あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

Adventure-seeker Killy in the magian world quest-07


LOG-7 呼び声

「どこ行ってたのよ!?」
少女を殺害した廃屋のすぐ近くで、右に行っては左に行ってを繰り返していたルイズは、すぐに霧亥を発見して声を上げる。
「変な騒ぎは起こるし、どうしようかと思ったわよ!」
まったく何が起こったのか知らない様子なので、わざわざ説明する必要も無いだろう。
「さっき会った女の子も、結局どっか行っちゃうし、散々だわ……」
どういう目的で、あの少女がルイズへの接触を試みたのかは気になるが、会話の内容に意味があるわけでもなさそうなので、何も知らない関心もないとばかりに霧亥は沈黙していた。
「とにかく行きましょう」と続けると、すぐ30mほどの距離で転がっている死体のことなど忘れて、当初の目的地に向かう。
ここに至るまでの時間が、四人の監視者、あるいは襲撃者が一緒くたに行動していたこともあって短かったため、ルイズの機嫌はそう悪くない。
霧亥にはある種の物々しさがあるが、普段まったく感情を見せないだけでなく、臨戦態勢であっても指して変わるところのない男なので、ルイズは気づかない。
「看板が見えたわ」
塗料を乗せた植物由来の板をさして言う。
薄汚く異臭漂う裏道に居ることは、ルイズにとっても不快であるらしく、早く終わらせて帰ろうという感情が滲んでいる。
それにしても、ここに何の用があるというのか。
霧亥にしてみれば、武具が調達できるようにも、この集落の住人たちが着るような衣類が手に入るとも思えない。
もしや、先ほどの男が自分につきたてたような、文字通り“剣”でも買うというのだろうか?
疑問に思いつつも、いかにもそれらしい単純な金属の棒がごろごろとしている店内に入る。
「貴族の旦那が何のようです? うちはまっとうな商売をしてるんで、変な言いがかりは―――」
「客よ。剣を買いに来たの」
「―――左様で」
愛想笑いに隠れた思考を、霧亥が素早く読み取る。
基本的にこういった方面への十分な知識を持たない貴族の、しかも未成年の少女がやってきた。
となれば、これは本来なら割に合わないような値段を提示しても、疑問を抱かず購入するはず。
ようは騙そうとしているのだ。
とても古い記録によれば、原始的な経済活動においては、こういったことは頻繁に行われていたらしい。
ネットを通じて十分な情報を双方が得られないことによる認識の相違によって、取引や契約で様々な問題が頻発する世界が、かつて存在したらしい。
欺瞞と混乱。
ネットにカオスが生まれてすらいないにも関わらず、まさに“カオス”と呼ぶにふさわしい。
先ほど通りかかった場所も、同じようにカオスに満ちた市場なのだろう。
恐らくは、この世界の経済そのものが、一切の統制はおろか、不正を行うものの排除すら出来ない市場により成り立っている。
「これくらいお金はあるけれど」
そういった悲劇的な市場で、相手が情報を秘匿しているにも拘らず、何の事前合意もなしに自分のもつ情報を公開するのは、まともな取引は不可能だ。
ルイズは、この世界に来て一週間も経たない霧亥以上にそういうことには無知らしい。
商店の管理人は満面の笑みを浮かべている。
貨幣価値について十分な知識を持つとはいえない霧亥だが、どれだけ眼球のフィルターを替えてみても、この程度の商品の価格としては明らかに暴利だ。
どれもこれも、無駄な凹凸を表面に刻んでいる以外、ただの棍棒同然の代物ばかり…興味を失いかけていた霧亥は、代わりにぼんやりと、この世界の貨幣のことについて考えていた。
金属の塊が貨幣として用いられる世界など、有史以前に駆逐されている。
有史とは、人類が歴史を刻むすべを身に着けて以降のことを指すが、霧亥に言わせればこの世界の人々は、歴史など持っていない。
電子の煌きすら知らず、自身の脳に勝る記憶媒体すら持たないことは、過去を捨てて生きるのと変わらない。
もっと厳しく言えば、超構造体に記憶を刻めない人間の生など、彼にとっては無為なものだ。
もっとも、数千億に上るその無為な生が、膨大な時をかけてノイズとなりながらも蓄積され続けていることが、ネットのカオスを拡大させる要因の一つとなってもいるので、あまり大きなことは言えないが…。
「キリイ、これはどうかしら?」
霧亥の思索中も品定めしていたらしく、ルイズは何を基準に選んだのか、銀で鍍金された柄の付いた銅の塊を持っている。
彼女は、これで敵を切りつけろというのだろうか?
黙って視線を外す霧亥を見て、ルイズは「これはだめ」と机の上に剣を戻す。
店主はいかにも不機嫌そうになってきている。
「この値段でこんな良品、めったに手に入りませんぜ……冷やかしなら―――」
「よく言うぜ、ぼったくれないと分かったら冷やかし扱いかよ」
「―――デル公!!」
音声の発信源からは、人の脳とは違った電子の流れが見える。
視たところ、ただのFe-C系炭素鋼―――安定な面心立方格子状の鉄と炭素の固溶体から急冷したもののようだが…果たして、そんなものがいまだにこの場所に現存しているのだろうか疑問だ。
表面硬化措置すら施されていない鋼や鉄の塊、青銅を一般的に使用する技術水準だというのに…。
「インテリジェンス・ソード?」
「そうです。一体どこの酔狂だか、こんな意思を剣に植え付けちまった奴がいたようでして……」
「おい、こっちだよ、こっち。あんたわりとまともそうだ」
霧亥は、声の主にゆっくり近づく。
「妙な風貌なんで、どんなやつかと思ったら、アホ貴族と同じじゃなさそうだ」
霧亥は、擬似人格が内蔵された記憶素子を組み込まれたその大剣を手に取る。
確かに、ここのどの金属製品よりも高度な代物だ。
古い上にいい加減な構成だが、擬似人格を仮想電子計算機で構築するだけの記憶素子を組み込む技術といい、もらい錆だらけの外見といい、まだある程度の文明が残されていた時代のものだということだろう。

