―――最初の光景は、水だった。
緑色の水。
それで満たされた透明な容器の中に『その男』はいた。
(……?)
透明な容器ごしに、仮面を付けた何者かが『その男』のことを見ている。
エレオノールはその仮面に見覚えがあった。
確か最初に『声の主』から見せられた光景の中に、それと全く同じ、悪趣味な四つ目の仮面を被った男が出て来ていた。
でも、変だ。
あの時、自分はこの『仮面の男』に対して言いようのない強烈な違和感を感じたはずなのに、今はそんなに違和感を感じない。
むしろ妙な親近感のような、それでいて胸が苦しくなるような感覚さえ覚える。
(何なのかしら……?)
だがそれについて考える暇などは与えないと言わんばかりに、場面は転換した。
緑色の水。
それで満たされた透明な容器の中に『その男』はいた。
(……?)
透明な容器ごしに、仮面を付けた何者かが『その男』のことを見ている。
エレオノールはその仮面に見覚えがあった。
確か最初に『声の主』から見せられた光景の中に、それと全く同じ、悪趣味な四つ目の仮面を被った男が出て来ていた。
でも、変だ。
あの時、自分はこの『仮面の男』に対して言いようのない強烈な違和感を感じたはずなのに、今はそんなに違和感を感じない。
むしろ妙な親近感のような、それでいて胸が苦しくなるような感覚さえ覚える。
(何なのかしら……?)
だがそれについて考える暇などは与えないと言わんばかりに、場面は転換した。
「……またあの夢か……」
(えっ!?)
今度は、どこかの部屋の中。
ハルケギニアとは違う建築様式のようだが、そんなことはエレオノールにとってどうでもよかった。
ここで重要なのは、
(これって……ユーゼス、なの?)
たった今この部屋のベッドから目覚めたこの男の顔が、ユーゼスと瓜二つという点だ。
(でも……)
しかし、顔は本当にそっくりだが声が違うし、髪の色も銀色ではなく青だ。
それに……若い。
ユーゼスは自分のことを28歳と言っていたし外見もそのくらいだが、この男の外見はどう見ても20歳前後にしか見えない。
(どういうこと?)
さすがに声変わりするような年齢ではないだろう。
……『何らかの事情があって髪の色と声を変えることになった』、と考えられなくもないが……。
今度は、どこかの部屋の中。
ハルケギニアとは違う建築様式のようだが、そんなことはエレオノールにとってどうでもよかった。
ここで重要なのは、
(これって……ユーゼス、なの?)
たった今この部屋のベッドから目覚めたこの男の顔が、ユーゼスと瓜二つという点だ。
(でも……)
しかし、顔は本当にそっくりだが声が違うし、髪の色も銀色ではなく青だ。
それに……若い。
ユーゼスは自分のことを28歳と言っていたし外見もそのくらいだが、この男の外見はどう見ても20歳前後にしか見えない。
(どういうこと?)
さすがに声変わりするような年齢ではないだろう。
……『何らかの事情があって髪の色と声を変えることになった』、と考えられなくもないが……。
「俺の数少ない記憶……。あの夢の中で俺を覗き込む奴は誰なんだ……?」
『イングラム、すまないが作戦室まで来てくれないか?』
「分かった」
『イングラム、すまないが作戦室まで来てくれないか?』
「分かった」
どうやらこの男の名前はイングラムというらしい。
いきなり部屋の中に声が響いてきたのは少し驚いたが、これは多分ジェットビートルにも付いている『つうしんき』とやらだろう。
いきなり部屋の中に声が響いてきたのは少し驚いたが、これは多分ジェットビートルにも付いている『つうしんき』とやらだろう。
「おお、イングラム・プリスケン」
「ハワード、俺に何か用か?」
「お前が我々の組織ピースクラフトに来てから半年が経つ……それ以前の記憶を思い出したかね?」
「断片的にはな……」
「そうか。お前は瀕死の重傷で宇宙を漂っていたからな……」
「命があるだけマシだと思っている。そして、そんな俺を拾ってくれたアンタたちにも感謝している」
「ハワード、俺に何か用か?」
「お前が我々の組織ピースクラフトに来てから半年が経つ……それ以前の記憶を思い出したかね?」
「断片的にはな……」
「そうか。お前は瀕死の重傷で宇宙を漂っていたからな……」
「命があるだけマシだと思っている。そして、そんな俺を拾ってくれたアンタたちにも感謝している」
「今、入った情報によると……ネオジャパンコロニーのライゾウ・カッシュ博士がアルティメットガンダムを完成させたらしい」
「!」
(その名前……どこかで聞き覚えが……?)
