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三重の異界の使い魔たち-06


~第6話 最初の朝withメイド~

「結局、一睡もできなかった……」
 朝まで己がロリコン疑惑を検証していた才人は、窓から差し込む朝日を恨めしく見つめた。
その眩さが、寝不足の目を嫌みに突き刺してくる。
「そんなに眠りにくいんだったら、いっそベッドから出ればよかったのに」
 顔の傍に浮かびながら、ナビィが呆れた声を掛けてきた。それに対し、才人は顔をしかめて
応える。ナビィの言っていることはもっともだし、才人自身もそうしようかとは何度か思った。
 けれど、才人はそれを選べなかった。
「そんなわけにもいくかよ……」
 言いながら、才人は腕の中に抱く存在に目を向ける。青い髪をした小さな頭が、小さな寝息を
立てていた。そのタバサの静かな寝顔を見ていると、睡魔に咬まれて痛む頭が少し楽になった
気がする。
「こんなちっこい女の子が泣いてて、ほっとけないだろ……」
 昨夜のタバサを思い出す。夢の中で両親を呼びながら、涙を流し続ける姿。とてもか弱く、
今にも壊れてしまいそうな慟哭。女の子のあんな姿を見て、無視できるはずはなかった。
「そうだね……」
 ナビィもその気持ちを察してくれたのか、優し気な輝きを湛えて2人を見下ろしてくる。

「でも、そろそろ離してもいいんじゃない?」
「え?」
 言われて、もう泣いていない彼女を朝になってまで抱き続けていることはないと気がついた。
慌てて、才人はタバサを離して距離を取る。
 途端、どっと眠気が襲いかかってきた。たまらない倦怠感が、脳内を掻きまわす。
「うう、眠い……」
「そりゃそうだよ、一晩中起きてたんでしょ?」
「だって、会ったばっかの女の子と同じベッドで寝て眠れないって」
 欠伸交じりに答えてみせる。今までは、腕の中のタバサが気がかりで大して気にならなかった
のだが、いざ離してみると自分がいかに寝不足であるかを自覚してしまった。
「せめて、同じ部屋で何日か寝泊りしてからなら眠れると思うんだけど」
「それはそれでどうなんだろ……」
 やや呆れた風のナビィに苦笑を返していると、タバサが小さく身じろぎをする。

「んぅ……」
「お、起きたかご主人様」
「おはようございます、タバサ様」
 上体をゆっくり起こしたタバサに2名が挨拶すると、彼らの主はじっと才人の方を見てきた。
「な、なに?」
 無表情に見つめられて、思わず声が上ずる。
――もしかして、一晩中抱いてたのばれてるかな?
 やましい気持ちはなくともやましいことはしただけに、背筋が嫌な汗でぬれていった。そして、
無言の圧力を受け続けること約10秒、やがてタバサが口を開く。
「眼鏡」
「へ?」
 言われた意味が判らず、呆けた声が口から出た。
「取って」
「あ、はいはい」
 続いた言葉に、ようやく理解する。ベッド脇のテーブルから眼鏡を取り、タバサに手渡した。
やはりやましいところがあるだけに、動作は少し慌て気味で。
「ありがとう。それから、おはよう」
「はは、どういたしまて」
 やや引きつた笑みで返事を返しながら、ひとまず安堵の息をつく。どうやら、昨夜のことは
ばれていないらしい。
 そんな才人に怪訝としたのかしていないのか、タバサは無表情のまま受け取った眼鏡を
掛けた。次いで、彼女は部屋の壁の1点を見やる。
「ムジュラの仮面は?」
「ああ、まだ寝てるみたいだな」
 言われて、壁に張り付いたままのムジュラの仮面を見た。瞳の光を消したその姿は、まるで
ただの仮面にしか見えない。
「こうしてると、とても動いたり魔法使ったり使わせたりするようなしろもんには見えないな」
 近くの椅子に掛けておいたパーカーを着ながら呟けば、タバサがそれに頷く。
「生きてるか死んでるかも判らない」
「大きなお世話だ」
 タバサの言葉に反応し、苛立ち混じりの声と抜けるような音とともに、仮面の眼に光が戻った。
続いて、やたらと身体を震わせながら壁から離れていく。
「ヒトがまどろんでるからって、勝手なことを言ってくれるな」
「客観的考察」
 悪びれずに言うタバサに、ムジュラの仮面はつまらなそうに鼻――何処にあるのだろうか――
を鳴らした。
 そんな遣り取りを見ながら、才人はまたも大きく欠伸する。

