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ウルトラ5番目の使い魔、第二部-34



 第三十四話
 最終戦争の一端

 赤色火焔怪獣 バニラ
 青色発泡怪獣 アボラス
 岩石怪獣 ネルドラント
 毒ガス怪獣 エリガル
 古代暴獣 ゴルメデ
 噴煙怪獣 ボルケラー
 透明怪獣 ゴルバゴス 登場!


 古代遺跡から発掘されたカプセルから蘇った、怪獣バニラ。
 才人とルイズはウルトラマンAへと変身し、これを迎え撃った。
 しかし、強靭な肉体とメタリウム光線をも防ぐ火焔を持つバニラの前に、エースはエネルギーを使い果たして倒れてしまう。
 バニラの吐き出す火焔に包まれるウルトラマンA。
 この、悪魔のような大怪獣を倒す方法は、はたしてあるのだろうか……

「うわぁぁっ……」
 バニラの火焔が作り出した山火事の中に、ウルトラマンAは沈んでいった。
 かつて、ミュー帝国の街を蹂躙したであろう紅蓮の業火と同じ炎の中が、容赦なくエースを焼き尽くそうと燃え盛る。
 このままでは、確実に死んでしまう。エネルギーが尽きかけたエースは、最後の手段をとった。
「ヌゥゥ……デュワッ!」
 横たわるエースが、腕を胸の前でクロスさせ、大きく開いた瞬間、エースの体が白色に輝いた。
 ちかちかと、光は燃え尽きる前のろうそくの炎のようにエースを包んでまたたく。そして、最後にわずかにまばゆく
発光したかと思われた瞬間、エースの姿は炎の中に溶けるように消えてしまった。
 怪獣バニラは、勝利の雄叫びをあげるとくるりときびすを返した。燃え盛る森を背にして、いずこかの方角に去っていく。
 後には、轟音をあげて燃え盛る森と、炎から逃げ惑う鳥や動物の悲鳴だけが残される。

 ウルトラマンAは、死んでしまったのだろうか……?

 いや、そんなことはない。エースが倒された場所から、数十メートル離れた森の中に才人とルイズが横たわっていた。
 あの瞬間、エースは残された最後の力を使って、変身解除と同時に二人をわずかな距離ながらテレポートさせて
炎から救っていたのだった。
 しかし、バニラの起こした山火事の勢いはなおも衰えず、二人の倒れている場所にも次第に迫ってきた。
 雨はなおも降り続いているが、炎はそれに反抗しているがごとく天高く黒煙をあげ、二人を狙ってくる。
 生木を枯れ木同然に焼き、下草を燃やしながら炎は獲物を狙う蛇のようにうごめき、とうとう二人は火災の
中に取り残されてしまった。
 業火の中、死んでしまったかのように、ぴくりとも動かず横たわる二人。
 飲み込まれれば、人間など骨も残さず焼き尽くされてしまうだろう。
 だがそのとき、炎から一つの影が浮き出るように現れ、その異形のシルエットを二人にかぶせていった。


