あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ルイズと無重力巫女さん-41




「誰も名乗り上げないのなら、私が動かしてみても良いんだろ?」

コルベールの失言(?)によって沈黙しようとしていた教室に、魔理沙の声が響いた。
物怖じせずハッキリとしたその言い方には、好奇心という名の香辛料が多目に入っている。
その香辛料は困ったことに一部の人間に対しては非常に厄介な代物で、一度嗅げば虜になってしまう。
魔理沙もまたその香辛料の魅惑に夢中な種の人間であり、コルベールもまたその種の人間であった。

一方の生徒達は、重く冷たい沈黙を薄い紙切れのように容易く千切った突然の干渉者に呆然としていた。
ある者は声の主に目を丸くし、またある者はその姿を見て頬を赤らめている。


魔理沙が食堂で゛ルイズの命を助けた恩人゛として学院長に紹介されてから、五日が経つ。
それからというものの、魔理沙は給士や魔法学院の生徒達に話し掛けられた。
娯楽の塊とも言える街から遠く離れ、限られた娯楽しかない此所では彼女のような人間が非常に珍しいのだ。
魔理沙の方も満更でもなかったようで、色んな人間と話を交えてきた。

故郷の話やどうやってルイズと出会ったか、どんな所を旅してきたのかと色々と聞かれていた。
その様な質問に対して魔理沙は面白可笑しく、幻想郷での実体験を巧妙に混ぜた嘘九割と事実一割の体験談を話していた。
時折違和感を感じてしまう話もあったが、話を聞いている方はまぁ気のせいかと思いつつも聞いていた。

無論誰もが好意を持って接して来たわけではなく、一部の者たちからは嫌悪の目で見られている。
それでも何人かは魔理沙にちょっとした興味を持ち、この教室に来る前も女子生徒の何人かが彼女に挨拶をしていた。

紅白とは全く違い、人を好み人に好かれる白黒はルイズを中心にしていつの間にか、人の輪を広げていたのである。


「……何だ?もしかして今は喋っちゃダメだったのか?」
「あっ…いえ、別にそういうワケでは…というより、先程の言葉は…」
自分が口を開いても沈黙を保っている事に魔理沙は気まずそうで、どこか笑っているような表情を浮かべながら言った。
その言葉にコルベールがハッとした表情を浮かべると魔理沙が言っていた言葉を思い出し、僅かながら微笑む。
魔理沙もそれに答えるかのように満面の笑みを浮かべると、今まで頭に被っていた黒い帽子をとった。
「あぁ、ちょいと先生の作ったソレが気になるからな。誰も動かす気が無いのなら私が動かしたいなーと思ってね」

まるで陽の光とも呼べる程に輝く麦畑の如き金髪がサラサラと揺れ、窓から漏れる光に反射して煌びやかに輝く。
それと魔理沙本人のニヒルな雰囲気が若干僅かに漂う笑顔が、とても似合っている。
頭を後ろに向けてそれを見ていた生徒達の一部が、ほぅ…と溜め息をついた。
その時、教室の一角からガタンッ!と激しい物音が教室にいる者達の耳に聞こえた。
一体何かと思い、魔理沙やコルベールを含めた何人かがそちらの方へ視線を移すと…
そこにいたのは、ムッとした表情を浮かべたルイズか席を立っていた。
鳶色の瞳はキッと、笑みを浮かべた魔理沙の方を睨み付けている。

「おぉルイズか。どうした、トイレにでも行きたいのか?」
相手がルイズだということもあってか、魔理沙はそんなルイズの態度に臆することなく手を軽く振って言った。
その言葉を聞いて何が面白かったのだろうか、生徒達の間からクスクスと小さな笑い声が聞こえてくる。
しかしその瞬間、魔理沙の方に向いていたルイズの視線が笑い声の聞こえた方へ素早く向くと、それが一気に止んだ。
笑い声が聞こえなくなった事を確認し、席を立ったルイズはズカズカと魔理沙の方へ向かって歩き出した。

「おいおいなんだよ…私に何か話でもあるのか」
「えぇそうよ。アンタが忘れてる大事なことを思い出させるために一度教室を出ましょう」
はっきりと怒気を含ませながらも、それでいて穏やかな喋り方に魔理沙は嫌な気配を感じた。
それは教師でもあるコルベールも感じ取ったのか、「教室を出る」と言ったルイズを制止しようとする。

