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ゼロの戦闘妖精-15


Misson 15「プロジェクトY ~翼の名は ゼロ~」

トリステイン・ゲルマニア両国首脳が結んだ『雪風製造計画』に関する、ある重要な会議が ここ トリステイン魔法学院の一角で行われていた。
『第一次生産機種 選定会議』
将来 雪風と同等もしくはそれ以上の航空機を 自ら造り出す為の第一歩として、雪風のデータに在る機体のコピー生産に挑むもので、同時に 対レコンキスタ戦の戦力増強を図ることも目的としている。
もっとも、製造の為の詳細なデータがあっても、それを執り行うだけの技術が未発達である以上、どのような機体を選んだとしても大差は無い。
それは、会議の参加メンバーの人選を見ても判る。ルイズと キュルケと タバサ、この三人だけなのだから。

一応の基準として 第二次世界大戦頃のレシプロ機を候補とし、雪風のモニタに様々な機体の画像を映し出す。
それを覗き込みながら 「あれがイイ」だの「これがイイ」だのと 姦しい。
レシプロ限定としたのは、コルベールが既に自力で 油種不明の燃料を使った内燃機関の作成に成功していた為だ。
ジェットは無理でも レシプロなら、下地がある分 (かなり無理をすれば)エンジン製作は可能であるとの判断だった。
また ジェット化の進行は、電装品の増加と比例する。
今のところ ハルキゲニアで製造可能な電気機械は無線機迄である。レーダーは、航空機用はおろかフネ用の物すら目処が立っていない。
その点からも 第二次大戦期の機体が限度となった。

キュルケの一押しは、『ユンカース Ju87 シュトゥーカ』
平行世界とはいえ、帝政ゲルマニアとドイツ第三帝国は なんら関係は無いハズだが、それでも何か通ずるところがあるのだろう。
それに、急降下爆撃と大口径機銃 火力重視な点からして、いかにも火のメイジ キュルケが好みそうな機ではあるが、
…ルーデルにでも なる気かキュルケ?

タバサが選んだのは、意外にも米軍の『P-38 ライトニング』
理由を聞くと
「…お腹すいた。オイルサーディン 食べたい。」との事。
まぁ 確かにペロハチは『メザシ』だけどね、 あるんかい!ガリアにメザシ!?
呆れ気味のルイズに、「他に無いの!」と言われて 次に選んだのは、『XF5U』
…タバサ、それは失敗作の試作機だ。ついでに、本物の『パンケーキ』じゃないから 食えんぞ。

「あんた達に任せても ロクな意見が出ないわね。
 いい、対レコンキスタ戦において重視すべきは、竜騎士との空戦と戦列艦への攻撃 制空権の確保よ。
 対地攻撃も必要になるでしょうけど、優先すべきは空戦性能。すなわち 軽快な運動性。後は 航続距離 いえ滞空時間ね。
 こちらの機体生産が軌道に乗るまでは 敵の竜騎士とは圧倒的に数量で差があるはず。
 となれば 一機が出来るだけ長時間戦い続けて 相手の数をガンガン減らさなきゃならないわ。
 以上の条件を満たす機は、これよ!」
ルイズが 過剰なパースの付いたポーズで指さすモニタには、緑色のボディに赤い丸の描かれた戦闘機。
ハルケギニア語に変換された その機体のデータ表示を覗き込む二人。
「ルイズ。アンタ、ひょっとして!」
「……『名前』で、選んだ?」
「そっ そんな事は、(ちょっとしか)…ない…わ…ょ…」

こうしてハルケギニア製航空機の第一号は、『三菱 零式艦上戦闘機(のレプリカ)』になる事が決定した。

その 少し前に
「ねぇルイズ、この機は何ていうの?」
「うん どれよ、ちょっとキュルケ ページ進めすぎよ!」
「イイじゃない。これ 頑丈そうだし 見るからに強そうだし、アタシ これがいいわ!」
「確かに強いけど、それ そんな形でも一応ジェット機よ。それに 最初の機体としては、色々とハードルが高すぎるんだってば。」
「じゃ これは、ツェルプストー家が独自で作ることにするから 資料だけ頂戴。それならイイでしょ。」
「…無理だと思うわよ~?」
なんてやりとりもあったりする。
(さて キュルケのお気に入りは 一体なんでしょう?)

