あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの賢王 第09話


「ポロン、明日街まで出掛けるわよ」

唐突な提案にポロンは面食らう。

「何だあ?藪から棒に」

ポロンは羽根ペンを鼻と口の間に挟み込んだまま答えた。
今、ポロンはルイズからハルケギニアの文字を教えてもらっているところである。
言葉が通じるから文字も読めるものだとばかり思っていたがそんなことはなかった。
特にルイズと一緒に授業へ出ていると、全く読むことのかなわない文字を次々と目の当たりにする為、
流石にこれはいかんということで恥を偲んでルイズに文字を教えてもらっている。
ルイズは勤勉でありながら意外と教え上手でもあり、ポロンは簡単な読み書きなら既に出来るようになっていた。
そんな個人レッスンの最中、ルイズは突如先のような発言をしたのである。

「明日は虚無の曜日で授業は無いの。だからポロン、私がアンタに剣を買ってあげるわ」
「ああ、それはいらね」
「うんうん、そうでしょうそうでしょう。嬉しくって嬉しくってたまら…って、ええっ!?」
「剣は必要ないな」
「何よ!私からのプレゼントを受けないって言うの!?」
「いや、勘違いすんな!いらねえってのは剣はいらねえって意味で、ルイズからのプレゼントは有り難く頂くつもりだぜ?」

ルイズが凄むと、ポロンは慌てて答える。
ルイズはそれでも納得していないという表情でポロンに詰め寄る。

「何で剣がいらないのよ?アンタ私の使い魔でしょ?私を守るなら剣は必要じゃない」
「自慢じゃないが、俺は剣を全く使えない」
「本当に自慢じゃないわね・・・。でも持ってるだけでも格好はつくでしょ?」
「ルイズ、いいか?剣っていうのはなあ、使える奴が使わないと意味ねえんだ。
 仮に運動神経がいいだけの奴が剣持ったって、剣使える奴と戦ったら100%負けちまう。そういうもんなのさ」
「そういうものなのかしら?」
「それにルイズも見たろ?俺は魔法を使って戦う。だから俺に武器はいらねえんだよ」
「ふ~ん。まあ、確かにそうね」

ルイズは昨日行われたギーシュとポロンの決闘を思い出していた。
その時、ルイズは「あっ!」と声を上げると、鳶色の瞳を吊り上げてポロンを睨んだ。

「そうよ、アンタの魔法!それについて色々聞きたいことがあったんだわ!」

ポロンは「しまった!」という顔をした。

「本当は決闘のあった日に聞きたかったんだけど、アンタがツェルプストーとイチャイチャしていてうっかり忘れてたわ」
「ちょっと待て!別にイチャイチャはしてないだろ、イチャイチャは」
「フン!ツェルプストーの使い魔に連れて来られた!とか言ってたけど、本当はどうだか」

ルイズは目に見えて不機嫌な顔になる。
ポロンはそんなルイズを見て、深くため息をついた。

「ったく、わーったよ。お前の疑問に答えられる範囲で答えてやるからへそ曲げんな」
「べ、別にへそなんか曲げて無いわよ!・・・じゃあ聞くけど、魔法が使えるってことはポロンは貴族なの?」
「いや、俺は生まれも育ちも貴族なんて大層なもんじゃあないよ」
「嘘おっしゃい。貴族でもないのにどうして魔法が使えるのよ?」
「どうして、て言われてもなあ」

ポロンはいっそのこと自分が異世界から来たということをルイズに言ってしまおうかとも考えた。

(まあ、言っても信じねえだろうなあ)

この世界へ来てから数日は経ち、ルイズともある程度は打ち解けてきたと思っている。
とは言え、こんな突拍子もないことを言っても信じてもらえる保障は何処にも無い。

(俺が逆の立場でも信じねえだろうしなあ。言う人間にもよるだろうが・・・)

ポロンは自分の今の姿を改めて確認する。

(自分で言うのもあれだが、こりゃあ胡散臭い以外の何者でもねえな)

