、まあ、そんなとこかもな」
「任せるクマ!クマは最近ルイズちゃんの病気を治したばっかりクマ!株価じょーしょーしてるクマ」
「ルイズが病気?」
クマは端的にルイズが惚れ薬を飲んでしまった際のことを陽介に話してみた。
「やっべ、ちょっと見たかったかも……。ってそうじゃなくて、お前ラグドリアン湖に行ったのか?」
「そークマ。無駄骨、ていうか無駄ボーンになっちゃったけど」
「なんだ近くにいたのか。あいつの実家もあの近くにあるんだ。
わかってたら、あの時すぐにでも……。って言ってもしょうがないな。とりあえず明日一緒に来てくれるか、クマ?」
「もっち」
クマから色好い返事をもらえ、陽介は明日の実家帰りをタバサに言うつもりだ。
変に期待させて回復できなかったらと思うとなかなか言い出せなかったが、クマはこの世界の魔法の薬を治したという。なら十分期待する価値はあるだろう。
タバサの姿をパーティーの中で見かけた記憶はないのでおそらく部屋で本でも読んでいるのだろうと当たりをつけてタバサの部屋、そして自分のでもある部屋に戻った。
ドアを開けてみると誰もいない。
「あれ、もしかしてまだ何か食ってるのか?」
再び食堂に戻ろうかとも思ったが、入れ違いになるのも嫌なのでおとなしく部屋で待つことにする。
部屋の中に足を踏み入れると、机の上に置かれた手紙に気付いた。なにやら乱雑に置かている。
何か気になるものを感じ、手にとって読んでみる。
「なんだコレ……うっそだろ……?」
そこにはルイズをさらうという任務が書かれていた。そして遂行できなければ彼女の母を殺すとも。
陽介は部屋を飛び出てルイズの部屋に行った。扉は開けられているのに中には誰もいなかった。
もしかしてもうさらったのか?
そう考えているときにまさしくルイズその人の声がかけられた。
「ヨースケじゃない。どうしたのよ、わたしの部屋の前に立って?」
その隣りには完二が立っている。
陽介はほっとした。
「よかった、無事だったか……」
「無事だったかって?無事じゃないわよ!タバサが尋ねてきたと思ったらいつの間にか寝てて竜につかまれてるし、
地面にたたき落とされそうになるし、あの子が助けてくれたと思ったらカンジに投げつけられて文句を言おうとしたらいなくなってるし」
陽介の発言はルイズにとって許し難いことだったのか、糾弾するように一気にまくし立てる。
「ってあれ、なんか顔色悪くない?」
ルイズが思わず心配してしまうほど陽介の顔色は変化した。そして悲壮に言う。
「タバサがやばい」
「やばいってどーいうことっスか?」
陽介の尋常ではない雰囲気に気付いて、カンジは尋ね返す。
「説明してる時間もねえ。もし協力してくれるならラグドリアン湖のオルレアンの屋敷に来てくれ、俺は先に行く!」
それだけ言うと陽介は駆け出した。
彼は小さな自分のご主人様を思い出した。
イザベラに頼まれたというのに。
希望を見出したというのに。
事態は急変を続ける。


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