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ご立派な使い魔-18


知恵の実を食べた人間は、その瞬間より旅人となった……
アルカナの示す旅路を巡り、未来に淡い希望を託して。



「え? 今の何?」

きょろきょろとルイズは辺りを見渡すが、特に変わった様子はない。
いや様子は大変に変わっているといえばいるのだが。
五人のワルドと大きなゴーレムが、マーラの前に並んでいる。

「し……子爵。今、フーケという名前が聞こえたようだが。
 フーケといえば、あの世間を騒がせた盗賊……」
「フーケなどという人物はこの場にはいませんが」
「いや、でも……」

ウェールズが疑問を抱くのはもっともである。
ワルドの乗騎たるグリフォンが滞空しており、そこに乗っている女性は、

「どう見てもフーケよね?」
「間違いない」

キュルケとタバサが太鼓判を押すように、フーケ以外には見えないが。

「彼女はフーケではありません。通りすがりのおマチさんです」
「ちょ、それ、半分本名……!」

女性、というか。間違いなくフーケなのだが。
おマチさん、と呼ばれた女性は、頭を抱えてグリフォンに突っ伏した。

「親切な通りすがりのおマチさんが僕に手を貸してくれているのです」
「いやそんな、無茶な……」
「とにかく! 親切なおマチさんの力も借りて僕は戦う!」

無理やり誤魔化そうとするワルドだが、流石にこれは、と一同が思った時、別方向から応援が来る。

「そ……そうよ! みんなで力を合わせて魔王を倒す! それが決闘ってものよ!」

ルイズだった。これまた無茶な意見と言えるだろう。

「決闘は貴族が全存在を賭けて戦うんだから、どんな手を使ってもそれは認められるの!
 たまたま通りすがりのおマチさんって人がいて、ちょっとゴーレムを呼んだくらい、大したことじゃないわ!」

むきー、とでも効果音が聞こえてきそうなほど、ルイズは叫ぶ。
正念場だけに彼女もやれるだけのことはやるつもりなのだ。

「おマチさんって言われてもねえ……」
「なかなかの美女じゃないか。おマチさんの助力、僕は認めても構わないかな」
「おマチ……」

級友三人は意見がバラバラだった。もっとも、タバサのはあまり意見とは呼べない。
そうなると、後は当事者であるマーラの態度次第だが。

「なんの、ならば今一度味わわせてやるだけだわな。
 何人でもまとめて相手をしてくれるわ」

頼もしい限りである。
それを受けて、ワルドはフー……おマチさんに問う。

「だそうだ。遠慮なくやってくれ、おマチさん」
「……おマチって呼ぶのやめてぇ」

頭を抑えながら、おマチさんは杖を振るう。
そして、ずしりと重い音を立てて、ゴーレムが動き始めた。
とりあえずもう、戦うことにしたようだ。
同時に、5人のワルドが高速で散らばり、マーラを包囲する形を取る。

「ワルド! おマチさん!」

ルイズのその応援とともに。
ゴーレムは拳を振り上げ、ワルド達は杖を振るう。
戦いの火蓋は切って落とされたのだ。

「ウィンドブレイクウィンドブレイクウィンドブレイク!」
「エアハンマーエアハンマーエアハンマーエアハンマー!」

遍在が、それはもう物凄い勢いで風の魔法を乱射する。
というか、いくらなんでもこんな詠唱速度はないんじゃないかと思う程である。
閃光ってレベルじゃない。

「たっぷりと補給した精力のお陰さウィンドブレイク!
 むしろ使わないと暴発しそうなくらいさエアハンマー!」

精力と精神力はあまり関係ないんじゃないかと思われるが、まあ、ワルドの気の持ちようということだろうか。
この猛烈な突風の連打により、マーラはぶるぶると震えている。
一見するとあまり堪えていないように見えるくらいだ。

「いいや効いていないはずがない! 確かに玉に比べれば痛みは少ない部分だが!
 それでも、叩かれて痛まないはずがないのだ!」
「む……」
「ぐむむ」

自信満々のワルドの発言に、ウェールズとギーシュがそれぞれ股間を押さえた。
ちょっと痛い想像をしてしまったようだ。
あと玉とは何か。それについては、ここで語るべきことではない。