ポロンはひとりでにがっくりとうなだれた。
ルイズはそんなポロンの一連の動きを怪訝そうな顔で見る。

「まあ、いいわ。アンタが何者かはそんなに重要じゃないの。問題は・・・」

ルイズは一呼吸置いてから言葉を続ける。

「どうやって杖も無く魔法を使えたのか。問題なのはそっちよ」
「それって、そんなに重要なことか?」
「・・・確かにコモンマジックみたいに杖を使わない魔法というのもあるわ。でもね、ポロン。
 アンタが使ってたアレはもうコモンマジックという域を超えていたわ。アレはもう先住魔法の域よ」
「先住魔法?」
「エルフの使う魔法よ。杖を使わなずに様々なことを起こせるらしいわ。
 私は実際に見たことはないけど、とても恐ろしいものだと聞くわ。正に凶暴なエルフにぴったりの魔法ね」
「エルフが凶暴・・・?俺のいたところじゃ人間嫌いなのはいても、基本的には大人しくて争いを好まない種族だったけどな」
「それ、本当にエルフなの・・・?まあ、そんなことはどうでもいいわ。
 いい?アンタが何処から来たのかは知らないけど、ここトリステインでは魔法を使うのに杖は必須なの。
 それも杖なら何でもいいというわけじゃない。それぞれに合った杖じゃないといけないの。
 だから、アンタがホイホイと杖無しで魔法を使うって言うのは本来はとても有り得ないことなのよ」
「そうなのか・・・」

ポロンは図らずもこの世界における魔法体系について知ることが出来た。
ルイズと一緒に受けている授業では最初の頃こそ系統魔法の基礎的な部分を教えていたが、
この世界における魔法というものの在り方に関しては、あまりにも常識的過ぎるのか触れることさえ無かった。
ルイズに聞こうかとも思ったが、流石にいい大人が今更そんなことを聞くのは不自然であるし、出自を疑われかねない。
かといって、異世界から来たなどと言えばこれまたあまりにも突拍子が無さ過ぎて頭のおかしい人間とされてもおかしくない。
従って、いずれ何処かの授業でそこに触れるのを待つしかなかった。
それが他ならぬルイズの口から聞けたのだからポロンは内心ホッとする。

ルイズはジーっとポロンの顔を見つめる。

「見たところアンタはエルフには見えないけど・・・」
「んー、確かに俺の呪文・・・いや魔法はお前たちの使う魔法とは大分違うもんだからなあ」
「そうなの?じゃあ、あの魔法はどうやって使ってるの?」
「どうやって・・・と言われてもなあ。上手く言葉で伝えるのは難しいな」
「ふーん。ねえ・・・」

途端にルイズはもじもじしだした。

「その魔法って、私にも出来たりする?」

(・・・なるほど、そっちが本音か)

ポロンはルイズが魔法を上手く使えないことに多大なコンプレックスを抱いてる。ということを本人が口にせずとも察している。
ポロンの出自や魔法について聞いたのも、もしかしたらポロンの使う魔法ならば自分でも。という期待を持っていたからだろう。
事実、ポロンが使う呪文は魔力さえあれば、後は努力次第で使うことは可能である。

(って言っても、それはあくまで俺らの世界でのことだからなあ)

世界が変われば、当然魔法も異なる。
ポロンですら、同じ世界に存在するジパングの神仙術を使うことは出来ないのだ。
違う世界の魔法なら尚更である。
少なくともポロンには初日の授業でシュヴルーズが見せた錬金の魔法や決闘の時にギーシュが使用したワルキューレを使うことは出来ない。

「やってみないと分からんが、恐らく無理だろうな。鍵に例えると、俺とルイズの魔法はそれぞれ別々の鍵なんだよ。
 俺の鍵で開く扉がお前の鍵でも開くとは限らないだろ?寧ろ鍵が違う分、開かない可能性の方が高い」
「・・・でも開くかも知れないじゃない」

ルイズはまるで拗ねた子供みたいに唇を尖らせる。
それを見て、ポロンもやれやれと肩をすくめた。

「分かった分かった。取り敢えずやれるだけやってみるか?」

ポロンの言葉にルイズの顔がパァーっと明るくなった。
そんなルイズの表情を見ていると、まるで彼女の親にでもなった気分になる。

「じゃあ、時間がある時にお前の魔法を見てやるよ。っても昼間は授業あるし、恐らく夜になっちまうけどいいか?」
「構わないわ。魔法を上手く使う為にも、試せるものは全て試しておきたいですもの」
「そりゃ殊勝な心掛けで」