 一方そのころ。まだ異変の発生を知るよしもないトリスタニア。
 遺跡を飛び立ってから、およそ二時間後。王宮において、アンリエッタに謁見したエレオノールは、
自身を呼び出したアンリエッタ王女から、耳を疑う知らせを受けていた。
「ルイズが伝説の虚無の系統? そんな、信じられませんわ」
 単刀直入にアンリエッタの口から語られた真実を、エレオノールは最初信じようとはしなかった。しかし、
軍の正式な報告書に記された、想像を絶する魔法の炸裂と、水晶に浮かび上がったその映像。そして、
冗談などでは決してない、真剣な表情のアンリエッタの説明が、エレオノールに曲げようのない事実を
突きつけていた。
「信じられないのは無理もありません。わたくしも、今日まで虚無とはなかばおとぎ話だと思っていました。
ですが、現実はこのとおりであり証拠も揃っています。わたくしも考えましたが、ルイズの姉であり
優秀な学者であるあなたしか信用できる人はいないのです。どうか、信じていただけないでしょうか」
「ちょ、ちょっと待っていただけませんか! ルイズが、あのちびルイズが虚無? あの、あの……」
 普段の彼女の凛々しさからは考えられないほど、エレオノールは狼狽していた。もはや、仕事中に
呼び出された不満も吹き飛び、頭の中は許容量を超えてしまった情報で混沌と化している。その末に、
目眩を起こして倒れかけたところへ、慌てたアンリエッタに抱きとめられた。
「エレオノールさま、大丈夫ですか!? お気を確かに」
「はっ! こ、これは無礼をばいたしました。どうか、平にご容赦くださいませ」
 どうにか正気を取り戻したエレオノールは、謁見の間での失態に顔を赤くして謝罪した。
 普段冷静な彼女だが、頭がいいことが災いして、自分の知識の及ばない出来事が起こると脳がフリーズ
してしまうようだ。平謝りし、どうにか気を取り直したエレオノールは、頭の中で聞かされた事柄をまとめると、
自分に言い聞かせるようにアンリエッタに向かって復唱していった。
「……つまりは、ルイズがこれまで魔法が使えなかったのは、その系統が虚無ゆえで、あの子には聖地を
エルフから取り戻すという使命が与えられたというのですね?」
「祈祷書に記されたとおりなら、そのとおりです」
「馬鹿げてるわ! 始祖ですらできず、数千年に渡って負け続けてきたエルフとルイズが戦わなければ
ならないですって!? 悪い冗談にもほどがありますわ。姫さま、まさか貴女はルイズを旗手に聖地奪還の
戦を再開なさろうとしているのでありませんでしょうね? もし、そんな愚考をしておられるようなら!」
「落ち着いてください! まだ、そうなると決まったわけではありませんわ。ルイズの意思は確認しましたし、
わたくしも彼女に聖地を奪還させようなどと考えてはおりませぬ」
 つかみ掛かってきそうなくらいいきり立つエレオノールを、アンリエッタはたじたじになりながらも必死に抑えた。
ルイズとともに、ヴァリエール家との付き合いは長く、エレオノールとも小さいころから何度も会っているが、
この気性の強さと迫力はいまだになかなか慣れない。
「はあ、はあ……申し訳ありませぬ。わたくしといたしたことが取り乱してしまいました」
「いえ、ご家族の人生に関わることです。怒られて当然ですわ。ともかく、この事実を知っているのは、
ルイズの友人数人とわたくしと、お姉さまのほかにはおりませぬ。しかし、虚無の存在を知れば、
今おっしゃられたとおりに悪用しようともくろむ輩も出てくるでしょう。実際に……」
 シェフィールドと名乗る謎の人物に狙われていることを語ると、エレオノールは再び怒りをあらわにした。
けれど、アンリエッタから「ことがことだけに、わたくしも表立って助けることができません」と、苦悩を
告げられ、敵からルイズを守るためには虚無の謎を解き明かさねばならず、信用できて且つそれができるのは
貴女しかおりませんと頼まれると、自分の肩にかけられた荷の重大さを悟った。
「わかりました。微力ながらお引き受けいたしましょう」
「ありがとうございます、エレオノールさま」
「いえ、いくら出来の悪いとはいえ、妹のことを他人にはまかせられませんわ。わたくしを頼っていただけたことに、
こちらこそ感謝いたします」
 二人は手を取り合って、それぞれ感謝の言葉を述べ合った。
「さあ、では具体的な話に入りましょう。指令をいただけても、今のままでは自由に動けませんわ」
 それから二人は、これからのエレオノールの権限などについて話を進めていった。現在、アカデミーの研究員、
学院の臨時教諭と掛け持ちをしているが、これに虚無の調査も加えたらとてもではないが身が持たない。

 だが、話がまとまらないうちに、突然謁見の間の扉があいさつもなしに開かれた。

「何事です?」
 あらかじめ、ここには呼ぶまで誰も入れるなと人払いをしていたはず。なのに何か? まさか、今の話を
盗み聞きされたのではと二人が振り向くと、なんとずぶ濡れの騎士が蒼白の表情で駆け込んできた。
「ほ、報告……トリスタニア東方、三十リーグの森林地帯に……あ、赤い怪獣が出現。迎え撃ったウルトラマンを
倒して、トリスタニア方面に進行中」
「なんですって! ウルトラマンを、倒して!?」
 想像もしていなかった報告に、アンリエッタは愕然とした。彼は、ミイラを追っていた魔法アカデミーの騎士の
一人だった。あのときミイラに撃ち込まれた『ライトニング・クラウド』によってバニラが復活し、その猛威から
命からがら逃げ延びた彼は、すべてを見た後でここまで駆けてきたのだった。
「怪獣は、あと数時間でトリスタニアまで到達するでしょう。は、早く手を……うぁ」
 騎士は、息も絶え絶えの状態で、絞り出すようにそう報告すると倒れた。
「しっかり! 誰か、誰か!」
 気を失った騎士にアンリエッタが駆け寄り、呼び起こしながら侍従を呼んで医者を手配させた。すぐに
宮廷の従医が呼ばれ、彼を担架に乗せて運んでいく。さらに、怪獣が接近していることが明らかになったので、
直ちに迎撃の準備を命ずる。今のトリスタニアは、結婚式典のために大勢の人間がやってきている。
市街地への侵入を許したら大惨事になるのは必然だ。
 そしてエレオノールは、報告を持って来たのが魔法アカデミーの雇い騎士だったこと。現れたのが、
赤い怪獣だという内容から、一つの仮説を導き出し、全身の血が引いていく音を聞いていた。
「しまった……ヴァレリー!」