「おマチさん! しっかり動かしてくれよ!」
「だからおマチはやめてよぉ……」

弱弱しい声だが、おマチさんは依頼どおりにゴーレムを動かす。
マーラの目線が、遍在に向かないように、たくみにけん制する構えだ。
つまるところはこうである。

「ゴーレムで先生の攻撃をひきつけ、遍在がその隙に遠距離から攻撃する……
 攻防において隙がない、流石は魔法衛士隊長……!」

以上、ギーシュの解説であった。

そこで、マーラも動き始める。
ゴーレムに向けて頭を繰り出し、突撃を行うのだ。
その光景は、以前見たものとよく似ている。

「げっ」

おマチさんが悲鳴をあげた。
あの時と同じ攻撃ということは、これを受ければまた……

「安心したまえ! そこまで振動は届かないウィンドブレイク!」
「そ、そうだね……」

注意深く、ゴーレムでその突撃を受け流す。
確かにこのマーラの攻撃は、おマチさんの弱点を突くモノだが……
こうして見ているだけなら、それほどでもない。

「……ったく、本当にやたらに立派で……」

ゴーレムが拳を振り下ろした。
ぷるんとマーラは震えるが、足元の戦車は安定している。
むしろこの衝撃を利用して、反動のようにたくましい突き上げを繰り出す。
それは、丁度ゴーレムの下腹部に突き刺さり、一撃を与えた。

「くうっ!?」

おマチさんの全身に痺れが走る。
視覚情報だけで、そのような衝撃が走ったように錯覚してしまったのだ。

「な、なんてこと……」

そうやって驚いたのがいけない。
ゴーレムが怯んだ途端、マーラはあのリズムはそのままに、更なる強烈な突きを出してくる。

「あ、だめ、ちょ、それは、だめだって……」
「落ち着けエアハンマー! それはただの錯覚だウィンドブレイク!」
「そ、そういっても……」

ゴーレムの動きが怪しくなってきた。
それを見越して、ワルドの魔法も勢いを増す。
相変わらずマーラは黙々とゴーレムを突いているのだが、流石にぷるぷる震える速度が速くなってきた。

「もう少しだウィンドブレイク! あと少し持ちこたえてくれればいいウィンドブレイク!」
「だ、そう、いわれ、ても……」

そして。
吹き荒れる暴風が、ついにマーラの戦車を傾かせたのと。

「あ……はうっ」
「おマチさんウィンドハン……ウィンドブレイク……!?」

おマチさんがグリフォンに倒れこみ、同時にゴーレムが崩れ去ったのは。
まったく……同時であった。
すぐにグリフォンは降りてきて、ワルドの隣におマチさんを下ろす。
彼女は案の定痙攣しながら気絶しているようだ。

「……すまないなおマチさんエアハンマー。しかし……十分だウィンドブレイク」

おマチさんは倒されたが、同時にマーラもぷるぷると震えている。
このような反応を示したのは、今までの戦いの中ではなかった。
つまり。

「先生がダメージを受けているのか……」
「殿方も決して無敵ではないのね」

一応、衝撃は有効であるのだ。マーラの耐性的に。

「なかなか面白い戦い方をするものよ、ワルド。
 されど最早盾はなし。これよりは真正面よりのぶつかり合いとなろうぞ」
「……承知している」

遍在が消され、ワルド本体も貫かれるのが先か。
あるいはマーラが崩れるのが先か。
ワルドの耐久力はマーラとは比べ物にはなるまい。故に、それぞれの遍在が一撃にて倒されるはず。
つまり、五撃の猶予があるということだ。
一方のマーラの耐久力は窺い知れないが、如何せん一体であるので、攻撃を集中させればあるいは……

「……ワルド」

ルイズは両手を握り締めて、じっと婚約者を見つめる。
ここでワルドが倒れるようなことになれば、最早……

「ワルド! お願い! ……わたし、出来ることなら何でもする!
 だから……勝って! お願いよ、ワルド……!」
「ルイズ……ああ」

遍在が一斉に呪文の詠唱に入った。
一斉攻撃をかけようというのだろうか。

「ぬうう!」

そして、やはり同時に五発もの魔法が飛ぶ。
瞬間に強烈な威力を叩き込まれて、マーラが大きく揺れた。

「ぬう! ふん! はぁっ!」

それだけで終わるはずもない。
一斉射撃が、絶え間なく続いていく。
マーラは受けるだけで、ゆれ具合が増していくだけに見える。

(……勝てる!)