「ま、待ちなさいミス・ヴァリエール。今はまだ授業の途中ですし、それにミス・マリサが私の装置を…」
「そうだぜ?あんな面白そうなものが目の前にあるのに動かさないというのは……って、イタタタタタァッ!」
「いいからっ!…さっさとついて来なさい!」
何か言おうとした魔理沙の耳を引っ掴み、ルイズは彼女を連れてズカズカと教室を出て行った。
バタン!とかなり強い音を立ててドアが閉まった後、教室にいた者達は何も言えずにいた。

「…霧雨のち落雷」
今まで目を離さず教科書を読むのに没頭していたタバサがポツリ、と呟いた。


ヴェストリの広場に、緩く冷たい風が吹いている。
その風は芝生を揺らして小さな大地の波打ちを作り、それに続いてサラサラと小さな音が聞こえてくる。
さながらそれは、緩やかな波打ち際で行われる小さなコンサートである。
楽器はないが姿無き奏者達は音を作り、その音に相応しい小さな波は生命の青ではなく大地の緑。
そして何よりも、このコンサートのメインは゛一人の少女゛であった。
少女といっても名のある家が出身の、貴族令嬢ではない。

その少女は周囲の風景とは相性の悪い白と黒を基調としたドレスを着ていた。
しかもそれは淑女が着るような華やかなモノではなく、それ等の人種を奉仕するための者達が着るドレスだ。
黒髪の頭につけた白いヘッドドレスも質素だが、通常の市場などでは割と高めのものである。
履いているロングブーツも踊りに適したそれではなく、作業用のものだ。
こうして一見すれば、踊り場で仕事をする踊り子ではなく、観客席でトレイを持って仕事をする給士だ。
しかし彼女は美少女として相応しい゛体゛を持っていた。

傷一つ無いとは言えないが、白い肌は珠のように輝きツヤを持っていた。
僅か笑みを浮かべている村娘特有の素朴な顔つきは、名家出身の貴族令嬢とはまた違う素晴らしさがある。
そして長めのボブカットにした黒髪と同じ色の瞳の奥に映るのは、自身の両手で掲げた大事な大事な゛思い出゛だ。

自分たちと一緒に暮らし―

喜怒哀楽を分かち合って食卓を共にし――――

横に並んで畑を耕し、井戸から湧く冷たい水をのんで――

自分たちの知らない不思議なことを沢山教えてくれて――死んでいった家族がくれた、大事なプレゼント。

「……お爺ちゃん」
少女――シエスタはポツリと呟いた後、その顔からフッと笑みが消えた。
代わりに浮かんできたのはにわか雨のような、悲しみの表情。
まるでもう存在しない故郷を思うかのような、抗いようがない不可視の感情。

そんな時、ここにいないと思っていた者の何気無い一声が、その悲しみを打ち消した。
「…初めて見るわね。アンタのそんな表情」
「えっ?」

まるで人の心境など全く理解していないような感情の篭もっていない声。
その声に酷く聞き覚えのあるシエスタは、声のした方へと振り向いた。
案の定そこにいたのは、少し離れたところで横になっていたルイズの使い魔、霊夢であった。
「……あ、レイムさん」
まさかまさかの予期せぬ人物の登場に、シエスタは呆気にとられた表情を浮かべてしまう。
霊夢はそれに左手を軽く振って答え、よっこらしょと立ち上がるとシエスタの方へと近寄った。
一方のシエスタは、何でここに彼女がいるのかイマイチわからず、その疑問を口に出す。
「なんでレイムさんがこんなところに?ミス・ヴァリエールと一緒に授業では…」
「あぁ、それなら黒白の居候さんがついていったわ。私はああいうのに興味ないしね」
シエスタの傍にやってきた霊夢はそう言うとふぁ~と大きな欠伸をかまし、空を見上げた。
霊夢の動きにつられたのか、シエスタも空を見上げてしまう。
二人して青空を眺めて数秒、ふと霊夢が口を開いた。
「布…」
「え?布がどうしたんですか」
「あんたの手に持ってるその布…随分と素敵な思い出らしいわね」

そこまで言われたシエスタは先程の様子が見られた事に気づき、顔を赤くした。
未だ手に持っているその布をさっとポケットにしまうと、モゴモゴと何か言い始める。
「あ…あの、これは…」
「いいわよいいわよ。別に私はアンタの素性は知りたくもないし知ろうとすることもないから」
霊夢が軽い感じでそう言った時、ふと誰かが声を掛けてきた。

