あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

使い魔は四代目-08


教室にルイズに続いてリュオが入った瞬間、悲鳴に近い大きなどよめきが起こった。そして、主人の動揺が伝わったか、或いは本能で危険を察したか、動物や幻獣の入り混じった使い魔達も落ち着きをなくし、怯えたり、唸り声を上げたり、と教室の騒がしさに拍車をかける。
それを無視し、ルイズは悠然と席に着いた。当然のように、リュオもその隣に座る。

「ル、ル、ルイズ!?何でそいつが、ここに…!」

ぽっちゃりした少年が、震える声でやっとそれだけを問いただした。後は、声にならない。それに対して、ルイズは何を分かりきった事を、といった態度で

「はぁ?使い魔だから授業に同行して来たに決まってるじゃない」

と、事も無げに答えただけだった。その答えに、教室に大きな衝撃が走る。一部始終を見届けていたタバサとキュルケは別にして、ルイズがあのドラゴンを使い魔にすることが出来るなどと思う者は皆無だったせいである。

「な、なんであんなの使い魔にしてんだよ…」
「嘘だろ?どう考えたって実力以上だろ…悪魔に魂でも売り渡したか?」
「…ああ、分かった。あいつはルイズなんかじゃない。もっとおぞましい、ノレイズとかいう何かなんだよ…」

などという囁きがあちこちで交わされたが、面と向かってルイズやリュオに事情を問いただす度胸のある者はいなかった。

リュオはそんな様子をしばし愉快そうに眺めていたが、

「ぐははははっ そんなに怯える必要は無いぞ。昨日のアレは冗談じゃと言うに。
まぁ仲良くやろうじゃないか、ん?」

その言葉にも、怯えを含んだ視線が向けられただけだった。大多数の者にとってはリュオが正体を現した時の衝撃がトラウマになっているようだ。
教室を見渡し、それを確認すると、リュオは大して気にした様子も無く続ける。

「なんじゃなんじゃ、反応が薄いのう…まともに話ができそうなのはキュルケとタバサだけかい」
「おほほほ、光栄ですわリュオ様。でもまぁ、無理もありませんわね。ああ無様を晒しては、恥という物を知っていれば、なかなか気軽に近づけるものではありませんわ」

余裕の笑みで、辛辣な事を言うキュルケに、彼女を恨みがましい眼で見る者が幾人か出たが、キュルケは全く動じた様子は無かった。それどころか、席を立つと、挑発するかのようにリュオの後ろの席に悠々と陣取った。

「折角ですし、後ろの席に座ってもよろしいかしら、リュオ様?」
「うむ、無論構わんぞ」

「ちょっと、何こっちに来てるのよ」
「安心なさいルイズ。貴方に用はないわ。リュオ様に名指しされたのですもの。良い機会だと思わない?」
「何の機会よ…まぁ、邪魔をしないなら勝手にすればいいわ」

ルイズは正直面白くなかったが、席が指定されているわけでもないので、それ以上は何も言わなかった。やがて、ふくよかな中年女性が入ってきて、教壇に立った。


「皆さん。春の使い魔召喚は大成功のようですわね。このシュヴルーズ、こうやって春の新学期に様々な使い魔たちを見るのがとても楽しみなのですよ」

その言葉を受け教室を見渡してみれば、フクロウや猫、蛇といった動物がいた。サラマンダーやマンティコアのような幻獣もいた。なるほど、その言葉通りに教室内には様々な使い魔がいた。
そこで、シュヴルーズは言葉を切った。教室を見渡し、視線がリュオで止まる。
彼女はオスマンからルイズがリュオを召喚した事は聞いていた。が、オスマンがコルベール以外の教師に説明したのはルイズが遠方のかなり高位のメイジを召喚したので、事情を説明して協力を要請し、使い魔になってもらっている、という事だけであった。無論、竜族の王など言う言葉は口にしていない。

「なぁに、話してみればなかなか気さくなお方じゃわい。堅苦しいのは好かんと言っておられたし、普通にしておれば問題ないじゃろう。…とはいえ、言うまでもないが無礼の無いように頼むぞ」

などとオスマンは気楽に言ってのけたが、だからといって、はいそうですかと気軽に話しかけられるものではなかった。オスマンから見てさえも相当高位のメイジとあっては尚更である。