「………こいつは、何だってんだお前は!?」

という言葉を、いかにも人間らしい感情がある風に剣が叫んだのは、霧亥が興味を失ってかごの中に放り込もうとしていたときのことである。
「デルフリンガーっ! お客の失礼になるようなことはするなと言ったろう!!」
「―――ありえねぇ、お前は“使い手”なのか? 始祖だってここまでじゃねぇ…!!」
デルフリンガーの言語基体が極めて単純明快であり、どうやらここの一般的な人間と大差ないレベルの能力の持ち主が未熟な技術で構築したものであることが分かる。
要するに、彼の言葉の意味は大気の振動として伝えられるものだけでなく、接続端子を繋いで電子の流れを量子レベルで直接読み取れば、言語基体をフォーマットするまでも無い。
「お前は、人間じゃ―――」
震える小さな声は、霧亥が接続端子を錆の中に捻り込むことで途切れた。

〈なぜ、俺を呼んだ?〉

流れ込む意識に、デルフリンガーの柄のあたりが壊れた歯車のように不気味に震える。
驚いたのは店の主人で、ルイズは変なインテリジェンス・ソードだなという程度に思って、また剣を物色していた。
体が焼けるような感覚に、目の前の剣が苦しんでいることなど知る由もない。
霧亥といえば、まったく気にも留めていない。

〈あんた、俺と直接、話せるのか?〉
驚愕と苦痛で、デルフリンガーの思考は震えていた。
さらに、霧亥の中身のほんの一端に触れて、戦きと恐怖で竦み上がる。
〈………あんたを“使い手”かもしれないと、でなくても、少しは剣の扱いに長けてそうだと思ったんだよ〉
この回答の意味は、直接剣の中から情報を引き出し続けている霧亥にはすぐさま理解できた。
使い魔を作る際の、あの“契約”により発現する幾つかのシステムの中には、通称“ガンダールヴ”と呼ばれるものが存在すること、そして霧亥にそれが発現しかかったこと、
デルフリンガーに内蔵された感覚器官が、霧亥にその兆候を見出したことなど、聞くまでも無く閲覧することが出来た。
推定される製造時期は、約53000000時間前。
内部の記録は、ここの人間の脳の記憶と似て、経年劣化による酷い抜け落ちや変化が見られ、詳細な確認は出来ないが、おおむね間違いないだろう。
〈ずっと、あんたみたいのを待ってたんだ、きっと、また俺は使い手の手に戻るって……〉
記録に興味はあったが、破損部位の修復を成功させられる見込みは無かったので、霧亥の興味は失せた。
かごの中にゆっくり戻すと、端子も引き抜いてしまう。
唖然とした喋る剣は、振り絞るような声を出す。
「おい! 置いて行かないでくれ!!」
その数秒後、奇跡的に霧亥の足は止まった。
言うまでもなく、剣の都合を考慮したわけではなかったが…。