そう、ワルドが確信した。次の瞬間。

「……子爵は」

ギーシュが、切ないような、悲しいような声で呟く。

「先生に対して子爵はあれほどの振動を与えてきた訳だ。
 それが何を意味するか、子爵は理解していない……」

薔薇の花びらが、儚く散って落ちる。

「先生に対してあのような攻撃。
 それはすなわち、先生を『しごく』ということに……なる。
 先生をあれだけしごけば一体、何が起こるだろう?」

マーラをしごく。……そう。それは。

「子爵は……気の毒だが」

ギーシュの目から一滴、涙が零れ落ちた。
そして決定的な言葉を捧げる。

「知恵の実を食べた人間は、その瞬間より旅人となった……
 アルカナの示す旅路を巡り、未来に淡い希望を抱く……
 しかし、アルカナは示すんだ……」

すなわち。

「死を乗り越え、節制を尽くし、悪魔の誘惑にも負けず……
 そして辿り着いた先には、ご立派な塔が待ち受けていることを」

それは、16番目の象徴である。

「いかなるモノの行き着く先も……
 ご立派な塔だということを!」

「グワッハッハッハ!」
「な……なぜ笑える!?」

ワルドの猛烈な攻撃によりぶるんぶるんと盛大に揺れていたマーラが、大音声で笑い声をあげる。

「お主が風の使い手であったことが運の尽きよ!
 お陰で十分に溜めさせてもらったわな!」
「ど、どういう……ことだ!」

ぴくぴくと震えるマーラが、一際大きくなった……そんな錯覚を覚えて、ワルドは動きを止める。
そして。マーラの先端が……

「マララギダイン!」

先端から。
どろりとした、緑色の……炎が。
取り囲む遍在、そしてワルドに向けて飛び掛る!

「ぬっ……ぐっ……!?」

べちゃりとした質感の炎。それは矛盾した存在にも思えるが。
だが確実に燃え盛る、どろっとした炎が、ついに遍在と、ワルドを……

「ぐ……ぐう……っ……!?」

包み込む。

「ぐわアッー!?」

火炎が、場を支配した。

遍在が燃え尽きていく。
風はどこにでもあるが、同時にどこにもない。
たちまち、それは消え去ってしまった。
そして残った本体も。

「ぐあ、アッ……」

全身を包む炎に悶えるばかりだ。
無惨な光景に、場の誰もが目をそらした。

「勝負あったか……」

ウェールズはぽつりと漏らしたが、これも誰もが思ったことだろう。
あの圧倒的な火炎の前に、ワルドは既に手遅れである。
……いや。
ただ一人、まだ諦めきれないモノがいた。

「ワルド! ワルドぉ!」

燃え尽きようとするワルドに駆け寄り、彼の手を……
炎に包まれたその手を握る、ルイズである。

「ワルド! わたし、わたし……そんな、こんなの……!」
「う……ル、ルイズ……」

その声に、ワルドは目を開ける。

「こんな、こんなの……」
「ルイズ……ルイズか……」

ルイズが、ワルドの頭を抱きしめ、その薄い胸に抱えた。
……すると。なんという奇跡だろうか?