 様々な思惑と錯誤、謎と現実が交差しながら、時の流れは残酷にその歩みを止めない。
 場所を戻し、激しい戦いのおこなわれたあの森に舞台は返る。
 一時は天にも届くほどの勢いで燃え盛っていた山火事も、天からの恵みには屈服し、炭と化した木々が
薄い煙のみを吐いている。その一隅の、雨を避けられるある場所に、才人とルイズは並べて寝かされていた。
「う、ぅぅ……」
 かすかなうめきと、吐息が二人がまだ生きていることを如実に示している。しかし、怪獣バニラとの戦いで
大きなダメージを受けた二人は、いまだ無意識の世界……暗く、生暖かい不思議な空間の中をさまよっていた。

”おれは……いったいどうしたんだろう”

 浮いているような脱力感と、激しい疲労から襲ってくる眠気に耐えながら、才人の意識はただよいながら考えていた。
 そこは、ぼんやりとものを考えることはできるけれども、体を動かすことはできない。例えて言うならば、
春の日差しの中でうたたねしているみたいな、夢と現実のはざまのような世界。そこで、夏の波打ち際に
体を預けているような心地よい感覚に、才人は身を任せていた。
「おれは……いったいどうしたんだろう」
 もう一度、才人は同じことを思った。いや、もしかしたら一度だけでなく何度も同じことを考えていたのかもしれない。
 現実感のない世界で、才人にできるのは考えることだけだった。いや、起きようと頭では思うのだけれども、
意識が現実に覚醒することがない。疲労で深い眠りについているというよりも、なにかの力で夢の世界に
閉じ込められているような、そんな気さえする。
 ここは、強いて言うなら変身している際に、三人で意識を共有している精神世界と似ているような気もする。
しかし、エースなら不必要に二人の心に干渉するわけはない。ならば何故? と思っても、それを考えるだけの
思考力は得られない。
 ふと、才人はこの精神世界の中に自分以外の誰かがいる気配を感じた。とはいえ、すぐに相手のほうから
呼びかけてきたから、確認する手間ははぶけた。
「サイト?」
「ルイズか?」
 不思議なことに、二人とも意識がはっきりとしていないのに、相手の存在だけははっきりと理解することができた。
それが、自分たちが肉体と意識を共有しているかはわからないけれど、二人にとってはどうでもよかった。
寄り添うように手と手を重ねると、二人は安心したように力を抜いた。
 互いのことを感じあえるところにいることで、緊張を失った二人の心は無意識のさらに深くへと沈んでいく。
 ところが、閉じ行く意識の中で、才人とルイズの目の前に突如現れたものがあった。
「あれ、は……?」
 ぽつりと、唐突に現れたそれを、二人は閉じかけた心のまぶたを開いて見た。沈んでいく水底のような世界の中で、
海底に沈んだ一粒の真珠のように、小さな、しかしはっきりとした光がはげますように二人の前に現れていた。
「なにかしら、きれい……」
 消えかけた意識の中で、ルイズは自然に光に手を伸ばしていた。あの光からは、どこか懐かしいような、
どこかで見たようなそんな不思議な感覚がする。さらに、才人の意識もルイズにひきずられるように、二人は
手を握り合い、いっしょになって落ちていった。
「深い……サイト、わたしたちどこまで沈んでいくの」
「心配するな。どこまでだって、おれがお前についていってやる」
 自分たち以外に誰もいない世界で、才人ははげますようにルイズの手を握った。
 ひたすら、深く、深く。二人の心は沈んでいく。
 光は、どれほどの深さがあるのか知れない深淵の底から、しだいに輝きを強めていく。
 もうすぐ見える……期待と不安とが入り混じる。二人は、まもなく到達するであろう精神世界の最深部で、
何かの正体を見極めようと目を凝らす。そして、輝きを放っていたものがなんであるかに気がついたとき、
同時にそれの名前をつぶやいていた。

