あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

機械仕掛けの使い魔-第06話


機械仕掛けの使い魔 第6話


 翌日。目を覚ましたクロは、ベッドを見やった。ルイズ、キュルケ、タバサ、シエスタが眠っているのだが、ダブルサイズのベッドに4人も横になっている為、
手や足が互いに乗っかり合い、さながら壁や地面に張り付くツタのような様相を呈していた。と言うか、この状況でよく誰1人落ちないものだ。妙に感心するクロであった。

 太陽の昇り具合でおおよその時間を把握したクロは、一般的な学生の1日のスケジュールと照らし合わせてみた。
始業時間から逆算すると、そろそろ朝食を摂らないと間に合わない計算になる。
「どうすっかねー…、なぁ、フレイムちゃんよ」「きゅるっ?」
試しに、フレイムに聞いてみるクロ。だが当然のように、返事はない。そもそも、言葉が通じているかどうかすら怪しい。
 ここで、2通りのパターンをシミュレートしてみよう。

1:ルイズたちを起こした場合
 ギリギリで始業時間に間に合い、つつがない1日が経過する。何ら問題なく、クロにとってもデメリットらしいデメリットはない。
2:無視を決め込んだ場合
 自力で起床した時間によっては、朝食を摂れないどころか、授業にすら遅刻する可能性が高い。となれば、使い魔たる自身に、何かしらの危険が及ぶ事もあり得る。

「しゃーねーな…。おいコラ、起きろオメーら!」
 面倒はゴメンだと、クロはルイズたちを起こしにかかった。しかしベッド脇に移動して声を荒らげても、誰一人起きようとしない。
何やら幸せそうな顔で、惰眠を貪っている。
「遅刻すっぞ! さっさと起きやがれ!」
さらに声を大きくする。しかし、誰も目を覚まさない。むしろ、寝言が返ってきた。
「いい加減に…」
 クロの頭に、青筋が浮かび上がった。歯を結び、ギリギリと音を立てながら、足を高く振り上げる。そして――
「起きろっつの!!」
踵を、マットレスに叩き込んだ。かなり手加減した一撃だったが、その衝撃で4人は、そのままの姿勢で、また1メイルほど浮き上がった。
 着地と同時に、慌てて起き上がり、辺りを見渡す4人。そんな彼女たちに、クロは怒りを隠さない表情で詰め寄り、窓の外を指さした。
「今、何時だオイ? 起こしてやってんだから、一発で起きやがれッ!」
「だからって、今のは何よッ!? もっと優しく起こしなさいバカ猫!」
「それで起きなかったのはどこのどいつらだ、あン!?」
 クロは何1つ嘘をついていない。1度目と2度目のトライでは、彼には珍しく一切手を出していないのだ。
2度目までに起きなかったルイズたちに非があると言ってもいいだろう。

「とにかく! オメーら、これからやる事あんじゃねーのか?」
「やる事…あっ!」
 ここに至り、ようやくルイズたちは理解した。ルイズ、キュルケ、タバサはこれから学生としての1日が、シエスタはメイドとしての1日が始まるのだ。
と言うか、シエスタはもはや遅刻確定である。
「朝ごはん朝ごはん! 早く行かないと午前の授業が始まっちゃう!」
「その前に制服よ制服! シワだらけじゃないの!」
「朝ごはん、大事…」
「アイナにまたイタズラされちゃいます…」
 にわかに、蜂の巣をつついたような騒ぎとなったルイズ私室。呆れた目で見つめるクロであったが、
その騒々しさに辟易し、誰にも気づかれる事なく、部屋を出ていったのだった。

    +     +     +     +     +     +     

 部屋を出たクロは、そのまま寮塔を後にし、中庭へ足を踏み入れた。中庭には昨日も来ていたのだが、
その時は洗濯の出来る水場を探しており、しかも割と速攻で見つけたので、ほとんど見て回ることが出来なかったのだ。
「どっか、日当たりのいい場所はないかねー、っと」
 目下、目的はただ一つ。フジ井家の縁側に匹敵する昼寝スポットの探索である。日当たりのいいフジ井家の縁側は、クロのお気に入りの場所だった。
今後、いつ帰れるか解らないこの世界で、昼寝に最適な場所を探すのは、彼にとっては当然といえば当然である。

