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第九話 モット伯邸の攻防 前編



どうして、物事はこうも上手くいかないのだろう
モット伯に『召喚されし書物』を渡して、シエスタを連れて帰る
それだけで良い筈だったのに…
「何でこうなるんだよ!!!」
目の前の光景に、才人はそう叫ぶしか出来なかった
破壊される屋敷、武器を手に戦う兵士達、そして…
「アオーーーン!!!」
何匹もの狼達が屋敷の中庭に解き放たれていた
ウルフというこの魔物達はモット伯の物ではなく、警備の兵士や番犬達を襲っている
その時、近くで番犬に喰らいついていた一匹が、口から獲物の血を垂れ流しながら才人を見据える
彼を次の獲物と認定し、こちらに向かって走りだした
「わっ、こっちに来る。」
慌てて武器を手にしようと思ったが、デルフはクラースに返していた事を思い出す
相手が丸腰でも、ウルフは容赦なくその喉笛目掛けて飛び掛った
「うわあっ!?」
思わず目を瞑る才人…しかし、噛み付かれる寸前に銃声が響き渡った
それから少し時間が経ってもウルフが襲ってくる事はなく、才人は恐る恐る目を開ける
するとと、自分を襲おうとしたウルフが近くに倒れていた…頭部を銃撃され、絶命している
「忠告した筈だぞ、無謀な真似は何時か命を落すと。」
振り返ると、少し離れた所でライフルを構えるリカルドの姿があった
彼はその場から狙撃を続け、射程範囲内のウルフ達を射殺していく
全て急所を撃ち抜かれており、恐ろしいまでの狙撃能力を見せる
「才人、これを使え。」
追いついたクラースが、持っていたロングソードを才人に向かって投げる
才人が反射的に受け取ったと同時に、またウルフ達が襲ってきた
「わわっ、また来た!?」
「焦るな、冷静に対処しろ。」
クラースの言葉に、兎に角冷静になって剣を鞘から抜いた
ルーンが輝く…才人は剣を構え、飛び掛ってくるウルフ達を見据え…
「でやっ!!」
剣を振り払い、向かってきたウルフを切り捨てた
それでも、ウルフ達は次々と襲い掛かってくる…才人は必死に応戦する
その後ろではクラースが詠唱を行っている
「お前達にはこれで十分だ…バースト!!!」
光弾を連射し、才人に群がるウルフ達を攻撃する
才人の剣技、クラースの術、リカルドの銃撃…それらによって、ウルフ達は次々と倒される
数分後には、クラース達は自分達の周りの敵を倒す事に成功した
「ふぅ、ふぅ…へへっ、余裕だぜ。」
「調子に乗るんじゃない。」
「イテッ!?」
少し息を整えてから、才人がそう言うとクラースがその頭を本で軽く叩いた
「武器も持たずに真っ先に向かうとは、君は私の話を聞いていなかったのか!?」
「す、すいません…シエスタが危ないと思うと、いてもたってもいられなくて…。」
「全く、君という奴は…。」
才人の行動に呆れながらも、彼の人の良さにクラースはある意味感心した
「こんな所で話をしている暇はないぞ、まだ周囲には敵がいる。」
リカルドの言うとおり、この広い中庭ではまだ兵士達が戦っている
一匹一匹は大した事無いが、相手は群れて攻撃しているので苦戦しているようだ
「それに、本命は既に館の中だろう…早く行かねば手遅れになる。」
「そうだな、急ごう……才人、君は此処から離れるんだ。」
「はい…って、何で!?」
その言葉に、二人に続こうと思っていた才人は驚く
それはつまり、自分はシエスタを助けにいけないという事だ
「此処から先何があるか解らん、下手をすれば命を落とす危険性もある。」
現状からでは、敵の正体が完全に把握できていない…それに、この魔物の数だ
こんな所に才人を放り込むような真似をしたくない、保護者としての意見である
