翌日、ルイズが目覚めると、眠気眼の視界に見慣れぬ人影が入った。
「ひゃあ!?だ、誰!?」
思わず悲鳴混じりの声を上げる。
この部屋には今、ルイズしかいない筈である。
ルイズが何とも情けない顔で見ていると、人影がこちらに向かって軽く手を振ってきた。
この部屋には今、ルイズしかいない筈である。
ルイズが何とも情けない顔で見ていると、人影がこちらに向かって軽く手を振ってきた。
「やあ」
その声を聞いて、ルイズの寝ぼけ気味だった頭が一気に覚醒する。
この空気よりも軽い返事は昨日必死の思いで呼び出した使い魔・海東大樹の声である。
散々自分を虚仮にした上に三度自分の前から姿を消したあの使い魔である。
思い出しただけでルイズに怒りが込み上げて来る。
そんなルイズを尻目に、海東は扉の方を指差した。
この空気よりも軽い返事は昨日必死の思いで呼び出した使い魔・海東大樹の声である。
散々自分を虚仮にした上に三度自分の前から姿を消したあの使い魔である。
思い出しただけでルイズに怒りが込み上げて来る。
そんなルイズを尻目に、海東は扉の方を指差した。
「いいのかい?授業、始まってるみたいだけど?」
「!?」
海東の言葉でルイズは自分の今の状況を把握し、急いで着替えを始めた。
この時のルイズは目の前の使い魔に自分の着替えをさせる。という発想すら浮かばないほど焦っていた。
自分でも驚く程のスピードで服を着替え終えると、そのまま部屋を飛び出して教室へと向かう。
この時のルイズは目の前の使い魔に自分の着替えをさせる。という発想すら浮かばないほど焦っていた。
自分でも驚く程のスピードで服を着替え終えると、そのまま部屋を飛び出して教室へと向かう。
「行ってらっしゃい」
海東の言葉を背に部屋から飛び出すと、猛ダッシュで教室へと駆け込む。
息を切らしながら教室へ入ると、既に授業は始まっていて、不名誉な注目を浴びる羽目になった。
息を切らしながら教室へ入ると、既に授業は始まっていて、不名誉な注目を浴びる羽目になった。
「す、すみません……。遅刻しました。」
自分の席へと向かう最中、ルイズはあの使い魔にこの苛立ちをどう伝えてやろうかと算段していた。
「へー、これがこの世界の授業風景って奴かー」
「えっ?」
何処か馬鹿にした様な声を聞いてルイズが後ろを振り返ると、海東が壁にもたれ掛かりながらこちらを見ていた。
何時の間に……。とルイズが不思議がっていると、シュヴルーズがコホンと咳払いをした。
何時の間に……。とルイズが不思議がっていると、シュヴルーズがコホンと咳払いをした。
「ミス・ヴァリエール。授業中に余所見とは関心しませんねえ」
「!!も、申し訳ありません、ミス・シュヴルーズ」
「正直に謝るのは大変よろしいですが、それはそれ、これはこれです。罰として、ミス・ヴァリエールには皆の前で錬金の魔法を行ってもらいます」
シュヴルーズの言葉に教室中がざわめく。
「き、危険です。ミス・シュヴルーズ!」
キュルケが立ち上がって訴えるが、シュヴルーズはその進言を聞き入れずにルイズを教壇へと呼んだ。
ルイズもキュルケの横槍に思うところがあったのか、周りが止める声も聞かずに錬金を強行する。
その結果、教室内は未曽有の大爆発に巻き込まれた。
高みの見物で一部始終を見ていた海東はルイズの起こした爆発に興味をひかれる。
ルイズもキュルケの横槍に思うところがあったのか、周りが止める声も聞かずに錬金を強行する。
その結果、教室内は未曽有の大爆発に巻き込まれた。
高みの見物で一部始終を見ていた海東はルイズの起こした爆発に興味をひかれる。
「楽しいねえ。どうやら退屈しないで済みそうだ」
海東は笑顔でそう言うと指鉄砲のポーズを決めてから教室を後にした。
1人、教室の片付けを言いつけられたルイズは黙々と机を運んでいる。
魔法を使ってはいけないと言われたが、使えないのだから意味がない。
使い魔にやらせようとしたが、爆発の前までこちらを見ていた使い魔は既にいなくなっていた。
自分以外誰もいない教室。
先の爆発でよりガランとなった室内はまるで世界の終わりにさえ見えた。
魔法を使ってはいけないと言われたが、使えないのだから意味がない。
使い魔にやらせようとしたが、爆発の前までこちらを見ていた使い魔は既にいなくなっていた。
自分以外誰もいない教室。
先の爆発でよりガランとなった室内はまるで世界の終わりにさえ見えた。
「ううっ、うう……!」
ルイズは怒りと悔しさと情けなさと寂しさでポタポタと涙を零していた。
何故自分ばかりこんな目に遭うのだろうか?
