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ゼロのしもべ外伝-1

 ガリアの首都リュティスから500リーグほど南東に下った山間に、サビエラという村がある。
 人口三百数十人。特産物も名物もなにもない、どこにでもある田舎の寒村である。
 この村に吸血鬼騒ぎが起こったのは、3ヶ月ほど前のことである。12歳になる少女が、森の入り口で死体となって発見された。体中
の血が消えうせ、ミイラか干物のようになっていたのだ。
 首筋にあった二つの傷痕から吸血鬼の仕業と判断されたこの事件を解決すべく、ガリア政府は北花壇から1人の騎士を呼んだ。
 その名は…

 森の中、少女が息を切らして村へと続く道を駆けていた。
 「はあ、はあ、はあ」と荒い息が、夕暮れの森に響く
 少女は後悔していた。戦力を見誤った。己の中の本能を過小評価しすぎた。
『直感を信じて、逃げていればよかったのだ―――。』
 だが今更どうにもならない。
 野生において重要なのは、自分と相手の格を理解することだ。多くの生き物がそうやって生きている。
 相手が自分よりも強ければ逃げ出す。弱ければ戦う。互角ならば手を引いて、無駄な争いを避ける。
 それは大自然の掟だ。破るものがいれば、容赦なく罰が降りかかる。
「だからくれぐれも、我々はその掟を破ってはならない。」
 死に別れた両親の言葉を思い出す。両親は自分の目の前でメイジに焼き殺された。思えば、逃げなかったのはメイジに対する憎しみ
があったからかもしれない。憎しみが、逃げるべきだという本能を無視させた。戦力を測る目を曇らせた。
 その報いが、今、自分に帰ってこようとしていた。
 途中までは上手く行っていたのだ。派遣されて来た騎士を、上手い具合に森の中へ誘い出した。ここで隙を見て杖を奪い取り、
無力化したメイジからゆっくり血を吸い取ればいい。
 そして作戦は成功した。騎士は杖を手から離し、無防備に自分へと背中を向けていた。ああ、それなのに―――

ヒュインッ

 と、飛んできた何かが少女の足元へ突き刺さる。その途端、少女は両足が硬直し、もんどり打って地面に倒れこんだ。
 地面に跳んできた何かが刺さっていた。奇妙な形をしたナイフだ。諸刃で、尻尾のように布切れがついている。
 それが影に突き刺さっている。ちょうど硬直した足の部分だ。
 それを引き抜こうと、身をよじって匍匐前進をする。足の部分はピクリとも動かない。
 そしてもう少しでナイフに手が届こうというとき、伸ばした腕に剣が突き刺さった。
「ぎゃあー!」
 外見からは信じられない、獣のような叫び声。開いた口からは牙が2本覗いている。
「どうした。ご大層なことを言っていたわりには、ずいぶん無様な姿ではないか。」
 凍りつくような冷たい声。その声に、思わず少女は後ずさる。
「な、なに?なにをしたの?なぜ足が動かないの?」
 この騎士は、メイジではないというのだろうか。杖を取り上げても、意に介することなく魔法を使ってくる。
 獲物を手に入れ浮かれていた自分へ、騎士は容赦なく攻撃を行ってきた。皮膚を焼かれ、肉を刻まれ、骨を砕かれた。吸血鬼でな
ければとうの昔に絶命していてもおかしくない。いや、隙を見て逃げ出したもののこのままでは遅かれ早かれ死ぬことは間違いない。
「魔法?あなたも先住魔法が使えるの?わたしたちの仲間なの?なら助けて。わたしは人間しか襲わない。」
 必死に懇願する少女。杖を持たず、さまざまな魔法を使う騎士が歩を止めた。
 奇妙な服を着た男だ。全身黒尽くめで、片刃の杖を背負っている。いや、杖ではなく剣だ。見たことのない種類の剣であったため、
少女は最初に杖と勘違いをしたのだ。
 その男は、真っ赤な仮面をはめていた。そして赤いマフラーをたなびかせていた。
 すずしい目がマスクの間から少女を見ている。そんな様子を見て脈ありと判断したのだろう。少女が甘えた声で哀願を続ける。
「お兄ちゃんお願い。助けて。わたしは悪くない。人間の血を吸わなきゃ、生きていけないだけ。どこも違わないんでしょ?」
 騎士が頷く。身をかがめ、座り込んだ少女の背丈に頭の位置を合わせた。
「だったらこのまま放っておいて。わたし、別の村へ行く。おにいちゃんに迷惑はかけないから……。お願い!助けて!」
 涙を流し、えずきながら少女は騎士を懐柔しようとする。今までも何度か正体がばれたことがあるが、人間は子供の涙に弱い。
泣いてお願いをすれば、おろかにも止めを躊躇する。これまで、その手で何人を返り討ちにしただろうか。
「ああ、いいだろう。」
 目論見どおり!騎士は少女の策に嵌った。ちょろいものだ。少女が内心で舌を出す。