「始祖の……祈祷書?」

 見間違えるはずもなく、それは始祖の祈祷書そのものだった。表紙の汚れも、破れ具合もすべて見覚えがある。
 そして、祈祷書が間近にまで見えるようになったとき、ルイズの脳裏に不思議な声が響いた。
「呼んでる……」
「ルイズどうした? 呼んでるって、誰が?」
「わからない。けど、祈祷書がわたしを呼んでるの」
 自分でも不可思議なことを言っているとはわかっている。夢の中だとしても、おかしいといわざるをえない。
 でも、聞こえたことを否定する気にはならなかった。低い、おちついた大人の声で「来い」と言われた。
聞き覚えはないけれど、どこか懐かしいようなそんな声……わからないけれど、祈祷書を持てば、その答えが
わかるような気がする。
「サイト……」
「お前の好きにしろ。どうしようと、おれはそれでいい」
 わずかなためらいを、才人の言葉でぬぐい払うと、ルイズは祈祷書に手を伸ばした。触れたとたん、指先から
まばゆい光があふれて二人を包み込んでいく。
「わあっ!?」
 あまりのまぶしさに、二人は思わず目をつぶろうとした。しかし、ここは精神世界であるから、まぶたはあるようで
実は存在しない。光はさえぎるものなく二人の世界を白一色に染め上げ、やがて唐突に消えるとともに、
二人の目の前がさあっと開けた。
「これは……砂漠?」
 突然現れた風景に、二人は周囲を見渡しながらつぶやいた。
 今、二人は広大な砂漠地帯を見渡す空の上に浮かんでいた。
 しかし、吹きすさぶ風も照りつける熱射の熱さも感じることはない。どうやら、自分たちはこの場所では幽霊の
ようなものであるらしいと当たりをつけると、才人はルイズに尋ねた。
「ルイズ、ハルケギニアにこんな砂漠があるのか?」
「いえ、ハルケギニアに砂漠なんてないわ……いいえ、正確にはハルケギニアにはないけれど、そのはるかな
東方の世界には、サハラと呼ばれる大砂漠地帯があるはず。ここは、多分」
 タバサまではいなかくても、様々な史書を読み漁ったルイズの知識の中でも、このような光景は他には
考えられなかった。サハラ……聖地に通じる、エルフの住まう場所。数千年の長きに渡って、聖地を奪還
せんものとする人間とエルフの果てしない抗争の続いた地。
 はてしなく広がる砂の地には、人の影ひとつ、虫一匹の姿すら存在せず、ただ砂丘と吹き荒れる砂嵐のみが
擬似的な生命のように動き回っている。まさにこれは死の世界と呼ぶにふさわしい光景。
 無の世界に戦慄する二人の見ている中で、景色は急速に流れ出した。砂漠をどんどん超え、地平線の
かなたへと景色が進んでいく。まるでジェット機から地上を見下ろしているかのようだ。
 やがて、砂漠が途切れて緑の山や平原が見えてくる。ここがサハラだったとすると、あれが恐らくは
ハルケギニアか? ルイズはハルケギニア全土の地図を思い出し、サハラに隣接する場所に当たりをつけた。
「きっと、あれはガリアのどこかよ。人間とエルフは、ガリアの東端を国境線にしているの」
 ルイズの説明に、才人もなるほどとうなづいた。二人の見下ろす先で景色はさらに流れ、砂漠から
草原や山岳地帯へと入っていく。このまま進めば、どこかの町も見えてくるだろう。そう二人は考えた。

 しかし、結果からすれば、二人の思ったとおりに町……人の住んでいるところはすぐに見えてきた。
 ただし、それは二人の想像していたものとは似ても似つかない形で現れたのである。

