あの作品のキャラがルイズに召喚されました @ ウィキ

少女人形使い魔(ドールサーバント)

(あ……、ブリジッタ、髪がさらさらしてる)
 視線の先にいる少女・ブリジッタの艶やかな長髪を、ルイズは羨望の眼差しで見つめていた。
(ベアトリスは頭が小さくて肖像画のモデルみたい……)
 続いて、壁に寄りかかって女子生達と何やら話している長身の少女・ベアトリスに目を向ける。
(ミス・ロングビル……、この間クラスの男子が話してた……。やっぱり綺麗ね……)
 心の中でそう呟いて、ルイズはひとつ溜め息を吐いた。
(それに比べて私って……)

「じゃね、ルイズ。バイバーイ」
「また明日ね」
「バイバイ」
 校舎を出たところでルイズはキュルケ・モンモランシーと別れ、自室がある女子寮への帰路に着く。
(今日もいつも通りの帰り道。そして窓に映るいつもの私……)
 教室の窓に映るルイズの上半身は、胸元から腹部にかけてなだらかな曲線を描いていた。
「せめてこの胸が洗濯板じゃなかったらいいのに……。パッドを入れててはみたけれど不自然なだけだもの」
 溜め息をついて歩き出すと、女子寮玄関近くの長椅子に少女用にアレンジされた水兵服姿に長い黒髪の少女が目を閉じて座っていた。
 ルイズが召喚した少女・メグだ。
「うわあ……、いつ見ても可愛いわね……。こんな可愛い……ううん、綺麗なの使い魔どころか人間にだって見た事無いわ……」
 ルイズがしばらく見とれていると、メグはルイズの接近を感知したかのように目を開けた。
「ガラスみたいな黒い瞳……」
 無言のまま立ち上がったメグだったが、その足取りがおぼつかない。
 すぐにふらついてルイズの肩にしがみつく。
「ね、ねえ、何か具合悪そうだけど、大丈夫なの?」
 ルイズがそう声をかけると、メグは木立の中からわずかに見えている小さな建物の方向を指差した。
「あの建物に連れていけばいいのね」
 メグを連れて向かったその建物は少々大きめの小屋程度の大きさで、扉の横に大振りの窓があった。
「あんな建物、あったかしら……? 今まで気が付いた事無かったわ。いつも通る道なのに」
 扉の前に置かれている黒板にただ一言「Doll Shop」と書かれている事に気付いて、ルイズは訝しがる。
「『Doll Shop』……人形屋? 学院内に?」

 ――チリン……
 扉を開けると、ドアベルが涼やかな音を立てた。
「ちょっといいかしら」
「いらっしゃいませ」
 ルイズが声をかけると、人形でいっぱいの店の奥から1人の若者が姿を現した。
「あ、私の使い魔が具合悪そうにしてて……」
「それは大変です。きっと外の空気にあてられたのでしょう」
 若者はルイズから受け取ったメグを抱きかかえ、手近にあったソファーに横たわらせた。
 そこで若者はルイズの顔をちらりと眺め、
「……何かお悩みのようですね。ここで会ったのも何かの縁です。私に相談に乗らせてください」
「いえ、いいのよ、そんな」
 と固辞したルイズだったが、店内にずらりと並んだ人形を眺めて溜め息を吐く。
「人形、可愛いわね……」
「僕がカスタムした人形達なんです」
「胸も大きいし、綺麗な目。手も足も細くて小さい顔。こんな風になりたいっていう女の子の理想が、みんな詰まってるわ。私の使い魔みたい……」
 そう言ってドレスを纏った人形を1体抱き上げたルイズに、若者は予想外の言葉をかける。
「あなたの望み、少しだけ叶えてあげましょうか?」
「えっ?」
「さあ、望みを言ってください」
「私の望みは――」


――願いを叶えるドール・ショップ とても美しいドール達
大きな瞳に綺麗な髪 誰もが心を奪われる――


「ルイズ! 早く準備しなさいよーっ」
 部屋の外からキュルケが声をかけてきた。
「うーん……、わかってるわよ……」
 上半身だけを起こしたルイズは、目を擦りつつ昨日の奇妙な店での記憶を思い返した。
「……あれ、朝じゃない? あの店って夢だったのかしら? 私いつ部屋で寝たのかしら」
 ぼんやりしつつも制服に着替えるべく寝間着の上着を脱ごうと胸元に手を伸ばして、ふと違和感を覚えた。
 視線を下に向けると、ルイズの胸が寝間着に2つの大きな膨らみを形成していた。
「えっ、これ、私の胸!? あの店、夢じゃなかったんだわ!」
 ルイズの脳裏に、若者の言葉が蘇る。
 ――あなたの望み、少しだけ叶えてあげましょう。
 制服に着替えてからも、ルイズは胸が変わった自分の姿を姿見に映して何度も微笑んだ。
(こんな事信じられる? ずっと夢見てた大きな胸。大きさが変わっただけで、何だかいつもよりちょっと可愛く見えるのは気のせい?)