 だが、次の瞬間―――少女の口から血が吐き出された。
 胸に、深々とナイフが突き刺さっていた。心臓を捕らえられている。
「どうして……悪くないのに………どうして……」
 躊躇なくナイフを抉る騎士。心臓が完全に破壊された。
「フッフ、さすがの吸血鬼もこうなってはおしまいだ。生きて恥を晒すのも辛いだろう?助けてやるよ。」
 ギィィ、とサディスティックな笑みを浮かべる騎士。その瞳が輝きを増す。
 騎士が突き刺さった刃を胸から引き抜き、懐にしまいこんだ。立ち上がり、くるりと背を向け歩き出した。
「ひぃぃ……」
 少女が叫びにならぬ声を上げる。プルプルと腕を震わせながら、
「枝よ……伸びし森の枝よ…」
呪文を唱え指を振る。狙いは騎士の背中だ。なんとしてでも、一矢を報いなければ…。
 木の枝が呻りをあげて騎士に襲い掛かった。

パチン

 騎士が軽く剣を抜くと、枝が逆に少女を襲い、その身体をバラバラに引き裂いた。断末魔を唱える暇もなく、瞬間少女は息絶えた。
 歩いていた騎士の姿が、ヒュン、とをかき消える。
 そして空を、一筋の流星が駆け抜けた。

 青い瞳は 謎の人 どんな人だか 知らないが 
 キラリと光る すずしい目 正義のメイジが 雪風だ
 風韻竜 きゅっ きゅっ きゅい きゅきゅいっ 雪風は行く


ゼロのしもべ外伝 赤雪のタバサ


 ガリアの首都を睥睨する人工水山塞、梁山泊。
 そこから東に3リーグ。かつての王宮、レッドシャーク。季節の花々が咲き乱れることから、別名″薔薇園″とも呼ばれるこの宮殿に
は、無数の花壇が存在する。
 ガリアでは、この花壇の名前にちなんで騎士団の名前が命名されている。
 梁山泊に現ガリア王ジョゼフが集結させた通称、『水滸』は正式には騎士団でなく王直属の近衛部隊という括りであるため、一般に
はガリア騎士団とは花壇の名を持つもののことを言う。南薔薇花壇警護騎士団、東百合花壇警護騎士団……。しかし、北側には花壇
が存在しないため、『北』が名につく騎士団は表向き存在しない。
 だが、あらゆるものに表と裏が存在するように、この国には裏の騎士団が存在していた。
 すなわち北花壇警護騎士団である。
 この騎士団で、最近ある問題が持ち上がっていた……。

「サビエラの村の事件は、無事解決いたしました。」
 レッドシャークの中、プチ・トロワと呼ばれる薄桃色の小宮殿の中、1人の少女が退屈そうに報告を聞いている。
 年のころは17ぐらいだろうか。細い目に、その瞳と同じ青みがかった珍しい髪の色。その色は、少女はガリア王家の血を引いている
ということを意味する。
「つまらないわね。」
 少女が大あくびをする。瞳が鈍い光で濁り、どことなく見るものに下品な印象を与えてしまう。
 少女の名はイザベラ。現王ジョゼフの娘である。
 もっとも、最近娘は父ジョゼフの姿を見かけたことはない。ジョゼフは新しく作り上げた山の上の宮殿に篭り、いつの間にか集まった
正体不明の人間たちとこの国の政治をとっているからだ。まるで捨てられるようにイザベラはこの宮殿に押し込まれ、一つの任務を
与えられていた。
 ガリア北花壇騎士団団長。それがイザベラに与えられた役職である。
 イザベラは父が自分のことを疎んじていることに気づいていた。その原因が、突如現れたヨミという男にあるということも知っていた。
 実際は、イザベラがヨミに気づいたために厄介払いをさせられたのである。ヨミは自分の力が回復しないうちにバビル2世が現れた
ときのため、なるべく自分の存在を秘密にさせていた。ジョゼフはその意を汲んでヨミのことが世間に露呈せぬよう、ごく一部のものに
だけ存在を明かし、世話をさせていた。