魔法学院に 皆が忙しくなる時期が近付いていた。
学生の本分にして 不倶戴天の強敵、『期末試験』である。
しかし それさえ乗り越えてしまえば、待っているのは『夏季休暇』。学生生活最大級のイベント 夏休み!
生徒達は、尻を叩く鞭と 目の前のニンジンの相乗効果で、全力疾走状態。教員も 試験の準備に追われていた。
そんな中 ルイズは、他の者と全く違う事に忙殺されていた。

雪風の調査及び航空機製造計画の本格始動で、トリステイン・ゲルマニア両国のアカデミーから百名近い研究者が派遣されてきた。
その誰もが 未知の技術の塊である 雪風に魅了された。知らない・判らないものは知りたくなるのが 研究者の性。
それに答える事が出来るのは、今のところルイズ唯一人。当然の様に 彼等はルイズの元に殺到した。
新規の人員が派遣されるたび、また最初から一通りの説明をしなければならない。もちろん ルイズが。
その手間を省く為に 初心者向けの参考書を作ることにした。しかし その原稿もルイズが自らの手で書かねばならない。
「う~ せめて、プリンタか 外付けモニタがあれば!」無い物ねだりのルイズ。
少しでも負担を軽くしようと 口述筆記も試しにやってみたが、書き手にとって聞いた事の無い単語が出て来る度に手が止まってしまい、いちいち解説せねばならないので 却って手間がかかってしまった。 
結局 アンリエッタに泣き付いて予算を貰い、トリスタニアの出版社を一つ買い取って そこの機材を一式 学院へ運び込んだ。
そして 雪風の浮遊式自動投下ポッド(ひさびさ登場の『トーカ君』)にサンプル回収アームで活字を拾わせ、そのまま印刷することにした。これなら ルイズが間に入らなくとも、雪風が直接制御可能だった。
ただし この手法が使えるのは文章だけで、図や挿絵等はダメだった。ルイズも さほど絵心があるほうでもない。そこで、デルフリンガーの『ウラ技』を使うことにした。
デルフは その使用者が意識を失った等の非常時には、使用者の身体を操って動かす能力がある。これと 雪風のデータリンクを組み合わせると…
まず ルイズがデルフを握ったまま寝る。デルフはルイズを机に向かわせる。そして 雪風がデルフ経由でルイズに絵を描かせる。
これで 睡眠時間も無駄にせず仕事が出来るようにはなったが、その分 疲れは溜まっていく。
ルイズは毎朝 起きぬけに、疲労回復のマジックポーションを飲むのが習慣になってしまった。

新規派遣メンバーへの対応を進めながらも、初期からの人員により『零戦』開発は始まっていた。なにせ 時間が無かった。
トリステインからの兵員増派により、ニューカッスル城におけるアルビオン王家対レコンキスタの戦闘は小康状態を保っていたが、反乱軍が大規模攻撃を仕掛けるまで 早ければ三ヶ月 遅くとも半年と予想されていた。
それまでに新兵器を開発し、運用可能にしなければならない。
この計画に携わる 全ての者達が、自分の専門分野で 挑戦を続けていた。