 反時計回りに、中庭を歩いてみる。前述のように、トリステイン魔法学院の中庭は広い。
その中央にそびえ立つ本塔を見上げながら、クロはその広さに舌を巻いていた。
「おいおい、学校ってレベルの広さじゃねーだろ、コレは…」
敷地の広さで言えば、大学と遜色ないように感じられる。もっとも、クロは大学など入った事がない為、あくまでもテレビドラマやCMで得た程度の知識ではあったが。
「ファンタジーだねー…いやはや」
何やら妙に感心しているクロだった。

 2つ目の塔を過ぎた辺り。そこで、クロの身体に異変が起こった。
  プスンっ キュルルルルルル…
 クロの身体から、妙に軽い音が鳴った。徐々に小さくなっていくその音と共に、力なくその場に倒れるクロ。
(しまった…燃料切れか…!)
内心で、クロは大きく舌打ちした。召喚される直前、朝食から例の爆発までは数時間が経過していた。
しかもこちらの世界に喚び出されてから、口にしたものといえば紅茶だけ。
 サイボーグと言っても、クロのエネルギー源として最も効率が良い物は、ジェット燃料やガソリンなど、大型の機械を動作させる為の燃料類だ。
他にも剛の改良によって、通常の食物でも、効率は落ちるが、それなりに量を摂れば十分なエネルギーを確保できるようになっている。
他作品のサイボーグのように、核エンジンや永久機関など、都合の良い代物は搭載されていないのだった。
 クロはほぼ24時間、ろくにエネルギーの補給を行っていなかったのだ。ガス欠になるのも無理はない。

 残り僅かな燃料を消費しながら、必死に本塔を目指すクロ。倒れた位置からでも、本塔からは生徒や教師たちの喧騒が聞こえる。
あそこまで行けば、燃料は絶望的でも、何かしらの食物はもらえるかもしれない。震える身体で匍匐前進しながら、クロはほんの少しの希望に賭けた。

    +     +     +     +     +     +

 場所は変わって、ここは風の塔と水の塔の中間に位置する使用人宿舎。2階の自室で、シエスタはアイナからのセクハラを受けていた。
「ちょっと、アイナ! やめてってば…んっ!」
「なーに言ってるのよサボり魔っ! 昨日も今日も仕事ほっぽらかして、どこ行ってたの?」
後ろからアイナが、シエスタの乳房を揉みしだいていた。女性同士だから許される行為ではあるが、どことなく背徳的な雰囲気も見え隠れする。
と言うか、なぜアイナは敵意を剥き出しにしているのか。それほど大きな胸が憎いのか。
「だからっ、昨日はミス・ヴァリエールのお部屋で…!」
「ミス・ヴァリエールの部屋で何してたの? 昨日の黒猫がらみ?」
詰問する間にも、指を休めないアイナ。むしろ、さっきより揉む力が強くなっているように見える。
それほど妬ましいのか、巨乳が。

「それは…って、あれは…」
 アイナの手から逃げ出そうと身を捩っていたシエスタは、ふと窓の外の一点に視線が釘付けになった。
慌てて全力でアイナの拘束から逃れ、窓に張り付く。ただならぬ様子に、アイナも倣って窓の外を見やった。
「…クロちゃん!?」「クロちゃん?」
 火の塔、風の塔、本塔に囲まれたヴェストリの広場。シエスタは目を凝らし、風の塔付近でもぞもぞと動くクロを見つけた。
昨日までの、軽々とダブルベッドを持ち上げていた時とは、遠目で見ても明らかに様子が違う。