「サイト! ま、町が」
「怪獣に襲われている!?」

 凄惨としかいえない光景が二人の前に広がった。
 町が……いや、町だったと思われるところが怪獣によって破壊されていた。それも、一匹や二匹ではない。
少なく見ても五匹以上の怪獣が、せいぜい人口千人くらいの町を蹂躙している。
 火炎や熱線が建物を炎上させ、元の町の姿はもう見受けることはできない。当然、人間の姿もどこにも見えない。 
「ひどい……」
「くっ! こんなことになってるのに、この国はなにをやってるんだ!」
 思わず怒鳴った才人の声も虚しく、二人の体はどんどんと流されていく。山を、川を飛び越えて山麓に
広がる次の町が見えてくる。赤い炎と黒い煙とともに。
「ここでもっ!? 怪獣が」
 その町も、同じように怪獣によって蹂躙されていた。ざっと見るところ、街を破壊しているのは二匹、
 全身が岩のようになっているのは透明怪獣ゴルバゴス。口から火炎弾を吐いて街を焼いている。
 ドリルのような鋭い鼻先を持っているのは噴煙怪獣ボルケラー。口から爆発性イエローガスを吐き、
街の建物をけり壊している。
 町は先程の町と同じように業火に覆われ、元の姿をうかがい知ることはできない。
 けれど、ここでは先の町とは明らかに違う点があった。町は無人ではなく、まだ大勢の人間がいた。
ただし彼らは炎や怪獣から逃げるでもなく、その手には槍や剣、それに杖があった。彼らは二つの陣営に
分かれて、それぞれが相手に武器を向け合っている。
「戦争をしてやがる……」
 それしか考えられる答えはなかった。そこにいる人間たちは、全身を覆う分厚い鉄の鎧に身を固め、
武器をふるい、魔法をぶつけあって互いを倒して炎の中へと放り込んでいく。目を覆いたくなるような、
大規模な凄惨な殺し合いの風景。それは、戦争と呼ぶ以外に表現する術はない。
 だが、怪獣が暴れているというのに人々はそれには目もくれずに、ひたすら戦い続けている。そういえば、
ゴルバゴスやボルケラーは町は壊すものの、地上で戦う人間たちには目もくれていない。いや、そうではない
と才人は二匹の行動を見て思った。
「怪獣たちも戦っている、のか」
 町の惨状に幻惑されていたが、両者は確かに戦っていた。火炎弾やイエローガスの撃ち合いだけでなく、
ゴルバゴスの岩のような腕がボルケラーを打ち据え、負けじとボルケラーも風の音のような鳴き声をあげて、
巨大なハサミ状になった腕でゴルバゴスを締め付ける。
 その怪獣同士の激闘は、町をさらに無残な状況へと変えていく。
「あいつら、やりたい放題じゃない」
「ああ……だけどなんであの二匹が……ハルケギニアだとはいえ、あれらは戦うようなやつらじゃないのに」
 才人は、普通なら戦うことになるはずのない二匹が戦っていることに、大きな違和感を感じていた。
ゴルバゴスは山中に潜み、体を擬態して獲物を待つ怪獣。対してボルケラーは火山地帯に生息し、
大半は地底にいる怪獣、生息地が大きく違う上に、どちらも人里に下りてくるような怪獣ではないのだ。
「ねえサイト、あの怪獣たちの後ろにいるやつら、何かしら?」
「え? なんだ……あいつら」
 ルイズに言われて目を凝らした才人は困惑した。二匹の怪獣の、それぞれ後ろに一人ずつ人間が立っていた。
そいつらは、戦っている人間たちが鎧兜などの重装備をしているのに対して、まるで休日の街中を散歩する
ような軽装で、怪獣に向かってなにやら手振りしているように見える。
「もしかして、怪獣を操っているのか……?」
「まさか! 人間にそんなことができるわけが……」
 ない! と言い切れない事例をこれまでに二人は嫌というほど目にしてきていた。よくよく見てみれば、
声は聞こえないものの、軽装の人間は兵士たちに向かってなにやら指示をしているようにも観察できる。
ならばあれが指揮官かということは容易に連想することができた。
 しかし、怪獣を操って戦争の道具にするなどと、そんな恐ろしいことを……いや、宇宙人が地球を攻撃する
ための手段として怪獣を使うのは、誰もが知っている常套手段である。ならば当然、兵器としての怪獣同士での
戦争などは、地球以外の星からしてみれば当たり前のことなのかもしれない。
 ただ、状況は奇異につきた。あの、怪獣を操っているものが人間であれ宇宙人かなにかであるにせよ、
人間の軍隊までも率いて戦争している理由がわからない。怪獣どうしの戦闘のすぐ横で、槍や剣を使った
”普通”の戦争がおこなわれているアンバランスさ。それに、ルイズも確認してみたのだが、兵士たちは
トリステインはおろか、アルビオン、ガリア、ゲルマニアのどの軍隊とも装備が違っていた。少なくとも、
今のハルケギニアの兵士は竜騎士など一部の例外を除いて、全身鎧などという化け物じみた装備を使わない。

 目の前で起きていることの答えを見つけられぬまま、二人はさらに空を流されていった。飛びゆく先の空は、
夕焼けを悪意の色で塗りなおしたかのような、凶悪な赤で染まっている。それを見下ろせる空にたどり着いたとき、
不安と恐怖を編みこんだ予測の刺繍絵は、現実と極めて近い形で眼前に姿を現したのである。

