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ゼロのペルソナ 第12章 恋愛 後編


金髪の男ドゥドゥーの名乗りが終わる前に完二とクマは攻撃に移った。
完二はデルフリンガーの腹でジャックを叩き、クマは手甲に包まれた拳をドゥドゥーの腹に叩き込んだ。
完二とクマに確かな感触が伝わる。先ほど魔法を機敏に避けたのとは違いまともに喰らった。
もう立ち上がれないくらいのダメージは与えたはず。
だが、どういうわけかジャックもドゥドゥーも平然と立っていた。
「おいおい、いてーじゃねーか」
ジャックが言いながら拳を振りかぶる。平然とした軽口に一瞬呆然としかけたが、敵の攻撃にはっとして完二は回避した。
クマもドゥドゥーから距離をとった。
「なんであいつらなんでもねーよなツラしてんだ!?」
混乱して、完二は当然の疑問を吐き出した。先ほどの攻撃は手加減したものだ。
完二が本気で人一人を剣で叩けば死んでしまうかもしれないし、またデルフリンガーが折れてしまうかもしれないからだ。
とはいえ、完二の怪力を喰らい立っていられるはずがない。普通の人間ならそれこそ骨くらい折れるだろう。
混乱する完二の疑問に答えたのはクマではなくデルフリンガーだ。
「相棒がおれを叩き込んだときにアイツの皮膚が鋼鉄になったみてーだぜ」
ジャックは敵の剣に感心し、ほう、と言った。
「インテリジェンスソードか、珍しいな。その通り、おれたちは体を鋼鉄に錬金できるのさ。こんな風にな」
彼は詠唱を始めた。呪文を完成させまいと完二はデルフリンガーを振りかぶった。
が、ジャックの詠唱はすぐに終わり完二の振り下ろした剣を手の甲で受け止めた。
みればその手は金属になっている。ジャックは気軽に完二に話しかけてくる。
「剣は斬るものだろ?そんな鈍器みたいに使ってどうすんだ?」
「うっせえ!」
完二はいったん下がり再び剣を振りかぶった。

「さあ、こちらも勝負だ」
そう言って紡ぎ始めたドゥドゥーの詠唱はあっという間に完成した。
                             稲 妻
杖の先から電撃がほとばしる。高位の風呪文“ライトニング”だ。
ライトニング
“稲妻”はどこに飛んでいくのかわからないので、通常は“ライトニング・クラウド”で小さな雲を作り出し、遠隔的に発射するものだ。
そうしなかったことからドゥドゥーがかなりの使い手だと知れる。
クマはそのような理屈は無論知らないが、電撃はまずいと回避する。クマの弱点は電撃属性の攻撃なのだ。
喰らえばダウンしてしまう。それは戦闘で致命的なほどの隙を生んでしまうということを意味する。
「ほいっとぉ!」
「へえやるね、なら……」
ドゥーゥーは再び呪文を唱える。
再び電撃が来たらまずいとクマは距離をとった。