「昨日眠れなかった?」
 それに気付いたタバサに問われれば、つい眼を泳がせてしまった。
「ああ、まあね」
 まさか夜通し彼女が泣かないようにしていたせいとも言えず、言葉に迷う。
「そんなに眠いなら、顔を洗ってきたら? 井戸水は冷たいから、よく目が覚めるよ」
 そこで、助け舟というわけではないだろうが、ナビィがそんな提案をした。彼女の言う通り、
眠気覚ましには冷たい洗顔が一番だ。
「そうすっか。タバサ、水場って何処かな?」
 首だけタバサに向けて尋ねると、何故か彼女は籠を才人に差し出してくる。その中には、これまた
何故かシャツやら下着やらが入っていた。
「ついで」
「は?」
 またも言葉の意味するところが判らず、首を傾げる。昨日から思ってはいたが、どうもこの
少女は喋る時の単語が少なすぎるきらいがあるらしい。
「洗濯」
「あ、そういうこと」
「それぐらい、洗濯物出された時点で気付けよ」
 タバサの捕捉に納得すると、ムジュラの仮面に茶々を入れられてしまった。言われてみると、
タバサの言葉足らずは否めないが、自分の察しの悪さもまた確かだ。無口な少女に、洞察力不足な
自分、実に先行きが思いやられる主従である。

 しかし、それでも何とかなるかと考えを切り替えるのが才人という男だ。気を取り直して、
タバサから洗濯物を受け取る。
「メイドに渡してくれればいい」
「ん、了解」
「私の洗顔用の水も汲んできて」
「はいはい」
 口数の割に意外と注文の多いタバサに、苦笑いが浮かぶ。
「では、被れヒラガ。飛んでいけばすぐだろう」
 言いながらムジュラの仮面が裏側を向けて近づいてくるが、才人は首を横に振る。
「いや、眠気覚ましに、歩いて行くよ」
「そうか? まあ、とりあえずついていくかな」
「ワタシも行くわ。学院の構造を少しでも把握しておきたいし」
 そして、才人はタバサに水場の場所を確認し、ムジュラの仮面とナビィを伴って水場へ向かうの
だった。



 魔法学院のメイドの1人、シエスタは洗濯籠を抱えて水場へ向かっていた。トリステインでは
珍しい黒髪に黒い瞳の彼女は、いつも朝早くから仕事を始めなければならない。
 なにせ、彼女の奉公すべき学院の生徒たちは貴族、それも精神的に未熟なその子弟たち。貴族は
往々にして傲慢であり、平民のことを顧みない者が大半である。大人の貴族でさえそうなの
だから、その子どもとなれば平民への態度は推して知るべきだ。たかが洗濯といえど、遅れたり
すればどんな目にあうか知れたものではない。
「よいしょっと」
 井戸の傍まで来ると籠をおろし、その付近に備え付けられている洗濯桶と洗濯板を用意する。
「さて、始めますか!」
 準備が整うと、袖をまくって洗濯を始めようとした。

「でも、ムジュラで飛んで風を感じるのも、眠気覚ましになったんじゃない?」
 そこへ、少女の声が耳に入ってくる。
「まあ、横着はよくないしさ」
「へえ、真面目なんだ」
 そちらを見てみれば、桶を持った黒髪の少年と羽の生えた光、怪しげな仮面がこちらに近づいて
いた。確か、学院生徒のタバサに召喚された3名だ。
「いや、面倒になってきたらムジュラの世話になるかもだけどさ」
「いい加減だな」
 仮面――確かムジュラの仮面と名乗っていたはずだ――が茶化す様に言えば、少年――サイトと
いう名前だったと思う――は笑いながら「まあね」と返している。ただでさえ奇妙な組み合わせの
3名が仲良さ気に談笑している姿は、益々奇妙であった。