異世界の 未知なる機械。それに使われているのは 職人にもメイジにも未知なる素材。だが それを作り出せねば 求める機械は完成できない。
今 一人の土メイジが、その新素材の一つに挑んでいた。
(どうして…何故上手くいかないの! いえ、焦ってはダメ。落ち着くのよ 冷静になりなさい。
 『アルミニウム』単体なら もう確実に錬金出来る様になったじゃない。あとは 混ぜ合わせるだけ。全てを均一に。そして 一体化させる。
 まったく。『合金』なんて考え方 そのものが無かったのに、今までよく『合金』の筈の金属が錬金出来ていたモノね。
 それにしても 『科学』は凄い。ほんの少し 何かを混ぜる、その比率を変化させる。それだけで 物の性質が劇的に変化すると言うのですから。
 さあ もう一度。朝から何度も失敗して、精神力も残り僅か たぶんこれが最後の一回。思い描きなさい、軽くて 丈夫で 光り輝く金属を。
 必ず成功させてみせる!私の、姉としての、ヴァリエール家長女の尊厳を賭けて!)
エレオノールは呪文を唱え 杖を振り下ろす。机の上の試料(石の塊)が、鈍い銀色の物体へと変化する。それをじっと見つめる ルイズ。
雪風とのデータリンクは、雪風側からルイズへ情報を伝えるだけのものではない。リンクの影響からか、大幅に強化されたルイズの五感を 雪風に送信している。ルイズは 雪風の最も多機能な高感度外付けセンサーユニットでもある。
ルイズの送ったデータを、雪風が分析する。…さて 判定は?
「やった! やったわ大姉様!『超々ジュラルミン』 錬金成功です!!」
「おちび、私を一体誰だと思ってるの。これくらいの事、出来て当たり前よ!」
内心 ホッとしながら、そんな様子は微塵も見せないエレオノールだった。

錬金魔法の要 それはイメージの具現化である。術の成否を決めるのは、術者が錬金する対象をどれだけ理解しているかという事。
『黄金』すら錬金可能なスクエアメイジであっても、もし『真鍮』を知らなかったとすれば、学生にでも錬金可能なその卑金属を作れない。そういうものだ。
錬金の第一歩は、対象を知ること。見て 触って 確かめる。『解析』の魔法を掛けて より深く探る。そして 自分の中に確固たるイメージを作り上げる。
今しがた エレオノールがやってみせたのは、違う。
現物の存在しない未知の物質、それを 『原子番号』や『分子構造』 密度や物性といった情報のみから錬金したのだ。
これは 画期的なことである。
メイジが目の前の物質から得られる『情報』は 感覚的なものであり、言葉にする事すら難しい。
科学における『情報』は 概念的であり 多くの場合数値化されている。
科学知識を学んだとしても、それを魔法の発動に必要な『イメージ』に変換できなければ、せっかくの知識も『宝の持ち腐れ』にしかならない。
来るべき新時代の土系統メイジに求められるのは「科学情報を魔法感覚にコンバートする能力」であり、エレオノールはそれをやってのけた。
「じゃ、早くそれを持って行って、解析の資料にしなさい。そうすれば 皆コレを錬金出来る様になるでしょう。
 私は疲れたから、ちょっと休ませてもらうわ。」
妹の前で みっともない姿は晒せない、その思いだけで 何とかここまで耐えてきたが、流石にもう限界だった。
エレオノールは 手近な椅子の所まで行くと 崩れ落ちるように座り込み、そのまま眠ってしまった。
(ありがとうございます、大姉様。これで 何とかなりそうです。)
ルイズは改めて 自分の姉に感謝した。
アルミニウムの生産は 鉄や銅と事情が異なる。
まず、原料であるボーキサイトを採掘する鉱山自体 現時点では存在していない。更に、アルミの精錬は 他の金属の様に熱して溶かすだけでは済まない。工業的手法で大量生産するのは、現状では不可能だ。
よって 錬金による生産に頼るしかない。少しでも多くのメイジに アルミの錬金を修得して貰いたい。その道筋を 姉が切り開いてくれた。
嬉しかった。ルイズの瞳は 涙で潤んでいた。

同じ部屋の中に もう一人、潤んだ瞳でエレオノールを見つめる少年がいた。 
彼の名は、トーマス・ワット。あのワット長官のお孫さんで 中々の美少年。
齢十二歳ながら 父親の『車載用蒸気機関 開発計画』に名を連ねるほどの秀才で、祖父から『機関車』の二つ名を貰っている。 
(スゴイ人だなぁ。あんなに立派で 堂々として 凛々しくて、それに…あんな綺麗な女の人 見た事ないや!)
それは、初めてのトキメキ。一人の少年が 恋に落ちた瞬間だった。
彼が 自らの思いを成就させるには、幾つもの難関が立ちふさがるだろう。
まずは、あのエレ姉に『ショタ属性』があるかどうかだが… とりあえず頑張れ トーマス君!

