あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ヴァナ・ディールの使い魔-03


翌朝、目を覚ましたプリッシュは大きく伸びをしながら深呼吸をした。
この世界に来て、まず思ったことはとても空気が美味しいことであった。
プリッシュたちがついこの間までいた二柱の神々が終わらぬ闘争を繰り返すあの世界は大分荒んでおり、空気も澄んでいるとは言い難かった。
この世界の空気はとても澄んでいて、自然の恵みにあふれているであろうことが容易に想像出来た。

「さ~てと、洗濯でもするか。お~い、ルイズ!」

プリッシュは隣でクークー寝ているルイズに声を掛けた。

「ムニャムニャ…ウフフ、見なさいツェルプストー。これが私の使い魔よ。ウフフフ…」

しかし、ルイズは起きる気配が無く、口の端からだらしなく涎を垂らしながら夢の世界を楽しんでいるようであった。
プリッシュはルイズの体を軽く揺すってみるが、あまり効果が無い。

「ったく、明日教えるって言ったのは何処のどいつだよ」

プリッシュは渋い顔をする。
その時、頭の中の電球がピカッと光った。

「…そうだ!洗濯のついでにこの辺りを見て回ろう!そうすりゃ洗い場の場所も分かるし、この辺の散策も出来て正に一石二鳥って奴じゃねぇか!」

プリッシュはそう思い立つと、洗濯物を一通り抱え、急いでルイズの部屋を後にする。
寮内は基本的に生徒の部屋ばかりなので、学院内の散策は寮を出てからすることにした。
寮から出ると、プリッシュと同じように大量の洗濯物を抱えたメイド姿の少女とバッタリ顔を合わせた。
メイド姿の少女はプリッシュの顔を見るなり、青ざめてガタガタと震える。

「あ、あ、あ……」
「ん?どうしたんだ俺の顔じろじろと見て?」
「お、お、おお、お助けを!!」

メイド姿の少女は洗濯物を投げ出して、プリッシュに土下座した。
状況を飲み込めないプリッシュは戸惑いを見せる。

「な、何だよ一体?」
「え、エルフは残忍で極悪非道で平気で人間を殺すと聞きます。わ、私もその、こ、殺すのでしょうか?」
「何でだよ!!そもそも俺はエルフじゃねぇし、別にお前を殺したりなんかしねぇって!」
「え?そ、そうなんですか?」

メイド姿の少女は恐る恐る顔を上げてプリッシュの顔を見る。
改めて見るプリッシュの顔はまだ幼さが残るものの、とても見目麗しく、メイド姿の少女は思わず見惚れていた。

「何だよ?そんなじろじろ見て」
「…あ!す、すみませんでした!」
「だから、そんな畏まんなくたっていいっての。あ~あ、洗濯物までとっ散らかしちまって」

そう言うと、プリッシュはその場に散乱した洗濯物を拾い始めた。
それを見て、メイド姿の少女は慌てる。

「あ、あ、そんなこと!」
「いや、俺見てビビっちまったんだろ?なら悪いのは俺だしな」
「で、でも…」
「別にいいって。ちょっと待ってな!」

プリッシュは何かを言いかけたメイド姿の少女を余所にてきぱきと落ちている洗濯物を拾い集める。
そうして、最後の一枚を手に取った。

「よっし、これでお終いっと!」
「すみません。本来ならば私がやらなければいけないことなのに…」
「別にいいって。さっきも言ったろ?悪いのは俺なんだからさ」
「でも…」
「本当に気にすんなって。あまり気にし過ぎると、コルベールのおっさんみたいに禿げちまうぞ?」

プリッシュのこの一言にメイド姿の少女は思わず笑みをこぼす。

「クスッ。では、そのご好意、有難く受けさせて頂きます。えっと…」
「ん?俺の名前か?俺はプリッシュって言うんだ!」
「プリッシュ様…ですか」
「ああ。お前の名前は?」
「私ですか?私はシエスタと言います。この学院で貴族の皆様のお世話をさせて貰っています」
「そっか!よろしくなシエスタ!」

プリッシュはシエスタに向かって手を差し出した。
シエスタは少しだけ戸惑いを見せたが、恐る恐るプリッシュの手を取る。
それを確認すると、プリッシュはそのままシエスタの手を掴みながらブンブンと振って握手をした。