「だから、君を連れて行く事は出来ない…シエスタの事は私達に任せて、早く此処から離れるんだ。」
「そんな…そんなの、あんまりじゃないですか。」
当然である、此処まで来てクラースは自分だけ逃げろと言ったのだ
そんな事、才人の性分から納得出来るものではなかった
「クラースさんはこういう時の為に、俺に剣の稽古をさせていたんじゃないんですか?」
「あくまで君が自分自身を守る力を培ってもらう為にだ…君を危険に晒す為じゃない。」
「けど、俺だって…。」
両者は互いの意見を主張し、一歩もひこうとしない
才人がどうにか同行を許可してもらおうとする中、新手のウルフが此方に向かってきた
「ちっ、こんな所で無駄話をするから、また一匹来たぞ。」
舌打ちしながら、リカルドは向かってくるウルフに向かって照準を合わせようとする
だが、その前にいきなり才人が飛び出し、ロングソードを構えた
「魔神剣!!!」
向かってくるウルフに向けて、才人は剣圧を放った
放たれた魔神剣はウルフに命中し、吹き飛ばされる
「クラースさん、俺だって戦えます…戦えるのに、此処から逃げるなんてできません。」
「才人…。」
「それにシエスタは待っている筈なんです、俺が戻ってくるのを…だから、俺は絶対行きます。」
何と言われようと…その言葉と共に、才人は真剣な眼差しをクラースに向ける
その目からも、これ以上何を言っても才人が此処から離れない事を悟った
「…リカルド殿、貴方はどう思う?」
「こいつを連れて行く事か?俺は賛同しかねるな。戦場を知らない者を連れて行けば、俺達の足元をすくわれかねん。」
傭兵として、才人は足手まといなると踏んでの判断だった
反論しようする才人だが、その前にリカルドが続きを口にする
「だが…此処から先、自分のケツは自分でふくというのなら構わんがな。」
それは何かあったとしても助けはしないし、自分で対処しろという事だ
その言葉に才人は一瞬戸惑いを見せたが、すぐに自分の答えを口にする
「それでも構いません。足手まといにならないよう頑張りますから…連れて行ってください。」
お願いします…と、才人は二人に向かって頭を下げた
そんな才人に、クラースが出した結論は…
「言っても聞かないようだな………解った、君を連れて行こう。だが、絶対に無理はしない事…これも条件だからな。」
「はい、解りました…約束します。」
「話が終わったならさっさと行くぞ、大分時間をロスしたからな。」
才人が誓いを立て、リカルドが二人を急かす
急いで屋敷の方へ向かおうとする三人だが、その矢先に……
「などと急いでいるらしい雰囲気など気にせず、唐突に登場する俺。」
突然の声が、三人の足を止める
その声はこの場には全く似合わない、妙に爽快なものだった
クラース達が声の方を振り返ると、槍を持った男が此方に近づいてきた
その男は実に奇妙だった…何が奇妙かというと、その全てがだ
こんな状況でもヘラヘラしており、才人にも解るほど奇妙な気を放っている
「やあやあ皆さん、お急ぎのようですがどちらまで?もしかして、夜遅くの新聞配達?」
「な、何だよあんたは?」
「それとも牛乳配達?だとしたら、こんな夜遅くにゴクローサマです。」
才人の言葉を無視して棒読みで言葉を発する男…もとい、変人
こいつも傭兵だろうか…それをリカルドに尋ねようとしたが、それは出来なかった
何故なら、リカルドは殺気と憎悪を放ちながら、男を睨みつけていたからだ
「貴様…何故貴様が此処にいる。」
彼にとって男の存在は予想外の何者でもなかったらしい
リカルドの問いかけに、男は相変わらずヘラヘラしながら口を開く
「おや?まさかそこにいるのはリカルドs…。」
相手が喋り終える前に、リカルドが男に向かってライフルの引き金を引いた
銃声と共に男は背を後ろに曲げて、ブリッジ状態になる
