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ゼロのペルソナ 第6章 戦車


戦車 意味…勝利・失敗

ルイズたち一行は王都トリスタニアで武器を買ってからさらに馬に乗って内陸地にあるラ・ロシェールに着いた。
馬に乗りなれていない者たちは、一日中馬に揺られる苦行に体中を痛めつけられていた。
「ケツや腰がすんげー痛てえ……」
「奇遇だな完二、俺もだ……」
完二と陽介は仲良く腰を抑えながら石造りの町を歩いている。
「チミたち根性が足らんよー。クマは元気イッパイじるしクマ」
「はいはいそーだな」
町の入り口から入って一行は宿を探し、町で最も高級な『女神の杵』亭という宿に泊まることにした。
その一階の酒場で一行は疲れを癒す。
ただし、ワルドとルイズはこれからアルビオンに向かうために必要らしいことの交渉に出かけているためいない。
完二はこの世界では未成年の飲酒を禁じるという類の法律がないことをいいことに、嬉しそうに酒を飲んでいた。
クマも飲みたいと言い張ったが陽介がそれを強硬に反対したため飲めていない。
クマはジュースで場酔いしたこともある。実際に酒を飲ませたらどれほどタチの悪いことになるか分かったものじゃないというのが陽介の言い分だ。
陽介は、自分も酒を飲まないからとクマを説得したが、酒を飲まないのはクマのためというよりもこの間、酒をたくさん飲んで二日酔いになったらからであった。
他愛ないことを話しながら一行は時間を潰した。
しばらくしてワルドとルイズとルイズが帰ってきた。雨で少し濡れちゃったとルイズが文句を言っている。
話が盛り上がって気付かなかったが、確かに雨が建物を打つ音が聞こえる。
ちらりと部屋の一面にある石作りの窓を見ると幾つもの水の線が上から下へと引かれ、今まで気が使ったのが不思議なほどだ。
ワルドとルイズはウェイターにドリンク――陽介たちには分からない名前だったがおそらくアルコールだろう――を頼んでから言った。
「アルビオンに渡る船は明後日にならないと出ないそうだ」
「急ぎの任務なのに……」
「えっ、船?」
思わず耳を疑う。ラ・ロシェールに到着するまでの道のりでは海なんて見ていない。それどころかラ・ロシェールの周辺では湖や川さえ見ていない。
陽介の疑問を増やすような会話はさらに続く。
「あたしはアルビオンに行ったことないからわかんないけど、どうして明日は船が出ないの?」
「明日の夜は月が重なるだろう?『スヴァル』の月夜だ。その翌日の朝、アルビオンが最もラ・ロシェールに近づく」

陽介は頭に浮かべる疑問符の数を増やし、たまらずに尋ねた。
「な、なあ、ちょっと待てくれよ。アルビオンって国だろ?近づくってどういうことだ?
それにここってどーみても内陸地で港町には見えないんだけど……」
今度はワルドが驚いた顔をした。何を言っているんだという顔だ。
質問に答えたのはキュルケであった。
「アルビオンは空飛ぶ大陸なのよ。で、空飛ぶ船でそこに向かうの」
その言葉に、ボケっとしていた完二とクマも、流石に驚いた。
「と、飛んでる?船が?国が!?」
「ホントクマ!?」
「マジかよ……」
そんな三人の態度にワルドは困惑したようだ。
「君たちそんなことも知らないのかい?」
「この子たちちょっと世間知らずだから」
さも不思議そうに尋ねてくるワルドに笑いながらキュルケが答えた。
そうなのかい。とワルドは返事をした。
これからのことについて少し話しあった後にワルドが話を切り上げることを提案して、鍵束を机の上に置いた。
「タバサとキュルケが相部屋。カンジ、ヨースケとクマはすまないが一部屋で構わないかい?空き部屋がなくてね……」
「構わないですよ」
「でもベッドどうスんスか?」
「しょうがないクマね。クマは今夜、陽介に暖めてもらうクマ。きゃっ!」
「キモいわ!お前は床で寝ろ!」
「しどい!冗談なのに!」
おいおいとクマは泣き真似を始める。
「ま、どうしてもっつーなら完二と一緒に寝るんだな」
「何勝手に決めてんだ!」
「それはいやクマ。冗談じゃなくテーソーが危ないクマ」
「テメーらシメっぞ……!」
使い魔三人がギャーギャーと騒ぎ始めるが、構わずにワルドは最後の一部屋の組み合わせを言った。
「僕とルイズは同室だ」
ルイズは目を丸くした。
「そんな、ダメよ!まだ、わたしたち結婚してるわけじゃないじゃない!」
「大切な話があるんだ。二人で話がしたい」
ルイズは狼狽しながらチラリと彼女の使い魔を見遣った。
「あら、ベッドが足りないならわたしのベッドに来る?わたしは大歓迎よ」
「まま、ま、マジっスか……?」
「ちょ、キュルケさん、大胆すぎるんですけど!」
鼻血を流していた完二は突然の爆発に襲われ、陽介は机の下から小さな主の蹴りをもらい、むこうずねを抑え呻いた。