クマの悪い予想は外れ、どうやら電撃の呪文ではないようだ。
しかし、それは幸いにも。と言っていいものか目の前の魔法を見ると判断できなかった。
それほどドゥドゥーの魔法はこの世界の魔法をほとんど知らないクマにしても非常識なものだった。
ドゥドゥーのしなる杖は電撃を放つのではなく、逆にどんどん光を集め、そして太くなっていく。そして青白い大木のような太い刃が出来上がった。
“ブレイド”――魔法使いが白兵戦時に使う魔法だ。しかしこれほど大きな“ブレイド”規格外だった。
ドゥドゥーはその巨大な刃を横ぶりに払った。まるで空間を切り裂く剣のようだ。弱点ではないにしても喰らうわけにはいかない。
クマは地面に伏せてなんとかその攻撃を回避した。
「なめたらアカンぜよ!」
軽口を叩きながらクマはいっぱいいっぱいだった。
「まだまだぁ、むっ……!」
再びブレイドを振ろうとしたドゥドゥーに火球が飛んだ。そして地面から6体のゴーレムが現れる。
回避に精一杯になっているクマを見かねたキュルケとギーシュの救援だ。
クマは今がチャンスと駆け出した。注意のそれたドゥドゥーから離れ、戦っている完二の元へ向かったのだ。
「カンジ!敵さんチェンジ!あいつ雷とか使ってくるクマ!」
ジャックと向かい合っていた完二は「ああ?」と言いつつ視線をクマに向けた。
その隙を見逃さずにジャックは完二に一瞬で詰め寄る。しかし拳を完二に打ち込もうとしてわき腹にダメージを受け再び飛び退く。
クマの渾身のパンチを受けたからだ。クマの攻撃に気付かなかったわけではない。
攻撃を受けながらも、完二を倒す一撃が放てると思ったのだったが、予想よりクマのパンチは遥かに重く、鋼鉄化した腹の内側までダメージを与えた。
ジャックがクマの攻撃を気にするほどのものではないと判断したのは負うとドゥドゥーもクマの攻撃に全くダメージを受けなかったからだが、
しかし力をセーブしていたのは完二だけではない。地面を踏みしめたクマの本気の拳は決して軽いものではない。
敵の危険度認識を改めたジャックは拳を構え、唇を下でぬらした。
「やさ男だと思ったらやるじゃねえか」
「野生のパワーを思い知ったクマ?」
突然戦いに割り込まれた完二は文句をつけようとしたが、それを彼の剣が遮る。
「おれを右に構えろ!」
完二も危険に気付いて言われたとおりデルフリンガーを構える。そして鉄の刃は光の刃を受け止めた。
ドゥドゥーのブレイドだ。ギーシュが力を使い果たして作ったゴーレムの軍団を十秒程度で全て破壊したのだった。
「んじゃカンジ、あっちよろしクマ」
気軽に言うクマに怒るより呆れてしまいそうになりながら、それでも完二は剣を構えドゥドゥーへと向かった。
突如、戦いの相手を帰られたジャックはクマに尋ねる。
「なあ、お前」
「なにクマか?」
「おれのほうが弱いとでも思ってるのか?」
ジャックは単純に疑問を感じているようだった。下に見られて腹が立っているという風ではない。
そしてクマもそうは思っておらず、拳を構えながら言った。
「世の中には相性というものがあるからクマよ」
「なるほど」
ジャックは踏み込んだ。
クマとジャックの攻防が始まった。

クマから一方的にバトンタッチをされた完二は防戦一方だった。
ドゥドゥーは長いブレイドを振り回し、攻撃している。そのせいで近づくことはもちろん、距離をとることさえできない。
なんとか回避したり、デルフリンガーで防いで負けないではいる。ただそれだけだ。
「おいおい、相棒よ。さっきから押されっぱなしじゃあねえのか?」
「うっせ!」
そう言いながらも完二は横ぶりのブレイドを防いだ。しかし防いだブレイドは鞭を振るうように上にたたき上げられ今度は上から完二を襲う。
完二は左側に転げるように跳んで攻撃をよけた。
「クソッ少しでも隙ができりゃあ……」
「隙ができればいいんだな?よし、おれを地面に突きさせ」
「ああ?」
怪訝そうな顔を完二は浮かべた。
「きみたち話をしている余裕があるのかい」
そう言ってドゥドゥーはブレイドを振り回してくる。それを完二は力をこめてデルフリンガーを振り回し、はじいた。
大木のようなブレイドを弾く腕力にドゥドゥーは驚いたような表情を見せる。
それはほんの一瞬の、隙とも言えない隙だったが、その一瞬に完二は行動に移った。
「わーったよ!そんかわり何とかしろよ!」
完二はデルフリンガーを地面につきたてた。するとその刀身はドゥドゥーのブレイドの光を奪っていく。
ブレイドに蓄えられたドゥドゥーの魔力を吸収しているのだ。
「な、なんだこれは!?」
慌てたのはドゥドゥーだった。ブレイドから魔法の光が剣に向かっていくなどと非常識な光景を見たのだから当然だろう。
しかし、ドゥドゥーの驚愕はそれでは終わらなかった。
インテリジェンスソードが魔法の力を奪い始めたと思ったら次には、彼が見たこともないような巨人が現れた。
ペルソナ、ロクテンマオウは完二が地面にインテリジェンスソードをつきたてたように自分の得物を突きたてた。
そしてそれを両の拳で粉砕するとロクテンマオウの、完二の力が放たれる。
その力は電撃となりドゥドゥーの体を襲った。ジオ、初級電撃魔法だ。
ドゥドゥーの頭上から発生したほとばしる電流はドゥドゥーの体を、頭のてっぺんから地面までの道筋として流れていく。
その局地的な落雷が終った後、ドゥドゥーは立っていた。ただし、立っていただけだ。
先ほどまでのように平然として、ではない。目の焦点は定まらずフラリフラリとしている。
完二は地面に突き刺した得物を取ることもせず、そして敵の攻撃に警戒することもせずにドゥドゥーに歩き近づいた。
「あばよ」
とどめに完二のパンチを顔面に喰らい、ドゥドゥーの体は吹っ飛び、意識も飛んだ。