「あれ? 君、昨日の娘(こ)だよね」
 やがて彼らは井戸まで来て、サイトが声を掛けてくる。
「あ、はい。おはようございます、皆様」
 立ち上がって礼をすると、光の少女――ナビィと昨日聞いた――が笑い掛けてくる。
「そんなに硬くならないで」
 穏やかな輝きを放ちながら彼女は言うものの、シエスタはやはり恐縮してしまう。
「いえ、でも皆様、貴族様の使い魔さんたちですし」
 貴族にとって使い魔はパートナーであり、使い魔とメイジは感覚を共有している。魔法学院の
メイドであるシエスタは、それを知っていた。使い魔を――貴族の感覚から見て――粗末にした
ことで腹を立てられ、職を追われた同僚もいないではないのだ。彼女らの主であるタバサは特に
高慢そうな様子はないが、それでも礼は尽くすべきだとシエスタは考えていた。
「そんなの気にすることないって」
 しかし、その当の本人たちの1人にそれは笑い飛ばされる。
「いえ、そういうわけには」
「いいからいいから」
 やはり遠慮の声を送ろうとするが、あっさりとサイトはそれを遮ってしまった。
「俺たちだってここの生徒の1人に仕えることになったわけだし、立場的には君と似たような
もんだよ」
「そうそう、従う相手が直属か全体かの違いだけだよ」
 サイトの言葉にナビィも続き、2名は――ナビィは多分だが――笑みを見せる。その屈託の
ない雰囲気に、やっとシエスタも自然に笑えた。
「オレとしては、かしずかれていいんだがな」
「黙れ、性悪」
 独りごつムジュラの仮面に、サイトが切れ味のいい眼と言葉を向けるが、向けられた方は
眼ににやついた様な光を浮かべるだけだ。仲がいいのか、悪いのか、よく判らない2名である。

「そういえば、君の名前なんていうの?」
 そこで、思い出したようにサイトが訊いてくる。そこで、彼らからはされたにもかかわらず、
自分の紹介をしていなかったことに気がついた。
「あ、はい。私、シエスタっていいます」
「シエスタか。じゃ、改めまして、俺は平賀才人、才人って呼んでくれ」
「ワタシはナビィ、よろしくね」
「ムジュラの仮面だ、ムジュラでいい」
 互いの紹介を済ませると、シエスタはサイトの持つ籠に眼がいく。
「サイトさん、それ、ミス・タバサの洗濯物ですか?」
「ん? ああ、そうだけど」
「では、そちらもお預かりしますね」
 言いながら、サイトから籠を受け取り、自分の持ってきたものの隣に並べた。
「ありがと、けど、それ全部君が洗濯すんの?」
「はい、そうですよ」
 シエスタが答えると、サイトは少し眉をひそめて洗濯物の山を見ていた。
「大変じゃない?」
 洗濯籠を指差しながら、心配そうな声を掛けてくれた。なにせ、数十人分の洗濯物が集まって
いるのである。基本的に貴族は服を汚すことが少ないとはいえ、人数があるのでその量は莫迦に
ならない。
 そんな彼の心配を少し嬉しく思いながらも、シエスタは笑って答える。
「大丈夫ですよ、これくらい」
 強がりではなかった。確かに勤め始めの頃はその膨大な量に閉口したものだが、今ではすっかり
慣れて、手早く綺麗に終わらせるコツもつかんでいる。なので、特に問題に思わずシエスタは
洗濯を始めようとした。

