あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

ゼロの怪盗-04


ルイズは憤慨する。
召喚に成功した!と思ったら、平民の男だった。
決死の思いで契約を交わしたら、すぐに使い魔が去って行った。
去って行った使い魔を追いかけたら、今度は使い魔に攻撃された。
そして使い魔は再びルイズの元から去って行った。
絶望の中、自室へ戻るとその使い魔が今目の前にいる。

人をおちょくってるのか?

嬉しさよりも何よりも怒りが込み上げてくる。
ルイズはどちらかと言えば気は短い方だが、
同じことをされたら、例えルイズでなくても強い怒りを覚えるだろう。
なのに、目の前の使い魔ときたら、反省するどころか笑ってくつろいでいるのだ。
ルイズは胸元から杖を取りだそうとして、ハッと思い止まる。
先程は自分に背を向けた状態なのに、こちらが杖を振ろうとした瞬間に攻撃された。
それもこちらを見ずに、である。
およそまともな戦闘を行ったことのない彼女でも、目の前の使い魔がただ者ではないことは察せられた。
こちらが何か攻撃またはそれに準じる動きを仕掛ければ、先程の様な反撃を受けるかも知れない。
いや、確実に受けるだろう。
その時、向こうが先程の様に外してくれる保証はないのだ。

ルイズは乾いた笑いを浮かべそうになる。
自分は自分の使い魔相手にささやかな信頼関係すら築けていないのだ。

「何で…戻って来たのよ?」

ルイズは平静を装って、それだけ言うのが精一杯であった。

「勘違いしてもらっちゃ困るなあ。全てはお宝の為さ」

しかし、そんなルイズの想いを汲み取る素振りもなく、目の前の使い魔はあっけらかんと言ってのけた。
前半のセリフはどちらかと言えば自分が言うセリフだろ!
と更に憤慨しそうになってルイズは地団駄を踏む。

(ハァ、ハァ……、れ、冷静になるのよルイズ!相手のペースに乗せられてはダメ!)

ルイズは近くにあった水差しから水を汲むと、すぐにカラカラの喉を潤した。
心なしか、落ち着いてきたような気がする。
フーッと一息つくと、ルイズは再び目の前の使い魔と目を合わす。

「アンタ……」

流石に今、相手を犬扱いする程空気の読めなくはないルイズである。
だが、いざ改めて何か聞こうとしても、パッと思い付く程、冷静沈着でもなかった。
その時、ルイズは目の前の使い魔の名前すら知らないことに思い当たった。

「アンタの名前……、そう名前!アンタの名前を教えなさいよ!」

「そんなこと聞いてどうするんだい?」

「う、うるさい!いいから答えなさいよ!」

「……海東大樹」

やや間を開けてから面倒臭そうに答える。

「カイトーダイキ?ここらじゃ珍しい名前ね。そうそう、私はル……」

「興味ないね」

ルイズが名乗ろうとして、すぐに海東はそれを遮った。
あまりなタイミングにルイズは再び怒りのボルテージが上がるが、
僅かに残った理性で何とかそれを抑え込む。

「……ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」

「フーン。で、この印についてなんだけど……」

ルイズの名乗りを聞いているのか聞いていないのか、そう言って海東は左手の甲をルイズへ向けた。

「何か知らないかい?」

ルイズは太腿の辺りを抓って、今にもキレてしまいそうな自分をこらえつつ

(いずれ私から説明することだしね。べ、別にあいつに聞かれたから答えるんじゃないんだから!)

