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ゼロの黒魔道士 Another Note-01


お、ようこそようこそ!いらっしゃいませお客様!
――えぇ、そうでございますよ!
以前は武器屋だったそうでござんすね、こちらは。
ところが以前の店主様が「口うるさい剣が売れちまった」とかでやる気を無くされたのと、
――ほれ、ありましたでしょ?例の『虹の氾濫事件』でございまさぁ!
話によると、ここいらも全壊とはいかずとも大分やられてたそうで……
で、以前の店主さんは引退しなすったと伺っておりやす。えぇ。
まぁ、寂しい話ではござんすが……
そのお陰で手前もこうしてトリステインの御膝元、トリスタニアに店を格安で構えられたってなもんでさぁ!

――えぇ、そのとおりで。御察しのとおり、手前はご当地出身じゃぁござんせん。
元々ゲルマニアはヴィンドボナを主な根城としておりやしたんで、えぇ。
そりゃぁもう!『虹の氾濫事件』はあちらでもね!
手前も銀ピカのトカゲ野郎に店を綺麗さっぱりぶっ潰されて!
えぇ、えぇ!おまけに修理費を請求できる先も無いと来たもので!
しかしまぁ、ピンチはチャンスってなことも申しまして……心機一転!取って置きの品を担いでこちらに出て参りまして……

あぁ、どうぞごゆっくりご覧なすってください!
手前共は古物商でしてね!古今東西の珍品名品貴重品をご覧のように取り揃えてございまさぁ!
ここだけの話――いやね、お客の悪口ぁ言いたかないですが……
ゲルマニアのお客は、珍しけりゃなんでも良い!ってな方が多くて……
えぇ、えぇ!本当に!正直、商売する側としちゃ楽で良いんですがね?張り合いってぇもんがありませんや!
ちょいとしたガラクタを言い値で買ってくださんのはありがたいんですが……
やっぱりお客の厳しい目に晒されやせんと、えぇ、えぇ!こちとらも鍛えられやせんや!
そこいくと、トリステインのお客様は目が流石に肥えてらっしゃってて……
こちらもとっておきの一級品ばっかりを棚に並べにゃならないってなもので!
なぁに、こちらとしても目端の利き具合ってぇもんを存分にご披露できるんってぇもんでさぁ!
どうです?こちら?これはかの『イーヴァルディの勇者』がお供にしていたという、幸運の鳥の羽で……

――お!流石にお目が高いっ!そいつにお気づきになるとは、いやはや流石はトリステインのお客だぁ!
どうぞどうぞ、開いてご覧なってください……こりゃぁねぇ、中々出ない品でござんすよぉ?
こいつはですねぇ、お客さん……声を大きくしちゃ言えないんですがね?
そう、御察しのとおりの宝の地図でさぁ……かの冒険王と名高いアルシド王も捜し求めたって噂の!
それをなんと、手前共、偶然にもこれが見つけてしまいまして!えぇ、えぇ!
惜しいっちゃ惜しいんですがぁね、これは是非分かる方にお売りするのが一番だと!
流石にお宝の価値ぁ掘ってみにゃぁ分からないんで、そこはそれ勉強させて頂きましてぇの、5枚1組でお値段が……


――へ?え、な、なんです?落書き?この地図が、でござんすか?
馬鹿言っちゃぁ……『ショコグラフ』?
タルブ?……あ、えーと……お客さん、まさかタルブの?あご出身……
……はぁ~、そうでござんしたか……

い、いえいえいえいえいえいえいえ!!そんなそんな!滅相もござんせん!
騙すなんざぁ気持ちぁこれっぽっちも……コイツは正真正銘『宝の地図』でさぁ!
いやそんな王宮に突き出すとか、物騒なことぁおっしゃらないでくださいませ!?
――ふむ、「以前貴族に調べてもらったときには」?ほうほう?「こんな地形は無いと断定された」?
なるほどなるほど?「大昔の人の落書きにすぎないから、壁紙用のお土産として売っていた」?ほほ~……

するってぇと、何でございますかね?ご実家の?えぇ、タルブの皆様方におかれましちゃ?
この『宝の地図』を『落書き』だと?
……ほっほぉ~……そりゃぁまた……
い、いえいえ別にニヤニヤしてなんか……
あぁっ!?もう、呼ばないでくださいませよ!?銃士隊なんざ危なっかしい方々を……
あぁ~、もうしょうが無いでござんすねぇ……ここだけの話をいたしやすから、それで勘弁していただけませんかね?
いえいえ、下らない話なんかじゃござんせんよ?むしろお代を貰っても話したく無いことで……
まぁ、余った分はお客さんへの貸しってなことでお願いしたいですな、今後ともに御贔屓に……
――あぁ、もうせっかちなお客さんだぁ!こういうのぁ順を追わねぇと……