ルイズの強い要望で、剣を購入することになったわけだが、剣がどのようなものであるかを知った霧亥がまっとうな人間であれば、不快感は計り知れないものとなったはずだ。
なぜ鈍器での殴りあいに興じねばならないのだろうか。
ましてや、その鈍器の性能は、自分の拳よりも劣る。
最終的には、もっとも使い道のありそうな材質で出来た喋る剣、デルフリンガーを購入する運びとなった。
店主の計らいで、厄介払いに手を貸してくれた例にと、相場の半分ほどで入手。
といっても、明らかにその言動からは、剣の材質がここの技術では生成不可能な合金で出来ているなどと知らないことが分かる。
彼はいいカモに「高値でゴミを売ってやった」と思っているし、事実この剣が一般的な材質であったならやはり暴利なのだろう。
こちらも情報を開示しなかったとはいえ、もうあのような場所を二度と利用することは無いはずだ。
そもそも、相場というのも貴族用の装飾品としてのもので、あの店は貴族御用達の無意味な外観的特長によって商品価値を吊り上げる類の商店であるらしい。
よくよく考えれば、ルイズのような人間が知っている商店など、そのようなものばかりのはずだ。
こういったルイズの勧め自体に、今後は一切乗るべきではないのかもしれない。
デルフリンガーのカチカチなる?の部分をどうにかして固定しようとする店主の好意を時間的な理由で無視すると、邪魔にならないように背負う。
大剣を肩から掛けている黒ずくめの鎧男が、無表情に貴族の後について歩くさまは人目を引いた。
「服はそれね?」
このようにして予算が想定外に余った上に、霧亥にろくでもない剣しか買ってやれなかったことを悔やんでいたルイズは、霧亥の普段着の購入をそれなりに高価な店で調達することにした。
常日頃から決闘やら闇討ちやらにおびえる貴族あたりが着る、それなりの防御性能と日常生活では十分すぎる耐久力を持った、肌触りの良い厚手の布・高級な革を駆使したコートやスラックス。
ここで扱われる商品は、霧亥にとってはどれも実用性には乏しいが、それでも人目につく服装でなくなるのは意義のあることだ。
それに、ネットスフィア関係者にしか着用不可能な純正スーツが手に入らなかった場合は、旧式のスーツを重ね着することもあった。
霧亥は例によって、スキンスーツの上からはおるだけのつもりであったので、どうでもよかったのだが、どれもぶかぶかだと店主は言って別品を薦める。
続くように、ルイズは「元が細い上に長身だからなかなか良い」「黒革の光沢がその髪とよく合う」「スラックスにしわがよってみっともない」という具合に、何の意味もない外観から感じる曖昧な印象を口にしている。
答えるのは霧亥ではなく店主で、商店の管理人と出資者揃って何をしているのだと霧亥は厭きれそうになった。
だが霧亥にとっては、無駄な時間を費やすということ以前に、ここに二人で長時間拘束されることは、一つ大きな問題がある。

「おい、キリイ。さっきから妙なのが張り付いてるが、何なんだ一体?」
張り付いているだけではなく、明らかにこちらへの攻撃の機会を計っている。
どちらにせよ霧亥は後で殺しに行くつもりとはいえ、大人しく退くというのなら分からなくもない。
だが、なぜこの様な状況で再び攻撃を掛けるのだろう?
先ほどの戦闘にしても、当初の予定が破綻した時点で、どれだけ素早く後退し、体制を立て直すかが重要になるはずだ。
考えられる理由として、“兄弟”という言葉を使っていたが、そのような部隊・集団への帰属意識を履き違えた結果かもしれない。
かつて霧亥がその根絶の為に心血を注いだネット上の犯罪者たちが、カオスの増大に伴い種族化した際に、同じようにあまりに非論理的で非効率な行動をとることがあった。
霧亥と違い、生まれたときから一切の感情や個性を持たないネット秩序の守護者達に、高度なパーソナリティーと人間性を付加するようになったのも、そういった無意味な行動に追従するためだ。
「やる気だぞ、あれは」
「………………」
霧亥が自身の考えに対応する形で店の裏口から出てきた事に、四人組最後の一人、ドゥドゥーは顔を青くした。
まるで隠れても無駄であると言わんばかりに、興味無さそうな視線が突き刺さる。
兄弟の仇討ちを考え突っ走ったはいいが、奇襲によって有利な形勢へ持っていくことは出来ないかもしれないと思いつつも、ドゥドゥーは引かない。
まったく理解に苦しむ行動だと、霧亥はじっと相手の出方を伺う。
数秒後、自棄になった彼の攻撃を、頭上で水蒸気が静電気を帯びた塊に姿を変えていることで察知。
その雷雲から電流が霧亥に打ち下ろされるまでの時間を考えて、霧亥は銃を引き抜こうとする。