「シエスター!何してるのよそんなところで。戻らないと学院のお坊っちゃま達にイヤミを言われるわよー!」
若い、瑞々しい少女の声に霊夢が振り返ると、そこには洗濯籠を抱えた一人の給士がいた。
彼女の持っている籠にはズボンがこんもりと入っている。恐らく男子生徒達の服なのであろう。
「ご、ごめんメアリー!すぐ行くから待ってて!!」
ハッとした表情を浮かべたシエスタはメアリーと呼ばれた給士の言葉に返事をすると急いで足下の洗濯籠を抱えた。
流石給士とも言うべきか、その動きにはあまり無駄が無く、少し洗練された感じが伺える。

洗濯籠を抱えたシエスタは霊夢の方に向き直るとペコリと小さくお辞儀した後、仲間のいる方へと走っていった。
その様子を黙って眺めていた霊夢は小さく溜め息をついた。
「やれやれ…仕事の合間にするほど、大切な事だったのね…」
もはや霊夢の言葉を聞く者はおらず、それは一陣の風に乗って空へと消えていく。

初夏の訪れを感じさせる青空は、いつにも増して綺麗な青色であった。


ガリア王国宮殿 グラン・トロワ 執務室

カーテンが音を立てて全て下ろされ、明かりの消えた執務室。

その部屋にある大きな回転椅子に一人の男が腰掛け、その横にお供の女が佇み、デスクの上に小さなモノクルを置いた。
一見すれば新品とも思えるモノクルは数秒おいた後、レンズの部分からパッと光が灯った。
光はビーム状から歪に動き始めて形を成して行き、やがて一人の少女と一匹の異形とで別れた。
異形の外見は人の体を基に、昆虫の各部位を繋げたかのようなおぞましい姿をしていた。
対する少女は紅白を基調とした異国情緒漂う服を着こなし、頭には大きな赤いリボンを着けている。
左手には杖と思われる長い棒を持っており、右手には何かの文字が書かれた紙を数枚握っていた。
「よし、再生しろ」

貫禄のある、男の声をスタートにして小さな少女と異形の戦いが始まった。
異形が爪を振り回し、少女は華麗に避けながら右手に持って紙と針で巧みに攻撃している。
一人と一匹を写した立体映像はヌルヌルと動いてはいるものの音声などは一切無く、まるで音楽とセリフが無い演劇のようだ。
お供である女はジッと厳しい眼でその戦いを眺めてはいるが、男はそれとは真逆に喜びで満ちあふれた表情を浮かべている。
まるで楽しみにしていた週末の人形活劇を観に行くかのような、何処か子供らしさが含まれたものがあった。

数分後…

少女と異形の戦いは、体を粉砕されても尚抵抗しようとした異形が少女に残った頭を破壊されたことで終了した。
そこでこのモノクルに収められた映像は終わりなのか、小さな少女の体が不自然に止まる。
やがて一人の少女と粉々になった異形は再び歪に動き始め、やがて一つの光となってモノクルのレンズに戻っていった。

お供の女がモノクルを素早く回収するとパチン、と勢いよく指を鳴らし、カーテンを上げさせた。
「アレを難なく倒すとは…やはり余が目を付けただけのことはある!」
カーテンが上げられ陽の光が部屋に入ってくると、男――ジョゼフは゛戦いの記録゛を映した映像の感想を述べた。
お供の女性――シェフィールドは男の言葉を聞いてその顔にうっすらと笑みを浮かべた。
「お褒めのお言葉を頂き、誠に感謝致しますわ。ジョゼフ様」
「よいよい!余とて長い長いゲームの合間にこのようなミニゲームが欲しかったところだしな」
ジョゼフは手を振ってそう答えるとおもむろにデスクの引き出しを開き、中から一体の人形を取り出した。

それは木から作られた精巧な人形で、人間の形を模している。
間接も人間と同じような作りをしており、ある程度難しいポーズを取らせることも可能だ。
最近ではこのような人形をリュティスの市民達はモデルドールと呼び、時折絵のモデル代わりに使っているらしい。
だがこの人形はモデルドールの形をしているものの本物のモデルドールではなく、どの人形よりも厄介な人形であった。