『錬金とイメージ』の問題では、こんな事もあった。
今後、無線機や発電機を作る為、配線ケーブル用銅線が大量に必要となる。
『銅』といえば『ギーシュ』、ということで 早速 銅線を錬金させてみる事になった。
人型と糸状という形の違いに 初めは戸惑っていたようだが、そこは『青銅』の二つ名を持つメイジ、一発で決めて見せた。
「うわぁ~ 凄く細いわ! それに 綺麗な緑色。」
錬金されたケーブルの束を手にとって 感嘆するモンモランシー。だが すかさずギーシュにルイズのツッコミが入る。
「ギ~シュぅ アンタねぇ、なんで最初から『サビ』てるのよ! うわっ それも芯まで!
 これじゃ 電気が通らないじゃない!」
ギーシュは、???。
「えっ だって 青銅ってのは こういうもの…」何が問題なのか 判らない。
「違~う! 
 いい、『青銅』ってのはね、銅を主成分とし錫を含んだ合金で、本来の色は 錫の含有量によって変化するけど赤銅色から黄銅色なの。
 錫が多量になれば銀色に近くなるけど その分脆くなるわ。
 アンタが言う緑色のは、酸化して生じた炭酸塩の『緑青』、つまりは錆よ。それで、(…以下 小一時間ほど「ルイズ先生の金属学講義 青銅編」)」

ギーシュにどれだけ理解できたのか それは不明だったが、今度は『純銅』を錬金させてみた。
数回の失敗の末、なんとか赤銅色に輝くワルキューレを作り出すことに成功した。だが そこまでだった。
慣れ親しんだゴーレムならば、多少材質が違ってもイメージできる。しかし、糸状に整形するには 作り慣れた『錆び青銅』でなければダメ。
やはり 問題となるのは『イメージ』だ。ならば そのイメージを補助するもの 想像のトリガーとなるものは無いか?
ルイズは、雪風の検索データの中から ある『絵物語』を発見した。
(これよ、これだわ!)

再挑戦の日。
ギーシュの杖から 花弁が一枚落ちる。現れるのは純銅製のワルキューレ。ここまでは良し、さて 上手くいくか?
新たに追加された呪文、それを唱えてもう一度杖を振る。
「いくよ、『ワルキューレ、ストーン・フリー!』」
その言葉と同時に、赤銅色の戦乙女が編み上げ人形の様な姿へと変化し、わらわらと解けていく。そして地上には銅ケーブルが積みあがっていった。
成功!
「やったわねっ!ギーシュ。」
「なに、君の見せてくれた あの絵物語のお陰さ。」無意味にジョジョ立ちポーズで応えるギーシュ。
「それにしても あの話は面白かったなぁ。
 あの前と 続きもあるんだろう?よかったら それも…」
「あ~ 悪いけど 今は忙しいから無理。まぁ そのうちにね。」
(冗談じゃないわ。それ 私に第一部から全部書けって事!?あんな細かい絵 とてもじゃないけど描いてられないわよ!!
 あんな絵を 毎週毎週何十枚も描き上げてるなんて、向こうの世界の『マンガ家』って ほんとにニンゲンなのかしら…)

計画の進行に伴い 大量の人員がトリステイン魔法学院へ派遣され、そのための宿舎や研究棟の増設が必要となった。
幸い 学園周辺には十分な土地があったので、現在 ちょっとした建設ラッシュの様相を呈している。
それを仕切っているのが、学院総務部 修繕課所属の『親方』。(Misson 02参照)
実は この人物、トリスタニア職人ギルド 理事の一人でもある。そして 王宮と職人協会から、ある重要な任務を与えられていた。