「!」
(その名前……どこかで聞き覚えが……?)
(!)
何と、相手が内心で思ったことまで伝わってきた。
どういう仕組みなんだ、これは。
(心の中で思ったことまで分かるなんて……)
ありがたいが、少し不気味な気もする。
などとエレオノールが複雑な気持ちを抱いていると、また『声の主』がいきなり話しかけてきた。
<これはオプション機能のようなものだ>
(お、おぷしょん?)
<既に確定している世界の事象を追うのであれば、割と簡単なことだからな。それにこの場合、内心が分かった方が一連の流れをより深く理解出来るだろう。無論、イングラム以外の人間の思考も『聞き取れる』ようにしている>
(……………)
相変わらず何だかよく分からない話をするヤツである。
まあ、この場合は『そういうもの』だと割り切るしかないのかも知れない。
何と、相手が内心で思ったことまで伝わってきた。
どういう仕組みなんだ、これは。
(心の中で思ったことまで分かるなんて……)
ありがたいが、少し不気味な気もする。
などとエレオノールが複雑な気持ちを抱いていると、また『声の主』がいきなり話しかけてきた。
<これはオプション機能のようなものだ>
(お、おぷしょん?)
<既に確定している世界の事象を追うのであれば、割と簡単なことだからな。それにこの場合、内心が分かった方が一連の流れをより深く理解出来るだろう。無論、イングラム以外の人間の思考も『聞き取れる』ようにしている>
(……………)
相変わらず何だかよく分からない話をするヤツである。
まあ、この場合は『そういうもの』だと割り切るしかないのかも知れない。
「イングラム、君に……アルティメットガンダムを破壊してもらいたい!」
「君のアールガンは、過去に何らかの理由で廃棄されたパーソナルトルーパーだ。どこのデータバンクにも識別番号が登録されていない、今回の作戦にもっとも適した機体なのだ」
(アールガンよりも、俺はアルティメットガンダムのことが気にかかる……。その名前に聞き覚えがある……。もしそれを見ることが出来れば、俺の記憶が戻るかも知れない……。それに、俺を助けてくれたハワードやピースクラフトにも恩がある……)
(アールガンよりも、俺はアルティメットガンダムのことが気にかかる……。その名前に聞き覚えがある……。もしそれを見ることが出来れば、俺の記憶が戻るかも知れない……。それに、俺を助けてくれたハワードやピースクラフトにも恩がある……)
話は少し飛んで、その『ネオジャパンコロニー』とかいう、何だか変な島みたいなカタチをした、恐ろしく大きい建物の中。
イングラムは、依頼された『アルティメットガンダム』を見つける。
イングラムは、依頼された『アルティメットガンダム』を見つける。
「これだな! これがアルティメットガンダム!! ……俺はこいつを……知っているぞ!
……どうしたんだ……この震えは何なんだ……。うぅ! う……何故……体が動かない……」
……どうしたんだ……この震えは何なんだ……。うぅ! う……何故……体が動かない……」
イングラムがどうしてか身動きが取れなくなっていると、白衣を着た数人の男女と、銃を持った軍隊のような連中が彼が入って来たのとは別の入口から現れた。
イングラムは身動きが取れないながらも何とか身を隠して、彼らのやり取りを見る。
イングラムは身動きが取れないながらも何とか身を隠して、彼らのやり取りを見る。
「キョウジ! ウルベにアルティメットガンダムを渡してはならん! アルティメットガンダムに乗れ!」
「はい、父さん!」
「アルティメットガンダムを渡すものか! 死ねぇ、キョウジ!」
「逃げて! キョウジ!!」
「母さん!」
「行くんだ! キョウジ!」
「くっ!」
「キョウジ、アルティメットガンダムを破壊してくれ。頼んだぞ……」
「はい、父さん!」
「アルティメットガンダムを渡すものか! 死ねぇ、キョウジ!」
「逃げて! キョウジ!!」
「母さん!」
「行くんだ! キョウジ!」
「くっ!」
「キョウジ、アルティメットガンダムを破壊してくれ。頼んだぞ……」
「私たちは……ユーゼスにそそのかされて、とんでもないモノを造り出してしまった……!!」
(!!?)