「ッ!!」
 クロの様子を認識したシエスタの行動は早かった。矢のように部屋を、使用人宿舎を飛び出し、脇目もふらずにクロのもとに走り寄り、その身体を抱き上げた。
手足はダランと垂れ下がり、耳も寝てしまっている。
「クロちゃんっ、どうしたんですか!?」
ほとんど閉じかけているクロの目を覗き込み、シエスタは大声で呼びかけた。
「ね、燃料が…切れ、た…」
「ねんりょう…ですか?」
 燃料と言われても、シエスタには何のことか解らなかった。それに、切れた、という表現にも首を傾げる。
 恐らく、機械仕掛けの身体という点に関係しているのだろうが、何せ未だかつて、機械仕掛けの猫など、見たことも聞いたこともないシエスタだ。
クロの身体に何が起きているのか、想像もつかない。
「何か…食い物…食わせてくれ…」
「食べ物ですね? 解りました!」
「あと…油があるなら、一緒に頼む…」
「料理用の油ならいくらでもあります、とにかく、厨房へ!」
クロを抱え、シエスタは全速力で厨房へ向かった。

 余談だが、それから十数秒経って現場へ到着したアイナは、またも置いてけぼりを食らったのだった。

    +     +     +     +     +     +

 厨房へ飛び込んだシエスタは、突然の登場に驚くコック長たちを尻目に、手近な椅子にクロを座らせると、大急ぎで余った賄い料理をかき集めた。
そして、適当な皿にそれらを盛り付け、ボトルからコップに注いだ料理用油と共に、机の上に並べた。
ざっと数えても10枚以上ある皿の上に、こんもりと料理が盛られている。
コック長たちは、シエスタの奇怪な行動に、ただただ呆然とするばかりだった。
「お、おいシエスタ、どうしたってんだ…?」
「さぁクロちゃん、どんどん食べて下さい!」
 想像してみて欲しい。
突然、自分の目の前に並べられる満漢全席一式を。本来ならば何日もかけて堪能する料理を、今すぐ完食しろと言わんばかりに並べられる光景を。
常人ならば、まずその時点で食欲を失うだろう。
 だが、クロは違った。戦闘サイボーグとして生まれ変わったクロは、その桁外れのパワーを維持する為に、膨大なエネルギーを必要とする。
剛によって食物でもエネルギーを摂取できるよう改良を施されたが、エネルギー源としてはジェット燃料などに劣る、
その為、食物に頼る場合は、人間よりも遥かに大量に、カロリー価の高い物を食べなければならない。
 今のクロには知る由もないが、目の前に並べられた料理は、生徒たちの朝食を作る際に出た、余り物の食材を調理した物である。
高価な部位のみを切り取られた食材で作られた賄い料理は、その条件を完全に満たしていた。加えて、コップに注がれた料理用油。完璧である。
クロは律儀に手を合わせると、あっという間に全ての料理を平らげてしまった。

「助かったぜ、シエスタ。あと少しで動けなくなるとこだったぜ」
 出された食事を残さず頂いたクロは、かれこれ5杯目になる料理用油を傾けていた。
その周りでコックたちは、平気な顔をして料理用油を飲み、しかも喋るクロに、ひたすら唖然としていた。
「し、シエスタ…? この黒猫ちゃんは何なの…?」
食事の途中で追いついたアイナが、プルプルと震えながらクロを指さす。コックたちも、息を呑んでシエスタの答えを待った。
「この子はミス・ヴァリエールの使い魔さん、クロちゃんです。見た目はどこにでもいそうな黒猫さんですけど、喋ったり出来るんですよ」
まるで自分の事のように、自慢げに話すシエスタ。当のクロは、相変わらずちびちびと料理用油をあおっている。
どうやら、これ以上の身の上話は面倒なようだ。昨日の夕方と夜、2回も同じような事を話している為、無理もないが。