「キリイ、何してるの?」

その声でようやく後ろにも注意を向けた霧亥は、いつの間にか近くまで来ていたルイズを店の奥にでも投げ込もうと、その胸倉を掴み上げる。
マントの止め具が崩れ、シャツのボタンは外れるところまではいったが、もう投げる余裕がないところに来た。
今まさに電流が、二人を貫こうとしている。
伝導性の高い左腕を盾にすれば、防ぎきれる確立は上がるが…。
〈抜け、キリイ!〉
デルフリンガーが、口頭では伝えられない速度でキリイと意思を疎通する。
〈この体は、魔法の力を吸収して利用できるような変換素子が組み込んである。その嬢ちゃんも確実に守れる!〉
霧亥にとって何の意味もない攻撃であっても、この世界でそれが攻撃手段として普及していることから分かるように、ルイズが食らえばひとたまりもない。
神経系に障害を来たす以前に、電熱でやわな蛋白質は凝固し、水分は沸騰するだろう。
この剣が言うことが本当であれば、魔法の力で制御されている電流を効率的に無力化できるので、この様な結果を防げる確率は上がる。
とはいえ、不確定要素の伴う行動で、自身の危険を冒してまでルイズを守る必要があるかというと、悩ましいところだ。
〈キリイ!!〉
少々考え込むが、この世界の技術水準を考慮すれば、この剣が手を触れただけで自身を破滅的な状況に放り込めるとも思えないので、霧亥は剣の柄を握ることにした。
流れ込む情報は、確かに剣が言ったような機能が存在し、それが起動し始めたことを意味している。
それと同時に、契約時にインストールされかけたので、途中で機能を強制停止していたアプリケーションが、剣の使用方法を通達しようと、霧亥の拘束下でもがいた。
霧亥に言わせれば、鉄の棒をどのように振るえば人体を効率的に叩き潰せるかというようなもので、何をそんなことをいちいち言ってくるのかと煩わしく思うようなものだ。
〈やっぱり使い手だッ!!〉
では、このアプリは全ての使い魔という名の奴隷に導入されるものではないのだな、と考えるほどの間をおいて、ドゥドゥーの電流がやってくる。
ルイズが霧亥の胸元に引き寄せられたという事実を認識した瞬間、デルフリンガーがその直撃を受けた。
「なんなの!?」
悲鳴は霧亥に対するものになる予定が、着弾の閃光と破裂音に対するものになった。
今度こそ霧亥はルイズを放り投げると、剣を構えなおす。
電流か魔力の負荷で、剣は激しく震えている。
「―――死ね!!」
再びブレイドと呼ばれた魔法を使用するドゥドゥー。
戦闘レベルでの冷静な判断能力すら失った敵の攻撃を、霧亥は無造作に剣で受ける。
そこまでは良かったが、ついに震えからその刀身には大きなひびが入ってしまう。
〈だめだ、こいつは―――〉
これが鉄剣なら、ひしゃげるだけで済んだかもしれないが、内側に何かを溜め込みすぎた炭素を含んだ鉄の剣は、とうとう破裂してしまった。
霧亥は手に持っていた得物が突如として使用不能になってしまったことで一瞬隙が出来る。
相手はそこに付け入り、更にもう一撃を食らわせに前進してきた。
体表にある種の力場形成が見られるのは、どうやら防御のためのものであるらしく、表層の擬似的な硬化と推定される。
硬い殻をつけたところで、強く打てば叩き割れ、重たいものでぶてば衝撃で中は潰れるのだから、霧亥にとっては指して意味はない。
相手の斬撃に合わせて、折れた剣を相手の脳天に向けて突き出す。
当たれば確実にその頭部を貫いたはずの一撃を、ドゥドゥーは寸でのところで回避することに成功した。
軟骨を滑らせて関節を外し、筋組織や腱の配置を無視した可動を発揮するのは、またしてもある種の魔法によるものだ。