ライゾウとかいう男の口からいきなりユーゼスの名前が出て来たことに、エレオノールは驚いた。
だがそんなことはお構いなしに、目の前の光景は進んでいく。
ライゾウとかいう男の口からいきなりユーゼスの名前が出て来たことに、エレオノールは驚いた。
だがそんなことはお構いなしに、目の前の光景は進んでいく。
「こ、こいつぁ……昔、地球に現れたっていう『怪獣』みたいなガンダムだな! まったくプロフェッサーGも無茶な命令をしてくれるぜ! こんな奴を持って帰れってか!?」
「地球へ逃げるつもりか……そうはさせねえ!」
「何とか無事に地球へ降下出来たか……。それにしても、俺と同時に地球へ落ちた5つの流星……あれらもガンダムなのか? そしてアルティメットガンダムを追っているのだろうか?
まあいい、アルティメットガンダムの降下地点はこのあたりのはず……」
まあいい、アルティメットガンダムの降下地点はこのあたりのはず……」
「そこのお前! 聞きたいことがある。この写真の男を知っているか!?」
「!! その男は……」
「知っているらしいな。どこでこの男を見たんだ!? そしてお前は何故ここにいる!? お前もデビルガンダムと関係があるのか!?」
「デビルガンダムだと? アルティメットガンダムのことか?」
「やはり関係があるらしいな。答えろ!!」
(どうやらそうらしいな……。なるほど、デビルガンダムか……)
「!! その男は……」
「知っているらしいな。どこでこの男を見たんだ!? そしてお前は何故ここにいる!? お前もデビルガンダムと関係があるのか!?」
「デビルガンダムだと? アルティメットガンダムのことか?」
「やはり関係があるらしいな。答えろ!!」
(どうやらそうらしいな……。なるほど、デビルガンダムか……)
「出ろぉぉぉぉっ! ガンダァァァァァァム!!」
「俺の機体はガンダムじゃない!」
「行くぞ! ガンダムファイトォ! レディィゴォォォッ!!」
「チッ!」
「俺の機体はガンダムじゃない!」
「行くぞ! ガンダムファイトォ! レディィゴォォォッ!!」
「チッ!」
「何だ、いきなり!?」
「戦闘記録001。記録者名、トロワとでも名乗っておこう」
「戦闘記録001。記録者名、トロワとでも名乗っておこう」
「あれは……デビルガンダム!!」
「以前よりも巨大化している!? このままでは3人ともやられてしまうぞ!」
「ちょうどいい。貴様ら、死にたくなければデビルガンダムの破壊を手伝え!!」
「……言われるまでもない。それが俺の目的でもあるからな」
「戦闘記録……今後の作戦のため、アルティメットガンダムの現状データを収集する」
「以前よりも巨大化している!? このままでは3人ともやられてしまうぞ!」
「ちょうどいい。貴様ら、死にたくなければデビルガンダムの破壊を手伝え!!」
「……言われるまでもない。それが俺の目的でもあるからな」
「戦闘記録……今後の作戦のため、アルティメットガンダムの現状データを収集する」
「何だ!? 破壊したんじゃないのか!?」
「この程度でヤツが倒せれば苦労はしない!!」
「この程度でヤツが倒せれば苦労はしない!!」
アールガンという鉄の巨人と、ガンダムというらしき二つの鉄の巨人。
その三つが力を合わせて巨大な怪物のような……あの粗暴な男がデビルガンダムと呼んでいたモノと戦い、それを追い詰めたと思ったら、デビルガンダムはいきなり全身から強烈な光と衝撃を放った。
光はアールガンや二体のガンダム、更にその周辺一帯までをも巻き込みながら広がる。
イングラムはそれに取り込まれる形で意識を失い、次に目覚めた時には……。
その三つが力を合わせて巨大な怪物のような……あの粗暴な男がデビルガンダムと呼んでいたモノと戦い、それを追い詰めたと思ったら、デビルガンダムはいきなり全身から強烈な光と衝撃を放った。
光はアールガンや二体のガンダム、更にその周辺一帯までをも巻き込みながら広がる。
イングラムはそれに取り込まれる形で意識を失い、次に目覚めた時には……。
「う……うう……一体、何が起きたんだ……?」
「大丈夫か、君!?」
「……お前は?」
「科学特捜隊のハヤタだ。このロボットは君の機体か?」
「……そうだ」
「なら、君はTDFの……地球防衛軍の隊員か?」
(ここはどこだ……? デビルガンダムが放った光で俺はどうなったんだ?)
