あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロのペルソナ 第1章 運命


運命 意味…定められた運命・アクシデントの到来


青々とした草が一面に生えている草原。そこにはマントを身につけた少年少女たちが立ち並んでいた。
かれらがそんな魔法使いのような奇妙な格好をしているのは、彼らが奇矯な趣味をもっている人の集まりだから、ではなく事実彼らが魔法使いであるからである。
召喚の儀式。魔法使いが生涯のパートーナーをよびだす神聖な儀式。今、それが行われている最中である。
立ち並ぶ少年少女たちの視線は一人の少女に向けられている。
ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。
それが視線を一身に受けている少女の名だ。彼女は現在、連続で召喚に失敗している。
ルイズは周りの視線を感じながら焦っていた。召喚の儀式は神聖な儀式であると同時に進級試験もかねている。
もし召喚できなければ留年。そうなればもともと魔法が使えず自分を馬鹿にしていた連中は増長し一つ下の学年の生徒に白い目を向けられながら学校生活を送ることになる。
そんなことはとうていプライドが許せることではない。
もう何回目になるかわからない召喚魔法を使う。他の魔法と同様に魔法は爆発を生み砂埃を上げる。
ルイズの魔法の爆発で地面に生えていた草は根こそぎなくなり、茶色い砂だけが姿を見せている。
「おい、いいかげんにしたらどうだ!」
「そこらじゅう穴だらけになっちまうぜ!」
周囲から飛んでくる罵声を無視してルイズは煙の中に目を凝らした。
使い魔が召喚されていないかと儚い願いをもって。
ルイズの目の錯覚かはたまた願いが通じたのか煙の中に黒いものが見えた。
召喚に成功したかもしれないという喜びに興奮しルイズはもう一度目を凝らし確認する。
確かにいる。錯覚ではなくちゃんと存在する。
ルイズは召喚の成功、ひいては自分の生涯のなかでのはじめての魔法の成功に小躍りしたくなった。
なんだろうか。少なくとも人以上の大きさに見えた、ユニコーンだろうか。
いや黒いから違う。ドラゴンだったらどうしよう。と、ルイズの妄想は止まることを知らない。
さっきまで失敗をしていたのに強力な使い魔を想像するなど苦笑ものだが
確かにルイズが呼び出した使い魔は規格外だった。
ルイズの予想を越え、期待を裏切るほどに。
全身は黒く、大きな体、腹部にはドクロのマークがあり、額に切り傷、眉はなく、白髪の……
「に、人間……」
ルイズの口が無意識にあんぐりと開いたままになった。


稲羽市にある大型スーパージュネスの稲羽チェーン店の電気店売り場に二人の男とキグルミがいた。
一人は身長が180センチを越える長身で髪は脱色し、眉はなく、学ランは袖を通さず肩にかけ、
学校規定のカッターシャツではなく黒地のドクロのマークがプリントされたTシャツを着ている。
まさに絵に描いたような不良高校生である。名前は巽完二。
もう一人は髪を茶髪に染め首から大きなヘッドホンをぶら下げている。こちらも高校生だ。名前は花村陽介。
そしてその二人に並んでたっているキグルミはデフォルメ化された青いくまが宇宙服を着たようなデザインをしている。
また男二人といったがこのキグルミの中にいるのも紛れもない男である。名前はクマ。本名である。
もっとも戸籍はないので本人が名乗りそう呼ばれているということなのだが。
三人は電気売り場に人がいないかとキョロキョロと周りを見ていた。
「あいかわらずだれもいないクマねー」
「相変わらずはよけいだっつーの」
クマにすかさず陽介は突っ込みをいれる。彼はこのスーパーの店長の息子なのだ。
電気売り場だけだとはいえ店に活気がないといわれるのは気のいいものではない。
「いーじゃねえスか。ダレもいねえおかげで変にコソコソしねえですむんだからよ」
完二もクマに同調した。
「お前もひどいな」
陽介は後輩にしかめっ面をする。
「いや、ひさしぶりにテレビの中に行くと思うとテンションあがっちまって」
昨年のこと彼らはテレビの中に入る力を手に入れた。その力で彼らは、一般的に八十稲羽連続誘拐殺人事件と呼ばれる事件を解決した。また、真実を見つけ出し八十稲羽市を包んだ霧を晴らしたのだ。
「クマはしょっちゅういくクマー」
「俺もときどき行くな」
「あぁッ!?、クマだけじゃなくて花村センパイも行くんスかッ!?」
「そりゃ、毎日ここに来てるからな。テレビの中にも行きたくなるじゃん?」
「せっけー」
完二は不満そうに陽介を見る。
「ま、そう言うなよ。久しぶりにあの世界見たら感慨も深いだろ?」
「まあ、そうかもしんねえっスっけど」
「カンジはこまかいクマー。もうクマ先に行くクマよ」
「待て!お前らいつも行ってんだからおれが先だ」
完二はテレビの中へ入っていった。
テレビのなかにはいる順序がどうであろうと変化はない。
完二が先に行くといったのはクマに先を越されるのがいやというだけで深い意味はなかった。
だが本来なら完二の意味のない子供っぽい行動が、三人にとって重要な選択となっていたことなど
このときはだれも、たとえ別世界の魔法使いすらも知らなかった。
「じゃあ、クマお先ー」
陽介も完二に続いてテレビの中に入る。
「あー!ヨースケずるいクマー!」
最後にクマもその身をテレビへと入れる。
この時から三人はこの町、八十稲羽で半年以上ぶりの行方不明者となり、別世界への旅人となった。