「ここでも、あそこでも……なんなのよこれ。どうしてどこでもここでも殺し合いをしてるのよ!」
「暴れまわってる怪獣の数も尋常じゃねえ。それに、あれは人間じゃないな」
 信じられないことに、戦いは人間や怪獣ばかりではなかった。
 ある場所では、翼人の一団とコボルドの群れが。またある場所ではミノタウロスとオークの群れが斧を
ぶつけあい、火竜がワイバーンや風竜と空戦をおこなっているところもある。
「自然の秩序にしたがって生きているはずの亜人まで……でたらめじゃない」
 しかし、二人がこれが序の口に過ぎないことを知るのはこれからだった。
 空を飛び、ゆく先々の町や村はすべて怪獣に襲われるか、襲われた後の廃墟として二人の目の前に現れた。
それだけではなく、移動する先々の山々や森林も焼き払われ、ひどいところでは砂漠化しているところまである。
そのどこでも、圧倒的な破壊がおこなわれた後……もしくは、それをおこなっている最中の破壊者の姿がある。
 人間、エルフ、翼人、獣人、幻獣、怪獣……そして、それらを統率している正体不明の人間たち。
 この世界のどこにも、平和はなかった。
「違う……これは、わたしの知ってるハルケギニアじゃないわ」
 愕然とするルイズの言うとおり、どこまで飛ぼうとも、いくら戦場後を乗り越えようとも破壊の跡が視界から
消えることはなかった。それどころか、進むほどに戦火は激しくなり、まるで地上すべてがフライパンの上の
肉のように煮えたぎっているかのようにも思える。
 空の上には翼人やドラゴンが、地上には人間の軍勢や亜人、そして怪獣たちが無秩序に暴れている。
 いったいなんのために戦っているのか、それすらもわからない。
 唖然とする二人。と、そのとき二人の耳に聞きなれた低い声が響いた。
「やれやれ……とうとう見ちまったか」
「その声は!」
「デルフか! お前、どこにいるんだ!?」
 唐突に響いたデルフリンガーの声に、反射的に周りを見渡す二人。しかし、あの無骨な大剣の姿はなく、声だけが
どこからともなく聞こえてくる。
「落ち着け、お前ら。いいか、今お前らは祈祷書に記録されているビジョンを見せられてるんだ。そこは、
かつて俺が生まれた世界……六千年前のハルケギニアだ」
「な……なんだって」
「この荒廃した世界が」
 続く声もなかった。この、破壊と混沌にあふれた世界が、あの平和で美しいハルケギニアだとは。
 絶句する二人の耳に、重く沈んだ様子のデルフの声が少しずつ入ってくる。
「ふぅ……嫌なこと、思い出しちまったなあ。ブリミルのやつめ、遺品にいろいろ細工してたのは知ってたけど、
よもやこんな仕掛けを祈祷書に残してたとは気づかなかったぜ」
「デルフ、もっとわかるように説明してくれよ」
「ああ、すまねえな。要するに、これは祈祷書に記録されていた過去のビジョンが、お前らの頭の中に投影
されてる光景らしい。六千年前、この世界は見ての通りに、いくつもの勢力が戦争を繰り広げていた。
今でも、エルフとかのあいだではシャイターンとかヴァリヤーグとか、そのときの勢力の名前のいくつかが
語り継がれているらしい。いや、これはもう戦争と呼べる代物じゃなかったな。人間にエルフ……世界中の、
あらゆる生き物を巻き込んだ、際限のないつぶしあいだった」
「いったい、なんでそんな無茶苦茶なことに……」
 愕然とする才人の質問に、デルフはすぐに答えなかった。
「すまねえ、まだそこまで記憶が戻ってねえんだ」
 いつになく沈んだデルフの答えに、才人とルイズは頭に血を登らせかけたものを押し下げた。六千年分の
記憶と一言にいえば簡単だけれど、それは地層の奥深くに沈んだ化石を掘り返すようなものだろう。
一気に掘り返そうとすれば、デルフが持たないかもしれない。発掘は、赤子の肌を拭くように慎重に
時間をかけなくてはならない。
「わかった。じゃあ、あの怪獣を操ってる連中はなんなんだ?」
 いっぺんに聞くのをあきらめた才人は、とりあえず一番気になっていることを尋ねた。
「あれが、この戦いの元凶さ。エルフに悪魔と呼ばれてるのは、あの連中のことだ。あいつらは、この世界に
元々いた怪獣や、どっかから探してきた怪獣なんかを武器にして戦争やってたんだ。ちょうど、今のメイジが
戦争で使い魔を利用するみたいにな」
「怪獣を、兵器に……」
 恐ろしい想像が当たっていたことを、才人は喜ぶ気にはもちろんならなかった。
 地球人も、怪獣を兵器にという構想はすでにマケット怪獣で実用化の域にある。しかしそれを人間どうしの
戦争に利用しようなどとは考えられもしない。そんな愚かな時代は、かつて核兵器の脅威によって人類絶滅の
危機におびえた前世紀で充分すぎる。
「まあ、コントロールできなくて暴れるにまかせるしかなかったのも少なからずいたらしいが、この混乱の中じゃあ
些細なことだったろうな」
「いったい何者なんだ? 怪獣を操るなんて、並の人間にできるわけないだろう」
「わからねえ……いや、思い出せないんじゃなくて本当に知らねえんだ。俺が作られたのは、連中が現れてから
しばらく経ってからのことらしいからな。ただ、なにかしらすさまじい力を誇っていたのだけは確かだ」
 デルフの説明は、後半は余計だった。怪獣を操る時点で、手段はともかく常人のそれではない。
 現在、二人の見下ろす先にいる怪獣は三匹、いずれも才人の知るところではない姿をしている。

 一体は、全身を乾いた岩の色をした二足歩行の恐竜型怪獣。体はごつごつとしていていかついが、
顔つきはどこか柔和なものが感じられる。これは、才人の故郷とは違う地球で岩石怪獣ネルドラントと呼ばれている、
ゴモラなどと同じく古代恐竜の生き残りといわれている怪獣。
 もう一体は、同じく二足歩行型で、顔の形がどことなくカンガルーに似ている怪獣。これも、毒ガス怪獣エリガルと
呼ばれてる種類の怪獣で、肩の部分にそのガスの噴出孔がフジツボのようについている。
 最後の一体は、ここにキュルケかタバサがいたならば、その姿に記憶のページから同じしおりを選んでいただろう。
 古代暴獣ゴルメデ……才人とルイズの知らないところ。エギンハイム村で、翼人たちの伝説に残されていた
あの怪獣がそこにいた。

