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ゼロの賢王 第06話


「決闘なんて今すぐ止めなさい。これは命令よ」

ルイズは目の前の使い魔にビシッと言い放つ。
食堂での一件から何故か決闘する流れとなってしまったが、平民であるポロンがメイジである貴族に勝てる筈が無い。
それに体つきこそ多少はがっちりとしているみたいだが、それでもポロンはお世辞にも強そうには見えなかった。
このまま負けると分かってる戦いに使い魔を向かわせるのは、その主としても望ましいことではない。
だが・・・

「悪ぃなルイズ。その命令だけは聞けねえ」

ポロンはそう言ってヴェストリの広場へ向かおうとするのである。
ルイズは憤慨した。

「何よ!?ご主人様の命令が聞けないの!?それとも」
(それともあんなメイドの何処がいいの!?)

喉まで出掛かったその言葉を言わない様にするのに精一杯であった。
それを言ってしまうと、ポロンを引き止める理由が自分の中で変わってしまう気がしたからだ。

あのシエスタというメイドをポロンが抱き締めたのを見た時は胸の何処かにチクリと針が刺さった様な痛みを感じた。
そのことが頭の中に残っているから、こんなに必死になって決闘を止めようとしているのかも知れない。

「もう一度言うわ。決闘なんて止めて彼に謝りなさい!」

しかし、ポロンはそれでも目を閉じて、ただ首を振るだけだった。
ルイズはポロンの顔を睨み付けることしか出来ない。
ふとポロンは優しく微笑み、先程教室内でしたようにルイズの髪をわしゃわしゃと撫でた。

「キャッ!な、何するのよ!?」
「お前は優しいな」
「・・・お願いだから止めて。今なら謝れば許してくれるわ」

ルイズは何時の間にか涙声になっている自分に気が付いた。
ポロンは笑いながら、再び首を振った。

「何度でも言うが、いくらルイズの頼みでもそいつは出来ねえ」
「どうしてよ!?やっぱりあのメ・・・」
「アイツはルイズを虚仮にしやがった・・・。俺をダシにしてな」
「え?」

ルイズはポロンの言葉に思わず耳を奪われた。
頬がどんどん紅潮していくのが自分でも分かる。

「ポ、ポロンはあのメイドを守ろうとしたんじゃないの?それで・・・」
「勿論、それもある。だがよ・・・」

ポロンの目は途端に厳しいものになった。

「俺はそれ以上に俺自身が許せねえんだ!俺のせいでお前が必死こいて大事に守ってきたものが傷付けられそうになっちまってることが!!」

ルイズは気が付いた。
ポロンは怒っているのだ。
それも普段の様な不平不満による怒りではなく、純粋に大切なものを守る為の怒り。

あの少年はルイズの貴族としてのプライドを貶めようとしていた。
それもポロンという存在を使って。
自分のせいでルイズが悪く言われてしまう。

ポロンにはそれが何よりも許せなかった。

「だからよ・・・俺は証明しなきゃなんねえ。お前が『無能』でも『ゼロ』でも無いってな」

ルイズはこれ以上何も言えなかった。
ポロンは再び優しく微笑むと、そのまま背を向けてヴェストリの広場へと歩き出した。



「諸君、決闘だ!」

まるでオペラ劇の主人公の様に大袈裟な身振り手振りを交えて少年は声を上げた。
少年は酔っていた。
雰囲気に、そして自分に。
広場にはこの騒ぎを聞きつけ、既に多数の生徒たちが集まっていた。

「ギーシュが決闘するぞ!相手はルイズの使い魔だ!」

周りから歓声か上がり始めるとギーシュと呼ばれた少年は腕を振ってそれに応える。
ポロンがその場に現れると、すぐに彼の方へと向き直った。

「平民風情が・・・逃げずにここへ来たことは誉めてやろうじゃないか」
「てめえに誉められても嬉しくねえな。寧ろ虫唾が走るぜ」
「相変わらず口だけは達者だな・・・!!」

ポロンの言葉で不機嫌な顔になるが、すぐに気を取り直すと再び大仰な動きで、

「僕の名はギーシュ!ギーシュ・ド・グラモン。二つ名は『青銅』!! 」

と名乗り上げた。
観客たちはギーシュに歓声を送る。

「で、決闘のルールは?」

ポロンはその様子を興味無さそうに見つめながら言った。
ギーシュはフンと面白く無さそうに鼻を鳴らす。

「基本的には相手に“参った”と言わせたら勝ちだ。だが、君は平民だからね。普通にやれば君に勝ち目は無い。
 それでは面白くないからハンデを付けてあげよう。僕のこの薔薇を取り上げるか地面へ落とすかすれば君の勝ちとしようじゃないか」

