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mission 23 「Feather」


 オルレアンは一歩も動けなかった。
 動けないうちに、戦いは終わっていた。
「どうだ、SeeD。これが俺の……」
 自慢げに言う叔父は、途中で話しかける相手が既に動いていないことに気づく。
「何だ、死んだふりなどして、俺の油断を誘う気か?そんなことをしていては、俺が本当にトドメを刺すぞ」
 楽しげに笑いながら近づいて、手にした大剣を振り下ろす。
「…………」
 全く抵抗もないまま、背中から体のど真ん中を剣で貫かれた傭兵。
 剣を抜きながら、今度は女の傭兵の方にジョゼフは歩を進め、その体を蹴り飛ばす。50サントほど浮かび上がりながら裏返ったが、焦点の合わないまま開かれた目、だらしなく開いたままの口から零れ出す血もそのままで、やはり何の反応もなかった。
「……何だ、それは」
 つまらない、とでも言いたげにジョゼフは声をこぼした。
「見込み違いだったか」
 それだけ言って、くるりとその場を後にしようと後ろを向いたときに、固まっていたオルレアンは自分が何をするべきかを思い出した。
 杖にブレイドをかけ、出来うる限りの速度と力で後ろから叔父の背を突き刺そうとし――
 ジョゼフが振り返り様、横に振った大剣を胸部に受けた。
 幾度も振られ、先端以外刃こぼれした剣に切れ味は皆無といって良かったが、ジャンクションによる筋力の増加も手伝って、ささくれ立った金属の塊は正面から胸部への一撃でも脊髄へ重大なダメージを及ぼすのには十分だった。
 ぽん、ぽんとゴムまりのようにオルレアンの体も跳ねて行き、動かなくなった。
「…………」
 それを見届けて、ふ、とジョゼフは笑みを浮かべる。自嘲だ。
 何の、感慨もなく、暇つぶしは終わってしまった。さぁ、これからどうしようか。
 その時
「ん……?」
 鐘の音が聞こえた。ジョゼフ自身も幾度も耳にしたことがある、G.F.の召喚音だ。だが、今この場で誰がG.F.を呼べる?
「まさか……」
 はっとスコールを見ると、スコールを中心として床に炎が奔り、鳥のシルエットを描いた。そこからはっきりと質量を纏った、炎の鳥が浮かび上がる。
 甲高い鳴き声が一つ出て、その炎の鳥が上へ向かって飛んでいく。
「うお!?」
 炎に対しての属性防御は備えてあったのでダメージは受けなかったが、熱風をもろに受けてしまう。そして、そのジョゼフの目の前で――