よろしいでござんすか?こちらの『宝の地図』……
……はいはい『落書き』でも結構ですよ?でも手前の話を聞いてからで良ござんしょ?ね?
手前はこいつを『5枚1組』で売らせていただいておりやす。
えぇ、ここがポイントでね……そこが『宝の地図』と『落書き』を分ける胆ってなわけで……
おっとぉ、適当に5枚ってぇわけじゃねぇんござんすよ?きっちり選ばさせていただいてまさぁ。
どうやって、ってそこはそれ、商売上の機密ってもんで……流石にそれはご勘弁を……
さて、ここにありまする選ばれし『5枚』……こいつをでござんすねぇ……
はいはい、参りやすぞぉぉ!そーれ、ひとーつ!ふたーつ、みっつ!よつのいつーつっ!
――お?顔が変わりやしたね?御明察。流石トリステインのお客様だぁ……
よろしければ、重ねたまんまをそちらの窓で……あぁ、ランプの方がよろしいですか?
へいへい、少々お待ちを……いや実はお客さん、こちらのランプも曰くがありやして……
あぁ、それはよろしいですか、へいどうも。
……はいはい、これでどうでござんす?
丁度紙の具合でねぇ、そちらの線が透けて、こちらは隠れたりして……
よぉく考えられたもんでござんしょ、ねぇ?

――『5枚1組』。
重ねるってぇと『落書き』が『宝の地図』に早変わりってぇ寸法でさぁ……
なかなかおもしろいでござんしょ?お客さん?お安くしておきやすぜ?



           ゼロの黒魔道士 Another Note
           ~第壱篇~ Just A Zero ―持たざる者―



白い鳥が、飛んでいた。
『5枚1組』の地図。その×印の真上だ。
海岸線を示す青い線が、赤い線の尾根に囲まれるようにある場所。

鳥の視線が動くと、その全貌がよりはっきりする。
切り立つ崖、打ち付ける白い波。
山々に追い立てられたように、ごく僅かな地面が顔を覗かせる。
陸の孤島。その言葉がこれほど合う場所も無いだろう。

海から崖の頂上まではなかなかの距離がある。
落ちた場合は人生を五、六回はゆうに振り返られる高さだ。
これを絶景と呼ぶのはやぶさかではないが、
よっぽどの度胸が無ければ、強い海風と足下の頼り無さから近寄ろうとすら思わないだろう。

「あおーい空 ひろーい海……」

どうやら、その『よっぽどの度胸の持ち主』がいたようだ。
丁度、海まで人生が三回程度振り返れそうな位置、そこから男が景色を満喫していた。

「こんなにいい気分にひたっているオレを……」

地図の×印の真下。
崖の中腹、ぽっかりと空いた横穴。
海風に煽られ、時折獣のような唸り声が法螺笛の要領で奏でられる。
そこに、男は立っていた。

赤い髪、血のように燃える色だ。
だがそれよりも特徴的なのは、男の腕。
腕組みをしながら、万歳をするように伸びをすることができる、その腕だ。
――腕4本。
亜人だろうか。少なくともハルケギニアでは見ない類の者だ。

「邪魔するのは・・・だれだー!!」

亜人が吠える。何が不満だと言うのか、
海に向かって『バカヤロー!!』と叫ぶかのごとく吠えた。
ビリッと空気が揺れる。
その唐突な空気の振動に驚いたのか、男の視界の端で白い影が細い目を丸くした。

「いや、俺だが……邪魔なら放っておくぞ?」
「す、スンマセンでした師匠っ!?」

その白い影……こちらも奇妙な形であった。
大きさは丁度子供の膝丈ほど。
全体で言えばぬいぐるみのような白い暖かな毛玉。
そいつが頭に巻いた黄色いバンダナの中から、
真っ赤なリンゴのような突起物を生やしている。
羽で飛んでいることと合わせると、妖精の類なのかもしれない。
言葉を解する妖精なのだから、それなりに高位の。

「いや俺は構わないぞ?お前がここで朽ち果てようがどうしようが……」
「そんなこと言わないで師匠ぉ~っ!?師匠が居なきゃオレどうしようもぉぉ~!!」

だが、この口の悪さを鑑みるに、メルヘン世界の住人というわけでもないようだ。
この毛玉からは、幾つもの困難をスレスレで切り抜けてきた凄味というものが感じられる。

「ったく……崖の上に結わえといたからよ。とりあえず昇れ。
 いつまでも『次元の狭間』に繋がってる場所にいるわけにゃいかんだろ」
「うっす師匠!恩に着まっす!!」

横穴の、奥深く。そこには闇が蠢いていた。
深い深い闇だ。星々が生まれる前のような、そんな闇。
丁度、『悪魔の門』の最奥、『虚空への門』と同じような闇だ。
この者達はそこから来たというのだろうか。
すなわち、ハルケギニアとは全く違う別の世界から。

