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ルイズと無重力巫女さん-44





陽が丁度真上に差し掛かって一時間ほどがすぎた時間帯…
授業へと赴き人気の無くなった女子寮塔の廊下を、大きなトレイを持ったシエスタが靴音を響かせて歩いていた。
トレイの上にはサンドイッチやリヨン風サラダにフルーツとチーズ、そしてメインのローストポークのスライスが皿に盛られてのっている。
皿の数からして二人分の昼食は、恐らく彼女の行く先に居るであろう二人――霊夢と魔理沙の為に作られた料理であった。
「まったく、今日は何でして来なかったのかしら…」
シエスタはそう呟きながら、あの二人の姿を思い浮かべた。


今日は良いブタが手に入ったからと腕によりを掛けて料理長のマルトーがローストポークを作ったのだ。
ゲルマニアの料理であるソレはおいしく仕上がり、本場ゲルマニアのローストポークを食べているような感じであった。
生徒達も美味しそうに食べていて、特にゲルマニア出身の女子生徒が料理長の事を褒めちぎっていた。
貴族嫌いで名の通っていた料理長もこれには嬉しかったのか、顔を緩ませていたことは鮮明に覚えている。
だがシエスタにとって一番気がかりだったのは、いる筈の二人がその場にいなかった事である。
いつもなら生徒達と共に入ってきて、二人の席となった出入り口傍の休憩所で食べていた筈だ。
だが今日に限っては何時になっても来ず、とうとう昼食の時間が終わってしまった。
シエスタは何かあったのかと思い、とりあえずルイズに聞こうとした。
だがそれはうまくいかず、ルイズは生徒達と共に授業の方へ出かけてしまった。
結局、その場に残ったのはテーブルの上に置かれた昼食と、困り果てたシエスタとマルトーであった。
「手つかずのモノを処分するのもなんだしな…シエスタ、ちょっと部屋の方まで持っていってくれねぇか?」
マルトーは一切手が付けられていない自分の料理を見て、困った顔でそう言ってきた。
確かに、二人が゛昼食を食べる暇もない゛くらいに゛何か゛をしているのかもしれない。
もしかしたら部屋にいないかも知れないが、その時はその時である。
そうして大きなトレイに二人分の昼食をのせて、シエスタは女子寮塔までやってきた。
いつも夜食や洗濯物を持ってここへ訪れるシエスタを含めた給士達にとって、寮塔の長い階段などどうってことはない。
ここでの仕事は、一年も勤めていれば自然と精神や体力を高めてくれるのである。

「ここか…」
シエスタはルイズ達二年生の部屋がある階で足を止め、踊り場から廊下へと入った。
一定の間隔を保って取り付けられたドアの先には、女子生徒達のプライベートが隠れている。
それはシエスタ達にとって知ってはならない事であり、知る必要のないことである。
しばらく廊下を歩き、シエスタはようやく目的の…ルイズの自室へとつづくドアの前で足を止めた。
そしてコンコンとドアをノックくした後、中に居るであろう二人に声を掛けた。
「レイムさん、マリサさん!いますか?昼食を持ってきましたよ」
ハッキリと、爽やかな声でそう言ってしばらくして数秒――声が返ってきた。
「…もしかしてその声は…シエスタかしら?」
太陽のように元気で快活なその声は、霊夢の声であった。
知っている人の声を聞き、シエスタは安堵の表情を浮かべると共に口を開く。
「レイムさんですか?食事をお持ちしましたが…」
「食事…そういいえば今は何時かしら…ちょっと今時計が見れないのよ」
「時間ですか?…今は丁度13時半ですが」
霊夢の言葉に、シエスタは思わず首を傾げながらも懐の懐中時計に目をやり、ドア越しに答えた。
給士という仕事上時間は常に気にしなければならないので、こうして自前の時計を持っている者もいる。
シエスタから今の時刻を聞き、ドア越しに霊夢の疲れたような声が聞こえてくる。
「そうか…もうそんな時間なのね。大分眠ってたわね…で、アンタが昼飯を持ってきてくれたの?」
「眠っていた」という言葉に、シエスタは思わず安堵の溜め息をつきそうになった。
しかし溜め息をつく前にまずは用件を伝えねばならぬと思い、頭を軽く横に振ってから口を開いた。
「はい。一応マリサさんも含めて二人分の食事もお持ちしたのですが…マリサさんもそこにいるんですか?」
「いるわよ。まだ起きてないけどね。――それより、ちょっと手伝って欲しいことがあるんだけど」
霊夢の言葉に、シエスタは首を傾げる。
「?…手伝った欲しいこと…ですか?」
「えぇ。ちょっと困った事になっててね…」