「ちょ、いきなり撃つなんて…。」
「答えろ、何故貴様が此処にいる!?」
才人の言葉を無視し、リカルドは再度疑問を投げられる
ブリッジ状態の男はすぐに体勢を戻した…当たった振りをしていたらしい
「久しぶりにあったリカルド氏は人の口上を遮る馬鹿になっていたのでした…うーん、残念!!」
「…そうだったな、貴様には我々の言葉は通用しなかった。」
槍を持ってクネクネと動く男に、リカルドは呆れるように言った
死んでも治らなかったようだな、この男は…
「誰なんだ、この男は?」
「…ハスタ・エクステルミ、俺が以前仲間と共に倒した殺人鬼だ。」
殺人鬼…その言葉にギョッとなる才人だが、何となく理解は出来た
何故なら、このハスタという男は狂気が一人歩きしているように見えるからだ
「お前はあの時確かに息の根を止めた筈…何故生きて、此処にいる。」
「何故?それはね、きっと俺の生前の行いが宜しかったからだポン。」
「よく言う、赤子も喜んで殺すこの殺人鬼が。」
リカルドの言葉に対し、相変わらずヘラヘラとハスタは笑っている
「リカルド氏と再会を喜ぶ俺…しかし、すぐに別れと悲しみがやってくるのでした。」
そう言うと、突然殺気と共にハスタは槍をリカルドに向けた
先ほどとは違って、持っている槍同様突き刺すような気を放っている
「何故なら、此処でリカルド氏は俺との再会パーティのメインディッシュとなるからです。」
「やる気か、ならば容赦はせん…するつもりもないがな。」
ライフルで狙いを定め、リカルドはハスタを狙い撃つ
放たれた弾を、ハスタは悉く避けた…妙に凝ったポーズで
「すまんが、俺はこいつにもう一度引導を渡す必要がある…お前達は先に行け。」
「えっ、でも…。」
「リカルド氏の串焼き、一丁!!!」
そんな時、ハスタが一瞬の隙をついて槍を突き出してきた
恐ろしく早く、命を奪う突きをリカルドは避け、再度発砲するが避けられてしまう
相手の性格はあれだが、その実力が本物である事が伺える
「…事情は解らんが、此処は任せた方がよさそうだな…行くぞ、才人。」
「えっ…あ、はい。」
リカルドにこの場を任せ、クラースは屋敷へと向かった
屋敷に向かう前に、才人はもう一度リカルドの方を振り返る
「…リカルドさん、気をつけてください。」
「人の心配をする暇があるなら、自分の心配をしろ…此処は戦場だぞ。」
戦場で油断すれば死ぬ…その意味を込めての言葉だった
解りました、と答えると才人はクラースを追って屋敷の中へと向かった
「さて、貴様と再び相見えるとは…これも、前世からの縁か。」
もう終わったと思っていた、あの因縁…しかし、まだ終わってはいなかったようだ
「ならば、今度こそその縁、断ち切ってくれる。」
「ぴょろーん、行くんだプー。」
狙いを定めるリカルド、相変わらずふざけながら槍を振り回して襲い掛かるハスタ…
二人の死闘は始まった
リカルドにハスタの相手を任せ、才人とクラースは屋敷の中へと入った
屋敷のエントランスでも、兵士達と侵入者達との戦闘が始まっていた
「ぐわっ!?」
屋敷内に溢れる魔物達…今、一人の兵士が魔物に襲われ、倒される
魔物は先程のウルフの他にも、巨大カエルのゲコゲコ、植物モンスターのプチプリ…
それに棍棒を持った亜人のバグベアなどがいた
「魔物が…こんなに沢山…。」
「恐らく、侵入者が持ち込んだのだろうが…。」
何処からこれだけの魔物を…恐らく、犯人は土くれのフーケではないだろう
それどころか…その時、兵士を倒したバグベアが、此方に向かって走り出した
「考えている暇はないか…才人、応戦するぞ。」
「は、はい。」
才人が剣を抜いたと同時にバクベアが棍棒を振り上げ、襲い掛かった
それを避けると、才人はすぐに剣を振り払いバグベアを切り倒す
「へっ、大した事ないぜ…ってうわっ!?」