クマと戦っているジャックは弟ドゥドゥーが敗北する様子を見て驚いたようだ。
「ドゥドゥー……!」
「ほらほら弟さんの心配をしている場合クマか?ジャックはクマと戦っているクマ」
相対しているクマはそう言った。
クマに向き直ったかと思ったジャックが何か詠唱を唱え始めた。なにかと思ってクマは安全のために距離をとった。
詠唱が完成すると地面から大きな壁が現れた。それはジャックの姿を隠すほど大きかった。またその壁は、ただの壁ではなく土の拳が飛び出してきてクマを襲う。
拳が眼前に迫りつつあった。しかしクマはジャックがその壁を作り出した意図を理解した。
「逃げる気クマね。そうは問屋がおろさんぜよ!滾れ、カムイ!」
クマはどこからか現れた金色に輝くカードをその手甲で砕き、ペルソナ、カムイを召喚した。
カムイは着ぐるみを着たクマのような球形の体をしている。違うのは4本の手足がそれぞれ最も遠い距離になるように配置されているのと、その4本の手足の真ん中に顔があることだ。
カムイはマハブフを発動した。マハブフとは氷結系初級全体魔法である。
マハブフにより生み出された冷気はクマの目前にせまった3つの拳を凍らせ、停止せせ、そして砕いた。
土の拳だけではない。壁の向こうもマハブフの攻撃範囲だ。壁の向こうで逃避に移ろうとしていたジャックも突然の冷気を回避することが出来なかった。
彼の体の表面を鋼鉄にする魔法も、雷同様、氷にも通じはしない。
生やした拳と同様に砕け散った壁の向こうには体の端々を凍らせて地面に倒れたジャックがいた。死んではいないがとても動けそうにはない。
完二と違い、一撃で仕留められたのは、クマの魔力がそれほど莫大だからだ。
ドゥドゥーは完二が、そしてジャックはクマが撃退した。完二とクマは視線を合わせてから大声で叫んだ。
「勝利クマー!!」
「よっしゃあ!!」
その声で今まで隠れていたキュルケ、ギーシュ、モンモランシー、そしていつのまにか起きていたルイズが茂みから飛び出してきた。
「やったわね、クマ、カンジ!」
「やったな、ぼくたちの勝利だ!」
「ほとんど二人の力じゃない……」
「大丈夫、カンジ?怪我とかしてない?」
キュルケとギーシュは勝利を喜び、モンモランシーが彼氏の大口に苦言を呈し、ルイズは完二を心配した。

そうして6人がおのおの勝利の余韻に浸っていると突然強い風が吹いた。思わず、全員目を閉じてしまう。
目を開けると一人の少年と少女がドゥドゥーとジャックの近くに立っていた。
少女は黒と白の派手なドレスを着ていた。その少女は倒れ付した二人をレビテーションで浮かべて様子を調べていた。
「ドゥドゥー兄さんはともかくジャック兄さんまでやられてるなんて……」
ボロボロの二人の傍に立って少女は溜め息をつくように言った。
しばし呆然としていた完二たちだが、一番早くに立ち直ったキュルケが言った。
「だれよあなたたち!」
「元素の兄弟。二人はそういわなかったかな?」
そう言ったのは少年のほうだった。見た目は若いというより幼く12歳くらいに見える。
カンジとクマは武器を構え、キュルケたちも杖を構えた。
しかし少年は両手を上げて、戦う意志がないことを示した。
「杖をおろしてください。自分は弟たちを向かえに来ただけですから」
弟という言葉に全員眉をひそめた。しかし少年は疑問に答えずに自分の言いたいことだけを述べる。
「それにもう水の精霊を襲うこともやめますから。それではさようなら」
少年がそういうとまたも強い風が吹き、土ぼこりが舞い上がった。
目を開けられるころになると元素の兄弟たちは居なくなっていた。
「あいつらどこに!?」
ギーシュはきょろきょろと周りを見回した。ギーシュだけでなくみんなが周りを見たが、影も形も見つからなかった。
モンモランシーはぽつりと言った。
「あいつらなんだったのかしら……」
キュルケは首を振った。
「わからないわ。でもとりあえず水の精霊のお願いはかなえたわ」
「あいつらの言葉を信じるのか?もう襲わないっていうのを」
ギーシュは異論ありげだったが、キュルケの回答は冷静なものだった。
「水の精霊の願いは襲撃者を撃退してってだけよ。今日たしかに撃退したわ。それにもう襲わないって言質ももらえたわ。
たとえそれが嘘だろうとわたしたちには関係のないことよ」
ギーシュとしては釈然としないものもあるが、確かにキュルケの言うとおりだろう。