「――いい加減、その『師匠』っての止めないか?俺にも、スティルツキンって名前が……」
「いやぁ、師匠は師匠っすから!オレ、すごい冒険家である師匠を尊敬してますからっ!!」
ギシギシとロープが軋む。
4本腕は崖昇りには相当役立つらしい。
危なげなく男はロープを手繰りながらスティルツキンと言うらしい毛玉に尊敬の念を語る。

「まぁ……いいんだけどよぉ……別に冒険家志望ってわけでも無いんだろ?」
「うっす!どでかい男に!いつか有名になるのがオレの夢ですっ!!」

スティルツキンは、ふぅと溜息をついた。
可愛らしい見た目に似合わぬ歳はそれなりに食っているつもりだ。
それゆえ、この若造のホワホワとした夢見がちな言動はどうもハラハラする。
他人のことは言えないが、根なし草特有の浮ついた空気。
こう、地に足のつかぬような、そんな雰囲気が。

「まぁ……頑張れ。勝手に」
「あぁっ!?師匠ツレないっ!?オレの相棒よりツレないっ!?」

この男自身の説明によると、
このアホたれは相棒にどこかにトンズラされてしまったらしい。
しかも、探していた宝剣と一緒にどこかへ。
その上この男は行き先不明で行き倒れていたというわけで……
よりにもよって異世界へと繋がる穴倉の真っただ中で転がっていやがったのだ。

正直、放っておいても良かったが、自分とて旅先では何度となく助けられた身。
たまにはお返しぐらいしなくてはと思って助けてしまったところ、異様なほど懐かれた。
少々今までの旅の話をすれば「師匠!!」と呼んで懐いてくる始末。

「……やれやれ」

野良猫だってもっと節操を弁えているだろうにとため息をつかざるを得ない。

「も、もうすぐ頂上っすか?結構腕に来ますねコレ……」
「……上に着いたら、俺のリュック持てよ。せめて」

オマケにこの男はとんだ臆病者と来たものだ。
少々剣は扱えるようだが、イザ強そうな敵に会うとすぐ逃げやがる。
それだけなら、まだ慎重な分使いようはあるが、
ミエを張りたがるし、ドジで、トロくて……という両手に余りある欠点をこの男は持ち合わせている。
必要な物を持たざる身のくせして、余計な物ばっかり持っている。
ロープもナイフも入って無い癖に香水や楽器を詰め込んだ冒険者鞄みたいなもんだ。

お陰で、『次元の狭間』で舐めてかかった敵に殺されかけて気絶したコイツを、
ヨタヨタと背負いながら逃げ通すハメになってしまった。
あまり旅のお供として有能とは言い難い。
せめて健康な内は荷物持ちにでもなってもらい、
適当なところで別れようと、スティルツキンはそう思っていた。

「あぁ、しかし良い景色っすねぇ……空は青いし、白いくも……雲?」
あと1手で頂上、というところで男の手が止まった。
青い空、白い雲、そして白い雲とは違う、白い何か。
その何かが視界に入ったからだ。

「……」
「えーとー……」

白い、布。
そこから二本ばかり柔らくて透き通るような色合いの細い脚が伸びている。
その周囲をふんわりとしたまた別の布が覆っている。

「……ぃ……」
「あ、あははは……か、かわいこちゃん、良い天気だね?」
そのさらに上の方、可愛らしい顔がじとりと、こっちを睨みつけている。
白い髪に白い肌、まるで雪で作った人形細工のような女の子だ。
と、いうことは、男が見た白い布というのは、この女の子の……
その透き通るような顔に、どんどん紅が差す。
羞恥に気付いた茜色。

「……ぃゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!?!?!?」
「わわわっ!?」

金切り声。
そりゃ下着を覗かれて良い気のする女の子なんてのも早々いやしない。
マンドラゴラもかくやという絹を裂くような叫び声。
それに煽られるように、男は体を反らせた。
――あろうことか、腕四本共をロープから離して。

「へ!?」

スティルツキンは、呆れたように「あ」と声を漏らした。
やっぱりこの男、地に足がついていない。

「わわわわわわわわっ、わあああああああぁぁぁぁぁァァアァァァァァァ……」
「……しょうがねぇな、あの野郎……」
「だ、大丈夫ですかっ!?」

下着見られて叫んでしまったはいいが、
それが殺人になってしまえば寝覚めも悪かろう。
スティルツキンと一緒になって少女が崖下を見やる。

「ゥがばゥ ガボォ ぶくゥ・・・・・・だずけ……」

青い空、広い海、白く湧き立つ波紋の真ん中で見事に溺れてやがる。
よくもまぁ無事だったものだ、悪運強い野郎だ、とも言えるが、
悪運が強ければそもそも落ちなくて済んだだろうに……
そう考えた辺りでスティルツキンは、何度目かの溜息をついた。
妙な相方を持ってしまった自分の運の無さを呪って。


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