バグベアを倒した直後、ゲコゲコが才人に向かって飛び掛ってきた
体当たりを受けた才人は尻餅をつき、その隙をついてゲコゲコが再度襲い掛かる
「てぇい。」
クラースは才人とゲコゲコの間に入り込むと、本でゲコゲコを攻撃する
本の角を脳天に受け、ゲコゲコは目を回してその場に倒れた
「油断するな、才人…常に間合いに気をつけ、攻撃と防御を使い分けるんだ。」
「わ、解りました。」
クラースの助言を受け入れて立ち上がると、才人は辺りを見回した
周囲は魔物とそれに応戦する兵士がいるが、シエスタの姿は見えない
「シエスタ…一体何処にいるんだ?」
「恐らく、まだ屋敷の中にいる筈だ…魔物を倒しながら、隈なく探そう。」
魔物は自分達も襲ってくる…二人は魔物を蹴散らしながら先へ進んだ
シエスタを探して屋敷の中を回り、その際危険に陥っている兵士や使用人達を助ける
だが、屋敷は広く、中々シエスタは見つからなかった
「シエスタ、何処だ~~~!!!」
襲い掛かってきたバグベアを倒し、才人が彼女の名前を叫ぶ
何度も彼女を呼んだが、返事は返ってこない…段々才人は不安になってくる
「シエスタ…まさか、魔物に襲われて…。」
「無事だと信じよう…そんな事を考える暇があるなら、もっと捜索を…。」
「だ、誰かお助けを~。」
その時、近くの部屋から助けを呼ぶ声が聞こえた…二人は声がした一室へと入り込む
そこには、この部屋に逃げ込んだメイド達が魔物に襲われようとしていた
「オオオオオッ!!!!」
「な、なんだコイツ!?」
それは、土色をした巨大な人有らざるもの…ゴーレムだった
後ろに才人とクラースが現れた事に気付き、ゴーレムはメイド達から二人に振り向く
ゴーレムは腕を振り上げ、才人は咄嗟に剣を構えた
「こいつは、ゴーレムか…才人、避けろ。」
応戦しようと思っていた才人の耳に、クラースの指示が入る
その言葉に従ってバックステップをすると、その直後にゴーレムの腕が振り下ろされた
その腕から放たれた一撃は、床を大きくへこませる
「でぇい!!!」
相手の攻撃後、即座に才人が攻撃を仕掛ける
カキィン、キィン、と剣でゴーレムの体を斬った時に金属音が響く
体に僅かな傷と手が痺れただけで、ゴーレムを倒す事は出来なかった
「こいつ、無茶苦茶かてぇ…ギーシュのゴーレムはバッサリと斬れたのに。」
このゴーレムは、あの青銅のワルキューレ以上の硬度を持っているようだ
続いてゴーレムは腕を伸ばして、グルグルと回転して才人を攻撃する
しゃがんで攻撃を避けると、もう一度ゴーレムに飛び掛る
「飛燕連脚……いってぇ~~~!?」
今度はとび蹴りを放ったが、逆に足を痛める結果となった
そんな才人にゴーレムが殴りかかった…このタイミングでは避けられない
剣を盾代わりに攻撃を受け止め、才人は吹き飛ばされるが何とか無事に済んだ
「俺の攻撃が効かない…どうしましょう、クラースさん?」
困った才人は、クラースに攻略法を尋ねる
後ろでは、クラースが何やら変わった虫眼鏡のような物でゴーレムを見ていた
それは、敵の情報を収集する特殊レンズ、スペクタクルスである
「慌てるな…あのゴーレムは土属性か、土と来れば…。」
「えっと…風、ですか?」
敵が属性を持っている場合、得意属性と相反する属性が弱点である事が多い
火には水、土には風、光には闇と…逆もまたしかりである
「そうだ、だから………シルフ!!!」
クラースはすぐに詠唱を唱え、シルフを召喚した
三姉妹はゴーレムを囲むように、その姿を現す
「シルフ、頼むぞ!!」
『解りました』
クラースの指示に頷くと、三姉妹はゴーレムの周囲で風を巻き起こした
風は無数の刃となり、ゴーレムの身体を切り裂いた
才人の剣では傷つかなかったその身体に、次々と傷跡と罅割れが出来ていく
