あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

BRAVEMAGEルイズ伝第一章その5


第一章~旅立ち~

その5 チャンバラ・バトル

「諸君……決闘だ!」
ギーシュの極限まで格好つけた宣言に、集まった生徒たちは大いに沸き立った。
女子生徒の黄色い声援、男子生徒の興奮した雄叫びに広場は一時騒然となる。

だが騒乱の中心であるムサシはまるで動じることもなく、仁王立ちしていた。
圧倒的な自信を掲げ、ギーシュはそんな彼を一睨みする。

「『ごめんなさい』と言えば……まだ間に合うよ?」
「御託はいい、さっさとやろうぜ」
ムサシはそんな挑発には乗らず、にべもなく応じる。
立派な眉は釣り上がり、口元を引き締めたまま、腰の真雷光丸を抜き放つ。
そんな態度にギーシュはやれやれ、と肩をすくめた。

「まったく聞き分けの無い子どもだ……平民と貴族の絶対的な差というものがわかっていないらしい」
ギーシュが薔薇を振り、花びらがひらりと舞い落ちる。
その花びらはみるみるうちに鎧兜を纏い、剣を掲げた女性像へと変化した。

「二つ名は『青銅』!土のメイジである僕にとって……このゴーレムが君の剣に相当する。
 ああ、僕は戦わないから二対一では無い、卑怯とは言わないでもらうよ。
 だがそれでも君のようなちっぽけな子どもが楯突いてどうにかなるわけでも─」
「御託はいいって言ってるだろ、おしゃべりだなあお前」
こういう長ったらしく講釈を垂れる奴にロクな奴はいない。
ムサシは剣豪らしく、バッサリと前口上を切り捨てる。
ギーシュの余裕たっぷりの笑みが、引きつった。

「……行け!ワルキューレ!」



「大変です、オールド・オスマン!」
「なんじゃね騒々しい」
学長室にてオスマンと呼ばれた立派な髭の老人が、厳格な佇まいでコルベール教師を待っていた。
この人物が普段は傍らの秘書にセクハラを咎められ続けているなどと、知らぬ人が見れば誰が信じられようか。

「これはミス・ヴァリエールの召喚した使い魔に刻まれたルーンです。
 そして、こちらが『ガンダールヴ』のルーン……見てください、一致しています!」
「ほー……」
普段の冷静な物言いが影を潜め、捲し立てる。
よほどの興奮なのだろう。

「それで……君の結論は?」
「つまりですね、あの少年は『伝説の使い魔』であったのです!一大事でしょう」
興奮してツバが飛ぶコルベールをしっしっと手でおいやって、オスマンはハンカチで顔を拭いた。
そしてため息を一つ。

「のうコルベール君。ワシも話でしか聞き及んでおらんが、10かそこらの子どもらしいのう。
 本当に『あらゆる武器を使いこなした』と言われるガンダールヴなのか?
 それが分かるのは、あの子がせめて生徒たちと同じくらいに大きくなってからじゃろう」
「ハッ……確かに、こんなに小さい子どもでしたね」
コルベールが手を地面と水平にし、自分の腰から少し上ほどで止めた。
使い魔の少年の背丈は、大柄ではないオスマンよりもさらに小さい。
まったく騒ぎおって、と髭を揺らして肩をすくめた。
すると、またしても来訪者が訪れる。

「オールド・オスマン」
「おおなんじゃねミス・ロングビル」
コルベールよりもやや軟化した態度で応じるオスマン。
ロングビルと呼ばれた美女はさほど気にした様子も無く続けた。

「ヴェストリの広場にて決闘騒ぎが起きています。『眠りの鐘』の使用許可を求める声も教師たちから」
「たんなる子供のケンカに秘宝じゃと?よせよせ放っておいてもかまわんよ。で、誰が騒ぎの中心に?」
「ええ、ギーシュ・ド・グラモンが発端とのことで」
「あーあーあの女好きか、よう覚えておるよ、まったく親子揃って」
「もう一人は……その、ミス・ヴァリエールの召喚した少年……のようです」
「なんと」
オスマンの髭を撫でる手が止まった。
コルベール共々顔を見合わせる。
秘書に礼を言い下がらせて、『遠見の鏡』に向き直った。