巽完二は驚いていた。テレビの中に入ったと思ったら、煙の中にいた。
霧が再び発生したのかとも思ったが煙はすぐには四散した。
煙に包まれていたときはわからなかったが、自分の周りには多くのマントをつけたみょうな格好の集団がいた。
「さすがはゼロのルイズだぜ、平民を召喚しやがった」「ゼロは何してもダメだな」などといっている。
なんだ、なんでここに人間が?また放り込まれたのか?いや、犯人は捕まえたよな?
と、完二が尻餅をついた態勢のまま考えて込んでいるとピンク色の髪の少女が近づいてきた。
ふと視線を上げて見てみるとその少女のおかしさに気付く。髪の色も異様だが、その格好も奇妙であった。
フレアスカートに真っ白なカッターを着ているのはいい。だがその背中にかけている布きれは何であろうか。
まるで魔法使いのマントだ。
少女は完二の前で膝をつくとなにやら棒状のものを構えてブツブツといい始めた。
その棒が魔法使いの杖のようで完二は鼻白んでしまう。
ブツブツと唱えるのをやめた少女はその少女は突然完二の顔をその両手で固定し、
完二が反応する間もなく唇を重ね合わせてきた。
少女は軽く唇を合わせるとすぐに唇を放したが、何をされたか理解できずに完二はぼけっとしていた。
だが何をされたか理解すると完二は顔を真っ赤にして大声を出す。
「なっ、テッテメェ何しやがんだ……て、いってえ!!」
だが文句を言い終わる前に完二は体に痛みが走るのを感じ、身を折る。
「うるさいわね。ルーンが焼かれてるだけよ。すぐに終わるわ」
少女の言葉のとおり痛みはすぐにひいた。
「ん、おお、ほんとだ。って、ナニしやがんだテメエ!」
「ほんっとイッチイチうるさいわね。ルーンが焼かれたって言ったでしょ。見てみなさいよ」
言われたとおりに感じは痛みが走ったところを見てみる。服をまくってみるとそこには
みたこともないような紋様があった。完二にはミミズがのたくったような文字に見えた。
「んだ、コリャア!」
「だーかーらーさっきから言ってるじゃない!バカなのあんた!?」
「ああッ!ダレがだテメエ!」
完二と少女はぎゃいぎゃいと言い争いを始めた。