「今だ才人、トドメを。」
「はい…でやっ!!!」
才人はロングソードを構え、ゴーレムに向かって飛び掛った
ゴーレムはシルフの風によるダメージで思うように動けず、そこに才人の一撃がヒットする
先程は効かなかった攻撃も、今の一撃が致命傷となった
「オオオオオ…オオ…。」
罅割れていた箇所から更に全体へと罅割れが進行し、ゴーレムの身体が崩れていく
それでもゴーレムは戦おうとするが、それは適う事無く完全に崩れ落ちた
「俺達の勝ちだ!!!」
クルクルと剣を回し、鞘に納める才人…二人の連係プレーによる勝利だ
メイド達も二人が魔物を倒したので、落ち着きを取り戻して感謝の言葉を口にする
「あ、ありがとうございます、もう少し遅ければ私達はあのゴーレムに…。」
「礼なら良い…それより、シエスタというメイドを知らないか?」
この中にはシエスタがいないので、クラースが彼女の行方を尋ねる
メイド達が顔を見合わせる中、老年のメイドが口を開く
「シエスタさんでしたら…確か、襲撃前に湯浴みを…。」
「湯浴み…浴場か、場所は?」
「はい、此処を出て左の突き当りがそうですが…。」
もしかしたら、まだそこにいるかもしれない
二人はメイド達に此処にいるよう伝えると、浴場へと向かった
「………ふぅ。」
その頃、シエスタは湯船に浸かってこれからの事を考えていた
この浴場は防音対策がしっかりと行き届いており、外の騒ぎは全く届かなかった
外で大騒ぎになっているとも知らず、シエスタはずっと考えている
「(湯浴みが終わったら、寝室にこいだなんて…やっぱり、モット伯爵は私を…。)」
彼は才人が成功するとは思っておらず、手っ取り早く事に運ぶつもりらしい
湯船に浸かっているのに体が震える…シエスタは自身の体を支える
「(才人さん…ごめんなさい。)」
折角私の為に頑張ってくれているのに…シエスタはブラックオニキスを見つめる
胸が締め付けられる想いに彼女は涙を流し、その一滴が黒い宝石を濡らした
その時、突然ガシャンと大きな音が浴室に響いてきた
「な、何!?」
突然の事に驚きながらシエスタが入り口の方を向くと、何かがやってくる
3匹のウルフ達が浴室内に侵入し、シエスタの前に現れた
「ひっ…狼!?」
どうしてこんな所に…と思ったが、そんな事を考える余裕はない
シエスタは逃げようとしたが、恐怖に体を縛られてその場から動けなかった
3匹のウルフ達はゆっくりと、シエスタに向かって歩み寄ってくる
「こ、来ないで…私、美味しくないから…。」
震えながらのシエスタの言葉を、ウルフ達が理解する筈がない
先頭の一匹が舌なめずりすると、シエスタに向かって飛び掛った
「きゃあああああああ!!!!!」
悲鳴をあげるシエスタ…ブラックオニキスを握り締め、助けを求めた
才人さん、助けて…と
「ギャン!?」
その時、光弾がシエスタに襲いかかろうとしたウルフに命中した
ウルフは大きく吹き飛ばされ、壁に叩きつけられて絶命する
「えっ…今のは…。」
「シエスタ!!!」
続いて浴室に誰かが飛び込んできた…この辺りでは見ない服装に剣を持っている
それが誰なのか、シエスタはすぐに解った…才人だと
「才人さん!?」
来てくれた、才人さんが…私を助けに来てくれた
残ったウルフ達はシエスタから才人の方を振り向き、彼に狙いを定めて襲い掛かる
才人は落ち着いて剣を構え、ウルフ達を待ち構える
「でやっ!!!」
才人はロングソードを振り払い、二太刀でウルフ達を倒した
剣を振るって血を払い、剣を鞘に納める
「シエスタ、大丈夫か!?」
そしてすぐに、彼女の無事を確認する為、浴槽へと駆け寄る
すると、シエスタは浴槽から飛び出して、才人に抱きついた
「ああ、才人さん…才人さんなんですね。」
「し、シエスタ…。」
「怖かった…怖かったんです…。」