そう言うと、ポロンは面倒なことになったなと思っていた。
だが、決して嫌な顔はしておらず、寧ろ親が子を見守る様な優しい顔になっていた。



翌日、虚無の曜日。
ポロンとルイズは朝早くから、馬に乗って街を目指していた。
貴族の嗜みとして乗馬を学んでいたルイズは易々と馬を操っている。
ポロンもまたルイズ程華麗ではないものの、そつなくこなしていた。
学院から街までの距離は遠く、馬でざっと4時間程掛かってしまい、街に着く頃にはちょうどお昼時になっていた。

ここで時を少し遡り、ルイズたちが学院を出る直前こと。
キュルケはルイズの部屋の前に立っていた。
目的はルイズをからかうことと、そしてその使い魔にアタックすることであった。
魔法が上手く扱えないルイズは部屋の施錠を通常の鍵で行っている。
通常の鍵ならば、トライアングルレベルのメイジであるキュルケには無いものと同様であった。
アンロックの魔法で鍵を開けると、遠慮なく扉を開く。
しかし、そこにルイズとポロンの姿は無かった。
何処へ行ったのか思案していると、窓の外に馬に乗って何処かへ行こうとするルイズとポロンを発見する。
キュルケはそれを見るなり、血相を変えて親友であるタバサの部屋へと向かった。

「タバサ!お願い!あなたのシルフィード貸して!」

いきなりそう言われて、頷くタバサでは無かった。
タバサはキュルケの姿を確認するなり、サイレントの魔法を掛けて読書へと戻る。
キュルケは何度話し掛けても何も答えないタバサを見て、その手から本を取り上げた。
本を取られたタバサは仕方なくサイレントを解いて一言。

「虚無の曜日」

とだけボソッと呟いた。
キュルケは申し訳無さそうな顔をして首を振った。

「あなたにとって虚無の曜日がどんな曜日だか、私は分かってるわ。でも、聞いて頂戴。これは恋なの!
 私の二つ名は『微熱』!とても燃え上がりやすいの!!・・・あなたも分かるでしょ?」

タバサは特に何も言わなかった。
キュルケは両の手を合わして懇願する。

「お願い!ルイズを追いかけたいの!二人が馬に乗って何処へ行ったのか突き止めたいの!お願いタバサ!私に力を貸して!!」

タバサはふぅ、と息を吐くと腰掛けていたベッドを降り、窓を開けて口笛を吹く。
すると、すぐに大きな羽音が聞こえて来た。

「!!有難うタバサ!!流石私の大親友!!」

キュルケはタバサを強く抱きしめる。
ふと窓を見ると、そこには水色のドラゴンが見えた。

「・・・やっぱり、あなたのシルフィードはいつ見ても素晴らしいわね」

6メイルを超えるサイズの風竜。
このサイズで幼生なのだから、成体となればどれだけ大きくなるのだろうか。
キュルケは改めて、こんな使い魔を召喚したタバサを只者ではないと思った。

タバサが窓からシルフィードの背に飛び乗ると、キュルケもそれに続く。
2人が乗ったことを確認するとシルフィードはそのまま舞い上がった。
上昇していく中、タバサは己の使い魔の頭をポンと叩いて一言だけ呟いた。

「馬2頭、食べちゃだめ」
「きゅい」

可愛らしい鳴き声を上げてシルフィードは頷く。
そうして暫く上空から目を凝らしていたシルフィードは学院から遠ざかって行く2頭の馬を見つけた。

「きゅいきゅい!」

シルフィードはひと鳴きした後に風を切って加速する。
あっという間に2頭の馬のすぐ近くまでやって来た。

「このまま、気付かれない様に追って」

タバサはシルフィードにそう告げた後に本を取り出して読み始めた。
キュルケは親友のマイペースな姿を見て、改めて只者ではないと思った。



ポロンとルイズは街に着くと、取り敢えずお昼を食べることにした。
適当な店を見つけると、2人でその中へ入る。
先の決闘で勝手を働いた罰として食事抜きを言い渡されていたポロンであったが、ルイズの寛大な処置によって彼女の食べるパイを1つ分けて貰えた。
一口食べると、パイのサクサク感に上に乗ったクックベリーと呼ばれる果実やそのジャムの甘みと酸味が絶妙にマッチし、なかなかに美味であった。