「フォッフォッフォッ、どうですかな。職人達は 学者連中と上手くヤッとりますかな?」
学院長室で茶を飲みながら歓談する オールド・オスマンと親方。
今回の計画では 普段あまり接触の無い職人と研究者が かつて無いほどの大人数で 共同で任に当たることになる。
そこで生じる様々な軋轢等を調整するのが この二人の役目だった。
一線は退いているが 名人と名高い親方に 面と向かって逆らえる職人はいない。また アカデミーの研究員は ほぼ全員が学院卒業生でありオスマンの教え子だ。調整役としては正に適任と言える。
(ちなみに ゲルマニア側は 産学共通で顔の効くワット卿がいるので 問題は無い。)
「なぁに 皆 喜んでますよ。普段 縁の無ぇ貴族の先生方の前で 思う存分自分の腕前を披露出来るってね。
 それに ルイズ嬢ちゃんは、今じゃ職人の間でも えらい有名になっちまいましたし。」
「フム、例の『定規(スケール)』の件ですな。そういう貴方も?」
「ええ 頂きました。
 尤も 私のは腕前云々ではなく、『世話になっている 礼代わり』って事でしょうがね。」

きっかけは 雪風の機関砲弾だった。
残りの弾丸が心許なくなった時点で ルイズは、馴染みの職人にその製作を依頼した。
砲弾の素材や火薬の質については いかんともしがたく、『無いよりマシ』ぐらいのつもりだったが やはり 満足のいくものは出来なかった。
問題は 『精度』だ。
ハルケギニアにも 一応、長さや重量の規格は存在する。(無ければ商取引や徴税は成り立たない。)
だが それが極めて粗い。一般に用いられる長さの最小単位が『サント(cm相当)』で それ以下は目分量。
流石に 時計やオルゴールなどの精密機械を作る職人は そうは行かないが、それでも厳密な統一が図られているのは 個々の工房の中だけ。
同じ規格の部品を他の工房で製作すれば 微妙にサイズが違ってきてしまう。
これを何とかする為 ルイズが次に出した注文は、『精密な定規』だった。
mm単位 一部は0.1mm単位の目盛りを刻んだ金属製の定規を複数作らせ、ルイズの目を通して雪風に検品させる。
不合格なら廃棄処分とし 合格したものにヴァリエール家の紋章を入れ 職人に手渡した。
「私からの注文品には、このスケールを使ってね。」
そう言ってルイズは 改めて砲弾のオーダーを出した。職人は それに応えて見せた。

『良い職人を育てるのは、客の出す難題』という格言があるらしい。あの職人は みるみる腕を上げていった。
そうなると、「何があった?」と 仲間内で評判にもなろうというもの。
そこで、「ちょいと一杯!」と誘い出し 酔わせたところで問い詰めりゃ、語られるのは『貴族の少女の 奇妙な注文』。
無理だと思った精度の要求、それを成し遂げられたのは、
「まぁ コレのお陰かな。」 掲げて見せる 一本の定規。そこに煌く 公爵家の家紋。
「ウォオォ~!」酒場の一角で どよめきが上がった。

翌日から ルイズの元に、若手職人の売込みが殺到した。
「あの野郎よりオレの方が、腕ぁ立ちますぜ!」
「どんなシロモノでも 作ってみせまさぁ。」
「ぜひアッシにも、注文を!」
新しいモノへの興味、先に行った者へのライバル意識、そして比較的保守性の強い職人社会での 久方ぶりの『面白イベント』
それは ちょっとした『祭り』だった。
ルイズとしても 意欲的な職人と面識が出来るのは 願ったり適ったり。
その中から 見込みのありそうな者数名を選んで、先の『紋章入り定規』を渡した。彼等も ルイズからの注文をこなしていくうちに 驚くほどに力を付けていった。
そのため 今ではこの『ヴァリエールの定規』は、職人の腕前を示すステータス・シンボル化しているのだ。
それは トリステインの職人社会という枠を超えて 広がりを見せつつあった。