「ルイズ!! どうしたの、その胸!?」
「シリコン入れた!?」
 教室に入ってきたルイズの胸に、キュルケ・モンモランシーは驚愕の声を上げた。
「うふふ、内緒よ」
「ずるーい!!」
「ごめんごめん、ほんとはよくわからないのよ」
 自分でも上手く説明できる自身が無かったため適当にあしらおうとしたルイズだったが、その返答にキュルケは激しく抗議した。
 そこにモンモランシーから、予想外の言葉がかけられる。
「ルイズって、結構可愛いよね」
「え……、そ……、そうかしら?」
「絶対胸元開けてた方が可愛いって!」
 思ってもいなかった言葉に嬉しさ半分困惑半分といった表情になるルイズだったが、モンモランシーに続いてキュルケも、
「うん、その方がいいわ!」
 その直後の授業が終わった後の休み時間、
「今まで思わなかった事なのに……」
 女子トイレの鏡の前でじっと自分の顔を見つめているルイズの姿があった。
(ダイエットしてみようとか、薬用リップを色付きに変えてみようとか、いつもと違う服を選んでみようとか。私を少しだけ変えるには十分な魔法の言葉。少しだけ可愛くなれる魔法ね)

 それから半月ほど経って……。
「ルイズって最近変わったよね」
「うん」
「ちょっと痩せた?」
「そうでもないわよ」
 軽く否定したルイズだったが、その表情には隠しきれない喜びが色濃く出ている。
(本当は5リーブルダイエットしたわ。シャンプーもちょっと高いのにしてみたし、お小遣いだって洋服と化粧品で全部使っちゃってる)

「もっと頑張れば、もっと『可愛く』なれるのかしら……。もっと、もっと……」
 ふと気付くと、ルイズの目の前に1つの扉があった。
「……あれ? この扉……、あの人形屋(ドールショップ)の扉? いつの間にこんな所に……」
 不審に思って周囲を見回すと、まるで霧に閉ざされているかのように白くぼんやりとしていた。
 そこでようやくルイズはつい先程ベッドに入った事を思い出した。
「ああそうか、私夢を見てるんだわ」
「その扉を開けちゃ駄目。そこは『ドールショップ』なのよ」
 聞こえてきた声に振り向くと、そこにはメグが立っていた。
 その表情は召喚以来の無表情ではなく、深い悲しみが色濃く出ていたものだった。
「メグ……、なぜそんな悲しそうな目で私を見るの? 怖いくらいに綺麗な瞳……。何が悲しいの?」

 その翌日、ルイズがキュルケ・モンモランシーと共に談笑しつつ廊下を歩いていると、
「あ!! ミス・ロングビル!! クラスの男子に大人気なのよね」
「うわー!! 隣の人、ワルド子爵じゃない!!」
 突然2人が上げた声に、ルイズははっとしてキュルケ達が見ている方向に視線を向ける。
 するとそこには羽飾りを付けた帽子を被った青年と眼鏡の女性が、楽しげに微笑み合っていた。
「何かあの2人、凄くお似合いね」
「2人並んでると別世界って感じ」
「別世界……」
 モンモランシーの何気無い一言に、ルイズは硬直した。
(私も少し憧れたわ……。ただの憧れだったのは、私じゃつり合わないのがわかっていたから。何であの子はあんなに可愛いのかしら。私がどんなに頑張っても、あの子みたいにはなれない……。でも……、あと少し目がぱちっとしてれば? 口元が……、鼻が……。あと、少しだけ……)
 そんな事を考えていたルイズが顔を上げた時、彼女の目の前に昨夜夢で見た扉がいつの間にか存在していた。
「あの扉、『Doll Shop』? 何で校舎(ここ)に!? ねえ、みんなっ……」
 ルイズは慌てて後方を振り返りキュルケ達を呼んだ。
 しかしその時既にルイズの周囲からは人影が1人残らず消えていた。
「いない!?」
『――あなたの望み、少しだけ叶えてあげましょうか?』
 ルイズの脳裏に、メグを抱きかかえた若者の姿と言葉がフラッシュバックした。
『――さあ、望みを言ってください』
『――その扉を開けちゃ駄目』
 若者の声がルイズを誘い、メグの声がルイズを止める。
 わずかな躊躇の後、ルイズはその扉を開けた。
 ――チリン……
 扉を開けると、ドアベルが涼やかな音を立てた。
「お待ちしていましたよ、お客様……」
 扉の向こうでは、ティーセットを載せたトレイを持った若者がにこやかにルイズを出迎えた。
(私が来る事知ってたみたい……)