シエスタは泣きじゃくりながら、才人にしっかりと抱きつく
彼が助けに来てくれた事を、神様に感謝しながら…
「シエスタ…良かった、間に合って。」
シエスタに抱きつかれて戸惑った才人だが、彼女をあやすようにその頭を撫でた
本当に良かった…シエスタを守れた事を才人は喜んだ
そんな時、シエスタから良い香りがするのに気付いた…お風呂に入っていたからだろう
「(ん、待てよ…此処は風呂場で、今シエスタは風呂に入ってたわけだから…。)」
此処で、才人は冷静になって今の状況を分析する
これが確かなら彼女は裸で、今自分の胸板に当たっているのは…
「…ぶはっ!?」
「きゃあ、才人さん!?」
この状況は今の才人には刺激が強すぎたらしく、突然鼻血を吹いて倒れてしまった
「才人さん、しっかり…まさか私を助ける時に何処か…。」
自分に原因があるとは気付かず、おろおろするシエスタ
そんなシエスタに、クラースが布を持ってきて羽織らせる
「クラースさん…。」
「君が無事だったのは良かった…が、喜ぶのは服を着てからにしよう。」
クラースの言葉に、自分が裸である事を思い出す
シエスタは顔を真っ赤にして、クラースがくれた布をしっかり羽織る
「す、すいません…私、気が動転していて…。」
「まあ、こんな状況だからな。私達は外を見張っているから早くしなさい。」
クラースは鼻血を出して失神している才人を引っ張って浴場を出て行く
シエスタはまだ顔を赤くしつつも、急いで着替える事にした

………………

「クラースさん、才人さん…本当に、ありがとうございました。」
浴場前で、メイド服に着替え終えたシエスタは改めて礼を言った
あの後気を取り戻した才人は、鼻の穴にティッシュを詰め込んでいる
「いや、俺もあんな良い思い…じゃない、シエスタが無事でよかったよ。」
あはははは、と本音を言おうとした才人だったが、笑ってごまかした
「それにしても…まさか、外がこんな事になっているなんて。」
シエスタは未だ聞こえる争いの音に身を震わせた
モット伯邸の攻防戦は未だ続いており、屋敷内は慌しい
「やっぱり、土くれのフーケがモット伯の『水のアクアマリン』を狙ってやってきたんですね?」
「水のアクアマリン?」
「はい、モット伯が左手に嵌めている指輪で…水の魔法の力をあげる効果があるそうです。」
モット伯が指輪を見せながら自分に話していた事を、二人に教える
才人も、あの左手の指輪か…とモット伯と面会した時の事を思い出す
「『恐らく土くれが狙うのであれば、この指輪だろう』って…違うんですか?」
「いや、そうなのかは解らんが…もしかしたら…。」
水のアクアマリン…キュルケの持っていた火のガーネットと似たような効果だ
結局は、火のガーネットはイフリートと契約するのに必要なガーネットの指輪だった
だったら、その水のアクアマリンも…
「契約の指輪かもしれないな。」
水の精霊ウンディーネとの契約に必要な、アクアマリンの指輪
そうだとしたら、襲撃犯に奪われるわけにはいかない
「才人、急いでモット伯の所に行こう…場所は解るな?」
「は、はい、解りますけど…シエスタはどうするんですか?」
「先程のメイド達がいた部屋で匿って貰おう…それで良いか、シエスタ?」
クラースの言葉にシエスタは頷く…早速彼女を先程の部屋へと連れて行った
先程の部屋戻ると、他に避難したした使用人達が来ており、それを守る兵士達もいた
これなら、シエスタも大丈夫だろう…守りの兵士達に彼女の事を任せる
「クラースさん、才人さん…気をつけてください。」
「うん、大丈夫…行ってくるよ。」
シエスタに見送られ、二人は急遽モット伯の部屋に向かった



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