「始めまして。私はシュヴルーズと申します。貴方がミスタ・リュオ…ですね?なんでも遠方からいらした高位のメイジだとか。
昨日はかなり高度な変身の魔法を使われたと聞いておりますわ。よろしければ後でご教授願いたいものですが」

なるほど、昨日の事は変身の魔法という事にするのか。どこまで通じるかは分からぬがまぁ悪くない案だ、後でドラゴラムを披露してその設定を補強しておくか、
などと内心思いながらリュオは挨拶を返した。

「リュオじゃ。あー、シュヴルーズよ。持ち上げてくれるのは有り難いが、昨日の竜変化の呪文…ドラゴラムじゃが、それほど高度な呪文というわけではないぞ。
勿論ひよっこには無理じゃがな、まぁ珍しいというわけでもないのじゃ。さて、教授するのは構わんが、わしの使う魔法はお主等の魔法とはちと系統が違うようじゃから、この地でわしの知識がどれほどおぬしらの役に立つかは分からん。そういう意味で余り期待せんで貰いたいな。」
「…はぁ、珍しくも無いんですか?リュオ様の来た地は凄腕のメイジが多いのですわね…」

半ば呆然とシュヴルーズは呟く。そのやり取りを聞いた生徒から様々なざわめきが漏れる。

「変身の呪文じゃ、しょうがないな」
「あの時呪文唱えていたっけ?」
「ってか、あの存在感は変身の呪文じゃ出せないだろ?」
「馬鹿、一流のメイジだからこそあの存在感を作り出せるんじゃないか」
「てか、フェイスチェンジはスクウェアスペルだろ?…じゃぁ、凄腕ってのも納得するしかないよなぁ」

フェイスチェンジという顔を変えるスクウェアクラスの呪文が存在する事もあり、高度な変身の呪文を使った、という話は若干の疑問を抱く者もいたが、それなりに受け入れられたようだった。そして、それを受け入れたものは、スクウェアクラスでも顔を変える程度の変身がやっと、という事から、全身を凄まじい威圧感を持つドラゴンに変化させたリュオの実力を推し量り、嘆息するのだった。
だが、その事は別の疑問を産む事となった。当然といえば当然の感想ではあるのだが、

「…いや、だから何でそんな凄腕のメイジがルイズなんかの使い魔になるのよ?」

と、いう事である。そして、もっとも有りそうな答えを口にしたのが、先程のぽっちゃりした少年だった。


「ルイズ!本当は召喚できなくって、金でメイジを雇ったんじゃないのか!」
「…!違うわ!きちんと召喚したもの!昨日リュオにやり込められたからって言い掛かりはやめてよね」

ルイズは反射的に言い返していた。やっとの思いで成功させたサモン・サーヴァントであり、加えて使い魔にするには色々問題はあるにせよ、リュオの実力は申し分ない。これ以上無いという位だ。ルイズにとっては魔法で初めて他人に誇れるような成功をしたのである。他の事はともかく、それを否定される事はルイズにとって許しがたい事だった。メイジを雇うなら人並みでいいからもっと扱いやすいのを選ぶわよ、と思わなくはなかったが。

「何だと?ああ、認めてやるさ!確かに見事にしてやられたよ。けどな、そんなメイジがなんでゼロのルイズの使い魔になるんだよ!
嘘付きめ。本当はサモン・サーヴァントが出来なかったんだろう」
「ミセス・シュヴルーズ!侮辱されました!風邪っぴきのマリコルヌが私を侮辱しました!」
「誰が風邪っぴきだ!俺は風上のマリコルヌだ!ゼロのルイズは名前もまともに覚えられないのか!」
「あんたのガラガラ声はまるで風邪でもひいてるみたいなのよ!」

譲れない点を付かれたルイズ、怒りの収まらないマリコルヌ。激昂した両者は収まりそうになかった。大部分の生徒は昨日の事もあり、口には出さないがマリコルヌに同調していた。
その険悪な空気を収めるべく、シュヴルーズは、手にした小ぶりの杖を振った。すると、立ち上がっていたルイズとマリコルヌがすとんと席の上に落ちた。それを見計らい、