「ルイズ……おお、ルイズ!」

炎に呑み込まれたワルドが、たちまち起き上がったのだ。
そして全身に風がまとわりついたかと思うと、すぐさま炎は消え、むしろ以前よりも輝かしい姿となる。

「ルイズ……君の声がある限り、僕は……僕は何度でもたちあがるさ」
「ワ、ワルド……!」

優しい目で、ワルドはルイズを見る。

「ああ……そのひらべったい胸の感触。
 お陰で僕はこうしておきあがることができた」
「え」

神々しささえ感じさせる迫力で、ワルドはゆっくりと杖を持ち上げ、マーラに向ける。

「何度でも発射してくるがいい。しかし何度受けようとも、僕は萎えない!
 何故なら、ルイズがここにいるからだ!」
「え。ワルド、何言ってるの?」

もう一度、ワルドはルイズを見つめる。
なんか、ねっとりしていた。

「ここに最高のネタがある。ならば僕は萎えない! 何度でもたちあがるさ!
 マーラどの。貴方がどれだけご立派でも、僕は永遠に維持できる!」
「ほう……」

どうもきなくさくなってきた。
ルイズは、ちょっと嫌な予感を覚えて、ワルドを見上げる。

「な、何を言っているのワルド?」
「ルイズ。君のお陰だよ。僕はどうやら……
 君がいる限り、決して萎えない体になったのだ」
「……え。ちょ。……なんか嫌な感じよ?」

瞳を閉じて、ワルドは語る。

「思えば……思えば本当は、君を利用するだけのつもりだったんだ。
 君の力は虚無のはずだからそれを手に入れれば……とね。
 その為に、婚約者の立場を利用しようとしていた」
「え。え。え」
「しかし……この旅。この旅は驚いたよ、ルイズ。
 君があんなにも無防備に、僕にすがりついてくるのだから……
 利用することしか考えていなかった僕は、君のそのギャップに……」

ここは照れくさそうに、ワルドば帽子で目を隠す。

「その可愛さにすっかりほだされてしまったのさ。
 ……趣味まで変わってしまうくらいね」
「えー」
「ルイズ。……ああ、君の全てが愛らしい。
 その、まったくふくらみのない身体の全てが」
「……えー」

要するに。

「僕はロリコンになってしまったのさ!」
「……ワルドぉ……」

つまり、なんだ。どういうことかというと。

「つまりだね、子爵はこの旅で、ルイズから思いっきり慕われていた訳だけれどもね」
「無防備に自分にすがってくる娘。それはまあ、好意を抱くのも無理はないわね」
「そう。ルイズは無意識に子爵を誘惑していたんだね」
「で、子爵はそれにコロっと参っちゃって……」
「……ああなったという訳だね。いや、男殺しだねミス・ヴァリエール」

と、いうことらしい。

「わ、わたしの自爆……?」

唖然とするルイズ。なんだ、この展開。

「そうさ! 認めよう、僕はすっかりロリコンだ!
 だからルイズの為に命を賭けよう! 野心も大義も知ったことか!
 僕はそのために今、生きている!」

人生の転換具合も凄まじいものがある。
男らしく言うべき発言でもないだろうに、なかなかワルドもやるものだ。

「己の心の赴くままに! 虚無の真理なんて、可愛い女の子の前に意味もあるものか!
 ……違うかい、マーラどの!」
「うむ!」

マーラが大きく笑う。

「よくぞ境涯に辿り着いたな、ワルドよ!」
「その通り! 故に僕は倒れない! 貴方を倒すまで、決して……!」

もう一度杖を構えるワルドだったが、しかし。
割ってはいる声がある。

「そこまで! 勝負あった!」

見ると、涙を流しているウェールズがいた。

「この勝負は子爵の勝ちだ! 異論はなかろう、使い魔どの!」
「あろうはずもないわな」

ニヤリと笑うマーラと、そして、やはり……と頷くほかの者達。
いや、気づけば礼拝堂の入り口には、城の者二百名が皆集まっているではないか。

「素晴らしい勝負でしたぞ!」
「お見事でした、ワルド子爵!」
「人間の誇りを見せてもらいました……!」

盛大な拍手が飛び交う。誰もが、涙を流していた。

「僕の……勝ち……?」
「そうだ、子爵。君は今、人生の勝者となった!
 誇りたまえ! これほどの勇気、私も一度たりとて見たことはない!」
「勝者……はは。そうか……僕は……」

ワルドも泣いていた。
そして駆け寄ってきたウェールズと、ひしと抱き合う。

「子爵、お陰で……私も、自分に正直になろうと思えたよ」
「それは……どういうことです、殿下」
「ああ。……決心したんだ。誇り、名誉。それはとても大事なものだが、しかし……
 しかし。……しかし!」