「大丈夫か、君!?」
「……お前は?」
「科学特捜隊のハヤタだ。このロボットは君の機体か?」
「……そうだ」
「なら、君はTDFの……地球防衛軍の隊員か?」
(ここはどこだ……? デビルガンダムが放った光で俺はどうなったんだ?)
「ハヤタ隊員! 無事だったんですか!?」
「やれやれ……てっきり死んだのかと思ったぜ」
「彼に助けてもらったのさ」
「彼?」
「彼って……そこにいる人かい?」
「いや、それよりも……特殊潜航艇S16号を運んできてくれたのか」
「青い球体が湖に落下したと報告してきたのは、ハヤタ君じゃないですか!」
(……あの飛行機といい、潜航艇といい……やけに時代がかった機体だ。それに科学特捜隊と言ったな……まさか……)
「やれやれ……てっきり死んだのかと思ったぜ」
「彼に助けてもらったのさ」
「彼?」
「彼って……そこにいる人かい?」
「いや、それよりも……特殊潜航艇S16号を運んできてくれたのか」
「青い球体が湖に落下したと報告してきたのは、ハヤタ君じゃないですか!」
(……あの飛行機といい、潜航艇といい……やけに時代がかった機体だ。それに科学特捜隊と言ったな……まさか……)
「いたぞ、ベムラーだ!! ―――ハヤタからアラシへ!」
「こちら、アラシ」
「怪獣を発見した。ただちに攻撃を開始する」
「了解!」
「こちら、アラシ」
「怪獣を発見した。ただちに攻撃を開始する」
「了解!」
「で、出た! 怪獣だあ!!」
「まさか……本物の怪獣? これが40年前の『混乱の時代』に存在していたと言われる、超生物か!」
「ジェットビートルで応戦するぞ!!」
「まさか……本物の怪獣? これが40年前の『混乱の時代』に存在していたと言われる、超生物か!」
「ジェットビートルで応戦するぞ!!」
(はあ!?)
またも驚くエレオノール。
カガクトクソウタイとかいう言葉は確かどこかで聞いた覚えがあったが、ジェットビートルに至っては聞き覚えがあるどころではない。
いや、よくよく見てみればこの男たちが身につけている服や、変な丸い兜などに描かれているマークは、ジェットビートルに描かれていたそれと同じものだ。
(ど、どういうこと?)
またも驚くエレオノール。
カガクトクソウタイとかいう言葉は確かどこかで聞いた覚えがあったが、ジェットビートルに至っては聞き覚えがあるどころではない。
いや、よくよく見てみればこの男たちが身につけている服や、変な丸い兜などに描かれているマークは、ジェットビートルに描かれていたそれと同じものだ。
(ど、どういうこと?)
「何て奴だ! こっちの攻撃が効いていない!!」
「ほ、本部に応援を頼もう!」
「何言ってんだ! キャップたちが来る前にこっちがやられてしまう!」
「ほ、本部に応援を頼もう!」
「何言ってんだ! キャップたちが来る前にこっちがやられてしまう!」
エレオノールの混乱をよそに、状況は推移していった。
アールガンとジェットビートルは協力してべムラーという巨大な幻獣……いや『怪獣』と戦うが、その攻撃も効果はない。
もはや絶体絶命かと思われたその時……。
アールガンとジェットビートルは協力してべムラーという巨大な幻獣……いや『怪獣』と戦うが、その攻撃も効果はない。
もはや絶体絶命かと思われたその時……。
「ひか……!! ……『光の巨人』!」
まばゆい光と共に、銀色の巨人が現れた。
「!! 何故だ……何故、俺は……アレが『光の巨人』だと分かったんだ……?
