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BRAVEMAGEルイズ伝第一章その6


第一章~旅立ち~

その6 ギーシュやぶれたり!

「ワルキューレぇっ!!!」
「遅ぇ!!」

雷光のような一文字斬り、そして続けざまに縦。
二つの斬撃が、ここハルケギニアには無い漢数字『十』の形を象る。
騎士ラードから伝授された必殺技だ。
曰く、十文字斬り。
鋭く研ぎ澄まされた技は、襲いかかる銅像を4つに分断した。

「てンで歯ごたえがねえぜッ!?」
「くそ……こんな……こんな馬鹿な!!」

ギーシュの奥歯が、火花を散らすのではないかというほどに擦られる。
ここで自分は負けるのか。
年端も行かない子供が振るう剣の前に屈するのか。
武人の一家としての誇りは、すでにズタズタになっていた。

「こんな……こんな所で……グラモンの、戦でも誉れ高き一族の名を……汚すことに……!!」

焦燥に駆られ整ったヘアスタイルをかきむしるギーシュの目に、『ゼロ』のルイズの姿が留まる。

あいつが剣を渡さなければ。
いや、もともと彼女の躾が悪かったのが原因だ。
いやむしろ、あんな小僧を召喚したルイズが全面的に悪い!!

焦りに焦ったギーシュの苛立ちの矛先がルイズへ向くのには、そう時間はかからなかった。
ギーシュの薔薇が、理不尽な方角へと振るわれる。

「『ゼロ』、め……!よくも決闘に水を差してくれたなッ!」
「え!?」
最後のワルキューレを向かわせたのは、決闘相手の主の元だった。
ギーシュのプライドを守るための、苦肉の策。

「!?ルイズッ!」
「きゃあっ!!」

銅の巨像が少女に迫る。
握られているのは剣、切れ味は鈍そうだが当たればきっと痛かろう。
ルイズはぎゅっと目を閉じた。
恐怖で身がすくむも、いくら待てども痛みが訪れることが無い。
目を開けると、そこには動きを止める騎士像の姿があった。

「……ルイズにまで、手を出しやがったな」

ムサシの投げた黄金の刀が、ワルキューレに刺さっている。
不思議なことに像から光が湧いて、それが刀身へと吸い込まれているように見えた。
わずかに間を置いて、力を失ったワルキューレは崩れ消滅していった。
刀はまるで魔法のように宙を舞い、持ち主である少年の手元へ戻って行く。
その顔は、静かな怒りを秘めているようにも見える。
ギーシュも生徒たちも皆言葉を失い、見ていることしかできなかった。

「女を泣かせてあげくに手を上げるなんて、色男が聞いてあきれるぜッ!!」
「ぐ、ううッ!!」

今の不思議な出来事を問いただす気にもなれない。
終わった、とギーシュはそう思った。
初めは単なる八つ当たり、あんなチビならば赤子の手をひねるよりも容易い。
そう思ったのが、愚かな選択の始まりだったのかもしれない。
その結果がこの醜態だ、明日からは男子連中から後ろ指を刺され、麗しい女子には背を向けられるに違いない。
ルイズを笑える立場では無くなるだろう、ギーシュは絶望し、がくりと膝を折ってしまった。
予想外の展開に辺りがざわつく中、少年はツカツカと歩み寄りギーシュの手から薔薇の造花を奪い取った。

「……僕の、負けだ……さあ、どうとでもするが……」
「おし、じゃあ決闘だ!!」
「……は?」

ムサシはギーシュの杖である薔薇をぽいっと投げ捨てながら、そう言った。
手に持っていたワルキューレの剣が、差し出される。

「け、決闘ならたった今……」
「何言ってやがる!!」

ギーシュの背筋を悪寒が駆け抜ける、まさかこの少年はまだ自分を許す気は無いのだろうか。
まいったと言っても、こてんぱんに叩きのめす気なのでは無いかと想像して身震いした。
だが、その考えが杞憂であるとすぐに理解した。

「花うらないや人形遊びはここまでだ!!男の決闘ってのは……」

そう、コジローの持ちかけた花うらないでの決闘なんかでは無い。
自分が望むのはこういうものだ。
そう思ったムサシはギーシュの手にむりやり剣を握らせ、距離を取る。
振り返り切っ先を向け、白い歯を見せて笑った。

「剣でするもんだろ?お武家様なら、なおさらな」



ギーシュは剣を手にしたまましばし呆然としていた。
しかし、やがて悟って薄く微笑む。
ムサシに悪意は感じない、そしてどこまでも真っ直ぐな眼差し。
彼はただ、どこまでも決闘を欲しているのだ。
痛めつけたい、屈服させたいという自分の下卑た欲求とはまた違う、ただ、剣を振るう兵法者としての、純粋な思い。
強くありたい。
この身に流れる血故か、ギーシュにもそれが今なら理解できた。

「……我が名はギーシュ、ギーシュ・ド・グラモン。一対一、剣と剣での穢れない純然たる決闘を……受けて立とう」

ギーシュの顔つきが変わった。
周囲を囲んだ女子生徒や、恋いて止まないモンモランシー、そして立ち向かうムサシにもそれが解った。
決闘を望んでいなかったルイズですら、今や言葉を挟む気にはならない。
場が、戦場のそれと同じく張り詰める。
ムサシが剣を両手で正眼に構える、ギーシュもまた、不恰好ながらその腰は引けていなかった。