かっと目を見開いて、ウェールズは叫ぶ。

「アンリエッタとすげぇニャンニャンしてえ!」
「ニャンニャン!?」
「ニャンニャン!!」

ギーシュも駆け寄ってきた。
ワルド、ウェールズ、ギーシュと、三人で抱き合い、盛大に泣く。

「上から下から!」
「上から下から!?」
「上から下から!!」

三人、すなわちガイア教のギーシュとロリコンのワルド、それからウェールズ。
ろくでもないことを叫んでいる。

「前から後ろから!」
「前から後ろから!?」
「前から後ろから!!」

ひどいにも程があった。

「つまり、私の可愛いアンリエッタに色々したいので!
 死んだら無理である以上! 私は生きる! 生き延びて、ついでにアルビオンを奪回する!」
「おお……!」
「殿下!」

城内の者どもも、こぞって涙を流す。
ただ気になったこともあるので、ルイズはおずおずとウェールズに言う。

「で、でも……姫さまはもうすぐ結婚するんですよ?
 そのためにここに来たんですが……」
「ということは……」

ウェールズは、更に笑顔を浮かべる。

「人妻じゃないか!」
「人妻……!」
「素晴らしいですぞ、殿下!」

もうこいつらは駄目らしい。

「……何よこれ。もうどうなってるのよ。
 マーラは……もう、どうしようもないの?」
「否」

ところが……
絶望のあまり漏れたルイズの呟きを、否定したのは。
なんと、マーラ本人ではないか。
いやこうして見ると、なんとマーラの身体がうっすらと透き通ってきている。

「……え? マーラ、あんた、どうしたの?」
「いよいよ時間が来たということだわな」
「じ、時間? 何がどうなってるの?」

そうこうしているうちにも、マーラの身体はどんどん透けてくる。
これは何事と、他のものも集まってきた。

「小娘よ。実は、ワシはこの世界の住人ではない」
「え……ええ!? そ、そうなの!?」
「なんと……確かに、この世界にあるまじき御姿とは思っていたが……」
「まさか、先生が異世界の住人だったとは……」

誰も気づいていなかったようである。

「異世界の存在であるため、この世界に存在を続けるにはマグネタイトを定期的に補充せねばならなかったのじゃ。
 ワシは、それをお主の肉体から受け取っておったが……」
「そ、そういえば以前にそんなこと言ってたような……でも、マグネタイトって何なのよ?」
「簡単に言えば人の心のうねりだわな。怒り、喜び、悲しみ、苦しみ。その動きが生み出す代物よ」

使い手の力の源みてーだな、とデルフリンガーが呟いた。

「小娘。お主はそのマグネタイトを、他者よりも豊富に持っておった。
 だからこそ、ワシはこれほど長く存在できたのじゃ。
 ワシのような魔王は、本来であればマグネタイトの消費激しく、たちまち枯渇するものというにな……」
「そ……そうだったの。でも、じゃあ、どうして急に透けて……」
「……いかに小娘のマグネタイトが豊富であったというても限りがある。
 すなわちついに、小娘のマグネタイトが枯渇しようとしておるのじゃ」
「こ、枯渇したら……どうなるの?」

