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機械仕掛けの使い魔-第14話 前編



機械仕掛けの使い魔 第14話~前編~


 学院の敷地を完全に更地にしてしまうかという程に激しい喧嘩だったが、意外な結末を迎えた。
 クロもミーも、ほぼ同じタイミングでガス欠を起こし、その場に倒れてしまったのだ。

 辺りを見渡せば、綺麗に手入れされた広場の芝は至る所がめくれ上がって土が露出し、各塔の瓦礫や、なぎ倒された樹木が大量に転がっている。
学院周囲の塔はその瓦礫が物語るように、その全てが各所に大穴を空けられ、見るも痛ましい姿を晒している。中央の本塔は、ルイズの失敗魔法で空けられた穴と同レベルの穴がいくつも穿たれ、もはやカムフラージュの域に達していた。
各塔と本塔を結ぶ石橋も軒並み破壊され、移動も不便になってしまっている。
 しかし、奇跡的と言うか、はたまたクロの矜持ゆえか、使用人宿舎は無傷で済んでいた。
 貴族が使う部位が徹底的に破壊され、平民である使用人の住まいが傷1つない光景というのも、ハルケギニアではなかなかに異様である。

 そして現在。風通しのよくなった本塔内の食堂では、深夜の大破壊劇についてのひそひそ話がそこかしこで展開されている。
その裏手の厨房では、シエスタとアイナの手で救助されたクロとミーが、大量の賄い料理に齧り付いているのであった。

「随分と派手に暴れたみたいだなぁ、クロちゃんに…ミーくん、だっけか?」
 クロとミーの食べっぷりに惚れ惚れとしていたマルトーが、口を開く。
「もう、ダメかと思った…。もちっと大事に扱ってくんねぇかな、相棒よォ…」
クロの腹からは、疲れきって蚊の鳴くような声のデルフがぼやく。
「だって、クロが無茶するから…」
「最初に武器を出したのはオメーだろがよ」
口でいくら言っても無駄だと解りきっているがゆえに、ミーも武器を取り出して実力行使に出た。
だが、同様に火を見るより明らかな結果にまで考えが至らなかった辺り、相当頭に来ていたのだろう。冷静になった今では、縮こまって料理用油をちびちびとやっている。

「そう言えば、ミス・ヴァリエールとミス・ツェルプストー、それにミス・タバサの姿を見かけませんでしたけど、どうしたんでしょう?」
 デザートの給仕を終えて戻ってきたシエスタが、クロに尋ねた。
「ルイズたちか? そう言やぁルイズのヤツ、タバサの部屋に行くとか言ってたな、昨日の晩は」
「あの後ボクたち、朝まで暴れてたからね…」
「教員の皆さんもテラスにいらっしゃいませんでしたし…」
 学院生は食堂1階の広間で、教師陣はその上階のテラスで食事を摂る、と決まっている。だと言うのに、今日のテラスはもぬけの殻だと、シエスタが言う。
「会議か何かやってるんじゃねーの? 人間の事情は、オイラにゃ解んねーよ」
 知った事ではない、と料理用油を一気にあおるクロ。と、ここで厨房のドアが、開け放たれた。

「んぁ? 何だルイズ、どうしたんだ?」
 そこに立っていたのは、ルイズだった。後ろにはキュルケとタバサ、そしてロングビルにエレオノールまでいる。
「クロ、ミー、支度しなさい。すぐに出発するわよ!」
「出発って…」「どこに?」
つかつかと歩み寄り、人差し指を突きつけるルイズに、意味がわからないといった顔で返すクロとミー。
「土くれのフーケを捕まえに行くの、文句は言わせないわよ!」
ピクン、と耳が跳ねるクロ。
「あのデク人形か?」
「そうよ、あいつを懲らしめて、はか――」「こら、ちびルイズ!」
例え平民であれ、他言無用のワードを口にしようとしたルイズの口を、エレオノールが慌てて塞いだ。
「はか…お墓ですか?」
 あの場にいたにもかかわらず、状況を把握していないシエスタの疑問に、ルイズはひたすらに首を縦に振った。
「そ、そうお墓! あいつを懲らしめて、墓に埋めてやろうって事よ!」
何とかごまかせたようだ。だが、極めて物騒なイメージが、ルイズに付いたのは言うまでもない。