『零戦』のエンジン製作担当部会。若いトリステイン貴族が、錬金でのピストン・シリンダー成型テストに臨んでいた。
彼は 「精巧な造型」を得意とし メイジ社会では評価が高い男であったが、それでもシリンダーに収まるピストンを作るには 数回のトライを要した。
(難しいものだな。)
精密な仕上げには それなりに自信はあったものの、かつて無い程の精度を要求する『エンジン』という機械に興味を持ち、そして遣り遂げた事に満足感を覚えていた。そこに、
「あの~、貴族の旦那。
 其方に在ります失敗作 『出来損ない』のうちの幾つかを、一晩 預からせちゃあ貰えませんか?」
若手の職人が一人 申し出た。
「ん? 構わんが、何をしようというのだ。」
「へへっ、それは明日のお楽しみ ってことで。
 ちょいとばかり 面白いモノをご覧に入れますよ。この『定規』に懸けまして!」

翌日 その言葉は真実であると証明された。
錬金で作られたピストンは、かろうじてシリンダーに挿入することが出来る その程度の物でしかなかった。
職人が一晩かけて加工したそれは 違った。
『ぴったりと』嵌るのだ。まるで 元々一つのモノであったかのように。
居並ぶ貴族達は 驚愕した。
(これが 平民の、職人の『技』なのか!)と。
だが、
「兄さんや。今度はソレを ワシに預けてみんか?」
そう言ったのは ゲルマニアの老職人だった。

数時間後 再度披露されたピストンとシリンダーを見ても、メイジ達には何処が変わったのか判らなかった。
しいて言うなら、「動きが滑らかになった」位か。
ただ 先程の若い職人だけが そこから目を離せずに身を震わせていた。そして 唐突に、
「御見逸れしました~!」と 跪いて頭を垂れた。
メイジ達の困惑は深まるばかり。
「兄さん、頭を上げなせぇ。何も そんなつもりでやった事じゃねぇ。」
「いいえ。
 オレは 思い上がってました。
 ヴァリエール様に目をかけて頂き、『定規』まで下さった事で すっかり天狗になってたんです。
 それに気付きました 気付かせて頂きました。」
「いやいや、アンタ その若さにしちゃぁ イイ腕しとる。あれ程の『仕事』が出来るんじゃからな。
 きっちり固定する部品なら どうにも文句の無いシロモノじゃった。
 じゃが アレは可動部品じゃ。ピストンは、何千回 何万回 数えるのもバカらしくなる位にシリンダーの中を往復する。
 そんな機械のキモは、『遊び』よ。キツくては駄目 ユルくともイカン、その『間』を見切る事。それが肝心じゃ。」
「はい!」

「ワシは 磨き職人じゃ。
 ワットの先生様が 初めて蒸気機関を作りなすった時からずっと、シリンダーとピストンを磨かせてもらっとるからのぅ。『遊び』の具合は この手がしっかり覚え込んどる。
 じゃが それはあくまで蒸気で動くピストンのもの。今度の機械は シリンダーの中で直接油を燃やすとか。この老いぼれの経験など どれほど役に立つのやら。
 新しい機械の『加減』を見極めるのは、若いアンタらの役目。ワシは せいぜい 手伝う事しか出来ゃせんよ。」
「はい、師匠!」
「ひょっ、『師匠』とな?」
「オレは今日、大事なことを教えて頂きました。だから…
 何も ゲルマニアの工房まで押し掛けようとは言いません。ここで 一緒に働いている間だけでも。
 心の『師匠』と呼ばせて下さい!!」

若手職人は 思った。
(さすが 機械に関しちゃあ、ゲルマニアは一歩も二歩も先に居る。でも あの『雪風』は、それよりずっと先に居るんだ。
 まずは『師匠』に追いついて 乗り越える!そして もっと もっと もっと!)
ベテラン職人も 思う。
(トリステインも、イキの良い職人が育ってきとるわ。こりゃ ワシらゲルマニアも うかうかしておれんわい。
 にしても ここの熱気はスゴイのぅ。工房の内弟子共も 一度は連れてきてやりたいもんじゃ。いい経験になるじゃろうて。)
技術は 国境を越えて、人と人を結び付けていく。