少し戸惑っているかのような霊夢の声に、シエスタはまたも首を傾げる。
「困った事…ですか?」
「まぁね。だからちょっと部屋に入ってきて貰いたいんだけど…」
「部屋に…ですか?別に構いませんが…」
霊夢の言葉にシエスタは疑問を抱きつつも、部屋に入ることにした。
本当に困っているのならば助けぬ道理はないし、何より持ってきた昼食を部屋に入れなければならなかった。
しかし、ドアを開けた先に広がっていた光景はシエスタの想像を斜め上くらいまで超えていた。
「では改めて、失礼しま――――…ってキャア!!どうしたんですかコレは!?」
優しい性格のシエスタは困っている人を無視する筈も無く、ドアを開けて部屋の中に入り――悲鳴を上げた。
それに次いで、『ブラブランと体を揺らしている霊夢』が気怠そうに言った。
「どうしたもこうしたも…とりあえずこんな感じよ」

やや広いルイズ部屋の右端で、なんとあの博麗霊夢が『逆さ吊り』にされていた。
本来外套を引っかける為のフックに引っかけられたロープで体をグルグルとで縛られ、ミノムシのようにブランブランと揺れている。
何者にも自分の態度を変えず、自由に生きているいつもの霊夢からは想像も出来ない姿であった。
一体何がどういう事で、彼女がこんな姿をさらしているのか、シエスタには理解できなかった。
「ひ…ひどい!一体誰がこんな事を…」
体を震わせながらも決してトレイを落とさないシエスタの言葉を返そうと、霊夢は口を開く。
「実はルイズのヤツに―――とりあえずコレ外してくれない…そろそろ頭が痛くなってきたわ」
「ど、どうやってです。なんか私の力じゃ刃物があっても無理な気がするんですが…?」
見た目からしてギュウギュウ…と負と怒りの感情で縛ったような縄を見て、シエスタは言う。
その言葉を聞いた霊夢はズキンズキン…と痛む頭に顔をしかめつつ、ふと幻想郷から持ってきた自分の鞄に目をやる。
「シエスタ、その料理をテーブルに置いてあそこにある鞄の中から白い包みをひとつ取ってくれない…ちなみに小さい方ね」
霊夢の言葉に、シエスタはベッドの側に置いてある大と小ひとつずつの旅行鞄の存在に気が付いた。
彼女の言葉からして、小さい方が霊夢の私物なのだろうが、大きい鞄は見たことが無い物であった。
一瞬この部屋の主であるルイズの物かと思ったが、そのルイズの旅行鞄はちゃんと鏡台の側に置いてある。
(だとすると…あの大きな鞄は…マリサさんの鞄かしら)
シエスタはつい先々日くらいに、魔法学院にやってきた黒白の自称゛魔法使い゛の霧雨魔理沙を思い出した。




以前、街で助けてもらった時に霊夢の知り合いとして紹介された霧雨魔理沙。


なんでも学院長の話によればルイズの命の恩人でもあるらしく、今はこの部屋で長旅の疲れ(?)を癒してるんだとか。
そしてシエスタにとっても、魔理沙は自分の事を助けてくれた恩人であった。
学院長に紹介された後もシエスタと顔見知りである給士達やコックと親しくなり、暇なときは色々な事を話してくれる。
ただ゛魔法使い゛を自称しているから、料理長のマルトーとは仲良くなれるりだろうかと心配していたが、それは杞憂に終わった。
何せ焼きたてのビスケットを皿に入れて持ってきたマルトーが、ニコニコと笑顔を浮かべながら魔理沙に話し掛けてきたのだから。
「ようシエスタの恩人。ちょっとビスケットを焼いてみたんだが一枚喰ってみねぇか?なかなかイケるぜ?」
シエスタを含め、その場にいた食堂の者達は驚いた。あの魔法嫌いで名の通った料理長が、゛魔法使い゛に笑顔で接したのである。
この光景を、今までぶっきらぼうな顔しか見てこなかった生徒達や教師が見たら目を丸くしていたであろう。
きっとシエスタをチンピラから救ったこともあるかも知れないが、マルトーは少しだけ気になる事を言っていた。

「オレに思い出させてくれた無愛想なガキがいたんだよ。貴族も平民も…根っこは同じ人間だってな。
 違うのは呼び方だけ。もしその呼び方だけで相手を差別してたら、性根の腐った人間になっちまうって」

マルトーは、何処か目覚めた顔でそう言っていた。




そんな事を思い出していると、ふとある事に気が付いた。
(あれ…マリサさんも部屋にいるってレイムさん言ってたけど…どこにいるのかしら…)
先程魔理沙の分の昼食も持ってきたと言った際、霊夢は彼女もこの部屋にいると返していた。
しかしドアを開けてみると、部屋の中には霊夢だけがいた。それも異様な姿をして。
おかしいな…?とシエスタが思ったとき、霊夢が声を掛けてきた。