 椅子から飛び降り、口元に付いていたパンくずを舐め取るクロ。そして、ニヤリと笑った。
「きっちり礼はしとかねぇとな。行くぞミーくん!」
「え、ボクも!?」
「当たりめーだろ、ご主人様の命令なんだからよ」
そう言って、ルイズを顎で示す。ルーンの意味をまだ知らないミーは、理解が追いつかないようだ。
「ご主人様って…、ボクは承諾した覚えはないんだけどなぁ…」
首を捻りながらも、ルイズを見つめるミー。しかし、その瞳を見て、一つ頷いた。
「でも、ルイズちゃんは悪い人じゃないし、今は元の世界にも帰れないからね。ボクも手伝うよ」
 手を差し出す。その手を、ルイズは握り締めた。

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 綺麗に晴れ渡った空の下、馬車が進んでいる。馬車といっても、極めて簡素な物で、座席などはなく、乗っている者はみな、荷台に直接腰掛けていた。
 御者席には、手綱を握るロングビルと、その隣に座るエレオノール。そして荷台には、ルイズ、キュルケ、タバサと、クロ、ミーの姿がある。
 目的地は、学院から馬車で4時間程度の位置にある、森林の中の小屋。フーケ襲撃後、その場に居合わせたロングビルが即座に追跡し、フーケの居場所を探索・特定していたのだ。

「にしても、やるじゃねーかルイズ。教師連中がビビってる中で、志願するなんてよ」
 フーケ捕縛をオールド・オスマンから命じられるに至った経緯を聞いたクロは、ルイズの勇気に舌を巻いた。
「ま、まぁね! 私は貴族だもの、当然よ!」
やや声が上ずっているルイズ。そんな彼女に、キュルケとタバサは、哀れみとも同情とも取れる視線を投げかけた。

 クロとミーにはかなり美化して伝えはしたが、実際のいきさつは、こうなっている。

 宝物庫に空いた大穴だけなら、確かに勇気ある志願だっただろう。しかし、その後がまずかった。
 クロとミーの手によって、学院が見るも無残に破壊されてしまったのだ。しかも、フーケ逃亡後すぐに、エレオノールがオールド・オスマンに事の顛末を報告していた為、報告内容と実際の被害の度合いが大きく異なってしまっている。
 教師一同、エレオノールによる報告の内容と、実際の被害の食い違いに関して、あれこれ議論を交わしている。様々な意見が出たが、結局は1つの推論に収束して行きつつあった。

 ここで慌てたのが、ルイズである。襲撃事件に出くわした当事者として、キュルケ、タバサと共に呼び出しを受けたが、事態は、自分とタバサが、ミーに刻まれたルーンについて議論を重ねていた間に、劇的に悪化していたのだ。
 ルイズ自身は、朝になって部屋に戻ると、自室のドアが破壊されていた事、そしてタバサとの議論中に外がやたらと騒がしくなった事の2点で、全てを理解した。
手馴れたタバサが『サイレント』で騒音を消したが、それで議論を続行したとあっては、使い魔の管理不行き届きと言われても仕方ないだろう。
あの時間、あれだけの騒ぎを起こせるのは、他ならぬルイズの使い魔しかいないのだから。
 非常にまずい。冷や汗が止まらない。

 しかし幸いな事に、ルイズにも1つだけ、有利な点があった。それは、クロとミーによって引き起こされた被害が、魔法による物だと結論付けられつつあった事だ。
 木々の倒壊、塔や橋の破損、地面を抉る傷跡、そのいずれもが、事実、魔法でも再現可能なのだ。よってその犯人は、フーケではないにしても、誰か別の、共犯者となるメイジの仕業ではないか、との意見が強まってきている。

 ルイズは、賭けに出た。このまま議論が続けば、あるいはせっかく、どこかの誰か――存在すらしない架空の人物の手によると決められつつあるる学院大破壊が、まかり間違ってクロとミーの仕業と結論付けられるかもしれない。
そうなれば、その主犯たるクロとミーに、何かしらの厳罰が下るだろう。ならばここで取れる手は、1つしかない。それは――
「私が行きますっ! 私が、フーケを捕まえます!!」
 杖を掲げ、ルイズは強く、宣言した。力技で、この逆境を強引に乗り越える道を選んだのである。