「それでは次」
禿頭の教師コルベールはルイズがコントラクトサーヴァントをどうやら成功させたらしいと判断し、
次の生徒を呼んだ。
その声に応じ、青い髪の小さな少女ともう一人燃えるような赤髪の少女がルイズを囲んでいた輪から出てきた。
青い髪の少女は背が小さく年齢の割には起伏がない体型をしているのに対し、
赤い髪の少女は年齢以上に起伏のある体をしている。
赤髪の少女はそれに自信をもっているのかカッターのボタンを多めに外しその肌を惜しげもなく晒している。
「あんたのせいでわたしたちの召喚まで明日まで延びるんじゃないかと思ったわ」
「だからちゃんと召喚したじゃない」
「平民呼び出すなんてわたしも初めて聞いたけどね」
嘲弄の言葉に対し、ルイズの口はパクパクと開くだけであった。
事実平民を呼び出してしまったこととバカにされた悔しさが合わさり言葉を口にできない。
「そうだ、てめぇさっきはよくもいきなりキ、キ、キ……」
座り込んだままだったルイズの召喚した男が立ち上がりルイズに詰め寄る。
「うるさい。黙ってなさい」
「ハァ!?んだとテメエ!!いきなりキスしやがって!」
「う、うるさい!わ、わたしだって好きでしたんじゃないわよ」
「じゃあ、すんじゃねえよ」
「へ、平民のくせに……!平民が貴族にあんなことしてもらえるなんて普通ないのよ!!」
「うっせえっ!!平民とかワケわかんねえこと言いやがって。ダレがんなこと頼んだ!」
「うるさいうるさい。ファ、ファーストキスなのよ」
「ッせぇ!んなのこっちもだっつの!」
二人はうるさく言い争いを始めてしまった。
「あーら。まあいいわ。タバサなら一発よね、こんなの」
赤髪の少女、キュルケはその言い争いを面白半分に見ていたがまず召喚を終わらせてしまうことにした。
タバサと呼ばれた青髪の少女は小さくうなずき召喚魔法を唱えた。
キュルケはタバサは体こそ年齢より幼く見えても、魔法の実力は並の魔法使いなどとは
比較にならないほど優れていることを知っていた。
だから落ちこぼれのルイズと違い一回であっさりと召喚魔法を成功させたことには驚かなかった。
しかし……
「……え?」
「……人間」
ルイズと同じく平民の少年を召喚したことには驚いた。


結局タバサは平民を召喚した後すぐに契約のキスをした。
「えっ、なにこれドッキリ……いってえええ!!!!」
と、タバサの使い魔はルイズの使い魔と同様にルーンが焼かれる痛みに大声を上げた。
しばらくうずくまっていたが、痛みが引いたのか身を起こして周りをキョロキョロと見回て、
「え、どこだ?ここ?テレビの中じゃねーのか?」
などと言っており非常に混乱しているようだった。
それを尻目にコルベールはキュルケに召喚をするように告げた。キュルケは嫌な予感がしたが、
それを理由に召喚を後日にのばすというわけにもいかないのでしぶしぶ、というわけでもないが召喚を行う。
キュルケの嫌な予感はうれしいことに当たらず、呼びだされたのは人間ではなかった。
大きな頭と太い胴の間にくびれはなく赤と白で作られた模様の胴体から短い手足を生やしている青い毛をもった…
「なにこれ?」
よくわからない生き物だった。