「ったく、あの馬鹿!チビ!トンガリもみあげ!!」
口からまるでふたご山山頂からの激流のように溢れ出る悪態を垂れ流しながらルイズは走った。
もちろん彼女は必死で止めた、シエスタだって必死で引き止めた。
だけどムサシは止まらなかった、その小さな身体に怒りを込めて。
勝手にしろ、と怒鳴りつけてしまったら本当に勝手にしてしまった。
頭に血が登ってしまったルイズは、しばらくして泣き崩れたシエスタを見てようやく気がついたのだ。
このまま放っておいては、使い魔を失うことになると。

「始まって、ないでしょうね……?」
使い魔の安否を確かめる為、息急き駆けるルイズ。
主人の名誉を守るため、確かにその気持ちは嬉しかった。
しかし平民が貴族と決闘して生き残れるかと言えば、答えは否。
ギーシュも命を奪うまではしないだろうが、タダで済むはずがなかった。

「頼むから、間に合ってよ……!?」



「……」
「おいおいどうした貴族様!?」
広場は静まりかえっていた。
無論、決着がついたからではない。
襲い来るワルキューレに対し、ムサシが飛び出した。
そこまではよかった、誰もが倒れ伏す少年の姿を想像しただろう。

「ば……馬鹿な!?」
「へン!どっちが馬鹿かは……もうすぐ分かるぜ!」
ムサシが放った突きが、倍ほども差があるワルキューレの体をふっ飛ばした。
ギーシュの目が見開かれ、皆が息を飲む。
そのまま青銅の体は広場に叩きつけられ、たんなるくず金属へと成り果てる。
そして、その真ん中にはまあるい穴が空いていた。

「わ、ワルキューレ!!」
現状にいち早く気づいたギーシュが、ワルキューレを限界の6体まで出現させる。
今度は槍、斧、メイスなど様々な武器を携えていた。

「おいおい、ギーシュが本気だ!」
「まぐれで一体倒されたとは言え、子どもだぞ?大人気無いな!」
ちらほらと聞こえる野次に反論する余裕すらなかった。
曲り形にも武人の血を引く彼は察したのだ。
まぐれなどではない、目の前のこの少年は自分など簡単に切り伏せられる実力を隠していると。

「おい、一対一はどうしたんだ!?」
「かかれッ!!」
この子どもは只者では無い。
ギーシュは自分の額がじわりと汗で濡れるのを感じ取った。
もはや自分の手がいかに卑怯かなど、考える余裕を無くすくらいに。

「ああ、あんなに小さい子に6体も?ひどいわねえ……しかしあなたがこういうの見るなんて珍しい」
「……無謀」

観衆の後ろの方、キュルケとタバサもまた観戦していた。
キュルケの方はムサシをいくらか気に入っているらしく、いざとなったら介入する腹積もりでいた。
しかし、ルイズのやっと手に入れたパートナーをみすみす失わせたくないという気持ちもある。
本人は認めないだろうが、彼女もまたタバサと同じく放っておけない存在なのだ。
そのタバサも、どういうつもりかこの決闘を見つめている。
その手の本を閉じてまで。

「まあ無謀、よね。一度に6体なんてそこらのドットどころかラインレベルでも苦戦……」
「ちがう」
「へ?」
「あの子に挑むことが、無謀と言った」

タバサが発した久しぶりの10文字以上発言を理解するのに、若干時間がかかる。
キュルケがぽかんとしたその瞬間、再びどよめきが沸いた。


走るルイズ、途中どこかで転んだかヒザからは血が滲んでいた。
ずいぶん遠く感じた広場が、そして人だかりがやっと見えてきた。
騒がしい、まさか既にムサシは。

「ちょ……どいて!どきなさい!!」

人並みを必死でかき分け、最前列を目指した。
ようやく見えたのは、ピンと跳ねたムサシのちょんまげ。
今まさにその周囲に、ギーシュのワルキューレが見えた。
それも、四方を囲まれて。

「ふ、はっはっは!さっきまでの自信はどうしたんだね!?」
「ちくしょー、汚いぜ!」

四方から一斉に打ち掛かられ、さすがの剣豪も防御に徹せざるを得ない。
腰に巻かれた汚い帯『ゲイシャベルト』の力でこの包囲網を飛び越えることも確かに可能だろう。
だがこれでは、防御を解いた瞬間に武器の一撃を食らってしまう。
先程までの不安を振り払ったようでギーシュはにやついている。
この状況をさてどうするか、と考えるムサシの脳裏には一つの技が浮かんだ。