「…?どうしたの?」
「え?…い、いや…なんでも…――あ、…ち、小さい方の鞄ですよね…すぐに開けます」
霊夢に促され、今自分が何をすべきか思い出したシエスタはそう言うと、手に持っていたトレイをテーブルにゆっくりと置いた。
カチャカチャと食器同士が触れる音を聞きながらも、シエスタはの視線は完全に霊夢の方を向いている。
今の霊夢の姿は、シエスタにとっては『現実では有り得ない光景』であった。
(一体あれはどうなって…あんなスゴイ状態になったのかしら…)
シエスタは心の中で呟きながら、逆さ吊りにされた霊夢の姿をその目に焼き付けていた。
それでも長いこと勤めていれば体が慣れていくのだろうか、余所見をして料理を落とすと言うことだけはしなかった。
トレイを置き終えたシエスタ軽く深呼吸をした後、ベッドの側に置いてある小さな鞄に近づき、シエスタはあれ?と首を傾げた。
(何だろう…この鞄…見た覚えがないのに…何処かで見た覚えがある…)
シエスタはこの時、二泊三日程度の旅行が出来るこの鞄に覚えのない既視感を感じた。
それはまるで、今まで通ったことのない道を、何処かで通った事があると感じたような違和感…。
一体これは何なのだろうかとシエスタは手を止めようとしたが、すぐにハッとした表情を浮かべた。
(とりあえず…今は考えるよりレイムさんをなんとかしないと)
自分の背後で大変な事になっている霊夢の為に、シエスタは僅かな違和感を頭の隅に押しやり、鞄を開けた。
旅行鞄の中に入っていたのは着替えと、茶色や緑の大小様々な包みが入っていた。
着替えの方は霊夢がいつも着ているものと似たようなデザインをした巫女服が、何着も入っている。
しかし、その着替えを見た瞬間――シエスタの時間が止まった。実際に止まったわけではないが。
普通、着替えというものは色んな服を用意する。それは平民も貴族も同じだ。
貴族達なら様々な色やデザインのドレスを何十着も、平民ならば色やデザイン違いの質素な服を何着も…。

しかし、この鞄の中に入っていた霊夢の着替えは、いつも彼女が着ている紅白の巫女服であった。
リボンも――服と別離したあの白い袖も――いつもの彼女が身に纏っている物全てが、似たようなデザインをしていた。
それを見たシエスタの頭の中に、――――『どうしようもない悲しみと無常感』という言葉が浮かんできた。

まるでそれは、もう帰ってこない親兄弟の横たわる棺の蓋にカギを掛ける時のような、涙の出ない悲しみ…。
泣きたくて泣いても、もう戻ってこないから泣かない。…という見せ場のない意地。
表面は気取っていても、心の中にあるオアシスはすっかり枯れ果てて…涙すら出てこない無常感。
棺を穴に入れて、その上に土を被せていく時の――心から喜怒哀楽が一気に失せていく喪失感。
それらが一纏めになってシエスタの心の中に入っていき、彼女の目から無意識に――――「シエスタ、大丈夫?」

耳を通り、鼓膜の先にある頭の中に、霊夢のハッキリとした声が響いた。
「あ…―――――…はい?」
突然のことに目から出かけていた゛何か゛は急いで引っ込み、シエスタは間抜けそうな声を上げて霊夢の方へ顔を向ける。
そこには逆さ吊りにされた霊夢が体を無意味に揺らしながらも、ジト目でシエスタを見つめていた。
「アンタ熱でもあるんじゃない?今日はやけにボーっとしてるけど」
何処か呆れた調子ながらも、シエスタの身を心配するかのような物言いに、彼女は首を横に振った。
「いえ、何も…―それより白い包みでしたよね?待っててください、今探しますから」
霊夢の素直ではない優しさ(?)に微笑みつつも、シエスタは鞄の中にあるはずの白い包みを探す。
先程何かを感じた着替えに視線を移したが、今はもう何も感じられなかった。


