あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

闇ルイズ

苦労の末ルイズが呼び出したのは奇妙な金色の物体だった。
形状は正四角錐をなしており、垂直断面には取っ手のように金属のリングが取り付けられている。
ルイズにはそれはただの悪趣味な置物にしか見えなかったが、教師コルベールに自らが呼び出したそれと契約を交わす様強制されてしまう。
当然ルイズは抗議するが、使い魔召喚の神聖性を理由に召喚のやり直しは認めてもらえず、しぶしぶその物体と契約を交わすルイズ。
一瞬使い魔のルーンが浮かぶものの、その物体に吸い込まれるようにして消えてしまった。
当然他に何の変化もなく、奇妙な置物でしかないそれを抱えて失意のなかルイズはとぼとぼと教室へと戻ったのだった。

拳大のそれは手で持ち歩くには面倒であったし、ポケットにも入れ辛い。
そのためリング状の突起に鎖を通してペンダントのように首から下げることにしたルイズは、部屋を出た直後キュルケに。更に教室では意地の悪い生徒たちから己の使い魔を笑われた。
悔しかったが、何も言い返せず、こんなもの部屋に置いてくれば良かったと後悔した。
錬金の授業で爆発を起こしたルイズは罰として教室の片付けをさせられ、更に不機嫌になった。
片づけが終わった後食堂へと向かったルイズは、そこで昼食を取る。
その時ルイズはギーシュがメイドへ絡むのを見かけた。
一部始終を見ていたルイズは、どう考えてもギーシュの自業自得であり、メイドにしているのは八つ当たりでしかないと思ったが、機嫌が悪かったし、平民のメイドをわざわざ庇おうなどと「ルイズは」思わなかった。

その後何事もなく一日を終えて部屋に戻ったルイズは、鎖から首を抜いてその置物を部屋の隅に乱暴に放り出した。
こんなものは持ち歩いてもしょうがない。使い魔が死ねば再召喚できるのだ。虚無の曜日にでも準備してこんなものは破壊してしまおう、と思ったのだ。
そうしてルイズは眠りに就いた。

深夜、熟睡していたはずのルイズはむくりと起き上がり、夢遊病のように部屋の片隅へふらふらと歩み寄ると、そこに投げ捨てられていた置物を取り上げ、自らの首に掛け直したのだった。
―――同刻、ギーシュ・ド・グラモンは自室にてすやすやと眠りこけていたが、いつのまにか響き始めたノックの音で目が覚めた。
こんな夜中に何事かと思って戸を開くと、そこにいたのはルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール嬢その人であった。
ギーシュは彼女を特別意識したことはなかった。
大貴族の令嬢である彼女であったが、魔法無能者の「ゼロ」として見下す家柄だけは良い劣等性、と言う程度の認識しかもっていなかったが、夜遅くに寝巻き姿で自分の部屋を訪れたとなれば話は別であった。
ギーシュは自分に、特に異性に対する自分の魅力には自身を持っていた。
ルイズは同年代の少女たちと比べれば発育は悪い方だ。
しかし、彼女の抜きん出た美少女と表現しても差し支えない容貌は、薄手の寝巻き姿が背徳的な扇情さを醸し出しており、深夜の自室であると言うことと、彼女が高貴な血筋であるということもあって若いギーシュの脳から、抑制心というものを簡単に吹き飛ばす威力をもっていた。

この時点で彼女を拒否する、と言うことは完全に思考から消えていたギーシュであったが、即座に襲い掛かるような真似は彼の美意識が許さなかった。
まずはルイズのはしたない振る舞いをたしなめ、次に彼女にそのような振る舞いをさせてしまった自分の魅力を詫び、しかるのち彼女を「いただこう」と都合の良い段取りを考えていたが、ルイズによってそれは阻まれることになった。
彼女はまず、余計なことを言われないようその愛らしい唇の前に人差し指を立て、沈黙を促すジェスチャーをする。
ギーシュがそれに頷くと、ルイズは彼の耳に唇をよせ囁く様に言う。