それに……俺は光の巨人に見覚えがある……俺の記憶の中に、光の巨人がいる……」
それに……俺は光の巨人に見覚えがある……俺の記憶の中に、光の巨人がいる……」
銀色の巨人の力は凄まじく、アールガンの助力もあってべムラーはアッサリと倒された。
そして一件落着し、イングラムとカガクトクソウタイの面々が集まって『センコウテイ』とやらで湖の中に潜ったままのハヤタの身を案じていると……。
そして一件落着し、イングラムとカガクトクソウタイの面々が集まって『センコウテイ』とやらで湖の中に潜ったままのハヤタの身を案じていると……。
「おおーい!」
「ハヤタ! 大丈夫か!?」
「この通りだ」
「君は……本当にハヤタなのかい?」
「本当も嘘もない。実物はたった一つだよ。ところでベムラーはどうなったんだ?」
「銀色の巨人がやっつけたよ」
「やっぱり彼が出てきたか。僕もそうじゃないかと思って安心してたんだ」
「すると、お前を助けてくれたのも……」
「彼だ」
「ちょ、ちょ、ちょい待ち! 彼、彼って親しそうに言うけど、一体名前は何て言うんだ?」
「名前なんかないよ」
「よせやい、名前がないなんて」
「そうだな……じゃあ、ウルトラマンっていうのはどうだ?」
「ハヤタ! 大丈夫か!?」
「この通りだ」
「君は……本当にハヤタなのかい?」
「本当も嘘もない。実物はたった一つだよ。ところでベムラーはどうなったんだ?」
「銀色の巨人がやっつけたよ」
「やっぱり彼が出てきたか。僕もそうじゃないかと思って安心してたんだ」
「すると、お前を助けてくれたのも……」
「彼だ」
「ちょ、ちょ、ちょい待ち! 彼、彼って親しそうに言うけど、一体名前は何て言うんだ?」
「名前なんかないよ」
「よせやい、名前がないなんて」
「そうだな……じゃあ、ウルトラマンっていうのはどうだ?」
(科学特捜隊……確か40年ほど前、そんな組織が地球にあったと聞いた。怪獣や科学特捜隊が存在するということは、まさか……)
(……………)
あっけに取られるエレオノール。
何と言うか、あまりにも情報が多過ぎる。
いきなり現れた謎の声。
その『声の主』に見せられた、見たことも聞いたこともない光景。
ユーゼスと同じ顔の男。
突然出て来たユーゼスの名前。
タルブ村にあり、今はユーゼスが所有しているジェットビートルが、この『光景』の中にあること。
そして、銀色の―――光の巨人、ウルトラマン。
<……ふむ。今回はここまでだな>
(え?)
ワケが分からないなりにどうにかして状況を整理しようとするエレオノールに、『声の主』はそんな言葉をかけた。
<これ以上続ければ、お前の睡眠に支障が出る。睡眠不足にはなりたくないだろう?>
それはそうだが、今はそれどころじゃないだろう。
全てを知っているらしいこの『声の主』には、聞きたいことが山ほどある。
だが何から聞けばいいのか分からない。
いや、ここはやはり、この『光景』がユーゼスとどう繋がるのかということを……。
<それでは、次の機会にまた会おう>
(え? あ、あの、ちょっと待っ―――)
あっけに取られるエレオノール。
何と言うか、あまりにも情報が多過ぎる。
いきなり現れた謎の声。
その『声の主』に見せられた、見たことも聞いたこともない光景。
ユーゼスと同じ顔の男。
突然出て来たユーゼスの名前。
タルブ村にあり、今はユーゼスが所有しているジェットビートルが、この『光景』の中にあること。
そして、銀色の―――光の巨人、ウルトラマン。
<……ふむ。今回はここまでだな>
(え?)