――願いを叶えるドール・ショップ 今日もドアが開く音がする
店に訪れた少女たちは たちまちドール達の虜――


「――そうですか……。女の子というのはそれだけで宝石のように素晴らしいと思うのですが……」
 ルイズの話を聞いた若者は、慣れた手付きでティーカップに紅茶を注いでそう答えた。
「でも可愛くないとやっぱり駄目なのよ! その人形達みたいに……」
 若者の言葉を強い口調で否定したルイズは、テーブル上に座らされている人形に視線を向ける。
 すると次の瞬間、
 ――ざわ……
 突然店内がざわめいたようにルイズには感じられた。
 ――ざわ……ざわ……ざわ……
 気のせいかとも思ったがそうではなかった。
 そのような事などありえないにもかかわらず、店内の人形達がざわめいているかのように奇妙な気配を放っていた。
「え……? 何これ……。人形が騒いでるの?」
 事ここに至り、ルイズにもようやくこの「Doll Shop」が尋常ならざる場所である事が理解できた。
 理屈ではなく本能的にここから離れなければと考え、慌てて立ち上がる。
「わ……、私そろそろ帰らないとっ……!!」
 しかしその行動を封じるように、いつの間にかルイズの背後に回っていた若者が彼女の肩に手を置く。
(……いつの間に私の後ろに!?)
「普通彼女達は言葉を持ちません。でもいろいろな事を考え、感じています。店にいる娘(こ)達は特にです」
 若者の続ける言葉は異様なまでに淡々としていて、明らかにルイズに……いや、誰かに聞かせるような口調ではなかった。
「私は彼女達の『望み』を叶えて、カスタムしてあげました」
「何の事を言ってるのよ?」
 ――クスクス……クスクスクス……
「新しいお友達?」
「そうみたい」
「お友達ね……」
 突然聞こえてきた笑い声に周囲を見回すと、いつの間にか店内には何人もの少女が微笑みを浮かべつつルイズ・青年を見つめていた。
 ある少女は東方風の服を、またある少女は豪華なドレスを、さらに別の少女は**を……。
「この店人形しかいなかったのに、いつからこんなに人が!? ……わ、私やっぱり帰るわ!(この店、変よっ!)」
 店内の異様な雰囲気に怯え、踵を返すルイズ。
 しかし扉の所に立っていた見覚えある少女の姿に、思わず立ち竦む。
「メグ……」
「なぜまた『お店(ここ)』に来てしまったの? 駄目って言ったのに……」
「え……?」
 メグの言葉を不審がるルイズ。しかしそこに、
「あなたの望みは、『もっと可愛く』『もっと綺麗に』でしたね」
「!!」
 自分の心の中を見透かしたかのような青年の言葉に、ルイズは驚愕の表情で振り返った。
「お友達よりも、肖像画よりも、あの男性の隣にいた女性よりも。この人形達のように……」
「『この人形達のように』……」
 ルイズが虚ろな視線で青年の言葉の最後を反復すると青年は怪しげな笑みを浮かべ、
「僕が叶えてあげますね」
「もっと可愛くなりたい、もっと……」
 羨望を込めて見ていた、ブリジッタ・ベアトリス・ロングビルの姿がルイズの脳裏を過ぎる。
「もっと……」
 ルイズの手から握っていた杖が落ち、床に転がって音を立てた。


――ガラスの様な綺麗な瞳 惹かれたならばもう帰れない
店員が耳元で囁く 「貴女も綺麗になりませんか?」――


「知ってる? この辺で生徒が行方不明になったんだって」
「うちのクラスでも……」
「嘘ー」
「えー、プチ脱走じゃないの?」
「真面目な子だったんだよー」
 ルイズが行方不明になってから数日後、噂話に興じる少女達を気にも留めず「Doll Shop」のショーウィンドーを覗いているタバサの姿があった。
「……可愛い……」
「ありがとうございます。この娘(こ)はカスタムが終わったばかりなんですよ」
 人形の可憐さに、タバサの表情にかすかな羨望が宿る。
「……私も……こんな風になりたかった……」
「その望み、少しだけ叶えてあげましょうか?」
 そんな2人の視線の先にいる人形は、美しい桃髪と豊かな胸を持ち魔法学院の制服を纏っていた……。


――願いを叶えるドール・ショップ 次々と増えるドール達
店に訪れた少女達の 行き先を知る者はいない

甘く誘う魅惑の言葉 頷いたならもう逃げられない

もしも私の店に来た時は 「貴女もドールにしてあげましょう」――


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