一体あれは…と首を傾げていると、鞄の右上端のスペースに白い長方形の包みが幾つも入ってあるのに気が付いた。
その白い包みは幾つかあり、紙製品でも包んでいるのか他の包みと比べればかなり薄い。
「レイムさん、白い包みっていうのはこれの事ですか?」
シエスタはそう言いながら鞄の中から包みを一つ取り出し、霊夢に見せる。
「あぁそれよそれ。その中からお札を一枚取って私の体を縛ってる縄に貼り付けてちょうだい」
「オフダ…?」
霊夢の口から出た聞いたことのない言葉に首を傾げつつも、シエスタは包みを剥がす。
中には赤いインクで変な記号が幾つも描かれた長方形の白い紙が何十枚か入っていた。
シエスタは不思議そうな表情を浮かべつつも一枚を手に取り、霊夢の体を縛っている縄にギュッと押しつけ、手を離す。
すると奇妙なことに、紙はピッタリと縄に貼り付いていた。糊など使っていないにもかかわらず。
シエスタがちゃんとお札を貼ってくれたのを確認し、霊夢はシエスタに話しかける。
「助かったわシエスタ。じゃあちょっと離れててくれない?この縄を吹き飛ばすから」
「ふ、吹き飛ばす?」
霊夢の口から出たお礼の言葉ととんでもない言葉に神妙な表情を浮かべつつ、シエスタはそのまま後ろに下がる。
そのまま後ろに下がってベッドの側にまでシエスタが下がったところで、霊夢は目を閉じて詠唱を始めた。
メイジが魔法を使役する際に発するような詠唱と似てはいるが、シエスタの耳ではその言葉が何を意味しているのかわからなかった。
やがて詠唱を始めてから数十秒が経過したとき、縄に貼り付けたお札がカッと光り輝いた瞬間、勢いよく『爆ぜた』。
否、『爆ぜた』というより『消え失せた』という言葉が適切だろうか。
ボン!という音と共に霊夢の体を縛っている縄がはじけ飛び、部屋中に飛び散った縄の破片は床に落ちる前に消滅した。
ともかく、霊夢の自由を奪っていたルイズの縄は見事消滅し、晴れて霊夢は自由の身となり――

ドサッ!
「イダッ…!!」

―重力に従い、床に叩きつけられた。
「ちょ…レイムさん!大丈夫ですか!?」
「あ、あんたにはコレが大丈夫に見えるワケ…?」
何もすることなく落ち、今度は冷たい床に寝そべった霊夢の側に、シエスタが慌てて駆け寄った。
見たところ全然大したことはないのだが、自分で縄を解いて(?)自分から床に落ちた霊夢は、苦しそうな表情を浮かべている。
思いっきり足の小指を過度にぶつけたときのような痛々しい表情の霊夢が発した苦言に、シエスタはどう返そうか迷った。

(大丈夫ですよ、大した怪我にはなってません……とか…とりあえず手当てでも…とか?)

どっちを言えばいいのかイマイチ良くわからないシエスタと痛がっている霊夢に、背後から何者かが声を掛けてきた。
「お~お~仲が良いぜ二人とも。…この私に見向きもしないでイチャイチャしてるとは」
女の子ではあるが、何処か男っぽい口調に雰囲気。その声に聞き覚えがあった二人はそちらの方へ顔を向ける。
二人の視線は大きなクローゼット――いや、正確には戸が開きっぱなしのクローゼットの中――に注がれた。
そこには、霊夢と同じく体を太く丈夫な縄でグルグルとキツく縛られ、拘束されている黒白の魔法使いがいた。
先程気になっていた疑問が今になって解消されたシエスタは恐る恐る、その魔法使いの名を呼んだ。
「マリサ…さん?」
「あぁそうだよ魔理沙だよ。…ところで、私もちゃんとこの縄を吹き飛ばしてくれるんだろ?」
二人のやりとりを、クローゼットの中から見ていた魔理沙の言葉には、何処か悲哀が漂っていた。




それから一時間後。

「ふ~…やっぱりマルトーの作った料理は格別だぜ。ありがとなシエスタ!」
シエスタの持ってきた昼食を食べ終えた魔理沙は、食後の水を一杯飲んでから感想を述べた。
その顔はクローゼットの中に閉じこめられていた一時間前とは大分違い、生気が籠っている。
「ご馳走様。悪いわね、わざわざ持ってきてくれるなんて」
一方の霊夢は魔理沙とは対照的に冷めた表情を浮かべていたが、言葉には感謝の念が篭もっていた。
最も、どちらが好感触かと百人に聞けば間違いなく百人全員が魔理沙の方へ票を入れるだろうが。
「いえいえ、私はただマルトーさんに頼まれて持ってきただけですよ。お礼ならあの人に言ってください」
シエスタは直球の魔理沙と遠回りの霊夢にお礼を貰い、僅かに頬を赤らめながら食器の片づけを始める。
魔理沙はそんなシエスタの顔を見て何か気づいたのか更に追い打ちを掛けるかのように、口を開く。
「そうか、じゃあ今日の昼食は味がいつもより良かったのはシエスタが持ってきてくれたお陰だな」
突然魔理沙の口から出たそんな言葉に、シエスタの顔はポッと朱に染まり、彼女の方へ顔を向ける。
女性、それもまだ二十代にも満たない少女であるが、シエスタは一瞬だけ魔理沙を異性と認識してしまった。
それが何故なのかはわからないが、けどシエスタはそんな考えは良くないと思い出来るだけ平静を装いつつ礼を述べる。
「あ…ありがとうございます」
なんとか口から絞り出せたお礼の言葉を聞き、魔理沙は軽く笑った。
「ハハッ、何でお前がお礼を言うんだよ。私は何もしてないぜ?」
「アンタってホント、変な言葉がポンポンと口から出てくるわね」
自分の口から出た言葉の意味をイマイチ理解できていない魔理沙に、霊夢がさり気なく突っ込みを入れた。