ワケが分からないなりにどうにかして状況を整理しようとするエレオノールに、『声の主』はそんな言葉をかけた。
<これ以上続ければ、お前の睡眠に支障が出る。睡眠不足にはなりたくないだろう?>
それはそうだが、今はそれどころじゃないだろう。
全てを知っているらしいこの『声の主』には、聞きたいことが山ほどある。
だが何から聞けばいいのか分からない。
いや、ここはやはり、この『光景』がユーゼスとどう繋がるのかということを……。
<それでは、次の機会にまた会おう>
(え? あ、あの、ちょっと待っ―――)
「ん……」
まぶたの重さを少々わずらわしく感じつつ、エレオノールは仮眠から目覚めた。
何だか随分とグッスリ眠った気がする。
「…………ぇぁ?」
いまいちハッキリしない意識で窓の外を見てみると、既に夕日の光は陰り、夜の時刻に入り始めているようだった。
どうりでグッスリ眠ったように感じたわけだ。
……いや、むしろ眠り過ぎか。
仮眠のつもりでベッドに入ったのに、本格的に眠ってしまうとは迂闊である。
若い時はもっと短い睡眠時間でもやっていけたはずなのだが。
「年かしら……」
あんまり考えたくはないが、今年で28歳を迎えるこの身としては、もう考えざるを得ない。
「…………もう無理のきく年齢でもないかも知れないわね」
などと微妙にネガティブなことを考えていると研究室のドアがノックされ、ドア越しに女性が話しかけてきた。
「エレオノール、入ってもいいかしら?」
同僚のヴァレリーの声である。
「ヴァレリー? ちょ、ちょっと待って!」
エレオノールは急いでベッドから起きると寝巻きから普段着に着替え、眼鏡をかけて髪を梳き、ついでに姿見の前で人前に出ても恥ずかしくない程度に身なりを微調整すると、自分の手でドアを開ける。
「あら、何かの作業中……って言うか、お休み中だったみたいね」
「む……いいでしょ、別に」
眼鏡をかけ、黒髪を後ろに束ねた女性はクスリと笑ってエレオノールの現状を看破する。
一応それがバレないようにしておいたのだが、エレオノールと同じ30人からいるアカデミーの主席研究員であり、割と長い付き合いの友人でもあるヴァレリーの目は誤魔化せなかったようだ。
「それで、何? わざわざ私の様子を見に来たって訳でもないんでしょう?」
「まあ、それもあるわね。あなた最近、根を詰めてるみたいだったし。だけど……」
「だけど?」
「もちろんそれだけじゃないわ。一応、トリステイン国民としての報告ってところかしら」
「?」
『トリステイン国民として』って。
何だ、その大げさな物言いは。
「それじゃ、言うわね」
ヴァレリーはもったいぶった口調で、エレオノールに対してその知らせを告げる。
「『我が国はアルビオン本国からは退却したが、戦争には勝った』だそうよ」
「……何、それ?」
「さあ? 私も人づてに聞いた話だし」
まぶたの重さを少々わずらわしく感じつつ、エレオノールは仮眠から目覚めた。
何だか随分とグッスリ眠った気がする。
「…………ぇぁ?」
いまいちハッキリしない意識で窓の外を見てみると、既に夕日の光は陰り、夜の時刻に入り始めているようだった。
どうりでグッスリ眠ったように感じたわけだ。
……いや、むしろ眠り過ぎか。
仮眠のつもりでベッドに入ったのに、本格的に眠ってしまうとは迂闊である。
若い時はもっと短い睡眠時間でもやっていけたはずなのだが。
「年かしら……」
あんまり考えたくはないが、今年で28歳を迎えるこの身としては、もう考えざるを得ない。
「…………もう無理のきく年齢でもないかも知れないわね」
などと微妙にネガティブなことを考えていると研究室のドアがノックされ、ドア越しに女性が話しかけてきた。
「エレオノール、入ってもいいかしら?」
同僚のヴァレリーの声である。
「ヴァレリー? ちょ、ちょっと待って!」
エレオノールは急いでベッドから起きると寝巻きから普段着に着替え、眼鏡をかけて髪を梳き、ついでに姿見の前で人前に出ても恥ずかしくない程度に身なりを微調整すると、自分の手でドアを開ける。
「あら、何かの作業中……って言うか、お休み中だったみたいね」
「む……いいでしょ、別に」
眼鏡をかけ、黒髪を後ろに束ねた女性はクスリと笑ってエレオノールの現状を看破する。
一応それがバレないようにしておいたのだが、エレオノールと同じ30人からいるアカデミーの主席研究員であり、割と長い付き合いの友人でもあるヴァレリーの目は誤魔化せなかったようだ。
「それで、何? わざわざ私の様子を見に来たって訳でもないんでしょう?」
「まあ、それもあるわね。あなた最近、根を詰めてるみたいだったし。だけど……」
「だけど?」
「もちろんそれだけじゃないわ。一応、トリステイン国民としての報告ってところかしら」
「?」
『トリステイン国民として』って。
何だ、その大げさな物言いは。
「それじゃ、言うわね」
ヴァレリーはもったいぶった口調で、エレオノールに対してその知らせを告げる。
「『我が国はアルビオン本国からは退却したが、戦争には勝った』だそうよ」
「……何、それ?」
「さあ? 私も人づてに聞いた話だし」