次の日の朝、完二は扉がノックされる音で目が覚めた。
「ダレだよ、いったい……」
もう一つのベッドには着ぐるみを脱いだクマがベッドのド真ん中で寝ていた。陽介はベッドの脇の床で寒そうにしている。
昨夜、クマが陽介の寝ていたベッドに無理矢理入っていったので、寝ているうちにはじき落としたのであろう。
ノックの音は続いていた。
「わーってるよ……」
完二は自分の毛布をかわいそうな先輩に掛けてドアへ向かった。
開けるとそこにはワルドが立っていた。
「なんかようか?こんな朝っぱらから……」
せっかくの睡眠の時間を奪われ、ヒゲ面を見るのはいい気分ではなかった。
たとえそれが美男子であっても、完二にはその気はないので(かつて疑惑はあったが)同じことだ。
「きみは変わった力を持っているらしいね」
完二の顔に警戒の色が浮かぶ。
「なんで知ってんだ?」
「昨夜、ルイズが話してくれた。なんでもきみは別の世界から来たというじゃないか」
あのおしゃべりめ、と完二はつぶやく。
「これから任務を共にするものとして、その実力を知っておきたい。
さらに言えば、使い魔として、僕の許婚を守れるだけの実力を持っているかということもね」
回りくどい言い方だが、完二には彼の言わんとすることはわかる。あちらの世界でも散々やったことだ。
「そりゃあ、つまりケンカ売ってるってことか……?」
「そのとおり」
完二の剣呑な声にワルドはにやりと笑った。

二人は女神の杵の中庭に出た。地面が昨日の雨で濡れている。
ワルドが言うことには、女神の杵は昔、アルビオンからの侵攻に備えるための砦であったらしい。そのためか中庭は練兵場となっていた。
かつて兵たちが国王の閲兵を受けたという場所で、完二とワルドは向かい合う。
「昔……、と言ってもきみにはわからんだろうが、かのフィリップ三世の治下には、ここでよく貴族が決闘したものさ」
「それが今ナンか関係あんのかよ」
完二はつまらない歴史の抗議に興味はない。しかしワルドは喋り続ける。
「古き良き時代、王がまだ力を持ち、貴族たちがそれに従った時代……、貴族が貴族らしかった時代……、名誉と、誇りを掛けて僕たち貴族は魔法を唱えあった。
でも、実際は下らないことで杖を抜きあったものさ。そう、例えば女を取り合ったりね……」
「カンジ、頑張るクマー」
「恥かくなよ、完二!」
クマと陽介の野次が飛ぶ。二人が決闘することを聞き面白そうだと見にきたのだ。
「うっせえ!静かにしてろ!……あ、長話は終わったか?」
完二のあまりに礼を失する態度に流石に気分を害したのか、ワルドの頬の筋肉が引きつっている。
「んじゃあ、さっさとやろうぜ……」
「待ちたまえ、立会いにはそれなりの作法というものがある。介添え人がいなくてはね」
「介添え人だぁ?」
「もう来たようだ」
ワルドがある方向を見遣る。完二も視線の先を追うと、ルイズが立っていた。
「ワルド、カンジ!なにやってるのよ」
「彼の実力をちょっと試したくなってね」
「そんなバカなことはやめて。カンジ、やめなさい。これは命令よ」
「黙ってろ。ケンカ売られといて、はいそうですかって引きさがれっか!」
ルイズの命令を跳ね除ける。
もう!と不機嫌になったルイズとは逆にご機嫌になったのは完二の背中にかけられた剣だった。
「戦うのか、相棒!なら俺の本気ちょっくら見せてやるよ!」
完二の背にあるデルフリンガーが叫んだ。
「さあ、俺を抜いてくれ!きっと驚くぜ」
完二は背中にぶら下げていたデルフリンガーを片手で持った。ただし、鞘をつけたまま。
「おいおい、相棒。抜いてくれよ!」
完二の扱い方に不満があるのかデルフリンガーは抗議の声を上げた。
「うっせえな、斬っちまうわけにもいかねえだろ」
「そりゃ、そーかもしれんけどさ……」
その様子を見たワルドは面白くなさそうな顔をする。
「きみが剣を抜かないとしても僕は手を抜くと考えいてるのかい?」
「はあ?んなセコイこと考えてるわけねーだろ」
完二が当たり前のことのように言う。
ワルドの顔はさらに不機嫌なものとなる。
ナメられている。そう思ったのかもしれない。
ワルドは杖を引き抜きそれを前方に突き出す。フェンシングのようだ。
「行くぞ」
ワルドのその言葉が合図となり、決闘は始まった。
ワルドは先制攻撃を仕掛けるべく杖をつくモーションに入った。完二もそれを知りつつも攻撃に移ろうとする。
ワルドが先手を取るかもしれないが構わない。
杖で突かれても致命傷にはならない。攻撃を受けながら一撃で倒してやる。
ワルドは完二の肉を切らせて骨を立つ攻撃を察知し攻撃をやめ、一旦引く。
「逃げんな!」
完二は距離をつめ鞘に納まったままの剣を横振りに振るった。ワルドはさらに引かざる得なくなり防戦一方になる。