(二天一流斬!ああ、レイガンドがここにありゃあなあ……)
ムサシの持つ最強の必殺剣、二天一流斬。
真・雷光丸での防御から転ずる全てを切り裂く一撃だ。
しかしそれを放つには、もう一本の愛刀が欠けている。
その背に下がる空の鞘が、それを物語っていた。

「ギーシュ、弱いものいじめはそろそろよせよ!」
「やめてあげてよ!」
「ムサシーーーーーーーッ!!!」
様々な声が飛び交う喧騒の中で、ルイズは必死に叫んだ。
ムサシを傷つけて欲しくなかった。
ムサシに傷ついて、欲しくなかったから。
と、ルイズは傍に砕け散ったワルキューレが転がっているのに気がついた。

「……?これ、ギーシュの……」
ここまで砕けているとは、ギーシュはワルキューレ同士をぶつけでもしたのだろうか?
だがしかし、重要なのはそこではない。
気づいたときには、群衆から飛び出していた。
ムサシの背には空の鞘。
教室で見せた、両手で振るう箒の凄まじさ。

(もう一本……あれば!!)
周りが止めるのも聞かず、転がるワルキューレの剣へと駆け寄った。
ルイズの腕には少々重たく、精一杯の力でその剣を持ち上げる。
こんな物が自分より小さなムサシに扱えるのか、という考えには思い当たらなかった。
わからない、わからないが、二振り揃ったムサシに適う奴なんかいない。
なぜかそう思えたのだ。

「重、た……い、のよっ!!この!!」

半ば転びそうになりながら、剣を全力でムサシの足元まで滑らせた。

(お願い、届いて!!)


ルイズの切なる思いは、声にもならない。
ここまで形振り構わず走ってきた。
どうしてこんなに一生懸命になるのか?
馬鹿で言うこともきかない使い魔なんて放っておけばよかったのでは?
自問自答は、無駄だった。
答えがすぐに、出たからだ。


「私と一緒に……強く、なるんでしょ!!」

誰もいない教室、二人きりの約束。

「だから……」

それは傲慢かもしれない、だけれど主人から使い魔への指令。
いや違う、「たった一人のともだち」への強い願いだった。

「勝って!!」



その願いは、4体のワルキューレが真っ二つになることで叶えられた。
水平に流れた剣筋は、鋼をも容易く切り裂くだろう。
レイガンドでは無いものの、気合一閃の回転斬りだ。

「……っ!?」

ギーシュは眼を今まで以上に白黒させた。
呼吸が喉に引っかかってうまくできない。
何が起こったのか、まだ整理できない。

「ルイズ!待たせたな!」
下半身だけになったワルキューレをぴょんと飛び越え現れたムサシは、あちこち傷だらけだった。
しかしその眼に宿る気迫は、いつものままだ。

「これが……ムサシ様の二刀流だ!!」

右手には刀、左手に西洋剣。
『武蔵伝説』に語られるその姿そのものだった。




「両手に、剣?見たこともありません」
「何を言うとる、ガンダールヴは両手に武器を持ってたんじゃろう」
「はッ!?確かに!」
遠見の鏡で観戦していた二人は、ムサシの秘めたる力にただただ驚いていた。
否定的だったオスマンも目の当たりにしては色濃くなった可能性を認めざるを得ない。
しかし、何かが引っかかっていた。

「しかしのう……ワシはああいう奴の別の呼び名をいくつか知っとるよ」
「なんですと?」
「彼は……『サムライ』と呼ばれる。そのなかでも類稀な強さを持つものを『剣豪』と呼ぶらしい……」
「なんと!?お詳しいではありませんか、オールド・オスマン!」
「なに、昔の命の恩人の受け売りじゃよ。そのなかでも一番小洒落た呼び名は……そうじゃな」
懐かしそうに髭を撫で思案し、笑った。
かつての思い出の中で出会った彼の面影が、確かにその少年にはあったからだ。

「勇敢なる剣士『ブレイブフェンサー』と。そう、言われているそうじゃよ」



新着情報

取得中です。