食事が終わった後、シエスタが食器をトレイに戻してテーブルを拭いている最中彼女はある事を聞いてみた。
「あのー、すいません。レイムさん、マリサさん…お二人に聞きたいことがあるんですが」
「ん?」
「何かしら?」
唐突なシエスタの質問に、霊夢と魔理沙はベッドの上からキョトンとした表情を浮かべた。
二人してベッドの上にいるわけだが、している事はそれぞれ違った。
魔理沙はただ単にベッドの上に座って、幻想郷から持ってきていた本を読んでいる。
霊夢は自分が持ってきた鞄の中にあったあの白い包みを取り出し、何かを探しているようだ。
大量にある白い包みの中身であるお札を一枚ずつ丁寧に確認し、また白い包みに戻している。
魔理沙はともかく、何か忙しそうな事をしている霊夢の事を思い、シエスタは素早く質問を投げかけた。
「つかぬ事をお聞きしますが…あの、その…どうしてお二人はあんな姿に…」
何処かオドオドと恥ずかしそうに喋るシエスタに、二人はつい一時間前の事を思い出した。

シエスタの質問に答えたのは、魔理沙であった。
彼女は鬼の首を取ったかのような笑顔を浮かべ、霊夢の顔を見つめながら言った。
「あ~、あれか…あれは霊夢が一番の原因だよ。全く、このトラブルメーカーめ」
最後の一言を霊夢に向けて言い放つと、すぐさま霊夢が反論に出た。
「ちょっと魔理沙。何でアタシが諸悪の根源って扱いされるのよ?理不尽すぎるじゃない」
トラブルメーカーという扱いに怒ったのか、霊夢は魔理沙の物言いに嫌悪感丸出しの表情を浮かべている。
「だってそうだろ?お前があのお菓子を食べなきゃ、こうしてシエスタが昼食を持ってくる必要が無かったわけだし」
「それならルイズが諸悪の根源じゃないの。責任転嫁もいい加減にしなさいよね」
「ルイズ…?やっぱり…ミス・ヴァリエールが貴女達に何かしたんですか」
いきなりルイズの名前が出たことに、シエスタは霊夢が最初に言っていた事を思い出しつつ聞いてみた。
「まぁね。ルイズのヤツ、ちょっとお菓子に手を出したくらいでこの仕打ちとは…全く酷すぎるわ」
霊夢の言葉を聞き、シエスタは何があったのか理解し、少し苦笑しつつ言葉を返す。
「レイムさん、人のお菓子に手を出すのは駄目だと思いますけど…」
シエスタがそう言った瞬間、霊夢は元から鋭くなっていた眼を更に鋭くさせ、こう言った。
「たかが菓子一つでこの仕打ち?全く、器量の小さい貴族様だことね。それじゃあ結局食べずじまいで腐らせるのがオチよ」

逆さ吊りにされたのを余程根に持っているのか、霊夢は恐れもせずに言ってのけた。
その言葉にシエスタは目を丸くしたが、魔理沙は苦笑いしつつ霊夢の言葉に感想を述べた。

「流石貧乏巫女と呼ばれてるだけあるぜ。その日暮らしって雰囲気がいかにm…―「悪かったわね。勿体ない性格してて」
魔理沙の言葉を遮るかのように、誰かがそう言った。
最初魔理沙は霊夢の声かと思って言い返そうとしたが、その口が動くことがなかった。
口が動く前に、いつの間にかドアを開けて部屋に入ろうとした人物に目が入り、軽く驚いたからである。
ドアの開く音は三人の会話に紛れて聞こえなかった所為か、まだ魔理沙しか気づいていないようだ。
「げげ…ルイズ」
何も知らずにびっくり箱を開けたときの様な表情を浮かべた魔理沙と彼女の口から出た名前に、二人は後ろを振り向く。
そこには、開きっぱなしのドアの前で顔をうつ伏せたまま佇んでいるこの部屋の主、ルイズがいた。
予想だにしていなかった人物の登場に対し、二人の反応は対照的であった。
「は?…あれ、何でアンタがここにいるのよ。授業じゃなかったの?」
霊夢はいつもと変わらぬペースで顔を見せぬルイズにそう言った。
「え…?あ!ミス・ヴァリエール!?…い、いつの間に?授業はどうなされたので…」
対してシエスタは驚愕の表情を浮かべ、居るはずのない人間がいる事に驚いていた。
「ちょっとね、忘れ物があったから取りに戻ってみれば…なんとまぁ、言いたい放題じゃないの」
怒気を含んだ声でそう言いつつ、ルイズはゆっくりと顔を上げていく。
まるでそこだけをスローモーションにしているかのようなルイズの動きに、自然と三人は何も言わないでいる。
「でもアンタの言い分も一理あるわね…。いくら大切に保管していても食べ物は食べ物。いずれ腐っちゃうわ」
表情一つかえずに話を聞いている霊夢に向けてそう言ったとき、ようやくルイズは顔を上げて、目の前にいる三人の姿を見回した。
その顔にはハッキリと怒りの色が浮かんでいる。それは下級貴族が裸足で逃げ出すほどであった。
「あの…ミス・ヴァリエール…ものすごく怒ってるように見えるんですが…」
「あぁ、怒ってると思うぜ」
平民であるシエスタはルイズの表情を見てか体を震わせており、魔理沙の方も苦々しい笑みを浮かべていた。