「ヴェストリの広場に来て」

そう言って、ギーシュが止める間もなくルイズは歩きさってしまう。
一瞬呆気に取られたギーシュだったが、ルイズはもう少しロマンスのある手順を求めているのだと思い直し自分を納得させた。
肩透かしを食らったが、あせる事はない、ほんの少しお楽しみが延びただけのことだと思って彼は広場へと着て行く服を選び始めたのだった。

彼が広場に着いたとき、ルイズは既に広場の中央で彼を待っていた。
彼女は先程の格好にマントを羽織っただけの格好で、そう寒い季節ではないとはいえ、月明かりの下でそれはいかにも頼りない。


「やぁ、待たせてしまったねルイズ。そんな格好で寒くはなかったかい?」
「良いのよギーシュ、気にしないで。それより、ねぇお願いがあるの」
「なんだい?何でも言ってくれたまえ」
「私とゲームをしましょう」
「ゲーム?」
「そうよ、ルールは簡単」

そう言って自らの杖を取り出すルイズ。

「決闘をするのよ。そして、勝った方は負けた方を好きにできる。ね、簡単でしょ?」

その突然の提案にぎょっとしたギーシュだったが、すぐに理解した。
決闘と言って杖を持ったとして、ゼロのルイズに勝ち目等あるはずがない。
つまりこれは、ただ自分を好きにしていいというのではあまりにもはしたないから、それを繕う為に言い出したゲームなのだと。
勝利の報酬を思ってギーシュは小鼻を膨らませながら、しかしがっついた印象を与えないようあえて反論をする。

「決闘だなんて、かよわい女性を相手にそんな事をする理由がないよ」
「ふふ……そう、理由が必要なの。ならこういうのはどうかしら?貴方は昼間食堂でメイドを叱っていたでしょう?私はあれは八つ当たりだと思うの。だから貴方のことが許せなくて、決闘を申し込むのよ。当然私が勝ったら貴方に罰を与えるわ。どう?」

人は本当のことを言われると怒り出すものである。
自らの所業を八つ当たりと言い表されて、不快に思ったギーシュは彼女にちょっとお灸をすえてやろうと思った。
力によって相手を屈服させてモノにするということに原始的な興奮を覚えたのも事実だった。

「良いだろう。そういうことであれば、君の思い違いを正してあげようじゃないか」

ギーシュは自らの杖である薔薇の造花を取り出す。
ルイズは一歩、二歩、しめて七歩歩いて間合いを取った。

「さ、始めましょう。貴方の番よギーシュ。貴方の手札を呼びなさい」

まったく淀みない口調でルイズは言う。
もちろんこれは勝負などでは無いのだから、彼女が怯える必要などあるわけがない。
しかしギーシュは彼女に怪我はさせないまでも、少し驚かせ、怖がらせてやろうと思った。

「では、使わせてもらおう。僕の魔法を!いでよ、ワルキューレ!」

ギーシュが薔薇を振るうと、その花弁が一枚はらりと舞って、見る間に槍を持ち鎧をまとった女戦士を形作る。
所詮箱入りのお嬢様。この槍を顔の間近まで突き出してみせればきっと怯えて止めてくれと頼んでくるに違いない、とギーシュは思った。

「呼んだわね。では私のターン」

ルイズは杖をマントの内側へとしまうと、入れ替わりにトランプのようなカードを取り出した。その数5枚。
そしてその中から1枚を引き抜いて、空中へと放りなげる。

「【エルフの剣士】を攻撃表示で召喚!」

放たれたカードが光り輝き、まるで召喚のゲートのように広がったと思うと、次の瞬間剣と盾で武装したエルフが現れた。

「な、なんだってぇーーーーっ!!!??」

ギーシュの叫びがヴェストリの広場に響き渡るが、観衆無き決闘の場でそれを聞くものはギーシュ自身と、ルイズしかいなかった。
そのルイズはギーシュの驚愕など僅かも気にかけず更に1枚のカードを手札から抜き取り、手前に置くような動作を見せると、カードは空中にぴたりと固定された。

「更に、場にカードを1枚伏せてターンエンド」

ギーシュはわけがわからなかった。
ちょっとルイズをからかって、その後は勝利の報酬が待っているだけのゲームだったはずなのに、なぜエルフが!
エルフ!まさか、エルフがこの学院へと侵入し、ルイズに取り付いたのでは!?
混乱するギーシュへとルイズが促す。