「ま、終わりってーんならそれでいい……んだよ、クマ?」
「ちょ、カンジ。ちょっと思い出したっちゅーかー、思いついたことがあるクマよ」
ちょんちょんと完二をつついていたクマは言った。
「ルイズちゃんにアムリタ使ってみたらどうクマ?」
完二は固まった。
アムリタとはクマの使う回復魔法であり、どんな状態異常もたちどころに治す万能の回復魔法であった。確かにそれならばルイズも治せるかもしれない。
やっとそのことに気付いた完二の中で怒涛のように後悔が頭の中で渦巻いた。
それは一言で言い表すなら、どうして思いつかなかったんだ!である。
「どうして思いつかなかったんだよ、テメーはよ!」
完二は自分のうかつさを恨みながらクマを怒鳴りつけた。
アムリタはクマの使う魔法である。ならばクマが真っ先に思いつくべきことであろう。
「ちょ、ちょっと忘れていたクマよー」
完二はルイズが惚れ薬を飲んでから何回目になるかわからない溜め息をついた。今までの中でも一番大きい溜め息だった。
ペルソナ使いではないキュルケたちは「どうしたの?」と話についていけていないようだった。
「ルイズを治せんだよ……」
「えっ?」
キュルケ、ギーシュ、モンモランシーの声が重なる。当人であるルイズなど「治す?何を?」と言っている。
三人、ルイズを含めるなら4人は説明を求めるような顔をしているが、脱力しきった完二にその気力はなく、ただ力なくクマに言った。
「やってくれ……」
「はいよ、ペルクマー、来いやぁ!」
カムイが出現してアムリタを発動する。
アムリタをかけられたルイズの顔は変化していった。最初は恋する乙女の頬に朱のさした顔から、しらふの上等な陶磁器のような白い顔。
そして最後にルイズの顔は再び赤くなる。紅潮を通り越してまるでトマトのように赤である。
そして完二の顔を見るなり、ルイズは奇声をはり上げて湖面沿いに走り去っていった。
「な、なんだありゃ?治ったのか?」
走り去るルイズの後ろ姿を見ているモンモランシーは語り出した。
「何をしたか知らないけど、もし惚れ薬が解除されても薬が効いてた間のことはばっちり覚えてるわよ」
全員顔を見合わせ、それから再び走り去っていったルイズを見た。
「そりゃ…キツいな」
「ルイズはプライドが高いからね」
「しゅーちプレイクマ」
「でも、そうならあれは治ったっていう証拠じゃない?」
キュルケはケロっとして言った。それもそうだと全員は納得したが、モンモランシーが一つ疑問を投げかけた。
「でもあの子いつ戻ってくるかしら……」
それは誰にもわからないことだった。
こうして完二の深刻なほどバカバカしい恋愛ごっこは終わった。

元素の兄弟は森の中にいた。クマと完二にやられたジャックとドゥドゥーの治療をしていた。
「それにしてもヒドいやられ方ね。わたしでもすぐには治せないわよ」
「すまない、ジャネット……」
「ジャック兄さん、喋らないで」
妹にそう言われては、巨体をした恐ろしいメイジのジャックも口をつぐんでしまう。
すでにジャネットの治療を受けて動けるようになったドゥドゥーは長兄ダリアンに言った。
「すまない、兄さん。次は必ず……」
「この件から手を引くよ」
子供のような外見をした長兄から紡がれた言葉に全員が戸惑う。
「ちょ、どういうことだよ、兄さん!?」
「あんなやつらに言ったことを守るっていうの?」
ダリアンは首を振った。
「イザベラさまから他の騎士の代わりにと頼まれた仕事だったけど、はっきり言ってすごいやつらだよ。どうも」
「次は絶対負けねえって、なっ、ジャック兄さん」
「ああ、次は必ず」
ドゥドゥーとジャックは敗北しても決して弱気になっていなかった。
しかし、弟たちのやる気を見てもダリアンは意見を変えない。
「あいつらは本気を出していないから、たとえ4人でも勝てるという計算は立てられない。
勝ったところで誰かやられましたじゃ、いくら報酬が手に入っても損もいいとこだよ」
「でも兄さん、任務に失敗したってなったらもうガリア王家から仕事もらえないわよ?」
ジョネットの発言にそうだそうだとドゥドゥーとジャックは同調する。
「仕事なら王家以外にもある。まあ、こつこつとお金を貯めよう」
こうして水面下で仕事を果たして来た元素の兄弟は歴史の舞台へと身を踊ろかせかけて、再び闇の中へと消えていった。
その後の彼らを知る者はいない。