「はぁ…それで、何か話でもあるのかしら?」
しかし霊夢だけは怖いとすら感じていないのか、いつもの無愛想な表情でルイズに話し掛けた。
それがいけなかったのか、溜め息交じりの言葉にルイズの眉が大きくピクンと動き、声を荒げて言った。

「っ…!何よソレ?人が大切にしてるお菓子を勝手に食べてその態度は!
      大体ねぇ、アンタは遠慮って言葉を知らないの!遠慮って言葉を!」

もはや叫び声にも近いルイズの訴えに対し、霊夢はめんどくさそうに応えた。
「うるさいわね…私だってそう何でも食べるワケじゃないわよ。たまたまそこの戸棚に目が入ったから取っただけじゃない」
反省の色が見えない霊夢の言葉にとうとう我慢できなくなったのか、ルイズはとうとう腰に差していた杖を引き抜いた。
「だからっ!それがっ!遠慮が無いっ…て言ってるでしょうが!」
霊夢はルイズの手に握られた杖を見て、こちらも負けじと懐に手を伸ばして身構える。
恐らく服の下には針かお札でも入っているのであろう。
もはや一触即発という状況を見て、流石の魔理沙も身の危険を感じ始めた。
「これは…ちょっとヤバイかもな」
魔理沙の言葉を耳にしたシエスタはハッとした表情を浮かべると、すぐさまルイズの方に近寄った。
そして今にも杖を振り上げようとしたルイズの右手を取り押さえ、ルイズの説得を始めた。
「落ち着いてください、ミス・ヴァリエール!ここで暴れたらお部屋が大変なことに…」
「ちょっ…何すんのよ!?離しなさいってば!」
シエスタは杖を持っていたルイズの右手を無理やり下ろしてなんとか彼女を宥めようとするが、当の本人は怒り心頭である。
大事に取っておいたお菓子を食べられたのはそりゃ悔しいだろうが、そんなに怒ることなのか?
シエスタはそんな疑問を抱えつつ、これからどうやって彼女を落ち着かせようか迷い始めた。

一方の魔理沙は、懐に伸ばしていた霊夢の手を掴もうとしたが、その前に霊夢の方が先に手を抜いた。
出てきた左手に何も持っていないことを確認した魔理沙はホッと一息ついた時、霊夢が何も言わずに歩き始めた。
横にいた魔理沙を一瞥もせずにツカツカと、靴音を床から響かせて。
「おっおい霊夢!一体何処に行くんだよ」
「何って…ちょっと気分転換に外でも行こうかなーって思っただけよ」
霊夢の思わぬ行動に、魔理沙は驚きつつもなんとか止めようとする。
「いや、お前措外に行くって…何言ってんだよ。まずはルイズに謝るのが先だろ?」
「だったらアンタが謝ればいいじゃない。アンタもあのクッキー食べたんだから」
しかし魔理沙の言葉には意も介せず霊夢はそう言ってのけると、窓を思いっきり開けた。
地上からかなり上の階に作られたルイズの部屋は窓からの風通しが良く、サラサラとカーテンがひとりでに動いている。
「じゃあ行ってくるわ。大丈夫、夕食時には帰ってくるから」
窓の縁に足をかけて飛び立つ前に一言だけ伝言を残した霊夢はそう言って、勢いよく飛び上がった。
魔理沙が急いで窓から身を乗り出した時には、もう霊夢の姿は何処にもなかった。
「おい、霊夢…あぁもう…。すまん二人とも、すぐに帰ってくるぜ!」
魔理沙は苦虫を踏んでしまったかのような顔でシエスタとルイズにそう言うと、愛用の箒を素早く手に取った。
一方の二人は何が何だから良くわからず、シエスタはキョトンとした表情を浮かべている。
「えっ…?え、えっと…マリサさんはどちらへ?」
「あの無責任な紅白を連れ戻してくる。なぁに、夕食前には戻るぜ」
箒を手にした魔理沙はそう言うと開きっぱなしの窓の前で箒に跨った瞬間、それは起こった。
「うっ…」
「きゃっ…!」
ブワッと魔力の気配を僅かに感じられる風が周囲に舞い、シエスタとルイズは思わず目を背けてしまう。
そして次の瞬間、魔力の込められた箒は魔理沙を乗せたまま浮かび上がり、窓の外へ勢いよく飛び出していった。
今度はシエスタと少しだけ怒りを忘れたルイズが窓から身を乗り出したが、魔理沙の姿はもう何処にも見あたらない。