「おー、カンジ、やるクマ」
完二とワルドの決闘騒ぎを観戦しているクマはのん気に言う。
「おーい、ルイズもこっち来てみようぜ」
ルイズは予想外に陽介の言ったとおりに彼らの座る階段に近寄って来た。ただしその顔には呆れたという表情が浮かんでいる。
「アンタらずいぶん気楽ね」
「まあまあ、いいじゃん、ケンカくらいさ」
ルイズは溜息を吐いた。
「あー、またカンジ外した!さっきから攻撃外し過ぎクマ!」
クマはじれったそうだ。
「あいつ俺らんなかじゃ一番遅かったもんなあ……」
陽介は仲間たちの姿を思い出す。みな様々なペルソナに目覚め能力を開花させた。完二はその中で一番の鈍足で、魔力も低かった。
その代わりに完二はパワーと体力においては随一で、同じ物理特化パワー型のペルソナ使い里中千枝より力においては上であったのだ。
そういう意味でワルドは正しい戦術を採っている。ワルドは先ほどから避けることに専念し、彼の武器である杖で受けようともしない。
完二の攻撃をまともに受ければ一撃でノックアウトされるであろうし、あのレイピアのような杖では重い一撃でへし折られてしまうだろう。
完二が一撃でも当たればいいのに対し、ワルドのあの杖の突きでは急所でもつかない限りは何度も攻撃しなければ頑丈な完二を倒すことはできないだろう。
しかし劣勢にありながらワルドには余裕こそないものの勝利を諦めているようには見えない。そう陽介には思えた。