 三体の怪獣は、ほかの怪獣たちと同じように、何者かのコントロールを受け、目に付く木々を踏み潰しながら
前進していく。本来ならば彼らにも意思があり、こんな戦いに加わるはずはない。才人とルイズは、道具として
操られている怪獣たちに、一抹の同情を胸に覚えると、デルフに問いかけた。
「なにがしたいのか知らないけど、ひどいことをしやがる」
「わたしは、戦いは名誉や国……なにかを守るためにするものだと教えられてきたわ。けど、この戦いには
なにも感じられない。ただ戦うために戦ってるみたい。ねえ、この戦いの結末はどうなったの? いったい
誰が勝ち残ったっていうの?」
「誰も、残らなかったのさ」
「えっ!? うわっ!」
 ぽつりと、恐ろしいことをつぶやいたデルフの言葉が終わると同時に、二人の視界をまばゆい光が照らした。
太陽ではない。まして、戦闘の戦火でもない。不可思議な極彩色の光に、二人がおそるおそる目を開けてみると、
そこには幻想的な光景が広がっていた。
「虹……? きれい……」
 思わず口から出た言葉のとおり、空には虹色の光が溢れていた。しかし、それは虹などではなく、よく見たら
虹色をした蛍のような小さな光が、雲のような集合体をなしているものだった。
「くるぞ……この戦いを混沌に変えた。本当の悪魔が」
 デルフの言ったその瞬間、虹色の雲から光の塊が地上に向かっていくつも降り注いだ。
「なんだっ!?」
 それは、虹色の雲から流星が落ちたように地上からは見えたことだろう。流れ星は、まるでそれ自体に
意思があるかのようにネルドラント、エリガル、ゴルメデに吸い込まれていった。
「どうしたっていうのよ……えっ! なに!?」
「ただの戦争だったら、それが一番よかったかもしれねえ。けど、戦いの混沌につけこむように奴らは突然現れた。
そしてこれが、終わりの始まりになったんだ」
 淡々と話すデルフの言葉を、才人とルイズは驚愕の眼差しの中で聞いていた。
 夢の世界の中で、始祖の祈祷書が語ろうとしている歴史は、まだ先があるようだった。


