あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

とある魔術の使い魔と主-34


「離しなさいよメイド!」
「ミス・ヴァリエールこそ離して下さい!」
互いに文句を言いながら、二人はぐいぐいと当麻の手を引っ張っている。
二人からそれぞれ別の手を引っ張られているので、当麻は大の字となって悲鳴をあげていた。
「待って! これ俺の意見は無視ですか!? 腕が体とおさらばしそうなんですけどー!?」
うがーと叫び続ける当麻に、二人の怒りの矛先が変更された。
「トウマは黙ってて!」
「トウマさんはちょっと黙ってください!」
はい……、と情けない声を出す当麻。とてもじゃないが、先の戦いの勝利の起点となった少年とは思えない。
逆らったら殺される……
当麻は二人から発する尋常じゃない殺気が感じられ、言われた通りにするしかなかった。
バチバチッ! と当麻の目の前で火花が激しく散っているような程二人は睨み合っている。
なによ! そっちこそなんですか! と、口は開いていないが、目はそう訴えているように見えた。

アルビオンと、トリステインとの戦いが終わった夜とは思えない程平和であった。
時間を少し前に戻ってみよう。

夕方となり、当麻とルイズはシエスタの家で一泊する事になった。ここまでは良いのだ。良いのだったのだが……
シエスタの弟達が事の原因の発端であった。
当麻とルイズは、シエスタが村中にその戦果を言い広めたのか、英雄扱いを受ける事になった。
なので、夕飯は村人全員参加の大宴会となったのだ。みながワイワイガヤガヤして、何人もが当麻やルイズに話しかけたり、お礼を申し上げたりした。
そんな中、シエスタの兄弟達が総出で当麻に質問をした。
「トウマさんはお姉ちゃんとルイズさんがどっちが好きなの?」
カチン、と場の空気が固まった。いや、実際はルイズとシエスタだけなのだが、彼女らが持つ範囲が馬鹿でかく広いのだ。
村人全員シーンと黙る。え? え? なんですかこれー!? と事の状況に理解出来ていない当麻。
すると、その空気を粉砕するかのようにシエスタの口が開いた。
当麻の腕を、胸を押し当てて優しく握った。
「もちろん私ですよね? トウマさん♪」
なぜでしょう、顔は笑っているんですがなぜか脅されている気分なのですが……てか待て、この感触は、まさか! まさかだったり!?
ぉぉぉおおお!? とギャラリーのテンションが上がっていく。
一方のルイズはちらりと自分の平面な胸を見る。どう考えても、これに関して勝ち目はゼロに等しい。


だからといって諦めるわけではない。
カーッと赤くなり、こちらも負けじと逆側の手を握る。
「なによ! トウマはわたしの使い魔なんだから!」
わたしの、っていろいろマズイ表現として捉えられるだろうが! って痛い! 強く握りすぎですルイズさん!
天国と地獄を同時に体験をするってこういう事なんだろうなあ~、と現実逃避をする当麻がいたりする。
一方のギャラリーはルイズの発言にさらなるテンションを上げる。
「両手に花とはこのことかっ!?」
「羨ましいぞトウマ君!」
「俺シエスタのこと好きだったのにー――!!」
「まずいぞ、一人辛い現実に耐え切れず飛び出しちまったぞ!?」
「心配するな死にはせん! それよりこんな面白いもんそう見られんぞ!」
アイアイサー、と村長に敬礼して、飛び出した青年見捨てる村民。さすがタルブ村、連携はばっちしである。
しかし、ただ一人
「ほうトウマ君。やはり君はわたしの可愛い娘を奪おうとしているんだね……うふふ、うふふふふふふふ」
洒落じゃない笑みを浮かべちゃったりしている。
そして話が最初に繋がったというわけだ。

「それじゃあトウマさんがラ・ヴァリエールの使い魔じゃなければいいんですね! トウマさん! 早く契約を断ち切ってわたしと一緒にやっていきましょ!」
「ま、待てそれは――――」
「うぉぉぉぉおおおおついにシエスタが言ったぞぉぉぉおおおお!?」
無理だって、って言う前に、村人全員が一丸となって喜ぶその大音量には、ありと象の差ぐらいある。
そこまで言われたら、ルイズも黙っているわけにもいかない。
「なによ! そんなことできないわよ! それにこんな所で暮らすより魔法学院での暮らしの方が何倍もいいんだから!」
「いや、できるやん」
「あんたは黙ってなさい!」
今にも拳が飛んできそうな勢いで、ルイズは当麻を無理矢理ねじ込む。しかし、シエスタはそのまま当麻の言葉をみすみす捨てるわけがなかった。
「ほら! できるじゃないですか! これなら問題ないですね! 早く決めてください!」
「ななな……ふ、ふんだ。どのみちトウマはわたしを選ぶのだからなんら問題はないわ!」
さあ、どっち!? と村人まで当麻に迫ってくる。
(と言われてもなあ……)
ちらっと二人を見る。


普通に考えるならシエスタだよな。ルイズは毎回殴ったりいろいろしてくるし……。つかルイズもシエスタも俺好みじゃないっていう。
ちなみに当麻の好みのタイプは寮の管理人のお姉さんである。
「ってまてい! つかなんでその二択しかないんですか!」
おお! ここで大穴か!? と叫ぶやじ馬に、当麻は声を荒げた。
「違うっつーの! 俺は誰も選ばないんです! 以上当麻先生のお話は終わり。次回のインタビューに期待して下さいッ!」
ビキィ! と空気が引き裂かれたような音がした。当麻以外全員の背後にどす黒いオーラが漂う。
「あれ……、なんか俺やっちゃいました?」
アハハハハ、と笑う当麻に、ガシッと村の一人が羽交い締めをする。
そして、全員がニヤリと口元が割れるような笑みを浮かべる。もちろんです♪と体が言いかけている。
このままでは殺されてしまうと感じたのか、当麻は最後に負け惜しみっぽく
「待って! ほらぶっちゃけまだ心の準備が……っていうという誰も傷つくことのない平和的選択肢があってもいいと思うのですがどうでしょう?
 駄目ですか駄目ですねごめんなさい!!」
最後の言い訳も、自己完結してしまった。
瞬間、それを遺言にするべく少年の敵が襲いかかってきた。
もちろん全員で。

