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ヴァナ・ディールの使い魔-02


プリッシュがルイズの使い魔となったその日、コルベールは学院内に一つの告知をした。
それはルイズが喚び出したのはエルフでは無く、よく似た別の亜人であるというものであった。
元々ルイズに対する他の生徒たちの評価は低く、未だに系統魔法を使えない彼女を『ゼロのルイズ』と揶揄していた彼らはその告知をあっさりと受け入れた。
エルフはいくら忌み嫌われているとは言え、その能力自体は計り知れない。
中には、一国の小隊が十倍もの戦力差でエルフに挑んだが、辛くも引き分けたという話もある。
そんなエルフをゼロのルイズが喚び出したというなら、『メイジの実力を見るなら使い魔を見ろ』という言葉があるこのハルケギニアにおいて、彼女の実力もそれ相応ということになる。
それを認めるよりは、彼女が喚び出した使い魔はエルフとよく似た亜人だったという方が彼らにとっては納得のいく話であった。

プリッシュとシャントットはルイズの部屋へ行く為、女子寮へと向かっていた。
何時の間にか日は沈み、空には月が浮かび、淡く優しい光で夜闇を照らしている。
それを見上げたプリッシュは改めてここが異世界だということを認識する。

(月が…二つかよ!)

空に浮かぶ月は確かに二つあった。
シャントットはプリッシュの隣で興味深そうにそれを見ている。

「ちょっとアンタたち!何ボーッと突っ立ってるのよ!」

振り向いたルイズがカリカリした様子で、月を見上げる二人に声を掛ける。

「月なんか別に珍しくも無いでしょ!」
「あ、いや、だって月が二つあるんだぜ?驚くだろ普通」
「月が二つあるのは当たり前じゃない!」

当然だと言わんばかりにルイズが言うと、シャントットが「オホホホホ」と笑う。

「プリッシュ、これは一本取られましたわね。月が二つあるのは当たり前。この世界の常識なのでしょう」

一頻り笑った後、シャントットは踵を返した。
それを見て、プリッシュが尋ねる。

「ん?何処行くんだ博士?」
「…わたくしは使い魔じゃありませんわ。だからその娘の部屋に行く義理もありませんの」

シャントットがそう言うと、ルイズは言った。

「まあ、確かにそうだけど…部屋も狭い訳じゃないし、アンタ一人くらいなら別にいたって構わないわよ。アンタちっちゃいから場所を取らないと思うし」
「娘…。あなたも淑女なら口の聞き方に気を付けなさい。あと、見た目で判断するのは一番愚かなことですのよ?」
「フン、何よ偉そうに」

ルイズはつっけんどんに言い放った。
プリッシュはそんなルイズの一言一言に戦々恐々であった。
知らないとは言え、シャントット相手に強烈な地雷原のド真ん中を歩くルイズは良くも悪くも大物然としていた。

「でもよぉ、そしたら博士は一体何処で寝るつもりなんだ?まさか野宿なんかするわけねぇだろうし」
「当てがありますの」
「当て?」

プリッシュもシャントットもこの世界にやって来てから、まだそれ程時間が経っていない。
出会った人物も限られる以上、目の前のルイズ以外で当てと言われて浮かぶのはただ一人しかいない。

「もしかして、コルベールのおっさんのところか?」
「さあ?どうでしょう?」

そう言うと、シャントットはそのまま二人の元から離れて行った。
シャントットの背中を見つめながらルイズが口を開く。

「あのシャントットとかいう子、コルベール先生のいる場所が分かるのかしら?」
「博士なら大丈夫だろ…。ってか、博士をあまり子供扱いするのは止めた方がいいぜ。死にたくなかったらな。かといって、オバさん扱いはもっとダメだかんな!」

自分のことを棚に上げてプリッシュは言った。
シャントットは見た目こそ小さい子供そのものだが、タルタルは種族的に老いも若きもそういう外見をしているのである。
更に彼女はヴァナ・ディールでも生きながらにして伝説と謳われる存在である。
そこから察すれば、彼女の実年齢については容易に想像出来るであろう。
ちなみにプリッシュもとある理由から外見と実年齢に開きがあるのだが、それはまた別の話。
そんなことは思いもよらないルイズにとって、シャントットは見た目通りの子供でしかなかった。
それ故にプリッシュの言葉を話半分で右から左に聞き流していた。