「きゃあぁ!?」
「へへっ!」

握手を終えるとプリッシュは掴んでいたシエスタの手を離す。
シエスタは少しフラフラになりながらも、プリッシュの顔を見て訊ねた。

「そ、そういえば…、プリッシュ様はここで何をしておられたんですか?」
「ん?俺はルイズに言われて洗濯しに来たんだよ」
「ルイズ…?ああ、ミス・ヴァリエールのことですか?」
「ああ、そういやあいつ確かそんな名前だったな」
「…ということは、もしかしてプリッシュ様はミス・ヴァリエールの使い魔なのでしょうか?」
「まーなー」
「そうですか。確か、ミス・ヴァリエールはエルフによく似た亜人を召喚されたとお聞きしましたが…ということはやはりプリッシュ様はエルフでは無いのですね」
「さっきからそう言ってるだろ!」
「あ、す、すみません」
「お前、さっきから謝ってばっかだなー」
「すみません!」
「ほら、まただ!」
「あ、すみま…そうですね。もう止めておきます。…ところで、プリッシュ様はお洗濯に来たと先程仰られてましたが、洗い場の場所はお分かりでしょうか?」
「いんや、散策ついでに見つけようかなって思ってたんだけどさ」
「それなら、私が洗い場までご案内しますよ」
「おっ?本当か?」
「ええ、そのくらいならばお安い御用ですよ。では、こちらです」

シエスタはそう言うと、洗い場に向かって歩き始めた。
プリッシュもその後をついて行く。
洗い場まで行く間、プリッシュはシエスタと会話を楽しんでいた。
最初の頃はプリッシュに怯えを見せていたシエスタも、この短時間ですっかりプリッシュに慣れて笑顔を見せるようになっていた。
これは、プリッシュの明るくポジティブな気質の賜物であろう。
暫く歩くと、少し古ぼけた井戸が見えた。

「あ、プリッシュ様。あそこの井戸が洗い場ですよ」
「おお、着いたか!じゃあ、早速洗うとすっか!」
「差し出がましい話ですが、ミス・ヴァリエールの洗濯物も私がついでに洗っておきしょうか?」
「え?いいのかよ?」
「はい。それが私の仕事ですし」
「そんじゃあ…悪ぃけど頼んじまっていいか?」
「ええ。任せて下さい!」

シエスタはそう言うと、服の袖を捲ってみせた。
プリッシュは手に持ったルイズの衣服をシエスタに預ける。

「じゃあ、頼むな!」

プリッシュはそう言うと、その場から駆け足で離れて行った。

(へへ、まだ時間もあるし、もうちょっとここを見て回るとするか!)

プリッシュは心の中でペロッと舌を出した。



場面は変わって、ここは学院内の図書室。
学生用の教本以外にも様々な書籍が貯蔵されている。
中には閲覧に特別な権限が必要なものもあるなど、一学院の図書室としては巨大過ぎるものであった。
昼間から夕方にかけては学院内の生徒や教師たちが利用する為、多くの人で賑わっているが、早朝ともなると殆ど人がいなくなる。

そんな朝の図書館で、一人の小柄な少女が本を読んでいた。
メガネを掛けているのと、目の覚めるような青い髪が特徴的である。
彼女は本がとても好きで、こうして時間を問わずに図書室へ来ては本を読み漁っている。
今日もそうして本を読んでいると、珍しく彼女以外に誰かが図書室へやって来た。
少女がチラッと入り口の方を見やると、そこには小柄な彼女よりも更に小柄な女性がいた。

少女は女性に見覚えがあった。
それは昨日の召喚の儀のこと。
いつも失敗ばかりの少女が喚び出した二人の内の一人であった。
特徴的な長い耳から、最初はエルフかと思われたが、その後コルベールより、よく似た別の亜人である旨が伝えられた。

少女は自分に危害さえ及ばなければ、例え彼女たちが本当にエルフだったとしても問題は無かった。
彼女たちが自分の身にかかって来る火の粉ならば払うだけである。
ただ、少女はその二人の亜人が何かとてつもない力を秘めているのではないかということを一目見た時から感じていた。
少女は本を読みながらも、彼女に対する警戒は怠ってはいなかった。

よく見ると、女性の側にはコルベールがいる。
どうやら二人で何か本を探しているようであった。

女性はこちらを一瞥した。
その時、少女の全身に悪寒が走る。
まるで蛇に睨まれた蛙であった。

(計り知れない…力)

少女は心の中でそう呟くと、読んでいた本を閉じてそのまま図書室を後にする。
少女は今日のところはあの場にいたくはなかった。



「…あの小娘。なかなか見所があるようですわね」

シャントットは思わず口の端を吊り上げる。

「どうされましたか?ミス・シャントット?」
「なあに、子猫たちの中に一匹子ライオンが迷い込んでいただけのことですわ」
「はあ…」
「取り敢えず、わたくしをここへ連れて来て下さったこと。感謝しますわ」