「ミス・ヴァリエール、ミスタ・マリコルヌ。みっともない口論はおやめなさい」

と、二人を諌めた。そこに、のんびりとした、だが、底冷えする声が響いた。

「全くじゃ。ルイズ、そこらで良いじゃろ。落ち着くのじゃ。さて、…小僧、わしが、金で動くと申したか」

リュオがマリコルヌを睨み付け、鋭さを増した声で言った。それだけで、全員が教室の温度が一気に下がったような感覚を味わった。その空気に耐えられず余計な事を言ったマリコルヌに

(馬鹿、とっとと謝罪しろ)

と、さっきまでとは真逆の念を込められた全員の視線が集中する。
当のマリコルヌは、リュオの視線とその空気に当てられて

「う…い、いや…」

とだけ呟くのがやっとであった。

「ふん、満足に文句も言えぬなら最初から口を開くでないわ。…ああ、済まなかったなシュヴルーズとやら。構わずに授業を再開してくれ」

細めていた眼が元に戻ると、それだけで教室内の一気に下がっていた気温が元に戻ったように皆に感じられた。

こいつには逆らわないでおこう。全員の心が一つになった瞬間であった。

「…えー、ミス・ヴァリエールは何とも心強い使い魔を召喚したものですね…ともあれ、お友達をゼロだの風邪っぴきだの呼んではいけません。わかりましたね?」

オールド・オスマン。早速心が折れそうです。内心でそう呟くと、冷や汗をぬぐいつつ、シュヴルーズは授業を開始した。


「さて、私の二つ名は赤土。赤土のシュヴルーズです。土系統の魔法をこれから一年、皆さんに講義します」

そう前置きして、シュヴルーズは、土系統の魔法の基本である錬金の講義を始めた。そして、実際に、魔法で出現させた机の上の数個の小石をピカピカ光る金属に錬金して見せた。
それに尋常ではない反応を見せたのがキュルケである。身を乗り出して

「ゴ、ゴールドですか?ミセス・シュヴルーズ!」

と、尋ねていた。

「ふむ…どこの世界でも女は金やら宝石に眼が無いんじゃなぁ」
「否定はしないけど、キュルケを基準にしないで頂戴ね」

キュルケの勢いに若干引き気味に呟いたリュオに、苦々しくルイズは答えた。
キュルケに対するシュヴルーズの答えは、落ち着いた物だったが、若干誇らしげであった。

「違います、ただの真鍮です。ゴールドを錬金出来るのは知ってる人も多いと思いますが、スクウェアクラスでないといけません。私はただのトライアングルにすぎませんから、残念ですがゴールドは無理ですわね」

アレフガルドでも錬金術の研究は行われている。が、金ではないとはいえ、こうも易々と他の金属に錬金できる術者はそうはいないだろう。どうやら、他の分野ではともかく、錬金術に関してはこの地はアレフガルドより数歩上を行っているようだ。そう判断し、素直にリュオは賞賛と質問を口にした。

「ふむ、見事な物じゃな。色々な金属が錬金出来るのじゃろうが…金の他にも希少な…そうじゃな、ミスリル銀やオリハルコンなども錬金出来るのかね?」
「残念ですが、私は真鍮が精々ですわ。先程ミス・ツェルプストーに答えたようにトライアングルですので。さて、金はともかく、そのような金属を錬金したメイジは知りませんわね。そもそも錬金するにはその対象を良く知らねば無理ですわ。そういった意味でもオリハルコンのような金属を錬金出来るメイジがいるとも思えませんが」

シュヴルーズは、そのような伝説上の金属を錬金する事は出来ない、とは思ったが、リュオのいた所は凄腕のメイジが多いようだし、もしかしたらそのような錬金を成功させる土メイジもいるのかもしれない、と思い直し、無難な返答をした。

「…ふむ、ということは、ロトの剣があればオリハルコンを錬金する事が出来るかもしれんのか」
「ミスタ・リュオ。ロトの剣とは?今の話からするとオリハルコンで出来ているような印象を受けましたが?」
「印象も何も、その通りじゃが?」

事も無げに言い放ったリュオに、シュブルーズの目が見開かれる。生徒達の間からも、小さなどよめきが起きた。

「何と…オリハルコンで出来た剣が実在するのですか?」
「勿論じゃ。もっとも、国宝級の業物じゃから、わしが持ち出せる物でもないのじゃがな」
「…まぁ、それはそうでしょうね。しかし、興味深いお話でしたわ。授業の後で詳しくお話を伺ってもよろしいですか?」
「うむ、構わんぞ…ん?何じゃ?」