「…下らないこと言ってないでアンタは私について来なさい!」
「へー、へー」

プリッシュのやる気のない返事にルイズは少しカチンと来たが、取り敢えずは自分の部屋への案内が先と歩を進める。
二人で女子寮内へ入ると、真っ直ぐルイズの部屋へと向かって行った。
道中、プリッシュは寮内の散策をしたくてウズウズしていたが、先程シャントットに釘を刺されたこともあって、大人しくルイズの後を追っていた。
やがて、一つの部屋の前でルイズの足が止まった。

「ここが私の部屋よ」

ルイズは鍵を取り出し、錠を外すと扉を開いた。
中は思っていたよりも広く、二人で住むには十分であった。
また、室内には素人目でも上等だと分かるような家具が一通り揃えられている。

「へー、随分いい部屋なんだな!」
「貴族たるもの、このくらいは当然よ」

プリッシュが素直に感心すると、ルイズは当たり前のように言ってのけた。

「あ、でもベットが一つしかねぇな。俺は何処で寝ればいいんだ?」
「そこよ」

プリッシュはルイズが指差した方を見る。
そこは部屋の片隅で、藁のようなものが積み重ねられているだけであった。
これにはプリッシュも流石に怒りを露わにする。

「おい!いくら何でもこれはねぇだろ!俺は犬や猫じゃねぇんだぞ!!」
「しょうがないじゃない!まさか人が喚び出されるなんて思わなかったんだもの!」
「これなら外で野宿した方がマシだぜ!」
「…近い内にアンタ用の寝具を取り寄せるから、暫くは私のところで寝なさい」

そう言うと、ルイズは天蓋付きの豪奢なベッドに腰掛け、シーツをポンポンと叩いた。

「いいのか?」
「別にいいわよ。いくら亜人でも、女の子をそんなところに寝かすのは流石に悪いと思うし」
「お前、実は結構いいところあんだな!」

プリッシュがそう誉めると、ルイズは頬を少しだけ紅潮させた。

「ふ、フン!使い魔の管理も主人の務めだから当然のことよ!…それよりも」

ルイズはコホンと小さく咳払いする。

「プリッシュ…だったっけ?アンタは今日から使い魔として私に仕えてもらうわよ。いいわね?」
「俺はあまり乗り気じゃねぇが…博士に言いつけられたことだし、取り敢えずはお前に従うよ」
「ちょっと引っ掛かる言い方だけど、まあいいわ。それじゃあ使い魔について説明するけど、いい?」
「ああ!」
「それじゃあ、まず最初に使い魔には主人の目となり耳となる能力が与えられるの。要するにアンタの見ているものや聞こえる音が私にも見えたり聞こえたりするわけ。その逆もまた然りね」
「へー、つまり感覚の共有って奴か。でも、俺は全然何も見えねぇし何も聞こえねぇけどなあ」
「そうね、私も同じよ」

ルイズは少し落胆したように言ったが、すぐに気を取り直して説明を続ける。

「…次に使い魔は主人の望むものを見つけることが出来るの。例えば秘薬の材料になる植物や鉱物とかね。アンタは出来るの?」
「う~ん、色んなとこ冒険して来たからそれなりに植物や鉱物には詳しいつもりだけど、この辺の地理は全然分かんねぇからなぁ…」
「そう。まあ、その辺は追々覚えてくれればいいわ。それで、最後に一番重要なことだけど、使い魔は主人の身をその命に代えても守らなければならないの。…でも、アンタ強そうには見えないわね」
「そうやって見た目で判断するのは愚かなことだーって博士も言ってただろ?それに、俺は結構強いぜ!」