 ルイズの志願は、ひいてはクロとミーを助ける為でもあったのだ。

「で、私は、ヴァリエールにだけいい格好はさせられないから、こうして着いて行ってるってワケよ」
 実際は、ルイズの内心を見抜き、彼女の身を案じるからこそ、自分も志願したキュルケである。
彼女も昨晩、部屋の窓ガラスを割られている為、状況を即座に看破していたのだ。
「タバサは、私たちを心配して来てくれたの…ホント、いい子よ」
キュルケはそう言いながら、本に目を落とすタバサを慈しむように、頭を撫でた。そのタバサの目が、ほんの少し、揺らいだ。
その揺らぎが何に起因するのかは、誰にも解らない。

 御者席隣に座るエレオノールも、その口であった。
 建前では、目の前で強奪された破壊のゴーレムと不可思議の箱を取り返す為、と言ってはいるが、実際は志願したルイズが、たまらなく心配なのだ。
 苛立ちを隠さず、ロングビルから話しかけづらい空気を纏っているので、御者席側は沈黙が支配している。しかし、エレオノールの心は、ルイズの身の安全、その1点に集約していた。
 ちびルイズと呼び、何かと言えばぐにぐにと頬をつねって彼女を泣かせているエレオノールだが、やはり妹は大切なのである。

「あの、ミス・ヴァリエール…」
「ん…何かしら?」
 唐突に、ロングビルが口を開いた。エレオノールの雰囲気に当てられたのか、少々怯えた様子だ。
「その、破壊のゴーレムと、不可思議の箱なんですが…」
「何も話せないわ、あれは王宮直轄の宝物。あなたが知っていい情報なんて、何もないの」
 つっけんどんに答えるエレオノール。事実、破壊のゴーレムと不可思議の箱は、アカデミーでも機密レベル最高位の代物だ。
たまたま居合わせたルイズたちには話したが、当事者でもないロングビルには、話す事など何もない。

「いえ、そうではなく…あの、どう言えばいいか…」
「…何よ、歯切れが悪いわね」
 やたらと奥歯に物が詰まったような言い方をするロングビルに、エレオノールも苛立ちをさらに募らせた。
「以前、オールド・オスマンから依頼され、宝物庫の目録を作る際に、一度破壊のゴーレムを見たのですが…」
「危機管理がなってないわね、全く…」
 アカデミーの一員であるエレオノールからすれば、宝物庫内の物品について何も知らない者を立ち入らせるなど、無用心の極みとしか思えない。
しかし過ぎた事は仕方ないと、軽く愚痴るだけで次を促す。
「あれって、『土くれ』のフーケが盗み出すほど、貴重な代物なのですか?」
「それは、ズタボロで動く気配がないからって事?」
 目で見える範囲についてなら、多少は話を合わせても大丈夫だろう。
「フーケは巨大なゴーレムを好んで使う、と聞いています。破壊のゴーレム、という名に惹かれて盗み出したのでしょうけれど、私には、多大なリスクを払う価値があるのか、解りません…」
「そうね、何も知らない者には価値なんて見出せないでしょう。だけど、アカデミーからすれば、アレは国を1つ傾かせるのも容易な何か、なのよ」
剣1振にしても、メイジと傭兵では価値が全く異なるように、と付け加える。
「つまり、あのゴーレムには、アカデミーも計りかねている、特別なポテンシャルがあるんですね?」
ほんの少し、語調が強まったロングビルを一睨みし、エレオノールは眼鏡の位置を直して、告げた。
「それ以上の詮索は、消されるわよ。私も少し、話し過ぎたわ」
「は、はい、わかりました…」

 学院を出発してから、まだ30分と経過していない。
オールド・オスマンに報告し、その後の対策や宝物庫の警備状況等について、2人で夜明かし話し合っていた為、エレオノールは昨晩、完全に徹夜していた。
 ロングビルに見えないよう、顔を背けてあくびを噛み殺し、エレオノールはまぶたを閉じた。
「少し仮眠を取らせてもらうわ。森に近づいたら、起こしてちょうだい」
「はい、解りました」
 すぐに眠ると思われたエレオノールだったが、ふと思い出したように、呟いた。
「まさか、ちびルイズの使い魔が鍵とはね…」
「え…」
漏らさず聞き取ったロングビルが、思わず聞き返そうとする。しかしそのまま、エレオノールはまどろんだ。