そう言うと、ギーシュは一輪の薔薇をポロンへと向けた。
ポロンはペッと唾を吐いた。

「そうか・・・。じゃあ追加ルールだ。敗者は勝者の言うことを何でも聞くってのはどうだ?
 そうでもしねえと盛り上がんねーだろ?」
「ほう・・・平民にしては気の利く提案だ。悪くない。それで行こう」
「言ったな?てめえも一応は男だし、二言はねえな?」
「くどい!君が勝ったら、僕は何でも君の言うことを聞いてやる!」
(まあ、勝てるわけがないのだけどね)

ギーシュは内心ほくそ笑んでいた。
これは決闘ではない。
ただ一方的に平民をいたぶるだけのショーなのだ。
ある程度嬲った後に土下座でもさせて、二度と逆らえないようにしてやる。
ギーシュの目には最早その未来しか見えていなかった。

「最初に言っておくよ」
「何だよ?」
「僕はメイジだ。だから魔法で戦う。・・・よもや文句はあるまいね?」
「決闘だろ?いちいち相手にお伺い立ててんじゃねえよ」
「フン、減らず口が聞けるのもそれまでだ!!」

ギーシュは手に持った薔薇を振った。

「ワルキューレ!」

そう言うと、宙に舞った一枚の花弁がその姿を変えていく。
するとその場に女戦士を模った青銅のゴーレムが現れた。

「これが僕の魔法さ」

ギーシュはニヤリと笑う。
ポロンは何も言わずにじっとその様子を見ていた。

(・・・まるでジパングで見た神仙術みたいだな)

ギーシュのワルキューレを見たポロンが抱いた印象はそれだった。
かつて、神の金属オリハルコンを求めて向かったジパングにてポロンは神仙術を目の当たりにした。
それは神社の狛犬をまるで本物の犬の様に動かしたり、巨大な岩をまるで小石の様に投げ飛ばしたりと、
人智を超えた正に神の術であった。
それらを見てきたポロンにとって、ギーシュのワルキューレは特に驚く様なものではなかった。

一方のギーシュも余裕の笑みを絶やさない。

(驚いて声も出ない。といったところかな?ククク)

そんな風にポロンを見下していた。

「行け!ワルキューレ!」

ギーシュの号令と同時にワルキューレはポロンへ向かって突進していく。
ポロンは素早く右側へ飛んでそれを交わした。
ワルキューレは一旦停止すると、すぐに向きを変えて再びポロンへと突進する。
ポロンもまたそれを見て取ると、先程と同様に交わしていく。

(思ったより速くねえな。それに動きも単調だ。これなら・・・)


「へー、ルイズの使い魔もなかなかやるじゃない。ねえタバサ?」

その様子を遠くから見ていたキュルケが髪をいじりながら言った。
キュルケの隣には食堂でも一緒だった空色の髪をしたメガネの少女もいる。
タバサと呼ばれた少女は本を読みながらチラチラと決闘の様子を伺っていた。

「彼はただの平民じゃない」
「あら?タバサがそんなこと言うなんて珍しいじゃない?まあ、確かにただの平民なら貴族と決闘なんて起こす気も無いでしょうけどね」
「(こくっ)・・・でも、このままなら彼は負ける」

タバサはそう呟くと、興味なさそうに本のページをめくった。

タバサの言った通り、戦況はギーシュに傾きつつあった。
ワルキューレの単調な攻撃がポロンに当たることは無かったものの、それは確実にポロンの体力を削っていった。
持久戦になれば体力に限りのあるポロンの方が不利である。

(こいつぁ、あまり旗色が良くねえな)

ポロンの当初の計画としてはワルキューレの攻撃を交わしつつギーシュの元へ向かい、隙を見て杖を奪うというものだった。
だが、そういった動きが出来る程ポロンの身体能力は高くなく、寧ろギーシュとの距離は遠ざかっていた。

(ヤオなら簡単に実行してアイツから杖を奪っただろうな。いや、ヤオならそもそも素手であの人形を壊せるか)

ポロンは心の中でそう愚痴ると、再び目の前まで迫って来るワルキューレを紙一重で避けた。


「ポロン・・・」

ルイズも遠くからこの決闘を見守っていた。
ルイズはただ祈っていた。
自分の使い魔が・・・ポロンが無事に自分の元へ帰って来ることを。

(始祖ブリミルよ・・・ポロンをどうか、どうか守って!!)