後に残されたのは、呆然としているルイズとシエスタだけであった。


その日は、夏だというのにとても風が涼しかったと今でも覚えている。
弟と一緒に夕涼みがてら、グラン・トロワの裏庭で昆虫採集をしていた。
そこはちゃんと整備されているものの、ちょっとした森もある。
兎やリスなどといった小動物を放し飼いにしていて、小さな池も作られていた。
ちゃんと裏庭と外を隔てる丈夫な壁と見張りの騎士達の手で、小さなオレ達は守られていた。
「おーい!見つけたよ兄さーん!」
夏用の軽い生地で出来たブラウスを着た弟のシャルルが、遠くからオレを呼んでいた。
丁度その時、オレは珍しい羽を持った蝶を追いかけていた。
しかし弟の声にオレが一瞬だけ視線を外したとき、その蝶はいなくなっていた。
一体何処に行ったのかと辺りを見回しても、目に映るのは自分の回りを囲う木々だけ。
仕方なしにオレは溜め息をつき、弟の声に導かれてそちらの方へ向かった。
「兄さん見てよ!ホラ、このカブトムシ!」
年相応の笑顔を浮かべる弟の手には、一匹の大きなカブトムシが握られていた。
自らの強さを示しているのか、頭から一本の大きくと長い角が生えていた。

「おぉスゴイなシャルル!こんなにデカイのは初めて見たぞ!」
オレは素直に驚愕し、自分のことのように喜んだ。
「でしょでしょ!向こうにある大木に貼り付いていたところを、僕が魔法で捕まえたんだ!」
そういって弟はカブトムシを持っていない方の手で地面に置いていた大きな杖を手に取る。
自分たちより何倍も大きいそれは、父親から貰った先祖伝来の物である。
「そうか…お前はやっぱり、オレより魔法の才能に優れているなシャルル」
オレは弟の方を力強くバンバンと叩きながら、笑顔でそう言った。
幼少から魔法の才能に恵まれなかったオレがそんな事を言うと、どうにも自分を卑下している気分になる。
それを察したのか、弟は優しい笑みを浮かべてこう言ってくれた。


「そんな事ないさ、兄さんだってきっと…僕よりも素晴らしいメイジになれるさ」
弟の口から出たその言葉は涼しい風と共に、空へと飛んでいった。



―――i下、陛下。到着しましたぞ陛下」
「…ム?」
ふと頭の片隅から声が響き、ジョゼフは目を覚ました。
ゆっくりと自分の目に映る光景はグラン・トロワの裏庭ではなく、竜籠の中であった。
空中で揺さぶられているかのような感覚を味わえる荷車の中には、ジョゼフの他に護衛の騎士が一人ついている。
そして意識がドンドンと覚醒していくと共に、さっきのアレは夢なのだと認識し始めた。
「夢か…フン、このオレがあの頃の夢を見るとはな…」
「…そろそろ着陸します、ベルトを着用して下さい」
ジョゼフが自嘲するかのようにひとり呟くと共に、騎士が言った。
それに従って備え付けのソファに付いているベルト着けた後、窓から外の景色を眺める。

窓から見えるそこは、ガリアの領地サン・マロンにある軍の私有地であった。
海に沿って作られている街から離れた一角に、そこはある。
下級貴族が持てるような大きさの土地の中にレンガと漆喰で出来た土台の上に木枠と帆布でくみ上げられ、円柱を半分に切って寝かせたような建物が幾つもある。
敷地内や出入り口には何百人もの衛兵達がおり、検問も厳しく許可無き者は貴族であっても容赦なく追い返されてしまう。
例えガリア王国の政治に深く関わる者や軍の将校であっても、事前の連絡と身分証明が出来なければ同じように追い返される。
そんな機密性の塊であるような場所にやってきたジョゼフには、それなりの理由があった。
「報告書には、護衛にあたっていた衛兵二人と焼却炉担当の作業員一人…それに研究員三人を含めて死者が六名との事です」
窓の外を眺めているジョゼフの耳に入っているのかどうか疑わしいが、騎士は手に持った報告書を見つめながら言った。
ジョゼフと騎士を乗せた竜籠はドンドンと高度を落としていき、敷地内にある発着場に降り立った
籠を運んでいた竜達は仕事が終わって休みたいのか、ギャアギャアと鳴きもせずにおとなしくしている。
次いで詰め所の中から四人ほど衛兵が出てきて、竜達を宥めつつハーネスの取り外しに掛かった。
そしてしばらく中で待っていると、詰め所の中から新しく出てきた衛兵が荷車のドアを開けて言った。