「どうしたのギーシュ。貴方の番よ?何もしないのならこちらの番にうつらせてもらうけれど」

ここへ来ても一切乱れぬルイズの声とは対照的に、動揺が聞いて取れるギーシュの声が返される。

「きっ、君はっ、こんなっ、エ、エルフだなんて!」
「いやねぇ、これはゲームなのよ。そんなに怯えないで。これはあくまでゲームの駒。勝手に行動したりはしないわ」

そう言って【エルフの剣士】を見るルイズ。
その視線を追ってギーシュもそれを観察する。確かに、顔を伏せ静かに佇む其の姿はルイズの命令を待つ駒のようにも思えた。
しかしだからこそ、それを平然と従え、冷たい目でギーシュを見るルイズの異様さがここへきて恐ろしい!

「ルイズ!馬鹿なことはやめるんだ!エルフに組するなんてただじゃ済まないぞ!」
「やめるですって?それは無理よギーシュ。私も貴方も既にゲームの盤の乗ってしまった。決着がつくまでこの盤から降りることはできないの」
「なんだって!?」

辺りを見渡すギーシュ。
しかしヴェストリの広場の外は闇に包まれている。夜だから、ではない。
当然見えるはずの各塔の明かりすらいつの間にか見えなくなっていることにやっと気づいたのだ。

「わかった?貴方は無事にここから出るには、私に勝つしかないのよギーシュ」
「うぅ……」

短い間に様々なストレスに晒されたギーシュの精神は既に限界を迎えていた。
そして耐え切れなくなった心は、眼前の脅威へ全力で攻撃することを選択する。
無我夢中で薔薇を降り、更に6体のワルキューレを造り出し、ギーシュは声を張り上げた。

「ワルッッキューレッ!あのエルフを攻撃しろォォォッ!!」

7体の青銅の女戦士が、一斉にエルフの剣士へと肉薄する。
それを見たルイズは唇を歪めて微かに笑い、小さくこう宣言する。

「トラップカード発動。【聖なるバリア・ミラーフォース】」

ルイズがそう呟いた瞬間、空中に伏せられていたカードが躍り上がって光を放つ。
その光が七つに分かれ、ワレキューレ達を襲う。光が収まった時、ギーシュのワレキューレ達は唯の一体も残さず消滅していた。

「あ、あ……僕の、ワルキューレ……」

呆然と呟くギーシュを尻目にルイズはゲームを続ける。

「そして私のターン。ドロー、並びにエルフの剣士、ギーシュにダイレクトアタック!」

ルイズから初めて下された命令に、エルフの剣士は忠実に従った。
ギラリと手にした刃を光らせて、ギーシュへと襲い掛かる。

「ぎゃああああああああぁぁぁっっ!!!!!」

剣士の刃に切り裂かれたギーシュは、奇妙なことに怪我は負わず、血の一滴もでなかったが、しかし凄まじい痛みがギーシュを襲い、頬が裂けんばかりに開かれた口からは絶叫が放たれた。

「ふ、ふ、ふ、ギーシュ。貴方の負けね……」

痛みにがくりと膝を突いたギーシュに、無造作に歩み寄るルイズ。
エルフの剣士はいつの間にか姿を消している。

「負けたからには『罰』を受けてもらわなくっちゃぁね」
「あ、あ、あ、、、」

恐ろしい恐ろしい恐ろしい。
ギーシュは見た。ルイズが胸に下げたペンダントに刻まれているのと同じ文様の「眼」が、ルイズの額に浮かびあがってギーシュを見下ろしているのを。

「罰ゲーム!」

ルイズが宣告し、その指でギーシュを指し示す。
ずぶり、と音をたててギーシュの精神に穴が開き、その心が穴中に落ちて行った。


―――次の日、ルイズが自室のベッドで眼を覚ますと、放り投げたはずの千年パズルがテーブルの上に置かれていたので、何故だろうと頭を捻ることになった。
ギーシュは意識不明の状態で発見され、その意識は数日の間悪夢の中を彷徨い、眼が覚めた時には何も覚えていなかったという。

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