 肩越しに、視線を荷台に寄越すロングビル。荷台では、ルイズたちが騒いでいる。
 パッと見ではただ騒いでいるようだが、これからの目的を知り、十分な観察眼があれば、その騒ぎも、自分たちを鼓舞する為のものだと窺い知れる。
 そしてその中、クロは荷台の中央辺りで、頬杖を付いて横になっていた。かなり余裕のある態度に見える。
「あの猫ちゃんが、ね…」
視線を戻し、ロングビルは1人、唇を歪めた。

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 馬車が止まり、一同は荷台から降りた。目の前に広がるは、鬱蒼とした森林。日も高いというのに、生い茂る木々に覆われ、中はずいぶんと暗そうに見える。
「ミーくん、ケツの方頼むわ。オイラが前に出る」「ガッテン」
ガトリング砲を装着し、森の中に歩を進めるクロ。その後ろにルイズ、キュルケ、エレオノール、タバサ、ロングビルと続き、最後尾には、同じくガトリング砲を構えるミーが付いた。

 前進に邪魔な枝葉をデルフで薙ぎ払いながら、定期的にロングビルに方向を聞き、進む方向を修正する。途中で道がずれたなら、すぐにロングビルが指示し、正しい方角を指し示した。
「なぁ、相棒…。今更だけど、もっと剣らしく扱ってくんねぇかな…」
「オイラの剣じゃ、鋭すぎてうまく切り開けねーんだよ。適当に切れ味の悪いオメーの方がやりやすいんだ」
 切れ味が悪い…剣に対する評価としては、お世辞にもよいとは言えない。涙を流す事も出来ず、声だけでメソメソするデルフをよそに、5人と2匹は進んでいく。

 そして、クロとロングビルの連携の甲斐あって、森に入ってさほど時間も経過せぬ間に、一同はフーケのアジトと思われる、小屋を発見した。
「ミーくん、中の様子、解るか?」
「ちょっと待ってな、見てみるから」
 適度な高さに茂った草に全員で身を潜め、小屋の様子を伺う。外見上は特に変わった所はない。むしろ場所からするに、実に自然な佇まいだ。
中から熊のような体格の木こりが現れても、驚かないだろう。

 ミーが草むらから顔だけを出し、小屋を凝視した。複眼状になっている目の機能を熱源走査モードに切り替え、小屋の中に誰かがいないか調べる。
「うーん、誰もいないみたいだよ。もぬけの殻ってヤツだね」
続いて、小屋の周囲にも目をやり、見える範囲全てを走査する。
「周りにも、いるって言えば、ウサギとかの小動物くらいだ。人はいないみたい」
「な、何でそんな事が解るのよ、ミー?」
他人からすれば、ただ小屋と森を見渡しただけに見えるミーの行動に、ルイズが質問を投げる。
「人間の身体って、温かいでしょ? その温かさを、ボクは目で見る事が出来るんだ。どう説明すればいいのか解らないけど…」
「要は、あの小屋や森の中に、人間の温かさが見えない、って事?」
「うんうん、そう考えてもらえばいいかな」

 一度全員、草むらの奥に隠れ、車座になった。
「確認するわ、ミス・ロングビル。フーケは確かに、ここに隠れたのね?」
「は、はい、確かにこの小屋に、破壊のゴーレムらしき物を運び込む姿を目撃しました」
すぐに学院へ報告に戻ったので、その後のフーケの動きは解らない、と、エレオノールの矢のような視線に萎縮したロングビルは、か細い声で続けた。
「あなたが報告に戻る姿を見て、一度身を隠した、とも考えられるわね」
割と歯に衣着せぬ物言いをするエレオノールに、ロングビルはすっかり小さくなってしまった。

「ボロボロで、動くかどうかも怪しいゴーレムなんでしょう? だったら、使い道がないと判断して、ここに捨てて逃げた、とも考えられません?」
「今は破壊のゴーレムと、不可思議の箱を取り戻すのが、先決」
 今はフーケよりも、この場にあるのがほぼ確実な、破壊のゴーレムと不可思議の箱を取り戻したい、と提案したのはキュルケとタバサ。
「そうね、私もあの2つの無事を確かめたいもの」
この意見には、エレオノールも異論はないようだ。ルイズも頷き、直ちにメンバーの振り分けが始まった。