職人同士だけではなかった。
メイジは 『匠』の世界を垣間見た。貴族の『誇り』と似て非なる 平民の『職人魂』に 何かを感じ取った。
彼等もまた 『技術者』であった。『造る者』だった。新しきモノを生み出す為に この場に集った『同志』だと判った。
平民 貴族、身分違い それがどうした。目指すは一つ 『零戦』の完成。それだけのため 共に往こう。
ハルケギニア六千年の滓、魔法による階級意識は 一時の感情で消し去れるほどヤワなものではない。
しかし 今この場にいる者たちの心の壁には ホンの小さな穴が開いたのかもしれない。
強固な堤をも壊すという 蟻の一穴が。

それは 一月余り 二月にも満たない日々だった。
嵐の如く 怒涛の如く 駆け抜けた日々だった。
貴族が居た、平民が居た。メイジが居た、職人が居た。 
翼を作った者達が居た。プロペラを作った者達が居た。風防を 車輪を 計器を作った者達が居た。
悩み 対立し 激論を交した。支え合い 手を取り合って進んだ。夜を徹して 幾度も繰り返した。
そして 全ての成果は一つになった。

森の中に『基地』があった。
ある使い魔の為の『秘密基地』だった。
今ではもう 秘密ではない秘密基地。
そこに、
皇女が居た。皇帝が居た。大臣が居た。
学者が居た。教師が居た。軍人が居た。
職人が居た。学生が居た。使用人が居た。
それを見る為に、それの完成を祝う為に、皆が集まった。

滑走路に佇む 一機の『零戦』
オリジナルのそれとは 微妙に違う姿。
技術的に届かなかった部分、意図的に変更した部分。それらを含めて これが、ハルケギニア製航空機 第一号だった。
ゼロからの挑戦。百年以上の技術史を飛び越える偉業を 人々は成し遂げた。そして 祈った。
「この機の未来に 幸あらんことを」と。
今この時だけは、兵器の宿命 人殺しの道具であることを忘れ、ひたすらに祈った。

『零戦』が飛び立つ。
テストパイロットは、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
現時点における 唯一の航空機パイロット。だが すぐに、そうではなくなるだろう。
この試作機が オリジナルと異なる点の一つ。複座化されている事。練習機としても使用できる事。
トリステイン・ゲルマニア両国の飛行幻獣騎士から選抜された パイロット候補達は、機種(騎種?)転換訓練の開始を 今か今かと待っている。
(皇女と皇帝陛下御自身も名乗りを上げたが、側近達に全力で阻止された。)

試作『零戦』(通称 ゼロ号機)の完成により 計画は一つのヤマを越えた。だが これからが本番なのだ。
ゼロ号機は ハルケギニアに多くの新技術を伝えると同時に、現時点でのトリステイン・ゲルマニアの工業力 その可能性と限界を浮き彫りにした。
雪風は 情報を詳細に収集し、FAFへと送信した。
FAF電子知性体群は、雪風を通じて 未知の技術体系である『魔法』の解析を進めていたが、捗々しい成果は上がっていなかった。
そこに、ハルケギニア側で 科学技術を用いて航空機の開発を進める との情報を受け、魔法技術と地球系技術の対比と融合が観測できるのではとの観点から、条件付きながら援助を

惜しまない方針を採っている。
雪風からの情報を基に FAFシステム軍団 航空機開発局は、トリステイン・ゲルマニアの技術力に見合った形で零戦を再設計 『リファイン・ゼロ』として雪風に返信した。
機体性能及び生産性が大幅に向上した その製造計画は、ルイズによってすぐさま関係各員に配布され、試作機完成の翌々日には 量産機の生産が開始された。

これが、トリステイン・ゲルマニア連合軍 機械化航空騎士団 制空戦闘機『ゼロセン』の誕生に至る経緯 その ほんの一部である。

               《続く》



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