「げほっ!がはっ!」
 肺に溜まっていた血を目一杯吐き出して、スコールは立ち上がる。
「これは……」
 床に残った鳥の形の焦げ跡から、推移を理解する。
「レオ……ン!」
 同じく血まみれのアニエスが自分のやや後方で立ち上がる。更にその向こう側ではオルレアンが起きようとしているのが見えた。
「アニエス!げほっ……もう奴に虚無を使わせるな!」
 血で汚れ、ズタボロになったジャケットを脱ぎ捨てつつスコールが叫ぶ。
「は、ハハハ!こいつは驚かされた!一体どういうことだ!?俺は確かにお前の体まで貫いたんだぞ!」
 目標は、歓喜に歪んだ表情を浮かべるガリア王、ジョゼフ!
「ドロー、ヘイスガ」
 キッとジョゼフをその視界に捕らえるスコール達に、オルレアンによって速度上昇の効果が付加される。
 オルレアンが擬似魔法を使えるのは、ある意味当然だった。
 叔父を討つため、あらゆる力を欲していた彼女がラグドリアン湖での戦いを経て改めて擬似魔法を見直し、その用法を身につけるに至ったのだ。
「連続剣……!」
 スコールは一足先に攻撃態勢へ入り、一気にジョゼフの懐まで踏み込む。
 本音を言えば、虚無を防ぐために即刻杖をどこかに吹き飛ばしたい。だが、杖を持っているジョゼフの腕にだってもちろんジャンクションの効果は及んでいる。腕を切り落とすのは至難の業だ。
 ならば次善の策として狙うべきはどこか?
(急加速するときに、確かに口が動いていた。やはりアレにも詠唱は必要。ならば……!)
 詠唱をさせなければいい。乱撃で、狙うのはその顔面。主に口!
 ライオンハートが徹底的にジョゼフの顔へと向けられる。ジョゼフも咄嗟に生物の性として腕で顔を庇い、一撃目は通らない。
 二撃目には顔から左右に構えられた腕の防御をすり抜けるために、下段から切り上げられたライオンハートがジョゼフの顎を直撃する。この衝撃で完全に腕のガードから顔が飛び出した。
「おおおおおお!」
 追撃追撃追撃。
 炸裂炸裂炸裂!
 喋らせないどころか息もさせないつもりでライオンハートを叩き付ける。トリガーを引く!
 度重なる攻撃で顎を割り、何とか口がきけないようにはした。
 この間に、後ろから聞こえていた声でアニエスがオルレアンからドローしたらしいレビテトを自身にかけたらしいことは把握している。ならば。
「送るぞ、アニエス!」
 フィニッシュブローとしてラフディバイドをトリガー付きで放ち、ジョゼフを遙か上空に打ち上げた。
「いい位置だ!」
 レビテトで体を浮かせ、調度品などを足場に謁見の間の天井すれすれまで飛び上がっていたアニエスは、本来直上から射撃を加えようとしていたのだが、獲物が向こうから浮かび上がってきたのだ。逃す手はない。
「装填、徹甲弾!アーマーショット、ファイア!」
 防御を無視できる弾丸で、上がってくる途中から射撃を加えていく。
 ほぼゼロ距離になったところで数度の銃撃により既に骨まで露出している左腕に銃口を押しつける。
「装填、破壊弾!キャニスターショット、ファイア!」
 杖を握りしめたまま硬直していた左手がどこかに飛んでいく。これで虚無の驚異は余程のことがない限り無効化された。
 破壊弾の反動でアニエスは上に、ジョゼフは下に距離が離れる。
 一方のスコールも遊んでいた訳ではない。ライオンハートのマガジンを入れ替えつつ、落下してくるジョゼフに少しでもダメージを与えるべくマシンガンを浴びせ続ける。
 ケアルガなどの回復魔法を所持している可能性も十二分にある。手心を加える理由は何一つ有りはしない。
「これで決めるぞ、アニエス!」
 落ちてきたジョゼフの体をライオンハートで貫き、その体を大きく上に掲げ、続けざまにトリガーを引きつつ飛び上がる。
「ああ!最後のとって置きだ!」
 破壊弾の衝撃で天井にいたアニエスも、天井を蹴りつつ次弾を装填。狙いを付ける。
「装填、波動弾!ハイパーショット!咆えろビスマルク!」
「全弾、持って行け!」
 上から浴びせられる波動弾のエネルギー。ライオンハートを刺したままの連続トリガー。
 上空でスコールとアニエスが交差する際に、スコールがライオンハートを振り抜き、波動弾のエネルギーも撃ち尽くされた。
 オルレアンの目の前に落ちてきたジョゼフは、左腕の肘から先が欠損し、腹部はライオンハートの衝撃と最後の振り抜きで辛うじて皮一枚で繋がっており、なによりその顔面はライオンハートの連撃でほとんど誰なのかも判らないという有様だった。
「任務、完了……」
 ジョゼフの落着に遅れること数瞬。着地したスコールは床に崩れ落ちた。傷は完治していないのだ。
 更にもう数瞬、レビテトの効果もあって遅れたアニエスがふんわりと着地して、荒い息のままオルレアンを見た。
「……僅かなりとも、話はさせてやりたかったが……」
 見るも無惨になりはてた叔父と、何を考えているのか静かな姪を見てそう呟くのは、彼女の方にやはり復讐者としてのシンパシーを感じているからか。しかし今回は、全く手加減している余裕がなかった。
「ふぅ……何とか勝てたな、レオンハート」
 一つ深呼吸をして息を落ち着け、相棒に近づく。だがその相棒はなにやらくらい顔だ。
「あの時はお前もやられたと思っていたが、よく私を回復するまで持ち直したな」
「いや、その認識に間違いはない。あの時俺もお前と一緒にジョゼフにやられていた。見てみろ」
 スッと先程自分が脱ぎ捨てた血まみれのジャケットをアニエスに突きつけてみせる。
「これは……」
 背中に大穴が空いているのが広げなくても判る。お気に入りのジャケットだったが、新調するしかあるまい。
「俺もお前もやられて、おそらくはオルレアンもそのあとやられたんだろう。起きたときに周りに火が見えなかったか?」
「あ、ああ。てっきりお前かジョゼフのファイガだと思っていたが……」
「あれはG.F.フェニックスだ。通常のG.F.と違って、こちらの意志に関係なく呼び出されることがある。フェニックスの羽を所持していて、一度でも使役したことのある人間がいるパーティが全滅したときなど、な。
 効果は、戦闘相手に炎の属性攻撃と、味方全体にレイズをかけるものだ」
 さっと取り出したフェニックスの羽は、スコールの手の中で燃え尽き、灰になった。
「ことがある。ということは、絶対ではない?」
「ああ。今回の勝ちは、偶然で拾ったものだ。もし俺がフェニックスをこれまで呼んだことがなかったり、もしくはフェニックスの羽を持っていなかったり、或いはフェニックスが出てきてくれなければ、俺たちは今も床に横たわっていたところだ」
 すっと先程まで倒れていた血だまりに目を向ける。
「……強敵だった。俺が今まで闘ってきたどんな相手よりも」
 そこでどっかと座り込む。血を失いすぎた。頭がふらふらする。
「傭兵部隊SeeD」
 ジョゼフの死体の方からこちらへ歩いて来つつ、オルレアンが声をかけてきた。
「任務の遂行、ご苦労。やはり、貴方達を雇って良かった」
「そう言ってもらえると、とてもありがたい」
 力なく、二人は微笑んだ。



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