「あ、ちょっとタンマ!」
 なのだが、何故かサイトに制止を受ける。
「お近づきの印、っていうには変だけど、ちょっと手伝うよ」
「え、そんな、いいですよ」
 サイトの言葉に、もちろんシエスタは遠慮した。幾ら気さくな雰囲気だとはいえ、貴族の
使い魔たる彼に自分の仕事をさせることはできない。しかし、例によって黒髪の使い魔はそれを
一笑に付する。
「だから気にすんなってば。俺も力使うの慣れておきたいし。なあ、ムジュラ?」
「そうだな。せいぜい慣れてくれよ」
 話を振られたムジュラの仮面が、サイトに裏側を向ける。それをサイトがためらいなく被ると、
右腕を洗濯物の山へと向けた。何をしているのかと首を傾げるシエスタをよそに、サイトは何事か
呟く。
「ただイメージすりゃいいんだよな? それっ」
 掛け声が早いか、急に籠の中の衣類が浮きあがった。それにシエスタが驚くより早く、今度は
桶に張っていた水が球状になって宙に浮く。次いで、井戸から水が縄のように伸びてきて、その
水の球に給水していき、直径5メイル程の大きさにまで膨らませた。
 それから、浮き上がっていた衣類が次々に水の球へと放りこまれていき、最後に洗剤を飲み
込むと、水がすごい勢いで回転を始める。その回転で洗剤が大量の泡を立て、中の衣類が見る見る
泡に覆われていった。
 水の球の回転は、時に反転を加えながらも数分続き、やがて洗剤混じりの水が球の形を失って
捨てられる。宙に残った泡だらけの洗濯物は、また井戸から伸びてくる水の綱に作られた新しい
水の球に呑まれてゆすがれていった。そして、それが終わってまた水が捨てられたかと思えば、
今度は温かな旋風が衣類の周りで舞い踊り、洗濯物の水気がどんどん落とされていく。しばしの
後、温風が収まると、衣類が籠の中に戻されていった。
 シエスタは、半ば呆然としながらその中身を手に取る。
「乾いてる……それに汚れも完璧に落ちてる……」
 自失気味でそれを確認したところで、ようやくシエスタは我に返った。

「すごいです! サイトさんはメイジ様だったんですか!?」
 興奮しながら、シエスタはサイトに詰め寄る。目の前の、どう見ても平民にしか見えない
少年が魔法を使って見せたのだ。これは驚くなという方が無理だった。
 その当の本人は、ムジュラの仮面を外して苦笑の表情を見せる。
「俺が魔法使えるわけじゃないよ、俺はこいつの力借りてるだけ」
 言いながら、サイトが手にしたムジュラの仮面を指差す。指されたムジュラの仮面は、何処か
妖しい声音で言葉を発した。
「なんなら、被ってみるか? オレの力を貸してやるぞ」
 そう言うと、ムジュラの仮面はサイトの手を離れ、シエスタへと自身の裏側を向けてくる。
その背面を、シエスタは見つめてみた。
 暗い。ただの仮面の裏側、そうであるにもかかわらず、そこは異常に暗かった。まるで果てが
ないような、底なしの淵のような、そんな感覚を覚える暗がり。暗黒と呼んで差し支えないそれを
見ていると、何故だか冷たい汗が浮かんでくる。
「いえ、遠慮します」
 なので、シエスタは断りの声を上げた。魔法を使えるというのは少し好奇心をくすぐられるが、
それよりもこの得体の知れない仮面への警戒心の方が強い。第一、本人――むしろ本面という
べきか――には悪いが、このお世辞にも趣味がいいとはいえない仮面を同年代の少年の前で
被るのは、女の子として何か色々と捨ててしまいそうな気がするし。
「そうか、まあそうだろうな」
 ムジュラの仮面は、シエスタの言葉を特に気にした様子もなく、サイトの方に向き直る。
「オレの様な意思のある魔の仮面、なんの警戒も抜きで被る様な能天気、ヒラガくらいのもんだ」
 嘲るような調子のムジュラの仮面に、サイトが抗議の声を上げた。
「警戒しなかったわけじゃないだろ、5秒くらいは悩んだろーが」
「十分無警戒だよ……」
 呆れを隠さないナビィの声を受け、サイトは何やら拗ね始める。
「なんだよお前ら、俺ってそんなに能天気かよ……」
「うん」
「ちょっとは否定しろって!」
 声を合わせて肯定した2名に、サイトは再び抗議した。そんな使い魔たちの遣り取りを見て
いると、なんだか可笑しさがこみ上げてくる。