せめて使い魔くらいもっとマシな使い魔は呼べなかったのだろうか?
ドラゴンやグリフォンとは言わない。
犬や猫だっていい。
せめてこんな時に側にいてくれるような使い魔がルイズは欲しかった。
しかし、ルイズの使い魔はあの常に飄々とした自分を馬鹿にしているとしか思えない様な男なのだ。
何故自分ばかりこんな目に遭うのだろうか?
せめて使い魔くらいもっとマシな使い魔は呼べなかったのだろうか?
ドラゴンやグリフォンとは言わない。
犬や猫だっていい。
せめてこんな時に側にいてくれるような使い魔がルイズは欲しかった。
しかし、ルイズの使い魔はあの常に飄々とした自分を馬鹿にしているとしか思えない様な男なのだ。
「うぇえ~ん」
誰もいない教室で1人、ルイズは声を上げて泣いていた。
一方その頃、海東は図書室へ来ていた。
ここトリステイン魔法学院の図書室は本来なら海東のような何処の出かも分からないような平民が易々と入れるような場所では無いが、海東はそんなの何処吹く風といった様子で本を読み漁っていた。
ここトリステイン魔法学院の図書室は本来なら海東のような何処の出かも分からないような平民が易々と入れるような場所では無いが、海東はそんなの何処吹く風といった様子で本を読み漁っていた。
「ダメか。全く読めない」
手当たり次第に本を取っては、パラッと閲覧してすぐにポイッと投げ捨てる。
海東の後ろには何時の間にか本が堆く積まれていた。
この様子に周りの生徒たちは怒ったり、注意したりというよりもただ唖然としていたが、唯1人怒りの青い炎を燃やしている生徒がいた。
それは通称、図書室の主・タバサであった。
彼女はとても本が好きで、いつも本を持ち歩き、暇さえあれば読書を嗜んでいた。
そんな彼女にとって、海東の行為は死罪に値した。
タバサは図書室に入り海東の行為を目撃するなりエアハンマーで吹き飛ばしてやろうと考え海東に杖を向けた。
その瞬間、海東はタバサの方を見向きもせずにディエンドライバーを取り出して銃口を彼女へと向けた。
海東の後ろには何時の間にか本が堆く積まれていた。
この様子に周りの生徒たちは怒ったり、注意したりというよりもただ唖然としていたが、唯1人怒りの青い炎を燃やしている生徒がいた。
それは通称、図書室の主・タバサであった。
彼女はとても本が好きで、いつも本を持ち歩き、暇さえあれば読書を嗜んでいた。
そんな彼女にとって、海東の行為は死罪に値した。
タバサは図書室に入り海東の行為を目撃するなりエアハンマーで吹き飛ばしてやろうと考え海東に杖を向けた。
その瞬間、海東はタバサの方を見向きもせずにディエンドライバーを取り出して銃口を彼女へと向けた。
「物騒だなあ。図書室では静かにするのは常識だよ?」
そう言うと、海東は目をタバサに向けた。
タバサは戦慄する。
彼女はとある事情により、同年代の少年少女よりも実戦経験を積んでいる。
その百戦錬磨の勘が目の前の男は危険だと告げた。
タバサは戦慄する。
彼女はとある事情により、同年代の少年少女よりも実戦経験を積んでいる。
その百戦錬磨の勘が目の前の男は危険だと告げた。
「……本を投げ捨てないで」
冷や汗の中、辛うじて絞り出した言葉がそれであった。
最も何も知らない者から見れば、タバサは相変わらず無表情に見えたのだが。
最も何も知らない者から見れば、タバサは相変わらず無表情に見えたのだが。
「本は大事に扱わないとすぐに傷む……」
タバサは唾をごくりと飲み込む。
本が大好きなタバサにとって図書室で戦闘するのは避けたいことであったし、仮に目の前の男と戦闘になったとしても勝てる自信が無い。