「ごっそさん!」
 コップを空にしたクロは、勢い良く椅子から飛び降りた。力強く床を踏みしめ、耳もピンと張り詰めている。
「お粗末様でした。またお腹が減ったら、いつでも来て下さいね」
「おぅ、そん時は厄介になるぜ」
 強気な笑顔で手を振り、厨房を後にしようとするクロ。その背中に、コックの1人が声をかけた。
「なぁクロちゃんよ、おめぇのご主人…ミス・ヴァリエールだっけか。その嬢ちゃんは、飯も用意してくれねぇのか?」
コックたちの中でも、一際体格がよく、立派な髭をたくわえた男だ。どこか不満げな顔をしている。
「貴族ってのはやっぱりひでぇ連中だぜ。自分の使い魔にも飯食わせてやらねぇなんてよ」
「あ、あの、マルトーさん。今回はそういうワケでは…」
シエスタが控えめに意見しようとしたが、クロが遮った。
「今回はちょいとワケありなんだよ。別にルイズのヤツが悪いわけじゃねー」
苦笑しながら、ルイズのフォローを入れるクロ。そんなクロに、マルトーは豪快な笑顔を見せた。
「ガハハ、おめぇも悪いヤツじゃねぇみたいだな! 昨日の今日だってのに、貴族様を庇えるなんてよぉ!」
「そんなんじゃねーよ。オイラにも原因はあるみてーだからな…」
「アレはショックでしたもの…」
昨日の一件を思い出したのか、シエスタの顔がやや青ざめた。
その場に立ちあっていないマルトーは、そんなシエスタを不思議に思いながらも、クロに親指を立てて見せた。
「まぁいい。とにかくクロちゃん。シエスタの言った通り、腹が減った時はいつでもここに来な。飯なんていくらでも食わせてやるよ!」
「おぅ、ありがとな、おっちゃん」
クロも親指を立て返し、そのまま厨房を出て行った。


「さて、シエスタぁ…?」
「へ? あ、アイナ…?」
 背後に立つアイナの気配を感じたシエスタは、背中を汗が伝う感触を味わった。
そしてアイナだけではなく、マルトーを含めた厨房スタッフ全員から質問攻めに遭うのだが、それはまた別のお話。

    +     +     +     +     +     +

  ドカァァァァァンッ
「んぁ?」
 当てもなく本塔内を散策していたクロは、突如鳴り響いた爆音と、ちょっとした地震とも思える振動に足を止めた。
手近な窓から顔を出し、周囲の様子を探ってみると、学院東側に位置する塔『風の塔』の窓から、黒煙が勢い良く噴き出しているのが見えた。
「コイツは…もしかして?」
ニヤリ、とクロは笑い、階段を探して駆け出した。爆発=ただ事ではない何か。昨日は退屈な毎日が続くかと軽く絶望していたが、早速現れた火種に、彼は邪悪な笑顔を隠せなかった。

「コイツはまた…ひっでーな…」
 爆音と振動の元は、石造りの教室だった。到着したクロが見たのは、机の影に隠れて暴言を飛ばしている生徒たちと、大騒ぎしている化け物の群れ。
元々は壮観な教室だったのだろうが、その面影はない。あたり一面が黒く煤け、床や机の上には瓦礫が散らばり、最奥の教壇は見るも無残に吹き飛んでいる。
 そしてその教壇では、ボロボロの制服を着ている生徒――ルイズが、杖を振った姿勢のまま立ち尽くし、黒板の下では、ふくよかな体型の中年の女性が、これまたボロボロの状態で倒れていた。
「何があったんだよ、ルイズ?」
「………」
 主の足元まで歩み寄り、この惨状の経緯を尋ねたクロだったが、返ってきたのは沈黙であった。