シャントットはそう言うと、早速本を一冊取り出した。
パラパラと捲って中身を確認した後、パタンと本を閉じる。

(…やはり、見たことの無い文字ですわね)

シャントットは誰に言うでも無く、一人ごちる。

(言葉は通じるのに、文字は伝わらない…例の召喚魔法の影響なんでしょうが、とても中途半端な能力ですわね)

そうして考えていると、コルベールが声を掛けてきた。

「ミス・シャントット、系統魔法についての本はこちらにありますよ」
「あら、有難う。あなたはこれからどうされますの?」
「私はルーンについての本を探します。少し確認したいことが出来ましたので」
「そう。その前に良ければわたくしにこの国の文字を教えて下さらないかしら?」
「ええ、構いませんよ」

こうして、コルベールはシャントットにハルケギニアの文字を教えることになった。
基本的な文字列から単語までを少しずつ教えていく。
数分後、シャントットは僅かな時間でこの世界の文字の殆どを覚えてしまった。
コルベールは思わず驚く。

「…ううむ、凄いですね。まさかこんなに早く文字を習得してしまうとは」
「あら?このくらい出来て当然でしてよ」
「いやはや、感服ですね」
「オホホホホ」

流石に図書室だったので、シャントットは声のボリュームを落としながら高笑いをした。

「では、私はこれでお役御免。ということで」
「ええ、もう結構ですわ」

コルベールは図書室の奥へと行き、シャントットは系統魔法についての本を開いた。
本を読み進めていく内に、彼女の顔に笑みが浮かぶ。

「…なるほど、これがこの世界の魔法なんですのね。特にこの『虚無』という魔法。…実に面白いですわ」

そう呟きながら、シャントットはその本を元の場所に戻し、また別の本を手に取った。
その本のタイトルは『イーヴァルディの勇者』と書いてあった。



「やっべー、色々と見て回ってたら遅くなっちまった!」

プリッシュが慌ててルイズの部屋に戻ると、まだ彼女はクークーと眠っていた。
このままだと、昼を過ぎてもまだこのまま眠っている可能性が高い。

「おい、ルイズ!起きろ!」

取り敢えず声を掛けてみたものの、起きる気配が無い。
プリッシュは実力行使へ打って出ることにした。
ルイズに掛かっている布団を引っぺがす。

「んんっ…」

少し効果はあったみたいだが、まだ完全に覚醒とはいかない。
プリッシュはルイズの体を最初の時よりも強く揺さぶった。

「起きろ!ルイズ!!」
「んんっ…!!」

ルイズの目が僅かに開く。
プリッシュは更に強く揺さぶる。

「起きろー!!」
「んん~~~~~~!?」

ルイズの頭が高速で揺れ、一気に覚醒へと至る。
それを確認すると、プリッシュは揺するのを止めた。

「お早う!ルイズ!」
「ん~~~?アンタ誰?何で私の部屋にいるの?」

ルイズは寝惚け眼で尋ねた。

「おいおい、お前が俺と博士を喚んだんだろ?その言い草はあんまりじゃねぇか?」
「ん…。ああ、そうね。確かアンタは私の使い魔だったわね」
「ったく、しっかりしろよ」
「…うるさいわね。じゃ、着替えるから着替えさせて」
「ハァ?」

ベッドから立ち上がるルイズを傍目に、プリッシュは茫然としていた。
ルイズはポケーッと突っ立って、着替えさせてくれるのを待っている。

「…早くしなさいよ」
「お前、ガキじゃねぇんだし、自分の着替えくらい自分でやれよ」
「貴族は普通は自分で着替えたりはしないものよ」
「昨日の夜は普通に着替えてたじゃねぇか。それに俺がいなかった時はどうしてたんだよ?」
「そりゃあ自分で着替えていたわよ。でも、今は使い魔がいるわ。だから、ほら、早くしなさい」

プリッシュは頭を抱えたが、取り敢えずルイズの言うことに従い、服を着せることにした。
自分で着るのは簡単だが、人に着させるのは見た目程容易ではない。
四苦八苦しながら何とか着替えを終わらせると、ルイズが不満そうな顔で言った。

「下手ね、アンタ」
「うっせぇ!じゃあ自分で着替えろ!!」

二人でそんなやり取りを行っていると、突然部屋の扉が開け放たれた。
思わず、二人同時にそちらへ視線を向ける。
そこにはプリッシュと同じような褐色の肌をした妖艶な少女が立っていた。
燃えるような真っ赤な髪が真っ先に目に入る。
ルイズと同じ格好をしているということは彼女の同級生といったところだろうか。
豊満な肢体を強調するかのように、胸の部分のボタンをわざと外している。
赤い髪の少女が大人ぶった笑みを湛えながら言った。