鷹揚にシュヴルーズに頷いたリュオは、くいくい、と袖を引かれたのでルイズの方を見た。
興味津々といった風にルイズが小声で話しかけてくる。

「ちょっとリュオ。今出てきたロトの剣って…あの、ロト?」
「ああ、昨日話した、そのロトじゃ。アレフがわしの曽祖父を倒した時に使っていたのがそのロトの剣じゃよ」

その答えを聞いて、ルイズは昨日リュオから聞いた話に思いを馳せていた。伝説の勇者アレフ。あの竜王をたった一人で打ち破ったというリュオの世界の英雄。しかもその剣はオリハルコンで出来ていたという…
本当、どこまでも規格外の勇者よね、とルイズは溜息混じりに思った。まぁ、確かにそんな剣でもなきゃ竜王に立ち向かえるとも思えないけど。これって確実にイーヴァル「とても興味深いお話ですわリュオ様。後で詳しく聞かせていただけませんか?特に、そのロトの剣の話を」…イーヴァルディの勇者以上なんじゃないかしら?ああうっさいわね、これだからツェルプストーの女は…

ぼんやりとそんな事を考えていたのが運悪く、シュヴルーズの目に留まった。すぐに厳しい声が掛けられる。


「ミス・ヴァリエール。ミスタ・リュオの話に非常に興味をそそられるのは私も同じですが、今は授業中ですよ。集中してもらわねば困ります」
「す、すみません。ミセス・シュヴルーズ」

恐縮するルイズは、「あらぁ、怒られちゃったわねぇ」と、キュルケの楽しそうに呟く声を聞き、カッとなったが、流石に構っていられる状況ではないので何とか押えた。

「謝罪は行動で示してもらいます。この小石を、貴方の望む金属に錬金して見せなさい」
「えっ」
「「「「「えっ」」」」」

シュヴルーズの言葉に、ルイズとキュルケを始めとした一同の反応がハモった。そのまま気まずい沈黙が訪れる。

ルイズは立ち上がらず、困った様にモジモジするばかりだ。見かねて、シュヴルーズが問いかける。

「どうかしたのですか、ミス・ヴァリエール?」

「ええと…先生、危険です。止めるべきです」

困った顔のキュルケのその言葉にクラス一同が頷く。

「…うっさいわね」

ルイズの反論にもいつもの元気がなかった。

「…危険?何故です?」
「先生は、ルイズを担当するのは初めてでしたよね?」
「ええ。しかし、彼女が努力家だということは聞いています。さあ、ミスヴァリエール。気にせずやるのです。失敗を恐れていては何も出来ませんよ」
「…ルイズ、お願い、やめて」

シュヴルーズはあくまでやらせるつもりだと見たキュルケが、顔面蒼白でルイズに懇願する。しかし、それが悪かった。

「…やります」

キュルケに対する反発心か、ルイズの背中を押す形になってしまったのだ。困ったキュルケは、教壇へと歩き出すルイズを見つつ、最後の望み…リュオに頼った。

「リュオ様、お願い。ルイズを止めてくださる?」
「…まぁ、無理じゃな。ああなったらもう言う事を聞かんのはキュルケも良く分かっとるんじゃないかな?
ま、失敗なくして向上無しじゃよ」
「それは、そうですけど…仕方ありませんわね。退避行動を取らせていただきますわ」

そう言うと、キュルケは机の下に潜り込んでしまった。

「まぁ昨日召喚された時も爆発するのは見たが…いつもそんなにひどいのかね?」
「もう慣れましたけどね。かなり、ですわよ」
「…ふむ?早まったかのぉ…」

などとは言いながら、リュオは興味深くルイズを見守る。教壇では、シュヴルーズが

「ミス・ヴァリエール。錬金したい金属を強く心に思い浮かべるのです」

と、ルイズにアドバイスしていた。
いよいよか、とリュオは考える。昨日のルイズの、或いは今のキュルケの言葉通りならば、爆発が起きるはずだ。しかし、呪文に失敗したから爆発する、というのはどういうことなのだろう。発動しなかったり、暴走したりといった事ならまだ理解は出来るのだが。それに、昨日ルイズが見せた爆発。あれはイオ系の爆発とはまた違った感じがしたが…

ルイズが手に持った杖を振り上げた。目をつむり、短くルーンを唱え、杖を振り下ろす。
そして。

爆発が起こった。

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