水の精霊を倒しラグドリアン湖の水面上昇を抑える任務は前任者から元素兄弟ではなく本来タバサに引き継がれるはずのものだった。
イザベラが元素兄弟にそれを任せたのは従妹に彼女の母親にゆっくりと会えるようにするための取り計らい。
また、王弟の子であるタバサに過酷な任務は減らそうとするイザベラの始まりの一手であった。
しかし、本来通りタバサに任務が引き継がれルイズたちと接触すれば、水の魔法の薬で心狂わされた母を治す術を持つクマとも会い、
タバサは数年ぶりに真の意味での母との再会を果たせおおせていたであろう。
イザベラの気遣いによってタバサの至高の幸福はさらなる未来へと先延ばしにされてしまうという皮肉な結果が生じてしまった。
そして生じた齟齬は致命的なほど未来に干渉することになる。

ルイズは日が昇ると完二たちのもとへと帰ってきた。走り去ったはいいが、馬もなければ帰れないと気付いたからだ。
帰ってきてもルイズは完二と言葉どころか目もあわせなかった。完二も積極的に関わろうとはしなかった。
ルイズほどでもないが、完二も十分すぎるほどに気まずかったからだ。
とにかくルイズも帰ってきたので、会話のない朝食が終えてから、学院に帰ろうとするのを止めたのはルイズだった。
「貴族として民が困っているのを見過ごせはしないわ」
ルイズは再び水の精霊に会うことを強く主張した。民とはラグドリアン湖周辺に住む農民たちのことである。
どうやらラグドリアン湖に来る前にあった農民の男の話を覚えていたらしい。
自分に話しかけてくるばかりでちゃんと話を聞いてたとは思わなかった。
と、完二は思ったが言っても怒られるし、自分にとっても面白い話題ではないので口には出さなかった。
そういうわけで一行は水の精霊の涙がもう用済みになったのに水の精霊と再び顔を合わせることとなった。
モンモランシーが使い魔のカエルを使い、水の精霊を呼んだ。
朝もやの中、水面が盛り上がり水の精霊が現れた。それは水を反射し、キラキラ光り輝いていた。
呼び出したモンモランシーに対応してその姿をモンモランシーの裸体に変えており、美しいと呼ばれる水の精霊だが、
完二は先日見たときと同様「雨の日の中のテレビにこんなヤツいたな」くらいにしか思わなかった。
「水の精霊よ。約束は果たしたわ。でもあなたの体の一部ではなく一つ他のお願いがしたいの」
「なんだ?単なる者よ」
ルイズが前に進み出て、モンモランシーに代わる。
「どうして水かさを増やすのか、教えて欲しいの。理由があるならわたしたちがそれを解決するわ」
水の精霊は、ゆっくりと大きくなった。そしてさまざまなポーズをとる。その仕草が、微妙に人間のそれとは異なっている。
「お前たちに、任せてもよいものか、我は悩む。しかし、お前達は我との約束を守った。ならば信用して話してもよいことと思う」
完二は回りくどい喋り方にイライラしたがキレておしまいにするわけにもいかないので、黙りこくっている。
「お前たちの同胞が、我が守りし秘宝を盗んだのだ。そして我は秘法を取り返したいのだ」
「それと水を増やすことにどういう関係が?」
「水が世界を覆うころには秘宝の在り処も知れよう」
その気の長さにその場にいた全員があきれ返る思いだった。さすが水の精霊というだけあって時間の概念が人間とは大きく違う。
「なら、わたしたちがその秘宝を奪い返してあげるわ。その秘宝の名前は?」
「お前たちはあれを『アンドバリの指輪』と呼ぶ」
「効いたことがあるわ。たしか水系統のマジックアイテムで偽りの命を与えるという……」
モンモランシーが呟いた。
「そのとおり。だが、あれがもたらすものは偽りの命。古き水の力に過ぎぬ。所詮益にはならぬ」
「偽りの命ってどういうことだ?」
今まで黙っていた完二が言った。
水の精霊は答える。
「指輪を使った者に従うようになる。個々に意思があるというのは不便なものだな」
「趣味の悪い指輪もあったものね」
キュルケが呟く。軽口を叩きながら彼女にはなにかひっかかるものがあった。しかしそのひっかかりがなんなのかが判然としなかった。
「わかったわ!アンドバリの指輪は取り戻してあげるから水かさを増やすのをやめてちょうだい!」
「わかった。お前たちを信用しよう」
こうしてルイズは人ならざるものと約束を交わした。


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