と自分に言い聞かせてから海東の質問に答えた。

「……それは使い魔の印よ。使い魔ってのは主人の目や耳の代わりになって……」

「僕が聞きたいのはそういうことじゃない」

またもルイズの言葉が遮られる。
ルイズは怒りのあまり絶句するが、海東は我関せずと言った感じで続けた。

「これが僕にどう影響を与えるのか、それを教えたまえ」

「たまえ……って。ま、まあいいわ。それがあると主人に対しての忠誠心が生まれる……筈なんだけど」

目の前の使い魔が自分に対して忠誠心を持っている様にはとても見えない。

「……洗濯とかしてくれる?」

「嫌だね」

「……やっぱり」

ルイズはハーッとため息をついた。そんなルイズを見て海東は不思議そうな顔をする。

「何をそんなにイラついてるんだい?」

「……………………」

「いけないなあ、君はカルシウム足りてないんじゃない?」

「……………………」

ややあってから、遂にルイズの堪忍袋の尾が切れた。

「あ、あ、アンタねえ!へ、平民のくせして何よその態度!?自分の立場分かってんの!?
 大体、アンタが腰掛けてるベッドはあたしのよ!?本来なら平民であるアンタなんかが触れていいものじゃないわ!!」

「へー、そうなんだー」

海東は何の感情も込めずにそう言うと、ベッドの上へ寝転んだ。
これには流石のルイズもキレてしまった。
ルイズは胸元から杖を取り出して海東へと向ける。

「ファイアボール!!」

呪文を唱えると、轟音とともに目の前が爆発した。
本来ならばこの魔法はそういう魔法では無いのだが、ルイズが使うといつもこうなる。
他の魔法でも同様である。
ベッドは見るも無残な姿となり、部屋中に上質な羽根がはらはらと舞う。

「凄いねー」

ハァハァと肩で息をするルイズの背後から声がした。

振り返ると、海東が壁にもたれ掛かりながらパチパチとまばらな拍手をしている。

「ハァ、ハァ……。い、いつの間に?」

爆発の寸前までベッドの上にふんぞり返っていたのに、

「ちょ、ちょっとルイズ!一体何事よ!?」

勢い良く扉が開くと、露出度の高いネグリジェを纏った豊満な肢体の少女が現れた。
彼女の名はキュルケ・アウグスタ・フレデリカ・フォン・アンハルツ・ツェルプストー。
ルイズの隣人であり、また彼女にとって因縁浅からぬ相手である。

「ハァ、ハァ、あ、アンタには関係ないでしょ!ハァ、ハァ……えぐっ!」

息も絶え絶えにルイズはキュルケに対しても強い不快感を露わにする。
目には涙を浮かべ、吐く息に軽い嗚咽が混じる。
キュルケはルイズに会う度に挨拶代わりに皮肉や軽口を叩いていたが、
この時ばかりはルイズのあまりに無残な形相にそれも忘れていた。

唖然としていると、キュルケの肩に何かがぶつかる。

「キャッ!」

「おっと、失礼」

キュルケは声のする方を振り向いた。
すると、そこには襟足の長い黒髪のイケメンが立っている。

(あら、なかなかいい男じゃない)

どうやら海東はキュルケのお眼鏡にかなったらしい。
だが、そんな彼女には見向きもせず、海東は部屋の中で恨めしそうに自分を見つめるルイズに向けて、
お馴染みの指鉄砲のポーズを取った。

「君じゃ僕の欲しい情報は得られない。だから別の人に聞くよ。じゃあね、大豆」

「だ、誰が……」

ルイズの目がカッと見開く。

「誰がタンパク質豊富な畑の肉じゃあああああ!」

ルイズの怒号は去っていく海東の耳には届くことはなかった。





学院の外へと出た海東は内心がっかりしていた。
得られた情報があまりに少ない。
そして恐らく、いや確実にあの少女はあれ以上の情報を知らない。

(振り出し……か)

海東はふと夜空を見上げる。
空には綺麗な月が浮かんでいた。
それも2つ。
だが、それに対して海東は特に感想も抱かなかった。
とは言え、いつも訪れるような世界とはあまりに違うこの世界には流石の海東もわずかな戸惑いがあるのも事実であった。
海東は考える。
そして、一つの答えを導き出す。

(……僕としたことが、慣れない世界で少し消極的になっていたみたいだね)

海東は月明かりの下、薄く笑う。

(欲しい情報が得られないなら……、奪えばいい!)

海東は踵を返すと、来た道を戻って再び学院内へと足を踏み入れた。



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