 だが、時を同じくした頃、魔法アカデミーではエレオノールが予感した最悪の事態が起ころうとしていた。
 エレオノールに依頼され、ヴァレリーは青い液体の入ったカプセルの開封作業に入った。助手は、先日
アカデミーに入った中ルクシャナという新人研究員。性格的に少々調子のよすぎる感はあるが、入学以来
様々な分野で目覚しい実績を上げている彼女を、ヴァレリーは迷うことなくパートナーにすえた。
「ヴァレリー先輩、私に折り入っての仕事って何ですか? 先輩からご指名されるくらいですから、さぞや
重要な研究なんでしょうね!」
 最初から期待に胸を躍らせた様子のルクシャナに、ヴァレリーは苦笑すると同時に頼もしさも覚えた。
彼女は若いくせに、自分やエレオノールに輪をかけた学者バカな気質なようで、男性研究者の誘いも
一つ残らず断って、毎日新しい発見があるたびに目を輝かせている。
「先日、あなたといっしょに遺跡で発掘した青い液体のカプセルがあるでしょう。あれの開封作業に入るわ。
あなたはいっしょに発掘された碑文の修復と解読を急いでちょうだい」
「ええーっ! そんなあ、どうせなら先輩のお手伝いをさせてくださいよ」
「わがまま言わないで、理由は言えないけど急ぐ仕事なのよ。それに、砕けた石碑を修復するには、
根気もそうだけど直観力も大切なの。あれが解読できたら遺跡の秘密にも一気に迫れるわ。一番頼れるのは
あなたなの、引き受けてもらえるかしら」
「……わかりました。引き受けましょう」
 最後には快く引き受けたルクシャナに、ヴァレリーは内心で素直ないい子だと感心した。彼女はあまり
自分のことを語りたがらないが、わずかに語ったところでは国に婚約者を待たせているらしい。きっと、
その男も彼女のそんなところに魅かれたのだろう。もっとも、それ以外の部分にはさぞ苦労させられているに
違いないが。
 ルクシャナに碑文の復元を任せたヴァレリーは、さっそくカプセルの開封作業に移った。これまでの経過から、
物理的な衝撃や、『錬金』による変質も受け付けないとわかっていたので、それ以外の方法を模索する。
今までは内部の破損を恐れて、強行的な手段は避けてきたけれど、非常事態ゆえにヴァレリーは多少
強引な手段を用いてもカプセルを破壊することに決めた。
 一方のルクシャナは、碑文の破片の復元作業のおこなわれている部屋にやってきていた。ここでは、
数千ピースに及ぶ石の破片を元通りにする作業が続けられている。これには、さしもの魔法も役には
立たないので、取り組んでいるのは雇われた平民が多数であった。
 ルクシャナは、部屋に入るなり彼らに向かって告げた。
「これから、私が復元作業に当たることに決まったわ。あなたたちはご苦労様、ほかのところを手伝ってちょうだい」
 命令を受けた平民たちは、ほっとした様子で速やかに部屋を出て行った。彼らとしても、延々と続く石くれとの
格闘には飽き飽きしていたのだ。そして、部屋が無人になったのを確かめると、ルクシャナは復元途中の石碑に
手をかざして、つぶやいた。
「蛮人はだめね。このくらいのことを、何日かかってもできないなんて。でも、私も精霊の力をこんなことに使って、
叔父様に怒られちゃいそうだけど、ね……さて、では石に眠る精霊の力よ……」
 いたずらっぽく微笑んだルクシャナが呪文をつぶやくと、バラバラだった石碑の残骸が動き出し、まるで生き物の
ように自然に組み合わさっていく。数分もせずに、残骸は一枚の石版の姿を取り戻し、さっそく彼女は書かれている
文字の解読に当たった。
「これは、私たちが使ってた中でも、もっとも古いとされている文字じゃない。これは興味深いわ、なになに……」
 好奇心旺盛に、ルクシャナは碑文を読み上げる。
 だが、読み進めるうちに彼女の顔からは急速に笑みが消え、読み終えたときには蒼白に変わっていた。
「いけない! そのカプセルを開けてはいけない!」
 脱兎のように、ルクシャナは碑文の部屋を飛び出していった。
 けれど運命は残酷に、破滅への秒読みを進めつつある。
「おう、ヴァレリー教授、どうやらカプセルが開けられそうですよ」
 研究室で、実験台の上に置かれたカプセルに、微細なひびが入りつつあった。加えられているのは、
アカデミーの風のメイジの使用した電撃の魔法である。ヴァレリーはこれまでの実験結果から、高熱や衝撃では
このカプセルには通じないと知っていたので、いくつかの可能性を吟味して電撃に賭けたのだ。
「やったわ! 成功のようね」
「おめでとうございます。ヴァレリー教授」
「ええ、これで中身の分析もできるわ。六千年も生きていたミイラの守っていたもの……もしかしたら、
本当に不老不死の妙薬かもしれない。もっとパワーを上げて、一気に砕くのよ」
 期待に胸を膨らませて、ヴァレリーはひび割れゆくカプセルを見守った。エレオノールには悪いけれど、
大発見の一番乗りとして自分の名前が歴史に残るかもしれないという、むずがゆい快感もわいてくる。
ところが、ヴァレリーがさらに電撃のパワーをあげるように命令しようとしたとき、ルクシャナがドアを
蹴破らんばかりの勢いで部屋に駆け込んできたのだ。
「待ってください! そのカプセルを開けてはいけません。中のものは、悪魔なのです」
「なんですって!? 悪魔?」
 ルクシャナの剣幕に驚いたヴァレリーは思わず聞き返した。そして、意味がわからないという顔をしている
彼女に、ルクシャナは震える声で説明した。
「文字の解読ができたんです。これには、こう書かれていました」

”未来の人間に警告する。かつてこの地は大いなる災いによって滅ぼされた。
 生き残った我々に残された文明も、いずれ消え去るであろう。
 しかしその前に、我々は世界を破滅へと導こうとした、巨大なる悪魔たちの一端を捕らえることに成功した。
 赤い悪魔の怪獣バニラ。青い悪魔の怪獣アボラス。
 我々は彼らを液体に変え、防人とともにはるかなる地底の悪魔の神殿に閉じ込めた。
 決してこの封印を破ってはならない。もしこの二体に再び生を与えることがあれば、人類は滅亡するであろう”

 語り終わったときには、ヴァレリーもすでに顔色をなくしていた。もはや、どうしてこんなに早く解読が
できたのかということなどは思考から消し飛んでいる。
「じゃあ、この液体は青いから……怪獣アボラス!」
 愕然とつぶやいた瞬間、ひび割れたカプセルが卵の殻のように割れた。その傷口から、青い液体が
どろりと零れ落ちる。
「しまった。遅かった……」
 愕然とするヴァレリーとルクシャナの見ている前で、青い液体はどんどん広がっていく。
 そして、液体から白煙があがり、流動する液体が何かの形を作りながら巨大化し始めた。
「いけない! みんな逃げてーっ!」
 あらんばかりの声で叫び、ヴァレリーは出口へと駆け出した。しかし、怪獣が実体化する速度は彼女たちが
逃げ出すよりも早く、天井を突き破り、床を踏み抜いて研究塔を破壊した。
「間に合わな……きゃぁぁっ!」
 ヴァレリーの足元の床が抜け、壁と天井が巨大な瓦礫と化して彼女の上へと降り注いでいった。
 アカデミーの研究塔は一瞬のうちに崩れさり、中から青い体をした巨大怪獣が姿を現す。
 青色発泡怪獣アボラス……その復活の雄叫びが、廃墟と化した魔法アカデミーに高々と鳴り響いた。


 続く



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