 しかし、娘であるイザベラがそんな様子を不審に思い、ヨミのいる部屋を覗いてしまう。父王はいっそ娘イザベラを始末してしまおう
とさえ考えた。しかし、
「殺すには及ばぬだろう。よく言い含めて、外に出ずにすむ役職につかせてやればいい。」
というヨミの言葉によって、考えを改め娘を公には存在せぬ騎士団の長にすげたのである。
 つまりイザベラは九死に一生を得たことになる。しかしイザベラはそんなことなど露として知らない。
 イザベラは「自分に魔法力がないからこんな役職に追いやられた」と考えていた。魔法国家であるガリアでは、魔法の実力が地位
を左右する。それはある意味でトリステインやアルビオン以上に苛烈なものである。
 イザベラには残念ながら魔法の才能が欠けている。そのことが彼女の性格を歪めてしまった原因であった。彼女を幼くから知る人間
は、決まって「昔はああではなかった」と答える。そのことが、ある少女に艱難辛苦を与えているのだが……
「殿下。問題が解決したのはいいのですが……ひとつ問題があがっておりまして」
 騎士らしき男が、恐縮して報告を続ける。しかし、イザベラは聞いているのかいないのか、再び大あくびをする。
「今回派遣した騎士、国王直属の部隊『水滸』から派遣されているのですが……」
 イザベラが報告にあきて、次女を呼ぶべく鈴を鳴らした。
「派遣されたのにはひとつ問題があるのです。」
 侍女が慌てて広間に入ってきた。報告が続いているのを見て、一瞬どうすべきかと固まるが、しょうがなくイザベラの傍に近づく。
「お、お呼びでございますか、殿下。」
「退屈よ。」
 今まさに政務中であるというのに平然と言い放つイザベラ。侍女はどう続けるものかと迷っている。
「問題というのは、この男……自分の上司との決闘を申し込んでいるのです。」
「決闘?」
 イザベラがようやく報告に興味を示す。顔を向けて騎士に向き直る。
「はい。自分のほうがその上司よりも実力は上である、それを証明したい。として何度も願い出があったようです。しかし決闘は認め
られず、上司を闇討ちにする暴挙に出ております。」
「ふーん。それで。」イザベラの目が輝きだす。かなり興味をそそられているようだ。
「偶然、他のものが通りかかりことなきを得ました。ですがこのままでは放置しておくわけにもいかず、しばらくの間北花壇騎士団へと
やっかい払いされたのです。そこで先日、サビエラに派遣いたしましたところ…」
 報告書を改めてイザベラに渡す。イザベラはぱらぱらとその報告書をめくる。
「結果、吸血鬼をあっという間に退治してしまいました。ところが……再び決闘願を提出してきたのです。」
 懐から手紙らしいものを取り出す騎士。表に大きく、「決闘願」と書かれている。
「本人の言いぶんでは、所属が違うのだから決闘をしても差し支えはないだろうとのことです。しかし、有能な部下を2名も失うのは
忍びがたく……できれば団長命令をもって停止させていただきたいと。」
「おもしろいじゃないの。」
 イザベラの顔が大きく歪む。
 人間は、笑みにその本性が出るという。明るい人間は朗らかに笑い、冷たい人間は酷薄な笑みを浮かべる。
 そしてイザベラの笑いは、凶悪、それに尽きた。
「いいわ、認めなさい。ちょうどいい退屈しのぎになるわ。」
「だ、団長……ッ」
 泣きそうな顔になる騎士。溺れるものはわらをも掴む。最後の希望で頼ったものの、あっさり拒絶され腰が砕けそうになったのだ。
「でも、一つ条件があるわ。ちょっと、あのガーゴイルはまだこないの?」
 年長の侍女が首を振った。
「シャルロット様は、まだお見えになっておりません。」
「ただの人形よ。“ガーゴイル”で充分。」
 その言葉を聞き、なきそうだった騎士が青ざめる。
「ま、まさか……殿下……。」
「ええ。そのまさかよ。」
 イザベラが立ち上がり、報告書に書かれた名前を確認して言い放つ。
「その赤影とやらに命令しなさい。あのガーゴイルと決闘をして首をもってこい、と。その首が決闘の許可書だとね。」

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