その時であった。
周りの観客からの歓声が大きくなる。
ルイズは慌てて確認すると、そこには倒れたポロンとそれに遅い掛かろうとするワルキューレの姿があった。

「ポロン!!」



「・・・失礼します」
「誰じゃ?」

オスマンが訊ねると、扉の向こう側から声が聞こえて来た。

「私です。ロングビルです。オールド・オスマン」
「入りなさい」

オスマンの言葉と同時に扉が開かれ、ロングビルの姿が現れた。
ロングビルの姿を見とめるとオスマンは吸っていた水キセルを置いた。

「どうしたんじゃ?」
「ヴェストリの広場で決闘をしている生徒がおられる様です。止めに入った教師も生徒たちに邪魔されて止められない様です」
「フム・・・しょうがないのう。で、誰と誰が決闘なんぞをしとるのかね?」

ロングビルは掛けていたメガネの位置を直す。

「一人は、ギーシュ・ド・グラモン」
「・・・ああ、あのグラモンとこのバカ息子か。で、相手は誰じゃ?」
「相手はミス・ヴァリエールの使い魔の男だそうです」

オスマンの顔色が変わる。
ロングビルはそれに気付きながらも淡々と報告を続けた。

「・・・教師たちは、決闘を止めるために『眠りの鐘』の使用許可を求めておりますが?」
「『眠りの鐘』・・・?わざわざ秘法を使う様なことでもない。放っておきなさい」
「分かりました」

ロングビルはオスマンに一礼すると、そのまま去ろうとする。
オスマンはロングビルを呼び止めた。

「ああ、そうだ。ミス・ロングビル。ついでと言っちゃなんじゃが、コルベール君をここへ呼んで来て貰ってもいいかね?」
「ミスタ・コルベールをですか?・・・はい、分かりました」

ロングビルは再び一礼をすると、今度こそ学院長室から出て行った。
オスマンはそれを確認すると杖を取り出して振った。
すると、壁に掛かっている大きな鏡の鏡面が変化し、ヴェストリの広場の様子が映し出される。
オスマンは水キセルを掴むと、それを咥えて鏡の中の映像を見つめた。



(やべえ!!)

ポロンはしくじったと歯軋りする。
目の前に迫るワルキューレを避けようとして、足がもつれてそのままこけてしまったのだ。
倒れて無防備となったポロンへワルキューレが容赦なく襲い掛かってくる。
ポロンは自分の右手を見つめた。

(くそ、使えるかどうか分からねえものだから、使うつもりは無かったけどよ・・・。
 この状況じゃ四の五の言ってられねえよな!!ぶっつけ本番だこの野郎!!)

ポロンは覚悟を決め、素早く構える。

「バギマ!!」

しかし、何も起こらない。
それを見たギーシュが嘲笑う。

「ハーハッハッハ。それは何かのまじないかい?・・・貰ったぞ平民!」

ワルキューレはすぐ目の前まで来ている。

「チッ!ならば・・・」

ポロンは再び構える。

「バギ!!」

すると、ポロンの右手から真空の刃が放たれた。
次の瞬間、ポロンの目前にまで迫っていたワルキューレは真ん中から真っ二つに割れ、そのまま地面へ倒れた。

「な、何だって!?」

驚いたのはギーシュだけでは無かった。
観客席にいた他の生徒たちも色めき立ち、広場は騒然となった。
キュルケも感心した様に手を叩く。

「驚いたわ・・・平民が魔法を使うなんて。まさかあんな隠し玉があったなんてね。・・・あれはウインド・カッターかしら?」
「違う。あれはウインド・カッターじゃない」

タバサが即座に否定する。

「それに・・・」
(それに彼は杖を使用していない)

タバサは風の魔法の使い手として、今のポロンの魔法が自分たちの使うそれとは性質が違うものだと感覚的に見抜いていた。
するとタバサは読んでいた本を閉じ、決闘を食い入る様に見つめ始める。
そんな今まで見たこと無い友人の様子にキュルケは面食らっていた。

(この子がこんなに興味津々に・・・?なるほど、彼は確実にただの平民ではないわね)

キュルケは自分の胸の中に何か昂ぶるものを感じ始めていた。


ルイズもまた今の様子に面食らった者の1人であった。

「嘘・・・でしょ?」

今までただの平民とばかり思っていたポロンが魔法を使用した。
あまりの衝撃に頭が回らなかった。

(ポロン・・・どうして黙っていたの?私が『ゼロ』だから?)