「い、いったいいいいいいいい」
クマは土の上で丸い体をゴロゴロと転がす。クマの体感時間では相当な時間が経ってからやっと痛みは引いた。
痛みは引いても仰向けになって安泰にしていようとするクマに陽介と完二が駆け寄ってきた。
彼らは現状に気付いたのだ。
「おい、クマッ!」
「ヨースケクマ……。クマはもうだめだあ……。死ぬ前にかわいい子とデートしたかった……ガク」
「そーいうのいいから!そんなことより、クマ!ここがどこかわかるか」
「へっ?ここは……どこ?」
クマはやっと現状に気付いたのか目をパチクリとさせてキョロキョロと見回す。
「それを聞いてんじゃねーかっ!」
「カンジ、おちつくクマ。むむ、クマたちテレビのなかに飛び込んだクマよね」
「ああ、それは確かだな」
「ここ、テレビのなかじゃないよ」
「ああッ!?なんでだよッ!?」
「そんなのクマもわからんクマー。ただ、テレビのなかじゃないことは絶対クマ」
「ちょっとあなたたち、なんの話してるのよ」
三人が驚愕の真実に気付いたときに褐色の肌をした少女が話に割って入った。クマにキスをした少女だ。
また同様に陽介と完二に突然接吻をした少女たちもやってきたようだ。
何気に倒れたままだったクマは陽介に起こしてもらう。クマは一人では立ち上がれないのだ。
そうして話に割って入ったきた少女を見てクマの顔は目ははっと開かれた。
「はっ、そーいえばクマこの人にいきなりキスをしてもらって……
なんちゅーことか、痛みでキスの感触を忘れるなんて……
チッス!ワンモアプリーズ!」
陽介たちが見たことがないほど色香を放つ褐色の少女はクマの様子に引いたように見えた。
引いた彼女に代わりピンク色の少女がやってきて捲し上げるように喋り始める。
「ちょっとあんた!キュルケの使い魔が出てくるなりご主人様置いて何しに行ってんのよ!?」
「だーれがご主人だっつのッ!」
「わたしが!あんたの!ご主人さま!」
完二と桃色の髪の少女は顔を突き合わせるなり口げんかが始めた。その二人の間に青い髪の少女が割って入る。

「話が進まない」
「タバサのいうとおりよ。ルイズ少し落ち着きなさい。それであなたたち知り合いなの?」
「えーと、いや、そーなんだけどさ……。とりあえず聞きますけど、ここどこですか?」
陽介は恐る恐ると言った様子で尋ねた
「トリステイン魔法学院よ」
「「「ま、魔法学院(クマ)?」」」
「まさかあなたたち魔法を知らないっていうんじゃないでしょうね?」
「いいや、知ってます。知ってっけど……」
陽介は言いよどんだ。
魔法は知っているが、魔法学院とはどういうことであろうか。果たして自分の思っている魔法と同じものなのかと。
完二とクマも陽介と似たようなものであった。つまり顔に当惑を貼り付けている。
赤い髪の少女がまた何か言おうとした時、青い髪の少女がすっと腕を上げて指でどこかを指しながら言った。
「帰ってる」
指の指す方向に広がっていたのは陽介たちの常識を打ち壊すものだった。
何人もの少年少女たちが空を飛んでいるのだ。
「って、なんじゃこりゃッ!?ワイヤーアクションですかッ!?」
「どーなってんだ……?」
「飛んでるクマー」
陽介たちは呆然として空に人が浮かぶという信じがたい光景を見ていた。
こんなものテレビの中でも見た記憶はない。
だが隣に立つ少女たちは人体浮遊を見て驚いた様子はなく、
むしろ完二たちを見て呆れたという表情を浮かていた。
「あんたたち何そんなに驚いているのよ……」
「驚くだろ、そりゃ……てゆーか聞きたいことが山のように出てきたんだけど……」
陽介はさらに言葉を続けようとする。しかし青い髪の少女がゴツゴツとした棒を
突き出してきたので出てきかけだった言葉を飲む。
「あとで」
そういうと彼女は短く小さく何かを唱えた。次の瞬間、少女と陽介は宙に浮いていた。
「うおぉぉ、飛んでる、飛んでるよぉ」
「わたしも戻るわ」
クマも赤い髪の少女も同じように飛んだ。
「おっおおーー!今のクマはまさに浮いた存在クマー」
フワフワと彼らは飛んでいった。草原に残るは完二とピンク色の髪の少女だけになってしまった。
「お、お前は飛ばねえのか?」
完二が少しばかり期待をこめて言った。
正直飛んでみたい。完二はそう考えていた。
「うるさい」
そう突き放すように言って、少女は完二をおいて歩き出した。
「な、おい!ちょっと待てよ。飛ぶんじゃねえのか?」
「だからうるさいって言ってるでしょ!」
あーだこーだと口論しながら二人は学園へと歩いていった。