ワルドは驚嘆しきっていた。
ルイズの言う彼女の使い魔の特別な力を出させるため、追い詰めてやるつもりが、なかなか思うようにことが運ばない。
それどころか戦いが始まってから完二に圧倒され続けている。
完二の武器の振りは大振りでスキだらけと言ってよかったが、そのスキがつけないのだ。理由は二つだ。
一つは完二の攻撃があまりにも強すぎること。彼の杖は剣を受けることさえできるが、完二の鞘ごと振り回す荒っぽい攻撃を受ければへし折れてしまうだろう。
もう一つは体さばき。
完二の戦い方は正規の訓練を受けたものではないのは素人目にも明らかなほどだが、戦いなれているのだ。
まるで素人が何度も生死をかけた戦いをしてきたかのような奇妙さだ。
ワルドもプロの戦士であるつもりだが、先ほどから完二が攻撃した後にカウンターするチャンスを窺っているがなかなか隙を見せない。
だが攻撃の隙が見つからないといってもそれは杖による突きに限定した場合だ。
彼の武器はそれだけではない。杖の使い方は突くことだけではない。むしろそれは補助にすぎないのだ。
防戦一方のさなか、詠唱を唱える。完二の攻撃を避けながら彼を打ち倒す魔法をちゃくちゃくと完成させていく。
ワルドは完二と武器を交えながら(実際はあわせていないが)呪文の詠唱を完成させた。
見えない空気のハンマーが横殴りに完二を襲った。
ワルドが使った魔法はエア・ハンマーだ。
風系統の攻撃の中で基本的なものだが、空気と侮るなかれ凝縮された空気の圧力は本物の槌で叩かれたかと錯覚するほどの衝撃を与える。しかもそれは不可視で避けることは難しい。
完二は不意を突かれ、その厚い空気の塊により、十メイル以上吹き飛ばされ積まれた樽に激突した。
ワルドは隙を見逃さずに詰め寄って勝負を決めようとする。しかし崩れていく樽の中からすぐに完二はすぐに立ち上がった。
立ち上がった完二にダメージを受けた様子も隙も見つけられずワルドは距離を詰めるのを断念する。
逆に今度は完二が詰め寄ってくる。
ワルドは許婚の使い魔の頑丈さに驚嘆しながらも呪文をさらに紡いだ。
頑強さなど関係なく確実に動きを止める魔法だ。ワルドが唱えようとしている魔法はどれほど頑丈であろうと、人間ならば耐えられない。
完二の手にあるインテリジェンスソードが叫んだ。
「俺でガードしろ!」
しかしワルドの魔法は完二がデルフリンガーにリアクションを起こすよりも早かった。
杖先の空気がゆがんで、そこから電撃が生まれる。そして超局地的な雷は完二捕らえた。
だが完二の足は止まらなかった。
「なにっ!?」
後に引かないようにやけどなどは出来ないほど威力は落とした。しかし人間ならしびれて動けなくなるはずだ。
予想外の出来事にワルドは反応が遅れる。
完二はワルドを射程距離に納めた。
完二は剣を振りかぶる。ワルドは避けられない。
そして――スリップして尻餅を突いた。
沈黙が流れる。
はっ、と我を取り戻したワルドが杖を完二に突きつけた。
「……降参するかい?」

「か、完二、ダッセー!!超ダッセー!!」
「あんなタイミングで転ぶなんてカンジは笑いのセンスがあるクマね、プククク」
完二は陽介とクマに指を指されて笑っていた。
「チッ、くそ……!」
完二は敗北者として潔くしている。言い訳はしない。
弁明めいたものをしたのは転がり込んできた勝利を手にしたワルドだった。
「地面は昨日の雨で濡れていた。もし雨がなければ勝っていたのはきみだろう」
しかしそれを完二は潔しとしない。
「言い訳なんてしねえよ、負けは負けだ」
完二はぶすっとして言う。
しかしワルドは彼をかばおうとして言ったわけではない。思ったことを言っただけである。
確かに戦場ならば、もしなんて意味はなく結果が全てで、生き残ったのはワルドであっただろうが、結局はラッキーに過ぎない。
そんなものを手放しに喜べるほどワルドは単純ではなかった。
ワルドの許婚であるルイズも彼女の使い魔の強さに驚いていた。
魔法衛士隊の隊長であるワルドと互角以上に武器を交え、エア・ハンマーを喰らっても即立ち上がり、ライトニングクラウドを喰らっても構わず攻撃を行った。
こんな平民他にいるはずがない。
二人の魔法使いが物思いにふけるなか、もともと彼の強さを知っていた陽介とクマはバカ笑いを続けていた。
物笑いの種にされていた完二も我慢の限界を迎えた。
「テメーら、いい加減にしやがれ!!」
完二が怒鳴り声を上げる。陽介とクマはやばいと言って逃げ出した。完二はそれを追う。
「ちょっ、言い訳しないんじゃなかったのかよ!?」
「やめれー!」
「うるせえ!シメてやる!」
練兵場で陽介とクマを追い、グルグルと回り続ける様子は、ワルドとルイズが思うような強い使い魔には不似合いな姿であった。


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