 誰もいなくなった教室。ルイズとクロは、その惨憺たる有様の教室の掃除を、黙々と進めていた。ルイズは箒で瓦礫を集め、クロは雑巾で煤けた壁や机を磨いている。
「…何でよ」「ぁん?」
 ルイズの声にクロが振り向くと、彼女は手を止め、俯いていた。2人の距離は2メイルほどだが、クロにはルイズの肩が震えているのが、ハッキリと見て取れた。
「何で…何も聞かないのよ…!」
「さっき聞いたじゃねーか、何があったんだよ、って」
「違うわ! 何でそれ以上、聞こうとしないのよッ!?」
ルイズは涙声だった。足元に、水が滴っている。それは、彼女の涙だった。
「教室がこんなになって…明らかに私がやったって解ってるはずなのに…。どうしてアンタは、そんなに黙ってるのよ!」
 クロは、ルイズの涙の意味を理解した。この少女は、きっと怖かったのだろう。
何かしらの理由で教室で爆発を起こし、生徒たちから罵詈雑言を浴びせられ、その上、自分の使い魔に理由を話して笑われるのが。
惨めな姿を、己の使い魔に晒すのが。
「うぅ、ひっく…アンタも、きっと笑うでしょ…? わ、私が、何で『ゼロのルイズ』って呼ばれてるのか、知ったら…」
しゃくり上げるルイズ。そこにいるのは、今までの高圧的な態度の貴族ではなく、年相応の、繊細な、か弱い少女だった。  
「そいつは、話さなきゃいけねぇ事なのか?」
クロも机を磨く手を止め、体ごとルイズと向き合った。その目は、今までの斜に構えたような物ではなく、真剣そのものだった。
「話して、オメーは楽になるのか? それとも、オイラでも何とか出来る事なのか?」
ルイズは無言だ。いつの間にか箒を取り落とし、目元を何度も擦っている。
「話したくねぇんなら、オイラも無理に聞かねぇよ。泣くほど怖かったんだろ? だったら無理すんな」
クロの瞳が、ルイズの瞳を見据える。そこに冗談は一欠片もない。その、不器用な優しさを湛えた瞳を信じ、ルイズはポツリポツリと語り始めた。

 名門の出なのに、これまで一度も魔法が成功した試しがない事。魔法を成功させる為に、他の生徒の何倍も勉強し、努力を重ねた事。なのに、その努力が一切実を結ばなかった事。
クラスメイトたちの視線が冷たくなり、いつしか魔法成功率0%、『ゼロのルイズ』と呼ばれるようになり、クラスでも孤立するようになった事…。

 全てを語ったルイズは、溢れ出る涙を止めようともしなかった。その場に座り込み、ただただ嗚咽している。
 クロはため息を1つ吐くと、ルイズに語りかけた。
「オイラは何で、オメーに喚び出されたんだろうな?」
「何でって…それは…私がサモン・サーヴァントで…」
「そうじゃねぇ、理由だ」「理由…?」
クロは記憶を探り、1人の少年を思い浮かべていた。ルイズのように行き詰まり、壁の前に立ち竦み、ついには暴走してしまった少年を。
 似ている、と思った。行き詰まって、どうしようもなくなって、心の底で悲鳴をあげていたルイズを、少年と重ね合わせていた。
そして、クロなりに理解した。自分がなぜ、この世界に召喚されたのかを。
「困ってたんだろ?」
 ルイズがハッとする。クロの目は、機械のそれとは思えないほどに澄み渡り、弱々しい姿の自身を映していた。
「誰よりも頑張って、頑張って、それでもどうしようもなくて、道を見失って、ホントのホントに困ってたんだろ?」
 ルイズは頷いた。なぜかは解らなかったが、今この瞬間、ルイズはクロに、心の底から素直に、本心を打ち明けていた。
「だから、オイラが喚び出された。オメーがホントに困ってたからだ」
「私が困ってた…。それだけの理由で…?」
「十分過ぎる理由だぜ? オイラを召喚するにはよ。オメーの魔法がどうのなんて、10年後に判断しても遅くはねぇだろ?」
 ただ暴れたいが為に使い魔の契約を結んだ。だが、もう1つ理由があった。それは――
「オメーは今まで、1人で目一杯頑張った。ここから先は、オイラも一緒だ。道なんていくらでもこじ開けてやらァ」
 右手を差し出すクロ。それは、クロがルイズを認めた証。本当の意味での、使い魔の契約。
「助けて…くれるの…?」
 虚ろな瞳で、差し出された右手を見つめながら問う。クロはその問いに、力強い頷きをもって返した。
「ありがとう…!」
 右の袖でぐいっと目元を拭う。もう涙は流れない。代わりに鳶色の瞳に宿るのは、強い意志の光。

 交わされる握手。ここにルイズとクロの、真の契約が成立した。

「一緒に感動のフィナーレ、見てやろうぜ!」



新着情報

取得中です。