タバサの部屋には今、三人の魔法使いと二人と一匹(?)の使い魔がいた。
タバサとキュルケとルイズの呼び出した使い魔たちがなにやら訳ありのようで、
その話を聞くために一部屋に会したのである。
ところで人付き合いが薄く、キュルケ以外に友達といえるもののいないタバサの部屋に
これほどの人を招いたのは初めてであった。
タバサとしても無闇に部屋に人を招きたくはなかったが、ルイズがキュルケを部屋に招くことも、
キュルケの部屋に招かれることも拒んだので彼女の部屋になってしまったのであった。
「で、あなたたちは魔法がない別世界から来たっていうの。とても信じられないわね」
茶色の髪をしたタバサの使い魔――花村陽介というらしい――が説明を終えるとキュルケはそう言った。
「ウォークマンやケータイ見せただろ」
「見たことがないものだった」
確かに彼女の使い魔が持っていたものは見たこともないものばかりだった。
小さく精巧に作られた金属やそれなりの強度を持ち軽量な素材でできているもの。
全く見たことのない物質のようであった。
スクエアクラスの土のメイジででも作れるとは思えない。
また、タバサは今まで様々な任務をこなしてきたので嘘をついているかどうかについてある程度嗅覚が利くのだが
別の世界から来たなどという、嘘としてはあからさま過ぎる話をしながらも
陽介は決して嘘をついているようなそぶりを見せなかった。ただ、何かを隠しているようには感じたが。
「それよりもこっちが信じられねーよ。なんだこの世界……」
「それよりも問題なのは帰れねえっつーことだろ……」
「クマったクマね……」
使い魔三人ははあと溜息をついた。
タバサのベッドをイス代わりにしていたキュルケは腰を上げた。
「もう顔をつき合わせてたってしょうがないわ。もう部屋に戻りましょ。クマ、おいで」
「な、クマはキュルチャンの部屋で寝るクマか。むほほー」
キュルケの使い魔クマから落胆の表情が消え、キュルケに続いてクマは踊るように出て行った。
ルイズも部屋に戻ることにしたようだった。そしてその使い魔、巽完二も連れていく。
「カンジ、なにしてんの、来なさい」
「お、おう」
出来たばかりの二組の主従が去り、部屋には本来の部屋の主とその使い魔だけが残った。
「なあ、えーっと、タバサちゃん」
タバサの使い魔である少年はおずおずと言った様子で尋ねてくる。
「タバサでいい」
「じゃあタバサ。俺どこで寝りゃあいいんだ」
「ここ」
タバサは簡潔に答えた。
「あーいや、この部屋で寝るのは話の流れでわかったんだけどさ。何を使って寝ればいいんだ?」
タバサは言われて初めてその問題に気付いた。部屋には寝床はベッドが一つしかない。
とは言っても小柄なタバサのベッドにしては大きなベッドである。
無理をせずとも二人くらいは寝れなくもないだろう。
ベッドをじっと見ながら言った。
「いっしょ……?」
「床で寝させていただきます」
彼女の新しい使い魔は素早く言った。
毛布はいくらか分けてあげよう。そうタバサは思った。

部屋に戻ったキュルケ。そしてクマ。
「ここがキュルケチャンのお部屋クマかー。うーん、女の子のにおいがするクマー」
「オジサンじみたことを言わないでちょうだい」
先ほどから率直に感情のままにものを言うこの珍獣にキュルケは辟易していた。
あの二人の人間の使い魔と同じ世界から呼び出したが、タバサやルイズよりは体裁がいいはずだ。
二人は呼びだしたのは平民のたいしてこちらは珍獣。
人間を呼び出すことに比べれば珍獣の召喚など常識の範囲内だが
「疲れる……」
ただこのハイテンションのクマに疲れた。
現在も制服からネグリジェに着替えているが背後で
「キュルケチャン、ダイタン!クマはまだチェリーボーイークマー。むしろさくらんボーイ?」
とわけのわからないことを言っている。
着替えが済み、キュルケはベッドに倒れこんだ。
「キュルケチャン」
「なに」
「クマもいっしょにベッドで寝ていいクマか」
「いや、あなた大きすぎるでしょ」
キュルケのベッドは貴族の使う大きめのサイズであったが縦はともかく厚みがありすぎる。
クマが寝ては自分のいるスペースがない。
「あなた毛皮があるんだから、床で……」
「じゃあ、脱げばオーケークマね」
そういうとクマは自分の頭を抱え込み、頭を引き抜いた。
自殺!?使い魔がベッドを使えないことを苦に力技で自殺!?
だがクマのクビからは血が流れ出てきたりはせずに、金髪碧眼の小柄な美少年が現れた。
キュルケは呆然とした。
「やあ、キュルケ、おとなり失礼させてもらうよ」
クマがベッドに入り込んで来て、やっとキュルケは我を取り戻した。
「あなた、クマの中に入ってたの……?」
「あれはボクの一部だよ」
突然の展開についていけずキュルケは呆然とクマの中から出てきた少年を見つめる。
そしてその視線をどう勘違いしたのか。
「初めてだから、や・さ・し・ク・マ」
と言った。間違いなくクマだとげんなりした気分に近くキュルケは思った。
キュルケはクマを無視して寝ようとして明かりを消そうとして、気付いた。
「スピースピー」
「寝てる……」
キュルケの使い魔は自由なようであった。