 小屋の偵察及び破壊のゴーレム、不可思議の箱の捜索は、キュルケ、タバサ、そしてクロの担当。
 隠れていた草むらからの周囲の見張りには、ルイズ、エレオノールのヴァリエール姉妹とミーが就いた。
 そして、小屋裏側の警戒には、ロングビルが名乗り出た。
「それじゃあ、手筈通りに。何か異常を感じたら、手遅れになる前にこの草むらに戻って来る事。いいかしら?」
エレオノールの仕切りに全員が頷いて、行動開始となった。


 小屋の前に立つキュルケ、タバサ、クロ。外観は、本当に、何の変哲もない。
「やっぱり静かねぇ…、ちょっと調べてみようかしら。タバサ、右側をお願いね」
キュルケの要請に、軽く頷いて了承を表し、杖を掲げるタバサ。キュルケも同様に杖をかざし、呪文を唱えながら振る。
その場にかけられた魔法や、魔法の痕跡を探るコモン・マジック『ディテクト・マジック』だ。
 小屋だけを探るのであれば1人でも十分だが、小屋周辺まで含めるとそれなりの広さになる為、2人で分担して探査を行った方が効率がいい。そして、
「罠はないみたい」「こっちもよ」
探査は、ほんの少しも待つ事なく、完了した。この一帯には、魔法による罠等は仕掛けられていないようだ。

「んじゃ、次はオイラの出番だな。下がってろ」
 ガシャッ、という金属音にキュルケとタバサが振り向くと、そこにはガトリング砲を構えたクロがいた。
「ちょっくらこの辺、耕すぜ」
「ちょ、ちょっとクロちゃん、それじゃ中の物まで…」
「心配すんな、アイツはガトリング程度で吹き飛ぶような、柔なボディじゃねぇ」
 少し真面目な成分を含んだクロの物言いに、キュルケとタバサは息を呑んで、クロの後ろに下がった。
ガルルルルルルルルルルルルルルルルッッッッ
 ガトリング砲が文字通り火を噴き、一瞬の間に大量に吐き出された弾丸が、小屋を、周辺の地面を、蹂躙する。
辺り一面を砂煙が覆い、その内側がどうなっているかなど、もはや判別が付かない。
「オマケにもう一発」
そしてダメ押しにと、しっぽミサイルを発射。放物線を描いて飛翔したミサイルは、ちょうど小屋のあった位置に着弾、爆発した。
 突風にも似た爆風に煽られ、霧散する砂煙の奥の風景は、先程までとは一変していた。
小屋は原形を留めないまでに崩壊し、辺りの地面もグチャグチャに荒れてしまっている。これでは、仮に中に誰かいたとしたら、目を覆いたくなるような惨劇になっていただろう。
「物理的な罠も、ねーみたいだな」
あったとしても、これで完全に破壊されただろう。

 これにはさすがに、見張りを担当していたルイズたちも、役割を忘れて飛び出して来た。
「こ、こここのバカ猫ぉっ!! こんなにグチャグチャにして、破壊のゴーレムとかが壊れちゃったらどうするのよぉ!?」
激昂したルイズが怒鳴りつけるが、クロは無言で、小屋の残骸に近づいた。
「聞いてるの、クロ!? これじゃせっかく――」
すんでのところで、言葉を呑んだ。これ以降を口にしてしまえば、使い魔の主としては最悪だ。メイジとしてでも、貴族としてでもなく、それはルイズとしての矜持と言えた。

 ふと横を見ると、キュルケと目が合った。優しい目で頷かれたルイズは急に恥ずかしくなって、あさっての方を向いた。
 そんな不器用なルイズを見て、キュルケもまた、一層優しい気持ちになった。クロを召喚した事がきっかけで、少しずつ変わってきているライバルの姿が、嬉しいのだろう。

 残骸を足で蹴飛ばしながら、小屋だった辺りを軽く見回すクロ。

 そして、見つけた。
 久しい友を。

「また会ったな、『バイス』」
 ホコリまみれになったかつての好敵手であり、友でもあるロボットの亡骸を見て、クロは感慨深げに、再会の挨拶を投げかけた。

 その瞬間、クロたちの頭上を、大きな影が覆った。



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