「ようこそ゛実験農場゛へ。所長と゛複製実験゛の担当者方がお待ちです」




「今回の件につきましては…全くの想定外としか、言いようがありません」
冷たい空気の漂う会議室の中に、白髪が目立つ頭を掻きむしりながら、老齢の所長が苦しげにそう言った。
この事務室は、゛実験農場゛の中央に建てられた大きな施設の中にある。
そこは此所の全責任者である所長を含めた何人かの研究員達が働く場所であり、寝るところであった。
その施設の中にある小さな会議室には、王であるジョゼフと゛実験農場゛幹部。そして…゛複製実験゛の担当者達が居た。
ジョゼフを上座にその他の者達は壁に沿って置かれた椅子に腰掛けており、渡された書類を流し読みしている。
そして最新製のマジックアイテムで十分に冷えた部屋の中で汗をかいている゛実験農場゛の所長は、ゆっくりと説明を続けていく。

「゛試験体゛を作るにあたってモデルとなっていた゛見本゛の保管には、細心の注意を払っておりました…
 冷凍保管庫の警戒レベルは常に最大にして、衛兵にもアイス・アローを常備させて…内外のアクシデントに対し常に見張っていました。
 …゛事故゛が起こった昨日も、処分することになった゛見本゛を焼却するため冷凍保管庫から焼却炉に移送する際には、見張りを増員して…」

僅かにその体を震わせながら、所長はそこで一旦説明するのを止める。
それを見計らっていたかのように、今まで黙っていたジョゼフが口を開いた。
「だが゛見本゛は暴走して特注の焼却炉を破壊、被害者が出たうえにみすみすトリステイン領内に逃げ込んだと報告書には書いておる。
 これは最悪の事態を想定できなかった゛実験農場゛に不備があるのではないか?」
ジョゼフの言葉に、部屋にいた゛実験農場゛の関係者達は身を震わせた。
下手をすればようやくありつけたこの仕事をクビにされるのだから当然ともいえる。


数年前、キメラを用いたとある実験で絶望的なミスをした彼らは失脚し、何年も路頭を彷徨った。
録に食事も食べれぬ生活を送っていたある日、ガリア王ジョゼフからの直々の召集令が送られてきたのである。
それは、自分たちが失脚する原因となった研究所の欠点を元に新しく作られた゛実験農場゛への配属命令であった。
伝えられた内容は、以前自分達の行っていたキメラ実験の再開と画期的な軍事兵器の開発だった。
「もし貴様等が余の満足する物を作れれば今後の生活を保障してやる。だが失敗は許さんぞ」
玉座に座るジョゼフは、何を考えているのかわからない表情でそう言っていた。
下級貴族の生まれでガリア人ではなかった研究者達にとって、喉から手が出るほどの好待遇である。
その場に居た研究員達は全員それに賛同し、゛実験農場゛の幹部となった。
それから後の仕事は、正に彼らの天職とも言えた。
人員と予算に対して文句はなく、実験や研究に使う素材やマジックアイテムも短期間で用意してくれる。
時折ジョゼフの秘書であるという黒髪の女や、ジョゼフ王自身が極秘で視察に来る事もあった。
研究の方も滞り無く進み、正に順調で何の問題もなかったのである。

一週間ほど前に通達された…゛複製実験゛の指令が来るまでは。




所長は額から流れる汗を拭うこともできず、ジョゼフの目の前で淡々多と言い訳を述べる。
「とりあえず゛原液゛は今も保管されていますし゛試験体゛も体自体は完成していつでも感情抑制の実験に入れます。…ですから――」
「もう良いもう良い!このような実験には何かしらの異常事態はつきものだ。それに何より、過ぎた事ならば仕方がないではないか」
しかし、ジョゼフは突如として所長の言い訳を、右手を激しく横に振ることで中断させた。
その後所長がハッとした表情になって喋らなくなるのを確認した後、ジョゼフはゆっくりと右手を下ろす。

「本来なら処罰ものではあるが、今この研究は大事な局面に差し掛かっておるからな。
 人員削減はしたくないし、お前たちの今後の働きで今回の事は無しにしてやろう 
  逃亡した゛見本゛については余が手を打っている。安心して今後の研究に励むと良い」

ジョゼフの寛大なる言葉に所長を含めた研究員達はホッと胸をなで下ろし、頭を下げた。
それを見て満足そうに頷いたジョゼフは、キッチリと閉じられた窓から見える空へと視線を向けた。
初夏も間近に迫る季節のおかげか空は澄み切っており、白い雲が風に乗ってゆっくりと動いている。
(トリステインか…面白い。今年は色々と楽しい事があって余も退屈せんな)
ジョゼフはその顔に笑顔を浮かべつつ、空を眺めていた。
その笑顔はまさに、大好きな玩具を親に買って貰った子供が浮かべる様な笑顔であった。




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