あらぬ方向に曲がる相手の可動部位に、霧亥はとっさの対応をし損ねた。
魔法と思われる力の質も明らかに異なり、自身の体組織の持つ機能を利用している、今までの強引で非効率な今まで目にしたものとは別のものだ。
このような形態でなければ、力の発動準備で察知できただろうが、この行動を予測できなかった霧亥の首には腕が巻きつき、引き倒される。
霧亥の腕を巻き込んで交差させた両手の親指が頚動脈の圧迫を試みるも、組み伏せられた側は動じない。
途端にドゥドゥーは、自身の魔法をもってしても起こりえない関節の動きと、骨が皮膚を破る音に気づく。
唇の両端がつりあがった勝利の表情は、すぐに驚愕へ変わり、恐怖と苦痛で歪み、そのまま硬直して変化しなくなった。
体技で組み伏せるという力比べに持ち込んだことが最大の間違いで、霧亥はただ力任せに覆いかぶさる男の腕をへし折り、折れたデルフリンガーを思い切り胸に突き刺すだけで難なく拘束を逃れた。
剣を抜き取るついでに、力尽きた襲撃者の死体を投げ捨てると、破れた心臓から大量の血潮がこぼれる。
呆けたような表情で、無造作に一連の動作を終えた霧亥を見て、ルイズは口をパクパクさせていた。
「き、キリイ………」
ずいぶんと擦れた声が、手元の血まみれになった鎺から響いた。
その呼びかけに、霧亥はそっと折れた剣を地面に置くと、そばに跪いて傾聴する。
「お、思い出した……ブリミルの野郎のときと同じだ、お前は、使い手なんてもんじゃ……虚無が揃うのってのか」
何を言っているのか霧亥には理解しかねた。
ブリミルと同じ、始祖と同じということは、文明が失われる以前のものと、自分に共通点を見出したとでも言うのだろうか?
「サーシャは泣き虫だったな、あいつが背負うには重すぎたが、お前なら、問題なさそうだ………きっと、みんなうまくやれる」
霧亥は剣の中身を保存しようと、腰から細長い接続端子を引き出す。
その行動に、デルフリンガーは笑おうと鎺を震わせるが、音は出なかった。
「そうだよ、お前が来るのを何百年も待ってた……いや、何千年も…経っちまったのか…………―――」
「おい」
剣は呼びかけに応じて震えることもなくなった。
完全に機能を停止したのを確認すると、霧亥は早速その場から離れ、何の感慨も無さそうに端子を収納し、銃をホルスターに戻す。
「こ、壊れちゃったの?」
購入した衣服を抱えたまま、ルイズが間抜けな質問をしている。
そんな彼女も、霧亥の脇に真新しい屍が転がっているのを見て、ようやく事態の深刻さに気づいたように、店員にチップを渡す。
その認識は「小金を持っていそうな貴族を狙った強盗を霧亥が返り討ちにした」程度のもので、霧亥のそれとは違った。
店員も、貴族の客に配慮したようで、裏口に鍵をかけ、われ関せずの姿勢を見せている。
「お金は多めに渡したわ……今のうちに学院へ急ぎましょう」
通りの裏のことであり、放たれた魔法はピンポイント攻撃用のものであったため、多くの人目につくことは無かった。
この世界では、食いつなぐ為に人を殺して金品を奪うことなど、日常茶飯事だろうと霧亥は考えている。
死体の方も、この世界でのごく一般的な殺し方をしてあるので、この人気の少ない通りでごく一般的な殺人ととられるだろう。
以上から、ひとまずは穏便に“処理”出来たことを霧亥は確信し、またゆっくり歩き出す。
急ぐというのには程遠い速度で歩く霧亥に、結局は歩調を合わせることになったルイズは、なぜ自分が荷物持ちになっているのだと激怒した・・・

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