ジョゼフが手に取った人形は古の時代に作られ、今も尚作り続けられている代物。
人の血を元にしてその人へと姿を変え、あまつさえ性格や能力さえも寸分違わず写す人形。
その人形は人々からこう呼ばれ続けている。「スキルニル」と―――

「一つ聞くぞ、余のミューズよ。サン・マロンで行われている゛複製実験゛――どの段階にまで達している?」
スキルニルを手に持ったジョゼフの笑顔は、先程とは打って変わって不敵なものとなった。
その言葉を聞いたシェフィールドの顔から瞬時に笑みが消え、真剣なものへと変貌する。
「はい。今現在は索敵能力を備えつけているとの事ですが…そこで問題が発生しているようです」
シェフィールドは喋りながらもデスクに置かれていた一枚の書類を手に取り、それをジョゼフに手渡した。
ジョゼフはそれを流し読みしつつ、シェフィールドの言葉にしっかりと耳を傾けている。
「学者達によれば元の人格による影響とも言われており。各個体の感情抑制に着手しているとのこと。
  このまま研究が進んで次のステップである試験的な実戦投入は…恐らく来年の春頃になるかと」

シェフィールドの報告を聞いたジョゼフは髪と同じ色をした顎髭をさすりながら口を開く。
「下級貴族共に配る給付金を下げて…各地域の税を上げて予算と人員を今の二倍上げてやろう。「降臨祭」までに完成させる為にもな」
ジョゼフの口から出た言葉は、聞く者が聞いたら口から泡を吹き出すものであった。
幸いにも、シェフィールドはその手の人種ではなく、むしろそんな事など気にもしていないと言いたげな表情を浮かべている。
何も言ってこないシェフィールドを見て、ジョゼフの口元が緩んだ。

「そうですか。…では、私はこれからアルビオンの方へと戻って゛親善訪問゛の準備に入ります」
「頼んだぞ余のミューズよ。…これから先の展開でこのゲーム、最高の余興となるであろう」
ジョゼフの顔に浮かんだ笑みはとても子供らしく、大国の王とはとても思えぬほど無垢なものだ。
だがその笑顔は、彼の前にいるシェフィールドを含めた女達には人気があった。
「我が主の為ならこのシェフィールド。此度の余興を最高の物に仕上げましょう」
恭しく頭を下げたシェフィールドを見てニコニコとしながら、ジョゼフは再読地を開く。

「…それと、我が姪に伝えておけ。「これからも目標の監視を続行せよ」…とな」
「了解致しました。ではこれにて…」
シェフィールドは最後にもう一度頭を下げた後、執務室を後にした。
それを見届けたジョゼフは、片手に持っていた書類をパッと天井に放った。
彼の手から離れた書類は見えない空気の波に乗るかのようにヒラヒラと空中でゆれ、やがて接客用のソファの上に着地した。
だが書類にはもう目もくれていないのか、ジョゼフは「さてと」と呟いてドカッと音を立てて椅子に座った。

後に残ったのはジョゼフただ一人、今の執務室にはその他に誰もいない。
だが彼…ジョゼフにとっては゛他人゛という存在はあまり好ましい存在ではなかった。
幼い頃から途方もない疎外感に苛まれた彼は、孤独という物に慣れすぎていたのである。
゛孤独゛という概念に慣れすぎた人間は、取り返しの付かないくらいに他人という存在に過剰な反応を見せてしまう。
ある者は長年の孤独に耐えきれず、寄ってきた他人に依存し、またある者はすれ違っただけで睨まれた!…と錯覚する。
そしてある者は、他人という存在を゛自分が生きていくうえで必要な駒゛と見下す。正にこの男がそうであった。

「余にとって…他人とは暇つぶしの相手に過ぎん」
ジョゼフは手に持ったスキルニルの間接の節々を弄くりながら、呟く。
弄くられるたびに間接がカチャカチャと小刻みに音を立てる。

「子供の頃に遊んだ着せ替え人形や積み木、絵本と同じだ。何の感情も湧かん」
スキルニルを弄くっていた手がピタリと動きを止め、スキルニルがデスクの上に置かれる。
そして背後の大きな観音開きの窓から見える青空を見上げた。

「しかし…そんな存在である゛他人゛の貴様が、何故オレと同じ眼の色をしているんだ?――ハクレイの巫女よ」
そう呟いたジョゼフの瞳には、喜びの色が垣間見えた。
まるで見たこと聞いたこともない玩具を手に取ったかのような、そんな色をしていた。




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