ルイズは完二を連れて自分の部屋に戻った。
今日の出来事で色々と疲れたルイズはさっさと寝ようと決めた。そして服を脱いで着替えようとする。
その時、完二が悲鳴のような大きな声を上げた。
「テメッ、なに男の前で服ぬいでんだ!」
完二は両手で目を隠しながら怒鳴っている。
「男がどこにいるっていうの?貴族は従者の目なんか気にしたりしないものよ」
「ジューシャ……?」
従者という言葉がわからなかったのか、少し考えふけったようだったが、
考えることをやめたのか再び抗議し始めた。
「とにかくバカにしてんだろが!ナメんじゃねえぞ!」
両手で目を隠したまま、すごまれても全く迫力がなかった。
ルイズは構わないことにした。
「なんでもいいけど、そこのタンスからネグリジェとって」
「なんでオレが」
「使い魔として役に立たないんだから、せめて身の回りの世話はやってもらうわ」
そうさきほどキュルケたちと話し合ったときにわかったのだが彼らとは
本来使い魔たちと出来るはずの視界などの感覚共有が全くできなかったのだ。
その上、完二たちは平民なのである。完二の体格はかなりいいように見える。
しかしいくら図体が大きくても魔法使いを襲うようなものから平民が守れるとは思えない。
また信じがたいが異世界とやらから来たというので、調合のために必要な薬草なども集めることも出来やしない。
ならばとルイズはせいぜい普通の下僕が出来る程度のことはすべてやってもらおうと決めたのであった。
「ふざけんな!」
「あら、あんたを部屋に置いてやってるのも食事も与えるのもわたしなのよ。あんた受けた恩も返せないの」
「んだとぉ?」
ルイズの小バカにした言葉にドスをきかせた返事を返す。
「世話してもらってなにもせずに義理も通せないの?」
「誰が世話してもらってんだよ!」
「あんた以外にいないでしょ。言うこと聞けないならご飯あげないわよ」
「な!?きったねえぞテメエ!クソ……」
完二の言葉は尻下がりに弱くなった。
完全に服従したわけではないが完二の言葉から敗北の色を受け取ったルイズはとりあえず満足し、
完二に命令する。
「じゃあ、タンスからネグリジェとって」
「どこだ」
「一番下」
「ほらよ」
完二は後を見ないようにそれを投げてきた。
「着せて」
「ああ……いや、待てッ!」
「なによ」
「オマエ俺に下着姿を見ろっつうのか」
「わたしは気にしないわ」
「オレが気にすんだよ!」
「なんだ、あんた結局恩も返せないようなやつなのね。
もういいわ、あんたみたいな情けないやつにやってもらわなくても」
「んだと、なめんじゃねえ!」
完二はタンスと向き合った状態から首を回しルイズを見、顔を真っ赤にして、首を回してもとに戻した。
「もういいわよ」
ルイズはこれは無理そうだと判断した。
「くっそぉ」
完二はルイズに背を向けていたが耳まで赤くしているのがルイズにはよく見えた。

運命に導かれ突然現れた少年たち。
この時から少女たちの先の見えない旅は始まった。


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