「フフフ、皆さん、仲がいいんですね」
 シエスタがそう言うと、サイトたちは互いを見合わせた。
「うーん、おんなじ子に召喚されて契約したせいか、なんとなく気が合ってさ」
「性格は全然違うのにね」
「出身も、種族もな」
 サイト、ナビィ、ムジュラの仮面の順に言われるが、最後の台詞に少し引っかかりを感じる。
「そういえば、皆さんってどちらから来られたんですか? 特にサイトさん、服装も名前の
感じも変わってますし」
 サイトの着ている服は、シエスタには見たことのないものだった。恐らく、何処か外国のもの
なのだろう。今でこそ比較的王都の近くにいるが、シエスタは元々田舎生まれの村育ち。外国の
ことはほとんど知らないので、少し興味があったのだ。
 しかし、その質問にサイトは寂し気な苦笑で応えてくる。
「遠いところだよ」
「どれだけ遠いかも判らないくらいね」
 サイトの言葉に、やはり憂いを帯びた声音のナビィが続いた。
「あの、どうしました?」
 いけないことを聞いてしまったのだろうか。何やら落ち込んだ様子の2名に、申し訳ない気分が
湧いてくる。
「いや、こっちのことだよ」
 そこで、サイトは気にするなと言わんばかりの笑顔を返してくれた。その優しさに、少し元気が
戻る。

「そんじゃ、俺は顔洗うか」
 そう言って、サイトが井戸水を汲もうとした。しかし、その動きはかなりたどたどしく、作業は
難航していた。井戸の水汲みをしたことがないのだろうか、見ていてもどかしくなってくる。
「サイトさん、汲んであげますよ」
 とうとう見かねて、シエスタは青い服の少年にそう申し出た。それに、サイトはばつが悪そうに
お願いしますとつるべ縄を渡してくる。
「お手本を見せますから、次からは私がやるみたいにして汲んでくださいね」
「あ、うん。ありがとう」
 頭を掻きながらのサイトの返事に、小さく笑みが漏れた。先程のいとも簡単に大量の洗濯を
済ませた時とのギャップに、なんだか可笑しくなってくる。
 そして汲んであげた水で、サイトは顔を洗いはじめた。
「くぁぁ、つめてえ! 一気に目が覚めるな!」
 ただの井戸水に、サイトはいかにも感動したような声を上げる。その新鮮そうな口ぶりに、
シエスタは首を傾げた。井戸の汲み上げに苦労したり、サイトは普段どのように水場を利用して
いたのだろうか。

「サイト、そろそろ戻らないと」
「主が水を待ってるぞ」
 同僚2名の言葉に、サイトはそっかと頷き、シエスタから手拭いを借りて顔を拭った。
「んじゃ、今度は自分でっと」
 言いながら、黒髪の使い魔は先程よりも順調につるべを引き上げ、桶に水を注ぐ。
「あ、そういや洗濯物ももう持っていっていいのか」
 言いながら、サイトが自分たちの持ってきた分の洗濯物を見やった。
「けど、洗濯物と水、両方運べる?」
 懸念するナビィに対し、サイトはムジュラの仮面を見ながら応える。
「仕方ない。ムジュラ、帰りは頼むよ」
「はいはい」
 返答しつつ、ムジュラの仮面はサイトの顔に覆いかぶさる。次いで、サイトが指を鳴らすと、
水の入った桶とタバサの衣類、彼らの持ってきた籠が浮き上がる。衣類が洗濯籠の中に全て
収まると、サイトはシエスタに向き直ってきた。
「それじゃあ、また後でな」
「あ、はい。また朝ごはんの時に会いましょう」
 挨拶もそこそこに、サイトたちは宙に浮いた荷物を伴い、学生寮の方へと飛んでいく。その
空飛ぶ背中を眺めながら、シエスタは大事なことを言い忘れていたと気がついた。
「みなさーん!!」
 まだ間に合う。口許にメガホン代わりの手をあてがい、3名の使い魔たちへと声を飛ばす。
「洗濯物、ありがとうございましたー!!」
 その叫びに、サイトたちは少しだけ振り返って手を振ってくれた。そして、また寮の方へと
宙を舞っていく。

 この日、シエスタに初めて使い魔の友達ができたのだった。
「そういえば、サイトさんの名前、感じがひいおじいちゃんに似てるかも」

~続く~

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