「あら、お取り込み中だったかしら?」
「ツェルプストー!勝手に部屋の中に入るなって前にも言ったでしょ!?」

ルイズは赤い髪の少女を睨み付けながら言った。
どうやら二人は知り合いのようであるが、折り合いはあまり良くは無いようだ。

「あら?部屋の扉にロックの魔法も掛けない人の言う台詞じゃないわね。ああ、掛けられないのだったっけ?」

赤い髪の少女は悪びれる様子もなくそう言うと、ルイズを小馬鹿にしたように笑った。
ルイズは「うぅぅ」と言葉にならない呻きを上げる。
二人の掛け合いを見て、プリッシュは何処か苛立ちみたいなのを感じ始めていた。

(…どういうことだ?俺は確かにさっきまでアイツにムカついていた筈なのに、アイツが馬鹿にされてると思ったら、急にあの赤い髪の女に腹が立って来やがった)

まるで自分のものではないみたいな感情にプリッシュは戸惑いを覚える。
それでも、あまり物事を深く考えないさっぱりとした性格の彼女は取り敢えずそのことは置いておくことにした。
赤い髪の少女はルイズを言い負かしたことに満足すると、プリッシュへ視線を向けた。
そして、上から下まで値踏みするように見つめる。

「…あなたがこの子の使い魔かしら?」
「まあ、一応な」
「ふーん。本当にエルフそっくりね。ルイズにしちゃ上出来じゃない。…ああ、紹介が遅れたわね。私はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。キュルケと呼んで結構よ」
「そっか!俺はプリッシュだ!よろしくな、キュルケ!」
「あら、あなた女の子なのに、まるで男みたいな喋り方なのね。見た目はとても可愛らしいんだから、もっとおしとやかにしてみたら?きっと男子が放って置かないわよ」
「別に興味ねぇなあ…」

プリッシュがその長い耳をほじりながら言うと、キュルケはアハハと笑った。
その様子を見ていたルイズが苛立ちを隠さずにプリッシュへ声を掛ける。

「プリッシュ!その女と仲良くするのは止めなさい!」
「え?何でだよ?意味分からねぇんだけど」
「何でもよ!アンタも用がないならとっとと出て行って!」
「ああ、そうそう。忘れてたわ」

キュルケは思い出したように言うと、首を横へ向けた。

「…私も昨日使い魔を召喚したのよ。誰かさんと違って一発でね。おいで、フレイム」

キュルケが呼ぶと、すぐに彼女の側へ虎くらいの大きさの蜥蜴が現れた。
尻尾に燃え盛る炎を灯している。

「も、モンスター!?」
「違うわよ。火竜山脈のサラマンダーよ。どうせ使い魔にするなら、こういうのがいいわよね~。フレイム!」
「…あっそう」
「素敵でしょ。あたしの系統とも相性ぴったりだし」
「ああ、アンタ確か火の系統だっけ?」
「ええ、そうよ」

キュルケはそう言って、フレイムの頭を撫でる。
フレイムは気持ち良さそうな顔でキュルケに頭を擦り付けていた。

「そいつ、人を襲ったりしねぇのか?」

プリッシュが尋ねると、キュルケがこくりと頷く。

「平気よ。私が命令しない限りは勝手に人を襲ったりすることは無いわ。それより見て、この尻尾の美しさ!好事家に見せたら値段なんかつかないわよ?」
「それで何?アンタ使い魔の自慢しに来たわけ?」
「まあ、それもあるけど、あなたが喚んだ使い魔にも興味があってね。それで来たってわけ。でも、一目見られて満足だわ。それじゃあね。バーイ」

そう言うと、キュルケはさっさとルイズの部屋から出て行った。
キュルケの姿が見えなくなるなり、ルイズは地団太を踏んで悔しがる。

「くやしー!何なのあの女!自分がサラマンダーを召喚できたからって!ああもう!」
「そんな悔しがんなって。俺と博士を喚んだお前の方が凄いんだぜ?」
「…確かに亜人は珍しいけどね、やっぱりドラゴンとかグリフォンとかそっちの方が良かったわよ。見栄えもいいしね」
「ドラゴンもグリフォンも俺はやっつけたことあるけどなあ」
「寝言は寝てから言いなさい!!」

ルイズはそう言い放つと、ヅカヅカと部屋を出て行った。
プリッシュは不服そうな顔をするも、すぐに気を取り直してルイズの後を追った。


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