(つ、疲れた……)
襲いかかる一歩直前、なんとか脱出に成功した当麻は、村中を逃げ回った。あるときは他人の家の中に隠れ、あるときは草むらに隠れ、またあるときは屋根の上に隠れて時間が経つのを待っていた。
指名手配された犯人の気分を満喫した当麻の体は、休みたいと悲鳴をあげている。
時刻は既に深夜、二つの月が照らす人影は当麻しかいない。虫の鳴き声が、気分を心地よくさせる。先ほどまでの騒音問題はいつの間に解決したのだろうか?
ふあ、と小さい欠伸をかき、今にも落ちそうな瞼を必死に堪える。早く帰って寝よ、そう思いシエスタの家に着き、扉を開くと、
父親が鬼のような形相でこちらを待ち構えていた。
(ここにきてラスボスですかー!?)
おそらくずっと待っていたのだろう。そう思うと、正直怖い。


この最後の関門を突破しない限り、安眠という名のハッピーエンドを迎える事はできない。
「トウマ君」
「はい、なんでありましょうか」
あまりの迫力に、逆らう事なく敬語で応えた。レベル一で早速ボス戦とはこのような感じである。
父親はちょんちょんとこちらの方に来いと指を動かした。言われた通り当麻は入る事にした。
そして目の前で座る。もちろん正座でだ。
「きみのおかげで村を救った英雄であり、また勇者である」
当麻は父親が何を言いたいのかよくわからず、とりあえず頷いた。
「はあ……」
「わたしはそんなきみが大好きだ。だから娘を渡しても構わないとさえ思った。しかし」
父親は告げる。誰よりも娘を大事にしている父親だからこそ言える。
「娘を泣かせたら殺すよ?」
すらりと言った。朝交わす挨拶みたいにごくごく自然に。
表情も柔らかく笑っている。ただし、それは口だけであった。
それじゃあお休みと残し、父親は自分の部屋へと戻るため立ち去っていった。ただ一人、ぽつんと取り残された当麻。
しばらく凍りついていたが、数分後、それが溶けたかのように口を開く。
「俺……生きて帰れるかな?」
己の不幸に困る当麻であった。

三日後、トリステインの城下町のブルドンネ街では、先の戦勝記念のパレードが行われていた。
アンリエッタは、聖獣ユニコーンにひかれた馬車に乗って、手元に書かれた報告書に目をやった。
外では人々が歓声をあげている。しかし、アンリエッタはそれらの声を右から左へと流し続け、読み始めた。
捕虜となった竜騎士達は不思議な事にみな記憶を失っていた。と言っても、言葉とか動作もわからない訳ではない。
あくまで『記憶』を失っただけで『知識』は生きているのだ。
だから敵軍の情報とかそういったものは何もわからない。なぜこうなってしまったのかも。
しかも、捕虜になった全員……いや竜騎士隊全員が同じ事を言ったのだ。
誰であっても、これなら何かあったのでは? と思い、なぜこうなったのかと気になる。そこで、この報告書を作成した衛士は調査を続けた。


ぴらっと紙をめくると、現地、タルブ村での報告が書かれてあった。
敵をあのようにしたのは、アンリエッタと旧知の間柄であるラ・ヴァリエール嬢と、その使い魔の少年のどちらかであること。
そして……、あの敵艦隊を吹き飛ばしたのもまた同一人物だと予測を立てていた。あの光は、どうやら彼らがいた付近で発生したらしい。
ならば、あの光を発生したのも二人の内どちらかではないのだろうか? という仮説であった。
本来ならば、直ぐさま二人に接触して話を聞こうとしたのだが、あの艦隊を一人ないし二人で全滅にさせたのだ。
スケールの大きさもあり、とりあえずアンリエッタ王女の判断を待つ、という形で終わっていた。
報告書を自分の隣の空いた席に置くと、窓から外を覗く。観衆の声援が絶えず耳に入ってくる。一緒に乗っているマザリーニは、そんな観衆に手を振ってこたえているので、アンリエッタも形だけそれにこたえた。
数で勝るアルビオン軍を破ったアンリエッタは、『聖女』と崇められるようになり、ますます人気を得た。
このパレードが終わったら、アンリエッタには戴冠式が待っている。母である太后マリアンヌから、王冠を受け渡される運びであった。
トリステイン内ではそれに反対する者もなく、同盟国ゲルマニアも、悩みはしたが皇帝とアンリエッタの婚約解消を受け入れた。
一国だけでアルビオンの侵攻軍を打ち破ったのだ。とてもじゃないが強硬な態度をとれるわけがない。
アルビオンの脅威に怯えるゲルマニアにとってトリステインは必要不可欠な国へと変わったのだ。
もっとも、アンリエッタ本人はあまりのり気ではなかった。母親は王座を空位のままにしたのに、自分が女王になるのはやはり心が痛む。
しかし、やらなければならないのだ。この国のためにも、民のためにも。
ふと思い出されるあの光。
自分に勝利と自由を与えた光。
おそらく決して忘れることのない光。
それを放ったのが……
「あなたなの? ルイズ」
誰にも聞こえないように小さく呟いた。


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