図書室内に緊張が走る。
先に動いたのは海東だった。
本が大好きなタバサにとって図書室で戦闘するのは避けたいことであったし、仮に目の前の男と戦闘になったとしても勝てる自信が無い。
図書室内に緊張が走る。
先に動いたのは海東だった。
「そうか。それは悪かったね。今後は気を付けるよ」
海東はタバサに向けたディエンドライバーを下ろすと、ニコリと笑った。そして、今手に取って開いていた本を閉じると元の場所に戻した。
タバサはホッと胸を撫で下ろす。
先程まで投げ捨てていた本を片付けないのはしゃくに障るが、やり合うよりはマシと判断した。
海東は海東で再びランダムに本を手に取りパラパラとめくっては元に戻すといった作業を繰り返す。
その中で1冊の本に目が止まった。
タバサはホッと胸を撫で下ろす。
先程まで投げ捨てていた本を片付けないのはしゃくに障るが、やり合うよりはマシと判断した。
海東は海東で再びランダムに本を手に取りパラパラとめくっては元に戻すといった作業を繰り返す。
その中で1冊の本に目が止まった。
(……これは)
それは様々な印が載っている本であった。
今度は1ページ1ページ丁寧にめくっていくと、自分の左手に刻まれた印に良く似た印を見つけた。
解説文みたいなのも載っているが、やはり海東には読めない。
海東はタバサへ向き直った。
「……私はタバサ」
「そこのメガネ君。ちょっといいかい?」
今度は1ページ1ページ丁寧にめくっていくと、自分の左手に刻まれた印に良く似た印を見つけた。
解説文みたいなのも載っているが、やはり海東には読めない。
海東はタバサへ向き直った。
「……私はタバサ」
「そこのメガネ君。ちょっといいかい?」
いきなり身に付けたものの名前で呼ばれたことにタバサはムッとして、自分の名前を主張する。
「そうか。じゃあメガネ君。この本に何が書いてあるか僕に教えたまえ」
「……………………」
タバサの言葉を完全に無視して海東は本をタバサに突き付ける。
心情的には海東に協力したくは無かったが、だからといって協力しなければ何をされるか分からない。
タバサは仕方無くそのページに書かれた文字を声に出して読んだ。
心情的には海東に協力したくは無かったが、だからといって協力しなければ何をされるか分からない。
タバサは仕方無くそのページに書かれた文字を声に出して読んだ。
「ガンダールヴ……伝説の使い魔……全ての武器を使いこなし……人間離れした動きで敵を倒したという」
「ふーん。他には何か書いていないのかい?」
「それだけ」
タバサは無表情で答える。
何故、この男は伝説の使い魔など調べているのだろうと疑問も浮かんだが、今はこれ以上海東に関わり合いたく無かった。
何故、この男は伝説の使い魔など調べているのだろうと疑問も浮かんだが、今はこれ以上海東に関わり合いたく無かった。
「そうか……伝説……か」
(全ての武器を使いこなし、人間離れした動きをする、か。これはとんだお宝だったみたいだね)
海東は左手に刻まれた印を改めて見直す。
(取り敢えずこの印については分かった。後は本命のお宝だね)
この学院に眠る破壊の杖。
海東はそれを盗み出すことに本腰を入れることを決める。
破壊。
その言葉に海東はいたく惹かれていた。
それは彼が唯一仲間と認めたある男の代名詞でもあった。
海東はそれを盗み出すことに本腰を入れることを決める。
破壊。
その言葉に海東はいたく惹かれていた。
それは彼が唯一仲間と認めたある男の代名詞でもあった。
「士……」
海東は誰に言うのでもなく呟くと、図書室を出て宝物庫のある場所へと足を向けるのであった。