「小娘が死ぬ」
「……な、なんですってぇぇ!?」
「あとワシもスライムになる」

唐突に死亡宣言である。
ルイズも、これは慌てるしかない。

「あ、あとどれくらい!? どれくらいで枯渇するの!?」
「あと三分だわな」

口から凄い勢いでルイズが噴出した。
ここのところ、急展開の度が過ぎる。

「これを防ぐ方法は二つ。ワシと小娘が合体し、小娘が悪魔人間となること」
「あ……あんたと合体?」

つまり文字通りご立派なルイズになることか。

「悪くないんじゃないだろうか。ミス・ヴァリエール」
「いや、それは僕は駄目だな。やはりついているのはちょっと……」

下らないことを言う野郎二人はさておいて。
ルイズは必死でマーラを揺さぶる。

「もう一つは!? もう一つは何なの!?」
「ワシがこうして消え去るか、じゃ」
「そっち! どう考えてもそっち!」
「だからこうして消えかかっておる」

ほっと胸を撫で下ろすルイズである。
と、マーラのもとにギーシュやキュルケが駆け寄ってきた。

「先生! これでおさらばなのですか……」
「うむ。お主へ伝授したことはまだまだ中途なれど致し方ないことよ」
「……いえ。これ以上は、僕自身の手で極めましょう」
「ならばよし。赤毛の小娘は……お主にワシの一撃を食らわすことは敵わなんだな」
「いいえ、殿方。あたしも、あたしだけのご立派を見つけてみせますわ」
「ほほう……頼もしき子らよ」

別れの光景。しかし涙を流す者はいない。
ご立派に触れたものは自らもご立派を目指す。
ならば泣いている暇などない。ただ、道を進むだけだ。

「……もういいから消えてほしいわ」
「グワッハッハ。小娘の照れ屋は終わらんのう」
「違う……わよぉ」
「しかし覚えておくがよいぞ、小娘よ。
 人は頼るモノ、すがるモノがなければ生きてはいけぬ。
 お主が使い魔を召喚しようとて、人がいる限り、人が求める限り宇宙の意志は何度でもナニを生み出すであろう……
 では、さらばじゃ! グワッハッハッハ!」

マーラの身体は白い霧のようなものになって、玉座の間に広がっていく。
それがまとわりついたタバサとルイズは、不快な顔でぶんぶんと振り払った。

「先生、おさらばです。必ずやハルケギニアは僕の手で、ガイアに染めましょう」
「さらば、我が生涯に唯一の強敵よ。ルイズに捧げる愛でそれに応えよう」
「アンリエッタの色んな声を、私のご立派でもって貴方に届けてみせよう」

野郎どもの最低な送る言葉である。
キュルケはぱちぱちと拍手しているが。心底最低だ。
特にウェールズ。
このままでは、トリステインとアルビオン王家間での一大スキャンダルは間違いない。
ともあれ。
こうしてマーラは完全に消滅し、その名残も消え去った。
途端、ルイズは身体がふっと軽くなるのを感じる。

「ジャスト、二分五十九秒」
「……あ、危なかったのね」

タバサはカウントしていたらしい。
その言葉を信じるなら、まさに辛うじてルイズは救われた訳だ。

「これで、めでたしめでたしなのかしら……?」

マーラは消滅し、ルイズのあらゆる危機は去った。

「終わってみればいい思い出……でもないけれど」

ウェールズは生きる気力をみなぎらせているし、ワルドもレコン・キスタからすっかり足を洗うつもりのようだ。
その理由が自分というのが、彼のカミングアウトのお陰でちょっと……その、アレだが。
でも、まあ……
誰も死ななかったのは、いいことなのだろう。きっとそうだ。
そうと思わなければ、ルイズはなんかやるせなかった。


マーラの消滅によってご立派は失われたが自由が残った

無論ご立派を求める自由もある

我らを縛るものはもう何もない

さあ、行こう。何者の支配も無くなった世界へ……


その後……
アルビオン王家にまんまと逃げられたレコン・キスタは、トリステインへの圧力を強めていく。
しかし地下に潜り、執拗なゲリラ活動を続けるウェールズらによって、レコン・キスタもそう簡単には動けない。
アンリエッタに色々したいという一念のウェールズは、実に巧妙なゲリラ活動を行ったのだ。

一方、トリステインでは……
ワルドからレコンキスタの情報を聞いて、アンリエッタはただちに防備を固めるよう命令を下した。
何しろ中枢に近いところにいたワルドの情報なので、このアドバンテージは大きい。
ゲリラ戦によって地味に戦力を削られるレコン・キスタに対して、トリステインはより確実な防御を得ていく。

やがて、レコンキスタは、挽回のためトリステインに攻撃を仕掛ける。
しかし相次ぐゲリラ活動で士気が低下し、内部引き締めのための粛清が行われたレコン・キスタの人材は枯渇しており……
また、戦力の要の飛竜隊は、獅子奮迅の働きを見せたワルドのグリフォン部隊によって散々に打ち破られた。
更にはレキシントンの内部に忍び込んでいたウェールズの一派による工作で、旗艦が失われ……
ついに、正面からの戦いでレコン・キスタは敗北してしまったのである。