(しかし、こいつぁ俺みたいなオッサンが食うもんじゃねえな)

何となく気恥ずかしさを覚えながらもポロンはパイを口の中に放り込んだ。

昼食を終えると街の中をぶらぶらと見て回ることになった。
流石に国一番の大都市ということもあり、賑やかで様々な店が並んでいる。
その途中に仕立て屋を見つけるとルイズが

「そうだわ。ポロン、貴方に服を買ってあげるわ」

と提案する。
ポロンは自分の今の身なりを見て、その提案を素直に受け入れることにした。
流石に替えの服も無い状態なのは不味い。
様々な服があったが、いくつか見ていてもポロンはしっくりこなかったので、
なるべく同じデザインの服を何着か見つけると、それを買って貰うことにする。
会計をルイズに任せて店の外へ出たポロンはとある露天商に目を留めた。
老人が地面に布を敷いて、その上にはけん玉、ヨーヨー、ブーメランといったものが並べられていた。
ポロンは思わずその露天商の方へと足を向ける。

「よう、爺さん。ちょっと見ても構わないか?」

老人は何も言わずにただこくりと頷く。
ポロンは地面へしゃがみ込み、並べられたものを見ていた。

「へー、懐かしいなあこれ」

ポロンは懐かしさのあまり、中からブーメランを手に取った。

(!?)

すると、次の瞬間ポロンの身体はまるで重い鎧を脱いだみたいに軽くなった。
思わずそのブーメランを元の場所へ置くと、その途端に体の異変が消えた。
ポロンはもう一度ブーメランを手に取る。

(何だ?まるで星降る腕輪でも身に付けたみたいに身体が軽い・・・)

ポロンは老人の方へ向き直った。

「おい、爺さん。このブーメランって人の身体を軽くする魔法みたいなもんでも掛かってんのか?」
「・・・・・・・・・・」

老人は無言で首を振った。

(一体、どういうことだ?)

「ちょっとポロン!ご主人様に荷物持ちさせるなんていい覚悟じゃない!」

その時、後ろからルイズの声が聞こえた。
どうやら服の会計が終わったらしく、服の入った袋を抱えていた。

「・・・ああ、ルイズか」
「何しているのよポロン。・・・って、それ平民の玩具じゃない」

その時、ポロンは思い付いた。

「そうだルイズ!剣の代わりにこいつを買ってくれないか?」
「剣の代わりって、そのブーメランのこと?そんな玩具が役に立つの?」
「まあ、そう言うなって。俺はガキの頃、これで何体もの魔物をやっつけたことだってあるんだぞ?」

(・・・って言っても、おおありくいだの一角うさぎだの雑魚モンスターばかりだけどな)

「本当かしら?・・・まあ、その程度なら別に買ってあげてもいいわよ」

そう言うと、ルイズは老人にいくらかのお金を渡した。

「有難うなルイズ」
「ったく、子供じゃないんだからそんな玩具買ってもらったからって、はしゃがないでよ」
「ハハハ、そりゃすまんな」

ポロンは笑いながらブーメランを手に取った。
すると、やはり身体が軽くなった様な感じがする。
ふと見ると、左手のルーンが僅かに輝いていた。

(・・・なるほど、こいつのせいだったのか)

ポロンは改めて左手のルーンを凝視する。
このルーンは使い魔の証だという。
だとすれば、先程身体が軽くなったのもその恩恵なのだろうか。

(・・・こいつについても調べなきゃなんねえな)

「ちょっとポロン。ボーっとしてないで早く来なさい」
「ん?ああ、悪かった」

ポロンは慌ててルイズの後を追った。



「あの子ったら、彼にあんなみすぼらしいものを買い与えちゃって!」

その様子を隠れて見ていたキュルケが言った。
キュルケは2人の後をつけながら、ルイズが何かする度にこんな感じで毒づくのであった。
タバサは何も言わずに本を読みながら、ただキュルケの後を付いて行っている。

「平民の玩具しか買い与えて貰えないなんて、彼が可哀想じゃない」

キュルケはそう言うとチラっと路地裏の先にある武器屋の看板を見た。

「フフフ・・・いいことを思い付いたわ」

キュルケは武器屋の方へと消えて行った。


新着情報

取得中です。