「……」
「……勝負ーーーッ!!!」

動いたのは、ギーシュが先だった。
いつもの格好つけた立ち振る舞いではない、細身には似合わぬ剣を腰だめに構えて、ただ愚直に突っ込む。
二人の剣士は、交錯した。





「……」
「……ぐッ」

ギーシュが倒れた。
観衆に驚きが伝染する。

「おい、ギーシュがやられた!!」
「マジかよ!」
「ムサシ!」
「ギーシュ!ギーシュ!!」

ルイズと、金髪を巻き毛にした女子生徒が人ごみから飛び出る。
ムサシはああ、ギーシュをひっぱたいたあの子か、と思い出した。

「ムサシ、あんた……」

ルイズは迷った。
決闘に勝つだなんて思わなかった。
『勝って』と望んでしまったのは自分、しかしギーシュは犠牲となったのだ。
叱咤も激励も、喉に詰まる。

「よくも、よくもギーシュを!!」
「そ、そうだわ……はやく医務室へ」
「おいおい、落ち着けって」

モンモランシーは横たわるギーシュの頭を抱きすくめ、涙まで零して怒る。
ルイズは焦った、その叫びにようやく級友の命の危機を感じたのだった。
虐めを受けたとは言えど、ルイズはそこまで冷酷にはなれない。
と、ギーシュがかすかに身じろいだ。

「……う、う~ん……す、すまないモンモランシー君には寂しい思いをさせてしまった……
 僕という輝ける存在を失っても君はきっと輝ける最高の女性になるだろう……なぜなら
 君は光を失っても輝ける、僕にとっての太陽のような女性だったから……ああ……せめて
 最後は君の胸の中で……」
「ムダに長くしゃべる元気はあるじゃないのよぉーーーッ!!」
「安心しな、『みねうち』だゼ!」
「それならそうと言いなさいこのバカチビーーーーーッ!!!」

ギーシュとムサシ、二人の頭がスパーーーンと気持よく音を立てる。
ムサシはケラケラ笑い、ルイズも気づいたときには笑っていた。
ギャラリーも大いに沸き、気がつけば決闘の刺々しい空気はどこかへ立ち消えていた。

『ゲット・イン』みねうち。
雷光丸に秘められた神秘の能力、敵の力を奪いとり己がものとする魔法。
先ほどのワルキューレから奪い取った能力で、ギーシュを傷つけることなく無力化したのだった。

「あいたたた、慣れないことはするものじゃないね……ああモンモランシー、自分で立てるよ」
「いい戦いだったゼ!」
「はは、完敗だったよ……だが、不思議と悪くない気分だ」

よろよろと立ち上がったギーシュ、どうやら傷は浅いらしい。
その表情は晴れやかだった。

「おいらはいつでも相手になるからさ、またやろうぜ!!」

ムサシもまた晴れやかな表情で、手を差し出した。
この少年は今の今まで剣を交えた自分と、今度は手を取り合うと言う。
今までの自分がずいぶんと小さい存在に思えて、ギーシュは苦笑した。
すべてを反省し、少年のあたたかな手に手を重ねる。

「君には敵いそうもないが……よろしくたのむ。そしてすまなかった、ムサシくん」
「ムサシでいいぜ!それよか、謝る相手を間違っちゃいねえか?」

自分よりはるかに小さな少年に頭を下げるギーシュ。
あっぱれだという声が、周囲から乱れ飛ぶ。
今ここにルイズを、ギーシュを笑う者は、いなくなっていた。
そのギーシュはというと、ムサシの声に顔を上げる。
ルイズとモンモランシー、謝罪すべき双方がそこにいた。


「あらら、あのギーシュがルイズに謝るなんて。こりゃ明日は雨かしら、ね?」

ギーシュの謝罪は、すぐにとは言わないがきっとルイズと皆の関係を変える切っ掛けとなるだろう。
視線を落とすと、親友は少年の方をじっと見つめていて反応が帰ってこない。
春が来たのかしらとからかい半分に微笑んだ。
しかし、タバサが見つめているのは彼の武器の方だったと、誰が気づいただろうか。
向き直ってルイズを見ると、使い魔をぽかぽかとぶっている。
しかしその顔は本当に心配していたようだ、ムサシも解っているらしい。
ギーシュがモンモランシーに謝罪している、その饒舌さが災いして平手を食らっていた。
また観客がどっと沸く。
その声に紛れてキュルケは隣の友人にすら聞こえないほど小さく、つぶやいた。
ケンカ友達の、照れ混じりの祝福だった。

「ルイズ、けっこうイケてる使い魔じゃないの。……おめでと」

オスマンとコルベールは『遠見の鏡』から目を外した。
年端もいかぬ少年が、メイジに勝った。
『ガンダールヴ』の力はやはり本当、というのが二人の結論であった。

「左手に剣を持った時、輝いておりましたね」
「うむ、ルーンの効力もあるじゃろうがあの少年、かなりのもんじゃぞ」

オスマンはほっほっほと笑っている。
コルベールが笑い事ではありません、とたしなめた。

「始祖ブリミルの使い魔であるガンダールヴと同じルーンを持つ使い魔……王室に報告すべきではないかと思うのです」
「何を言うとる」

今度はオスマンがたしなめる番だった。
仮に本物の『ガンダールヴ』であればその力を利用、ないしは悪用する連中が湧いてでるに違いない。
今は他言無用、とオスマンは威厳たっぷりに言った。

「はっ、いささか浅慮でありました。オールド・オスマン」
「よいよい」
「では、私はもう少し独自に調べてまいりましょう。失礼致します」

コルベールが退室し、静まり返る学長室。
使い魔のねずみを指先であやしながら、独りごちた。

「……名前まで同じとは、偶然かのう」



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