この戦いの後、戦女神としてアンリエッタは称えられ、更に亡国の王子にして英雄、ウェールズとの結婚が発表された。
必ずアルビオンを奪回するという意志のもとであるが、愛する人が隣にいるのである。
アンリエッタは、その幸せを噛み締めつつ、着実な内政を行うと決意したようだ。
この幸せはまさに魔法学院のあのオブジェの効果なりと、アンリエッタはガイア教に支援を開始したとも伝えられるが、定かではない。
ただ、この時からガイア教がますます隆盛を見せ、初のガイア神殿が魔法学院に作られたとのみ歴史には記されている。

後の世に伝えられる名は以下の通り。
ガイア大司教、グレートギーシュ。
ガイア三司教が一、ロリコンのワルド。
ガイア三司教がニ、姫フェチのウェールズ。
ガイア三司教が三、老いてますますお盛んのオスマン。
ガイアの巫女、口で色々とアレだったアンリエッタ。
ガイア司祭、精力絶倫料理のマルトー。
これらの人物がガイア教をおおいに栄えさせ、後々まで伝えていく。


そして……我らのご立派なルイズは……


(嫌な……嫌な期待を感じるわ)

何しろ使い魔を失った訳で、待ちに待った再召喚の時である。
これくらいは落ち着いてやろうかと思っていたのだが、どこでどう聞きつけたものか。

「ミス・ヴァリエール、頑張ってくださいね」

なんか、目つきのおかしい平民のメイドはいるし。

「先生と比肩しうるような使い魔を頼むよ」
「僕はルイズを見ているだけで幸せだなぁ」

例の変質者二人はいるし。なお、ワルドとの婚約はお預けになった。
実質マーラを倒したという訳でもないし……それに、ちょっと、その。アレだし。

「ルイズ、次も凄いの一発頼むわよ」
「……卑猥」

キュルケとタバサがいるのは……まあ、この二人はいても当たり前か。

「期待しています! ミス・ヴァリエール!」
「うむ。やはりこう、私もじゃな」

学院の教師は皆集まってきているし。シュヴルーズは本当にいい加減自重しろ。

「アンリエッタ、次はどんなのが来るのだろうね」
「ルイズですもの、きっととても素晴らしいモノを呼び出しますわ」

例の王家の二人はいるし。

何もたかが一生徒の使い魔召喚に、皆で集まってくることもないと思うのだが……

(エロのルイズなんかには、ご立派なルイズなんかにはならない。
 きっと、きっとまともな使い魔を呼び出すんだから)

そして、詠唱を開始する。

「宇宙の果ての地球の日本にいるわたしのシモベよ。
 神聖で美しく、そして、強力な使い魔よ!
 わたしは心より求め、訴えるわ……本当に! 心から! もう何でもするから!
 いきなり下着洗えとか言わないし、ご飯も美味しいもの食べさせてあげるから!
 多少は他の人に色目使っても……ちょっとくらいなら見逃してあげるし!
 でも巨乳に色目使ったら怒るけど!
 それでもなんでも……とにかく……お願いだから! 我が導きに、答えなさい!」

切実な詠唱である。しかもやけに地域が具体的だ。どうやって知ったのやら。
しかし効果は確かにあったようだ、あの時と同じように爆煙が現れて……



結論から言おう。
確かにルイズのサモン・サーヴァントは狙い通りの効果をあげた。
地域まで指定するくらいだからまったく大したものだ。
ただし。
地球の日本、まではよかったのだ。
なのだが。

東京、ではなかった。

ちょっとばかりずれてしまって、長野に狙いが届いてしまったのだ。

東京ではなく、長野。この結果として……



「ほえほえ……わしゃあ邪神ミシャグジさまじゃあ……
 今後ともよろしゅう頼むぞよ……」

またしてもチン○です。本当にありがとうございました。

「あ”---------!?」



ご立派な使い魔 完

めでたし、めでたし


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