突如湧き上がる感情にルイズはポロンの顔を見るのが辛くなっていた。
それでも、目を逸らそうとはしない。

(見届けなくっちゃ・・・。主として、この決闘を見届けなくちゃ!!)

「く、クソ!これは何かの間違いだ!」

そう言うと、ギーシュは再び花弁を宙に舞わせて、新たに1体のワルキューレを作り出す。

「行くんだ、ワルキューレ!」

再びワルキューレがポロンへ向かって直進する。
ポロンは今度はその場から動かずに右手を突き出した。

「ベキラマ!」

また何も起こらない。

「ならギラだ!」

ポロンの右手から熱を帯びた閃光が放たれた。
ワルキューレはそれに飲み込まれると、上半身を砕かれてその場へ崩れ落ちる。

「ぐ、ぐぬぬ・・・」

ギーシュは歯軋りする。
ただの平民だと思っていた男が魔法を使ったのだ。
これは明らかな想定外の出来事であった。

「・・・なるほどな、貴族崩れの平民だったというわけか」

貴族の中にはその地位を剥奪され平民にまで落ちぶれた者も少なくない。
彼らは平民でありながら、当然魔法を使うことが出来る。
ポロンもそういった連中と同じなのだろうとギーシュは当たりをつけた。
杖を使っていない様にも見えたが、それも気のせいだろうと決めつける。

「君も魔法を使うならば、遠慮はいらないな!」

そう言うとギーシュは7枚の花弁を宙に舞わせた。
すると、それらは全てワルキューレと化し、7体のワルキューレがポロンの目の前に立ちはだかった。

「このギーシュ・ド・グラモン、全力を以って貴様を潰す!」
「・・・なるほど、数で攻めやがるか」

ポロンは舌打ちする。

(こんなんじゃ、当然ヒャダルコもイオラも使えねえと見た方がいいな。
 今の手持ちの呪文じゃ火力が足りなさ過ぎる・・・。1体ずつ破壊していくなんて
 チンタラしたことやってたら確実に他のにやられるぜ!)

「どうした?魔法が使えるからといっていい気になるなよ平民が!!」

ギーシュが薔薇を振ると、ワルキューレが一斉に襲い掛かってきた。
ポロンは必死に打開策を考える。
その時、この世界へ来る少し前に酒場で知人と交わした会話を思い出した。


「・・・師匠、覚えていますか?俺たちがガキだった時、アリアハンの森の中でゴールドオークに会ったこと」
「ああ、あったなあ、んなこと」
「あの時、師匠は俺とアスリーンを置いて真っ先に逃げたんですよね」
「んだよ、今更その時のこと責めんのか?」
「まさか!・・・あの時の師匠は本当にカッコ良かったなあって話ですよ」
「つまり、今はカッコ良くないってことだな?」
「アハハハ・・・勘弁して下さいよ師匠」
「ったくよお。・・・実は、あの時のこと俺あまりよく覚えてねえんだよなあ」
「本当ですか?何か凄い呪文使ったことも?」
「呪文?」
「そうですよ、こう右手から・・・」


(・・・そうか!!)

ポロンは打開策を思いついた。

(ちっ、何時までも若いつもりだったけど俺も相当耄碌してやがったな。
 たかだか3年呪文が使えなくなっただけでこんなことを失念してたなんてよ!!)

「おい、てめえ」

ポロンはギーシュに声を掛ける。

「何だい?命乞いかい?」
「・・・避けろよ」
「はあ?」

ギーシュはポロンが何を言っているのか理解出来なかった。

ポロンは目を閉じた。
次の瞬間、ポロンの両手に魔力が集中し始める。

「右手にバギ・・・」
「左手にギラ・・・」

ポロンは目を見開き、両の手を合わせた。



「合体呪文、バギラ!!」


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