プリッシュは拳をグッと握ってみせる。
しかし、彼女の心意気はルイズにはあまり伝わっていないようであった。

「…まあ、一応亜人なわけだし少しは期待しておくとするわ」
「何だよー!…ったく、感じ悪いなあ」
「さっきから気になってたんだけど、アンタ一応女の子なんだからそのがさつな言葉遣いは直せないの?一緒にいる私の品位まで疑われるんだけど」
「んなこと言ったって、元々こういう口調なんだから仕方ねぇだろ。それに、言葉遣いならお前も大して変わんねぇよ」
「何ですって!?」
「ほらな!」

プリッシュは激昂したルイズを指差した。
ルイズは眉を顰めながらも、取り敢えず自分を落ち着かせる。
そして、改めてプリッシュへ向き直ると、突然今着ている服を脱ぎ始めた。
このルイズの行動にプリッシュは頭の中にクエスチョンマークを浮かべる。

「…お前、何してんだ?」
「見て分からない?着替えよ」

そう言ってルイズは寝巻きに着替えると、脱いだ衣服をプリッシュへ渡した。

「はい、これ洗濯お願いね」
「ハァ?何で俺が?」
「主人の身の回りのお世話も使い魔の仕事の一つよ。アンタにはこれから先も色々と雑用とかやって貰うつもりだけど、文句は無いわよね」
「ある!あるに決まってんだろ!!大体、洗い場のあるところなんか俺は知らねぇぞ!!」
「ふぁ~あ…それは明日また改めて教えてあげるわ」

ルイズは可愛らしい欠伸をすると、少し閉じかけた目を擦りながらベッドの中へ入り、指をパチリと鳴らした。
すると、部屋の明かりがフッと消え、室内がぼんやりとした闇に包まれる。

「ほら、早く布団の中に入って寝なさい」

そう言って、ルイズはプリッシュを手招きする。

「明日から色々と忙しくなるんだ…し…きょう…の…ところ…は…」

ルイズは言い終わるか終わらないかの内に完全に目を閉じて、寝息をたて始めた。
どうやら、寝付きがとてもいいらしく、もう眠ってしまったようである。
プリッシュはため息を一つだけ吐くと、ベッドの中に入り込んだ。
こうして、プリッシュたちがハルケギニアへ来た最初の一日が終わりを告げたのであった。



時間は少し遡って。

コルベールの研究室。
研究室とは名ばかりの汚い小屋ではあったが、当の本人は満足そうにその中で様々な研究を行っていた。
この日もコルベールは新たな発明品の起動実験を行っていた。

「う~む、ここはもう少しこうした方がいいのか。いや、ここをもっとこういう風に…」

そんな風に自分の世界へ入り、実験を繰り返しては悦に浸っていた。

「むむ、まだダメなのか。一体どうすれば…」
「そこはこうすればよろしいですわよ」
「おお!なるほど、確かに…って、え?」

コルベールが振り返ると、そこにはシャントットが当たり前のようにそこにいた。
その姿を目の当たりにして、コルベールは思わずひっくり返る。

「ミ、ミ、ミス・シャントット!!一体どうしてここへ!?」
「あら?わたくしがここにいては何か不都合なのかしら?」
「い、いえ、そういうわけでは…」

しどろもどろになりながらコルベールは答えると、シャントットは「オホホホホ!」と笑った。

「大丈夫、安心なさい。取って食べたりなどいたしませんわ。それにわたくし、あなたを少し気に入っていますの」
「え?わ、私をですか?」
「ええ。あなた、わたくしと同じですわね?」
「?意味が分かりかねますが」
「わたくし、こう見えても軍人でしたの」
「!!」

コルベールは『軍人』という言葉に顔を曇らせる。
それを見て取ったのか、シャントットはそれ以上は言及しなかった。

「…まあ、あなたとは色々お話したいこととかもありますの。わたくしと暫くの間、お付き合い願ってもよろしいかしら?」
「それは別に構いません。寧ろ、あなたが誘わなければ自分から誘っていましたよ」

聞いたことの無い種族。
それはコルベールの探究心と知的好奇心をいたく刺激した。
そんな彼女たちの内一人がわざわざ自分から出向いて来たのだ。
断る理由は無かった。

「では、立ち話もなんですので…どうぞどうぞ」

そう言ってコルベールはシャントットを連れ、研究室の奥へと消えて行った。


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